ハーレルヤ♪ハーレルヤ♪ハレルヤ♪ハレルヤ♪晴れるー屋♪ 作:有限世界
「ひー、やっ、ハーーー!」
血色の服を纏った無色の髭の人形モンスターが得物を振り回しながら町をかける。
大人達は動けない。ただその魔物の強制力、殺神種と同程度の厄介さを誇る危険な存在。いきなり町の中は愚か牢屋や教会の中でさえ急に出現するそれは大人にとって厄介極まりない。
多くの店は閉店で晴れる屋も例外ではない。アッシュも郊外へ向かった。もっとも、町の外だろうと襲ってくるのだが。
動けない大人達は得物で気絶させられ、何の恨みかカップルの男には身ぐるみ剥がれて全身に落書きわして遠い場所に投げ捨てるという奇妙な魔物だ。
対抗できるのは子供しかいない。少年少女は強敵に挑む。その得物というドロップ品、おもちゃの袋を狙って。
「そっちに逃げた!」
「追え!」
「周りこむ!」
因みにこのどたばたで多くの男が寒さで風邪を引き、子供の攻撃によって家屋が破壊される事がある程度の被害だが年行事だったりする。
余談だが、この時期に風邪をひいた男に対して嫉妬深い男から狙われたりするのは余談といったら余談である。たまにフリーだと思っていた男に問い詰める女性もいたりするが。
「1人だと何故か狙われないのよね」
去年神誕祭の事を忘れてダンジョンに1人潜っていたにも関わらず襲われなかったリサが呟いた。その事をアッシュにだけ話したので彼も何処かで隠れているだろう。
「けど神誕祭は地球でのクリスマスよね、これ。魔物の名前なんてもろにサンタクロースだし」
と地球との共通項を考えてみる。それがどうしてこうなったのか?ただ、ヴァレンタインを悲惨な日にした彼女に問われたくないだろう。
そんなどうでもいいことを考えながらダンジョンを降りていると
「あっ」
「えっ?」
知っている人と出くわした。クロウ・マッケンジー、かつてのストーカーと出くわした。次の瞬間、2人は動けなくなる。
彼女は見た。ストーカー男の背後に現れた惨汰苦賂子が得物を振り上げるのを。そしてゴチンと叩きつけて気絶させた。
そのまま惨汰苦賂子はリサの前まできてゴチンとやった。
後日談として、翌日風邪を引いた彼の元にリサ曰く脳ミソスライムな女性達が詰め寄ったという。因みにダンジョンで気絶していたリサは、目覚めた瞬間周囲に結界が張られていたのに気がついたが、それは別の話である。
話は神誕祭に戻って、アッシュは冬の墓場というだれも寄り付かない場所で1人ポツンといた。惨汰苦賂子は孤独な人間には見向きもしない。孤独死した子供好きな男の成れの果てがこの魔物なのではという説もあるが、はっきりしたことはわからない。
「あと妊婦と助産婦なんかも例外か。じゃないと君が産まれて来なかったもんな」
そう言いながらケーキを備える。蝋燭の数の18本は今も生きていればの年齢だ。
「でだ。今年も来てくれるのは嬉しいんだが、働いている20になった男の動きを止めないのは失礼じゃないか?」
他に理由があるならともかく、他の例を見ても何故アッシュが動けるのかわからない。
墓の彼女らを人数として数えているなら此処に現れるのはわかる。だから裸にひんむかれて落書きされたとしてもアッシュに不服はない。
惨汰苦賂子はアッシュの脇を通って墓の前に得物の袋の中から花束を取りだして備える。アッシュが話してた墓以外の幾つかの墓にも備えている事から、その墓も子供の時になくなった子の墓だと彼は一昨年知った。この事は誰にも話していない。
「しかし本当にお前何者だよ。分類できないし複数体いるし、便宜上魔物とされている子供好き」
本当に訳がわからない。
「ほらよ」
言いながら固形物を投げる。惨汰苦賂子はそれを受け取ってかじる。彼も去年から惨汰苦賂子に倣って他の墓にもお菓子を配るようになり、ついでに惨汰苦賂子に渡すようになった。この惨汰苦賂子が去年や一昨年の惨汰苦賂子と同一個体かは不明だが。
惨汰苦賂子は一瞬笑ったように髭を動かし、そのまま消えていった。
「本当に訳がわからん」
サンタクロースをモンスターにしてみよう計画。
子供だけが戦う事ができるモンスター、そして危険はない。倒すとおもちゃをドロップ。絵本なんかもドロップするが。
そしてカップルを許さない。ここだけ作者の趣味を入れた。