ハーレルヤ♪ハーレルヤ♪ハレルヤ♪ハレルヤ♪晴れるー屋♪   作:有限世界

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役割分担なんだけどね……

 青空にヒビが入る。ヒビは徐々に大きく広がり、音もなく割れる。空の奥から出てくるのは3つの目。

 殺神種、星巡り。

 向かって飛び出たすのは青の戦闘服を纏うリューゼル・ハーフウィング。鳴りを潜めたアホ面の代わりに狂喜に満ちた笑みである。相方のココノエ・トーエもやはり狂喜に満ちている。3特戦トップの戦闘狂の2人だ。

 ココノエの魔法により戦場に作られた氷の足場をリューゼルは跳ねて魔法を使えない身ながら高速で接敵する。

 ヒュン

     ザク

 かなり遠くからの抜刀。鞘走りからの衝撃波が星巡りの鱗を剥ぎ落とす。

 ブン

     バサバサ

 返す刃で衝撃波を放ち、鱗が落ちきる前に粉砕する。

 星巡りはリューゼルを強敵と判断し、(あぎと)を開いて魔力を溜める。それを察知し、魔法で加速しリューゼルの前に飛び出したココノエは手を前に出して構える。

 腮から放たれた焔の魔法はココノエに触れた瞬間、向きを反転させて8つの氷刃に別れて螺旋を描きながら星巡りの鱗を剥ぎ落とした。魔法を殺す魔法(ルイン マジック)と呼ばれる高等技法でゲーム的に表現するなら『対象の魔法を無効にし、かつ対象が消費したMPの範囲で自分の習得している魔法を使う』となる。効率的な魔法の使い方をして使用者と同じ魔法を高威力で跳ね返したり、攻撃魔法を回復魔法に変えて不死身を演じる等も可能である。

 ココノエの場合魔法に触れる寸前まで接近する必要があるが、それでも魔法を使えなくするという効果は大きい。対人戦闘なら魔法の使用を控えさせる事につながる。故に魔法を殺す魔法(ルイン マジック)。星巡りはそこまで頭が良くないため状況次第で何度も打ってくるが、その度に跳ね返せる。

 空中戦は概ね人間2人が優位に推移していた。

 

 

 

 

「クケケクケーケッケッケ」

 一方地上ではうっかり星巡りを見てしまって発狂してしまった人のもとへティンダ朗を抱えたミーヤが駆け回っていた。危険種のティンダ朗がいるから彼女は発狂せず、ティンダ朗の影響範囲なら発狂も消える。彼女の他にも危険種を連れた冒険者や警察官がパトロールに駆け回っていた。

「クケケクケーケッケッケ」

 それなのに危険種が効かずおそいかかってくるものがいる。そんなバカなと思いリアクションが一瞬、致命的に遅れた。

 スパン

 初めて見る男が紙でできた武器で発狂した男の頭を叩く。それも地面にめり込む勢いで。

「たまにいるんですよ。こういった状況を利用して盗みや暴行を働く輩が。なので気をつけて下さいね」

「ありがとうございます」

 ミーヤの眼は武器に釘付けだった。

「これはハリセンと呼ばれるボケ殺しの道具(ツッコミ ブレード)です。装備するとクリティカル率が30%上がるらしいですよ」

 さっぱわからないハリセンの説明だった。リサならギリギリわかるかもしれないが。

 しかし最近大きな人によく会うなと思いながら、リューゼルより少し低い程度のリサと同じような黒い髪の平たい顔で微笑みメガネの男に訊ねてみる。

「危険種を連れていないみたいですけど、何処の人ですか?」

 発狂者の鎮圧してくれても危険種がいないと当人が発狂してミイラとりがミイラになる可能性を考慮し、特例のない限り野外に出てはいけない。

「一応この国の人ですよ。税金を払ってますし。ただ選挙権はありませんが。ああ、名前ですがシュウ・ザキセムと申します」

 それでもここにいる理由は

「はた迷惑な友人に頼まれまして、ここで人災を防ぐ手伝いをしています」

 言いながら細く短い白い棒のような何かを投げる。それは暴れていた人の眉間に吸い込まれ、吹き飛ばした。

「航跡が輝いてましたけど、何を投げたんですか?魔法じゃないですものね」

「チョークです。チョーク投げは教師としての嗜みですから。

 ああ、言ってませんでしたね。僅かな期間でしたが学校の先生をやっていたんですよ」

 どんなにベテランの学校の先生でもチョークが光るような投げ方はできないと思うんですが。

 その後2人は一緒にパトロールする事になる。

 なお、冷静に考えれば危険種無しで人災を防ぐ様に言ったはた迷惑な知り合いが誰かを特定できたかもしれない。まあアッシュの師匠では通じないので2人の間ではその話に繋がらないのだが。

 

 

 

 リサがその男を見つけた時、彼は赤い鎧をきた戦士達に囲まれていた。その赤い鎧に描かれた部隊章に冷や汗をかく。

 桜の花に重なる形で下、右上、左上、3本の青い剣が切っ先一点で触れるという部隊章。それが意味するもの、

「ダンナルク帝国第2特務戦隊……」

 帝国最強が30人、たった一人の男を方位するために集まっている。どいつもこいつも醸し出す雰囲気は化け物揃い。

 神様からチートもらった?それがどうした。全員がそれすら比にならない化け物で、しかも危険種の影響を受けないであろう、自前の能力だ。伊達や酔狂で最強を名乗っている訳でも名乗らされている訳でもない。

 リサではこの中の誰一人にさえ勝てない。そしてそれだけの人員が誰一人油断せず気を張りつめている。

「初めましてだね、お嬢さん」

 取り囲まれている男は気にした事もなく呑気にリサの方を向いていた。

「大丈夫だよ。彼等が命じられたのは俺を帝国に連れていくことで戦闘する事じゃない。全滅させたところで連れて行かれるなら素直について行った方がいい」

 しかしそれなら彼がここに留まっている理由がわからない。

「彼等としても犠牲者を出すくらいならある程度妥協しても問題ない。星巡りが片づくまでならという理由で妥協してもらった」

「急げという命令は受けていない」

 2メートルを越える長身にして短く整えられた白髪、白髭の厳つい眼帯の中年の男が簡潔に説明した。

 そう言うことと、アッシュの師匠は星巡りの方を向き、耳を澄ます。主に音だけで戦いの推移を知覚している。

「わざわざここにきたと言うことは何が聞きたいのかな、リサ・ノースランドさん」

 自己紹介はしていない、なのに何故知っているのか?彼もストーカーなのか?

 色々と過るが、

「ほい」

彼は雑誌を投げる。リサは受け取り、内容を確認……する必要もなくこれがなんなのか悟った。

「ファ、ファッション雑誌」

「冒険者特集だから買ってみた」

 そしてその中の一頁にリサが使われている。そりゃ知ってても不思議はない。不思議はないが、この人がそんな本を読むことに違和感を覚える。まあ、意味はないのだろうが。そんな考え方で終わるためリサは彼の事を知らない。アッシュなら建前だけで4種類は想像できる。

「あとサイン頂戴」

 ズルっとずっこけた。

「因みにサインと引き換えに得られるのは会話の時間」

 それこそ本来の目的なのでリサは急いで自分のページにサインを記入した。

「それじゃ、時間は戦闘終了まで、つまらない質問なら即座に打ち切る、嘘はつかないが全ての事を言うとは限らない。因みに時間以外は帝国宰相との会話のルールと同じだ」

 立場上簡単に帝国にはいけないし、宰相と会う機会などないだろう。だからここで考えるのは、赤から宰相に会話の内容が回って招かれる事を期待するくらい。それをわかっていて帝国宰相と同じルールと言ったのだ。

「先ずは確認させて下さい。アッシュの師匠で犬の危険種とその仔を探してた女性の冒険者と合ってますよね」

「うん、そうだね。まあアッシュは破門だけど」

「後輩を助けて頂きましてありがとうございました」

「いえいえ、どういたしまして」

 雑談はここまで、リサは呼吸を1つ置いて質問する。

「最初の質問です。神様、危険種、殺神種、このうち存在してはいけないのは神様ですか?それとも殺神種もですか?」

「質問が色々とおかしい。まず殺神種について勘違いしている」

 えっと驚愕する。

「一般的な殺神種の有名処は魔法を使って魔法を無効にするけど、どちらも持っていない殺神種の存在を忘れている」

 知らない、そんな存在をリサは知らない。

「だから殺神種の定義がおかしい。そもそも最初の定義は神様の摂理に反して生まれた存在を殺神種と名付けた。何時か神様を殺す可能性を持つとしてね。能力は後付けだ」

 それらを踏まえてわかること、

「だから殺神種に関してはなんとも言えない。神様の許可なく勝手に産まれようとも、勝手に生きて行く存在だ。勝手の範囲に言いたい事はあるが、言う権限もないからやっぱりなんとも言えない」

 まあ嘘は言わない約束だから本当になんとも言えないだろう。

「そして神についてだがノーコメント」

 彼に本気で語るつもりがない。少なくとも、リサに十分な知識がない今は。

「それに君は危険種が何故神の奇跡を打ち消すのかがわかっていない事がわかる。危険種と呼ばれるに至った経緯も含めて」

 リサは会話でおかしな部分を見つけた。彼は神と神様を使い分けている。

「神の奇跡は打ち消せるけど、神様の奇跡は打ち消せれない?神は複数いるのですか?」

「いるよ。ある国の神が別の邪神だなんてよく聞く話だ。それに竜にも神がいるし、魔族にも神はいる。種族毎に神がいると思っていい」

 種族毎の偶像、それを壊す必要性があったとしても、神殺しの技術は必要ない。つまり種族毎に神は本当にいる。

「けど神様は一人?」

「柱を使え、柱を。一柱といえば一柱、大勢いるといえば大勢いる、いないといえばいない。考え方や立場状況次第だが、大概は一柱、君は二柱を敬えばいい」

 大概は一柱だけど自分は違って二柱、大概との違いがあるとすれば異世界からきたということくらい?言ってもいないのに何故知っているのか気になるが、そこはきっとどうでもいいのだろう。少なくとも、帝国や彼にとっては。だから聞くのは

「貴方は?」

「二柱を敬うべきなのだが、片方は大喧嘩したからなぁ」

 煙に巻いてるようにしか思えない。

「さて、そろそろ戦闘が終わるな」

 彼は立ち上がり、リサに言伝てを頼む。

「アッシュに伝えとけ。弟子としてはもう期待しないが料理人として頑張れよ、と」

 そして帝国の赤に囲まれて歩いていく。

 リサはその背中を見送るしかできなかった。

 

 

 

 

 さて、そんなアッシュが同時刻何をしていたかというと、ひたすら趣味の包丁研ぎをしていた。それでも時間が空いたので、晴れる屋の台所周りの大掃除をしていた。換気扇とか排水溝とか普段掃除しない場所を。若者がそれでいいのか?

 

 

 

 




スパロボのかなめのハリセンがクリティカル率30%アップ(スーパーロボット大戦wiki調べ)だった。
 そして遠距離はチョーク投げ、近距離はハリセンと隙のない教師。今だと体罰だろうが。そしてこいつがオリ主で序盤だけ学園物なのに天使、悪魔、それに怪物どもとチョークとハリセンで戦う二次創作を作る案があった。仲間達は銃とか刀とか超能力とかで戦うのに。



ルイン(ruin)は破滅させるという意味で殺すという意味は無い。が、相手がこんな魔法を使えたなら戦術としての魔法は死ぬので間違ってはないと思う。そしてこの技能の持ち主を特定の世界に連れて行くと無双する。リリカルなのはの世界だとヴォルケンリッターという意思がある魔力の塊がエライ事になる。まあこいつらは戦闘能力皆無のティンダ朗に存在を全否定されるという……闇の書を壊せるけど闇の書の元まで運ぶ船が壊されるとか、オンオフ切り替えれないためミッドチルダ(魔法文明)が滅びかねないので混ぜたらあかん能力ではある。ティンダ朗スゲーな。というよりも、基本的に普通の人には意味がないのに強敵相手にのみ有効という奴等が多すぎるこの世界。


 因みに帝国の1より2が強いのは参考元の内の1つ、大日本帝国海軍の水雷戦隊からきている。第1特務戦隊は帝都防衛隊だし。(3と4は関係無いけど1や2より劣る)



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