太正?大正だろ?   作:シャト6

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第七話

あれから時が経ち、帝国華撃団花組に新しい隊長が着任したそうだ。初めての男の隊員だが、果たして上手くいくのやら。俺は今、店の片づけをしている。残ってる客は、米田のおっさんだけだ。既に店の看板はしてあるので客が入ってくることはない。

 

「で、どうなんだ?新しい隊長ってのは」

 

米田「ああ、来て早々文句を言ってきたぜ。随分と血の気の多い奴だよ」

 

「とか言いながら、随分とうれしそうな顔してるな?」

 

米田「まぁな」

 

そう言いながら酒を飲むおっさん。

 

米田「森川よぅ…花組の隊長の条件って分かるか?」

 

「隊長の条件だと?普通の奴より状況判断なんかが優れてるとかか?」

 

米田「いや違う」

 

「じゃあなんだよ」

 

一呼吸おいておっさんは話し出す。

 

米田「華撃団の花組隊長は、ただの軍人にはできない。いや、させてはいけないんだよ。人の命を…勝利の為に犠牲にするような戦いを繰り返しちゃいけねぇんだ」

 

「……」

 

米田「花組の隊長を務める奴は、花組を…あの劇場を…あの暮らしを愛してくれる奴でなきゃいけねぇ」

 

「なるほど。あの大神って男にはその可能性があるって訳か」

 

米田「そうだ。本当はお前さんもその条件に当てはまるんだがな」

 

いきなりとんでもない事を言うな…

 

「条件が当てはまったところで、俺は光武には乗れないから意味ないだろ」

 

米田「確かにお前は光武には乗れない。だが、それ以外は今の大神より上回っている」

 

「上回っているって、そりゃ入っていたばかりの奴と比べるのがおかしいだろ」

 

米田「確かにそうだが、俺はこのまま大神が成長してもその部分に関しちゃお前さんを越えれないと思ってる」

 

「買い被りすぎだおっさん。俺はそこまでできた人間じゃないさ」

 

そう言いながら俺は、おっさんに新しい酒を出す。俺も一通り片づけが終わったから一緒に飲むか。

 

「おっさん、俺も貰うぞ」

 

米田「ああ」

 

おっさんから酒を注がれる。

 

「けど、まだ新しい隊長にはあっちの華撃団は教えてないんだろ?」

 

米田「そうだ。脇侍が現れるまでは教えないつもりだ」

 

「そうかよ」

 

今の帝都じゃ平和な日は悪いが長く続かいないからな。

 

「ま、俺も明日は店休みだし、その隊長の顔を見に劇場に行ってみるか」

 

米田「そうだな。お前の事を大神にも紹介したしな。勿論、ここの店のマスターとしてだぜ」

 

「分かってるよ」

 

そして今夜はお開きになった。翌日、俺は昼頃に劇場にやって来た。今日は舞台も休みって聞いたから外には誰もいないな。

 

「こんにちは」

 

「森川さん、いらっしゃいませ」

 

「どうもかすみさん」

 

彼女は藤井かすみ、俺と同い年の女だ。最も、同い年の奴にも表では敬語で話さなきゃなんないのが面倒だがな。

 

「皆さんはどちらに?」

 

かすみ「花組の皆さんは舞台の方で稽古中です」

 

「もしかして、新しい方も?」

 

かすみ「はい。大神さんもおられますが?」

 

「この前、米田さんに新しく入った方がいたとお聞きしたのでご挨拶をと思いまして」

 

かすみ「そうですか。でしたら、舞台の方へどうぞ」

 

「では失礼します」

 

俺は挨拶して、舞台裏の方に向かった。舞台袖に到着すると、何やら騒ぎ声が聞こえた。

 

「ん?誰と誰が言い合ってんだ?」

 

覗くと、さくらとすみれが言い合っており、お互い平手で叩こうとしている。

 

「あの馬鹿どもが!!」

 

俺は急いで2人の間に割って入る。

 

「2人ともそこまでです」

 

舞台にいた男が止める前に俺は2人の手首を掴む。

 

すみれ「貴方は」

 

さくら「森川さん」

 

「2人とも落ち着いて下さい。あのままでしたら、お互い顔に怪我をしていましたよ?女優は顔も命なんでしょう?」

 

すみれ「それは…」

 

さくら「すみません」

 

2人は俺にそう言われ反省していた。反省したならいいだろう。俺は2人の頭を優しく撫でる。

 

「分かって頂ければいいです。喧嘩の内容は分かりませんが、お互い稽古に熱くなり互いの感情が上手く制御できなかったんでしょう」

 

「「……」」

 

「喧嘩をするなとは言いません。人間誰でも我慢できないことがあります。ですが、手を出してしまい万が一大怪我などさせてしまったら、一生後悔する事になりますよ。例えそれが、自分の意志でないにしてもです」

 

「彼の言う通りだよ」

 

すると、隣に突っ立ってた男が話し出す。

 

「俺は舞台の事はよく分からないし、稽古に口出しするつもりもない。けど…劇団だってチームワークが大事なんだろ?喧嘩は…やめようよ」

 

「そうですよ皆さん」

 

すみれ「…そうですわね」

 

アイリス「お兄ちゃん」

 

マリア「……」

 

さくら「すみませんでした。森川さん、大神さん」

 

ほう、こいつが新しい隊長の大神一郎か。確かに米田のおっさんの言う通り、芯はしっかりしてるな。

 

大神「分かってくれればいいんだよ。じゃ、俺はこれで」

 

そして大神は舞台から出て行った。

 

「……」

 

さくら「すみません森川さん、ご迷惑をおかけして」

 

「いえ、気にしないで下さい」

 

マリア「ところで、何故森川さんがこちらに?」

 

「ええ、米田さんに新しい方が入られたとお聞きして、折角なのでご挨拶をと思ったんですけど」

 

マリア「そうだったのですか」

 

俺がここに来た理由を言いて納得したみたいだな。すると、劇場に警報音が響き渡る。

 

「なんだ?」

 

マリア「森川さんはここにいて下さい!行くわよ皆!!」

 

そして俺を残して全員行ってしまった。なるほど、敵が出た時はこうなる訳か。

 

「しかし、どうすっかな。このまま街に出てもおそらく出れないだろうしな…」

 

んな事を考えてると、売店の売り子である高村椿がやって来た。

 

椿「森川さん、ここにいたんですか!」

 

いつもの売店の服ではなく、軍服ではないが制服を着てる。

 

「椿さん、その服は?」

 

椿「それは後で説明します!私と一緒に着いてきてください!!」

 

俺は椿に無理矢理引っ張られる。そのまま劇場の地下に案内された。

 

椿「司令、森川さんをお連れしました!」

 

米田「ご苦労。すぐに配置についてくれ」

 

俺を案内し終わると、さっさと前にある機械に座った。

 

「で、何で俺を連れてきたんだおっさん」

 

おっさんにしか聞こえない声で話す。

 

米田「どうせ今は外も避難勧告で出れないだろ。それに、いつかはお前にここを見せるつもりだったしな。それが早まって今回になっただけだ」

 

ホントおっさんいい性格してるな。

 

「で、状況は?」

 

米田「今回は大神の初実戦だ。幸い脇侍の数も少ないし、一先ずあいつに任せるつもりだ」

 

「確かに、ここで色々と指示出しても、最終的には現場の判断が一番だしな。今回は誰が出てるんだ?」

 

米田「白は大神、黒はマリア、紫はすみれ、ピンクがさくらだ」

 

それを聞いて、俺は頭を抱えた。

 

「つまり、以前暴走したピンクの操縦者はさくらだったって訳か」

 

米田「まぁ…な」

 

おっさんも流石に苦笑いするか。

 

「流石にアイリスは出撃させてないんだな」

 

米田「ああ。まだアイリスの機体の調整が済んでなくてな」

 

つまり、今は出撃しないが機体の調整が済み次第、アイリスも出撃するって訳か。

 

「損な役割だな…おっさん」

 

米田「ああ」

 

そう呟くおっさんを横目に、正面にある巨大なモニターで戦況を見守る。マリアとすみれは勝手に行動し、唯一大神の指示に従ってるさくらも、大神との連携はちぐはぐしてた。ま、今回は数が少ないから勝つには勝ったけどよ。

 

「何か微妙な勝利だな」

 

米田「まぁな。ま、今日は光武をまともに動かせるかに重点を置いてたからな」

 

結果オーライって訳ね。

 

米田「森川、この後皆で花見に行くがお前も行くか?」

 

「俺が邪魔していいのか?」

 

米田「構わねぇよ。あいつらも、お前が来ると喜ぶしな。特にさくらとマリアがな」

 

何で二人の名前を出したかは知らんが、折角呼ばれたし今年はまだ花見してないし丁度いいか。

 

「ならお呼ばれされるかな。一応此方でも何か差し入れいてやるよ」

 

米田「そいつはありがてぇ。なら、誰かを迎えに寄越すからそいつと来ればいい」

 

「了解。なら一度店に戻るわ」

 

そして俺は店に戻っていったのだ。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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