徹夜です。
それではご覧ください。
「この時間は2週間後に行われる修学旅行の班を決めたいと思います」
LHRを進行する委員長の言葉に、文化祭中止という悲劇を払拭するかのように盛り上がる教室内。委員長の合図とともに、いつものメンバー、通称いつメンで集まり、班を形成させていった。
俺は自動的に春歌と春歌の友人に混じった。ありがたいことに男女何人ずつとかいう制限がないから気楽だ。
案外早く班が決まったから、委員長から追加指令。それぞれの班に旅行雑誌が配られ、何日目にどこに行くか簡単に計画をすることになった。
ここでも俺は傍観者。行先は春歌の友人に決めてもらい、俺は春歌と共に付いていく。
「3日目の自由行動はどうする?」
「時間内に戻ればどこ行ってもいいんだよね?」
「ならいっそ京都から出ようか!」
「あ、3日目は春歌と京都回りてえから、俺らは外れていいか?」
「私、3日目は八幡と一緒にいたいから、外れていい?」
同時だった。彼女たちが3日目の話をしていて、それを遮るタイミングまで一緒だった。春歌と顔を見合わせ、沈黙が続いた。春歌の友人は、雑誌で口元を隠して俺らを交互に見ている。絶対ににやけてるな。
「じゃあ、私達で春歌と比企谷君のデートプラン立てようか!」
「いいねそれ!」
「あわよくばラブホに誘導……」
「待って!?何で皆がそんなウキウキしてんの!そ、それに、高校生がラブホなんて!」
「春歌声でけぇ!」
「し、しまった……」
危ない危ない。いや、完全にアウトだけどな。けど、幸いにも周りが騒がしいからクラスメートの耳には届いていない。
一方大声で失言をした春歌は俯いて震えている。それを友達が笑いながら、頭を撫でてあやしている。なんだこのほんわかする百合空間は…。しかし、それはどう考えても逆効果だ。見ろ、ますます顔が赤くなってる。
「じゃあ比企谷君。3日目は春歌と楽しんできてね」
「おう。サンキューな」
◆
放課後になり、俺と春歌はいつもの喫茶店に寄った。
「京都どこ回ろうか?」
「まだ2週間あんだし、今考えなくてもよくないか?」
「いいのいいの。こういう時間も楽しいし」
「まぁ、そうだな…」
コーヒーを啜りながら、京都旅行の雑誌を広げる俺と春歌。やはり京都と言えば神社巡りなんだろうけど、さっきっからグルメしか目に入らない。和菓子がめちゃくちゃ美味そう。
「あ、修学旅行?いいねえ~」
横から聞こえた声の正体は、春歌が前から知り合いの女性店員だ。実は俺も良くしてもらっている。この人、俺らがいる時は毎回働いてるけど、しっかり休みをとっているのか気になってしまう。
「はいこれ、サービスね♪楽しんでおいで」
そう言って俺らに1人前のパンケーキを置いていった。ありがたくいただこう。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
友達と通話しながらだったから、夜生き残れた。
また明日。