転生先は残念ながら日本ではなかった。転生直後の記憶はあやふやなので勘弁して欲しい。思い出せる限りでは俺は少なくともアメリカで人間の母親から生まれ生後三ヶ月の時に親が事故で死んだ。
「ほう……こいつがプロジェクトの被験者の一人か。すぐ壊れなければ良いがな」
紆余曲折して2歳になった俺は俺は軍に引き取られ
そしてその予想は大当たりした。俺が放り込まれたプロジェクトはチャイルドソルジャー計画。その名前の通り子供を幼少期から兵士や工作員として教育し大人では潜り込めないような場所に潜入したり、若くして熟練の技術を持つ兵士として最前線へ投入される。
俺は幸運なのか不運なのか戦闘要員としての適性と工作員としての適性があり、両方の訓練教育課程を受けるハメになった。それからと言うもの前世でよく見ていた映画やゲームがおままごに思えるような訓練を受けて4歳で最初の実戦に投入された。
最初は1989年パナマ。2度目は91年クェートとイラクで。3度目は01年アフガニスタンで。アメリカが参戦したほぼ全ての戦争、紛争に参加した。前世ではあっさりと死んだのに今では中々死なない体になってしまい軍は戦い続けることを望み俺は命令に従い戦い続けた。
当然長く戦い続ければ研究所での同期や仲間たちはどんどん戦死したり精神を壊していった。だけどそれを悲しい何て思うことは無かった。泣くこともなかった。ただ、仕方がないと。そう思い続けた。
俺は戦い続ける中で何処か壊れてしまったのだろう。人の生き死に深く考えることもなく恐怖すら薄れ消え始めていた。
あ、そうそう。俺は何故か体の成長が遅く20年以上経っても高校生位の体格だったりする。それは研究所で一緒に過ごした仲間たちもそうらしく薬の副作用じゃないのかという結論に至った。
そして俺は久々に
「はぁ、やっとついたか……流石に疲れた」
在日米軍厚木基地に着陸したC-17から降り腕を頭上に伸ばして背伸びをする。
「お疲れ様でした中佐。タワーからの連絡で軍と
俺にそう声をかけてくるのはC-17の機長の少佐だ。彼との付き合いもかなり長い。
「しかし、戦い一本だった中佐がいきなり武偵とはある意味驚きですね……大丈夫なんですか?」
そう、この世界は俺が前世でよく読んでいた「緋弾のアリア」の世界だったのだ。
「殺さなきゃ良いんだろ? まぁ、俺には
ここに来るまでに武偵憲章と武偵法、それに関する法律や制度等を丸々暗記してきているので特に問題はない。
それに工作員時代のコネがまだ使えるので動くのには苦労しないだろう。
「全く恐ろしい方だ。くれぐれも気を付けて下さいよ」
機長と雑談をしていると目の前に黒塗りのSUVが停車し中からヒョロリとした男が出てくる。
「貴方がミノル・シズマ中佐ですか?」
男はCIAらしく生真面目な口調では懐からスマホを取り出して確認をとってくる。そして久々に聞く自分の名前に頷く。なんと俺はこの世界でも穂と言う名前を受け継いでいる。
「そうだ。早速だが頼むぞ」
俺がそう言うと男はSUVの後部座席のドアを開けて俺に乗るように言う。
「どうぞ中佐」
「ああ、ありがとう」
そして男は助手席に座り運転手の男に目的地へ向かうように指示を出す。
穂を乗せたSUVは厚木基地を出て高速に乗る。運転手の男は後部座席に座る高校生位の背格好の男に様々な疑問を抱いた。
「(こんな子供が中佐? しかもあんな目をしているな子供なんて見たことがない……)」
穂に関する噂や称号の数々を男は知っていた。やれ、アフガニスタンでテロリストを狩りまくり全身を返り血で染めただのイラクでフセインの残党を血祭りにあげただの色々ある。
「(ロンビンソン君、彼についての詮索は無しですよ。まだ
助手席に座る上司から忠告をもらう。運転手の男は青い顔をして何度も小さく頷いた。
一方穂はチラリと運転席の方を見るがすぐに視線を外に向ける。
「(ま、何時ものことだしいいか)」
穂を乗せたSUVは東京湾に浮かぶ島、通称学園島に向かう。
(´・ω・`)ようやく本編に入れそうね……主人公の人生ハード過ぎぃ!