かつてここまでバイトが面倒と思ったことがあるだろうか。行ってきます。
それではご覧ください。
女性店員と雑談が始まって、俺と春歌は時間も忘れて話に花を咲かせていた。言わなくてもいいと思うが大体春歌と店員が話をしていて、俺は完全に聞き手となって傍観していた。そのまま置き去り気分を味わおうと素数でも数えていようかと思ったが、俺素数知らなかった。そもそも素数って学校で習ったことないよな?テストで素数を答えろって出題されたときは本気で焦った。まぁ素数書けなくても赤点ギリギリだけどね。
「あ、もうこんな時間」
「あら、本当ね。結構喋っちゃったわ」
時計を見ると、短針は7の数字を超えていた。外は吹雪が落ち着き、すっかり青黒く染まり、その中にちらつかせる白い雪のコントラストがいい画になっている。こういうなんもない日に限ってクリスマスみたいな雰囲気になってしまうんだよな。日本の謎の現象。
「じゃあね。2人共また来てね」
「はい、いつでも来ます♪」
上機嫌で俺の腕を抱きながら店を出た春歌。まぁ凄い盛り上がってたからな(小並感)。どちらかというと店員の方がズバズバと話題を出していた気がする。主に俺と春歌の関係について。あの店員は俺と春歌が付き合う前から知り合いだったから、気になって仕方がなかったんだろう。
「この後どうしよっか?」
「帰るんじゃないのか?」
「えー、折角だし夜一緒にいようよ」
おっとこれは誘ってんのか?男子高校生特有の煩悩が働いて、意味深に聞こえてしまうぞ。一般の男子高校生とはかけ離れている俺(多分)は慎重で勘違いすることはない。これは単に夜ご飯外で食べようの意味だ。
「まぁ大丈夫だ。どこで食うんだ?」
「え?私の家でしょ?何言ってるの?」
真顔で俺の予想を粉砕された。
「外で食わないのか?」
「私が作った方が絶対に体に良い。何?私の料理が食べれないってわけ?」
「……どうした?」
「真顔で返された!」
どうしたこいつ?もしかしてたまにヤンデレになる一種の病か?そりゃマズいな。俺が一生かけて傍にいねえと。あ、もうその約束したな。じゃあ大丈夫だ。
下らない事を心の中で言いながらも、店のよりも春歌の料理が食いたい俺は、即春歌の家にお邪魔した。
太宰家の入ったが、中に人がいる気配がない。部屋中真っ暗。
「誰もいないのか?」
「うん。あの吹雪じゃ帰れないでしょ。お父さんは会社に泊まって、お母さんは近くの実家に泊まるって」
「春歌、2人きりの環境にして俺をどうする気なの?破廉恥ね」
「何で!?別にそんな下心ないから!ていうかそれどっちかというと私の台詞だからね!」
「冗談だ」
やはり春歌はからかいがいがあるな。反応が可愛いんだこれが。思わず頭を撫でてしまう程に。
「八幡さ、1年前とずいぶん変わったよね」
「そうか?あまり自覚はねぇけど」
「うん。正直になった」
「…だとしたら、お前のおかげだな」
春歌と付き合って1年ちょっと。確かに俺の意識は変化した。灰色で、これからもずっと灰色で人生を送ると思っていたが、目の前の彼女によって、少しずつ明るい色に染められた。それは、やっと信頼できる人、守るべき人ができたから。俺にとって、まるでドラマのような出来事だと思う。春歌の友達も何だかんだでいい奴らだし。
未だに性根は捻くれてるがな。
「でも、目は腐ったままだね」
「これはもう俺にとっては相棒みたいなもんだ。そう簡単には手放さねぇよ」
「そうだね。八幡のその目、私は好き。じゃあ、ご飯作ってくるね」
春歌は満面の笑顔を俺に見せた後、エプロンを着用し、調理を開始した。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
明日最終回。ど、どうしよう………。ネタが………。
また明日。