あっぶねぇぇぇぇ!!何とか間に合ったぜ!
それではご覧ください。
『いただきます』
太宰家の食卓に、俺ガイル。これはあれかな。早めの結婚話とかしちゃう展開なのかな?ほら、春歌結婚したいって、言ってたし。
それに、なんだかこの両親なら気兼ねなく話せてしまうような気がする。
「比企谷君。学校では春歌どう?」
「ちょっとお母さん!何聞いてるの?」
「ちゃんと高校生してますね」
「え?それ普通って事!?」
「比企谷君。春歌のお弁当美味しい?私には食べさせてくれないの」
「え?そうなのか?」
「う、うん」
それはすごいな。母親の味見とか指導がなくて、ほぼ独学状態であの完成度とは……。何そのスキル。めっちゃ嫁に欲しい」
「な!……な」
「あら~」
「いやぁ、春歌の恥ずかしがる姿は久しぶりだよ」
「え?……………春歌、声出てた?」
冷や汗を掻きながら、春歌に問うと、真っ赤な顔でコクリと頷いた。
はいやっちまった。失言のレベルを遥かに超える失言だった。春歌だけに。なんてシャレ言ってる場合じゃないな。ヤバいな、急いでる奴って思われるか。
「僕は八幡君なら大歓迎だよ。僕は、八幡君は、春歌の人生を担う事をできると思ってる」
「そうね」
「「ええええええええええ!!!!」」
ガタッと大きな音を立て、俺と春歌は勢いよく立ち上がった。春歌に至っては椅子が倒れた。
「いやいやいやいやいや、よく考えてくださいよ!そんな安々と決めていい事じゃないでしょ!」
「ん?そうでもないよ。僕は真剣に考えた結論だ。僕は、君がいい」
「私も賛成よ」
俺、何かやったのか?数回顔を合わせただけなのに……。まるで俺のほとんどを知っているようだ。特に、父親の方だ。
ダメだ。分からない。頭の中で色々な情報が洗濯機のようにぐちゃぐちゃになりそうで、食べ物が喉を通らない。生きてきて初かもしれない。ここまで混乱することは。
「ちょっと急過ぎたね。謝るよ。この話は、また今度だな」
「八幡、私の部屋行こう」
「あ、ああ」
春歌に手を引っ張られて、俺はされるがままに部屋に連れて行かれた。
◆
「ごめんね。今日のお父さん、八幡来て舞い上がってたみたいで」
「ああ、気にするな。ちょっと動揺しただけだ」
申し訳なさそうな顔の春歌の頭に手を置いた。
「八幡はさ、その、どう思ってるの?結婚とか……」
「どうって……。よくわかんねえ。まだ早いと思ってるし」
「私と、結婚したい?」
「そ、それを今聞くのか…」
ダメだぁ~、状況についていけない。そもそも何でこうなったぁ?家誰もいないから彼女の家に泊まりに来ただけなのに、いつの間にかプロポーズされてるよぉ。
「してぇよ」
「え?」
「だからな、してぇよ。結婚。誰にもお前をやりたくない」
「八幡………」
があああああああ!何言ってんの俺!?混乱しすぎたせいでおかしくなったか!ついに頭がコングラッチュレーションになっちまったんか!?
ぐおおおお、と頭を抱えて唸っていたら、不意に後ろから何かに覆われた。言うまでもなく春歌が抱き着いていた。
「私も、八幡じゃなきゃ、嫌だ」
耳元でささやかれた瞬間、頭の中の混乱が一気に霧となって消え、ドッと疲れが体を支配したと同時に、俺の意識は途絶えた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
また明日。