太正?大正だろ?   作:シャト6

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第五十二話

「あれは確か、今の光武が来て何度目かの出撃の時でしたね…」

 

あの時は、まだ大神や紅蘭も帝劇に来ていない時だったな。さくらの奴もまだ裏方の仕事しかしてなかった時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、米田のおっさん急に劇場に来いって言いやがって」

 

俺は店の開店準備をしていたら、おっさんから電話が来てすぐに劇場に来てくれって言われて切られた。で、俺は渋々だが劇場の支配人室に向かっている。到着しドアをノックする

 

『開いてるからへぇりな』

 

俺は中に入ると、おっさん以外に老人が座っていた。

 

(あれ?この爺さんって確か…)

 

米田「森川、紹介するぜ。この方はウチに出資してくれてる綾小路伯爵だ」

 

(あ~思い出した。確かここの事を調べたら名前があったな。こいつが出資者の1人の綾小路か)

 

綾小路「米田くん、彼はいったい」

 

米田「伯爵、こいつは森川大輔。私達花組をサポートしてくれる奴でさぁ」

 

綾小路「なるほど。彼が君の言っていた…」

 

米田「ええ。そして、裏の顔は帝都一の情報屋である【賽の花屋】です」

 

綾小路「なんと!?我々の業界でも数名しか知らない情報屋が彼だというのか!?」

 

流石に綾小路の爺さんも驚いてるな。

 

米田「はい。彼はそれで我々帝国華撃団の存在を知り、更にはこの帝劇に一番出資している伯爵と神崎家の事まで調べたそうです」

 

綾小路「なるほど」

 

すると爺さんは俺を見る。

 

綾小路「君の事は、あやめくんやマリアくんから聞いてる。これからも彼女達に力を貸していただけないだろうか?」

 

「もちろんですよ」

 

綾小路「そうか」

 

俺がそう言うと爺さんは満足したのか、椅子に座りなおした。

 

綾小路「ところでどうした。その恰好は」

 

米田「ん?始めますか」

 

するとおっさんは部屋を暗くして映写機を回し始めた。どうやら触れてほしくないみたいだな。映し出された映像を見ると、光武が出てきた。

 

綾小路「おお、これは」

 

米田「ええ。今日の光武の実践訓練なんですがね」

 

見るとマリア機が動く的を撃ち抜き、すみれ機が巨大な戦車みたいなものを薙刀で一刀両断している。

 

綾小路「これは中々…」

 

「そうですね」

 

米田「そう思っていただけるのもここまでです」

 

「「??」」

 

すると、映像の続きを見て俺達は唖然とした。

 

綾小路「こ、これは…」

 

爺さんはその映像を見てこめかみを抑えていた。まさかとは思うが…

 

米田「さくらですよ。あの子が操縦をしくじってこのザマですよ」

 

なるほど。おっさんも被害にあって包帯巻いてる訳ね。

 

米田「霊力も充分、剣の腕も一流…才能は、申し分ねぇんですが」

 

綾小路「米田くん。私が花組に芝居をやらせたのは…」

 

米田「帝都にあだなす者への目くらましと、歌舞音曲の持つ霊的意味合い」

 

綾小路「無論それもある。だがそれだけではないよ」

 

「「??」」

 

俺とおっさんは、爺さんの言葉に頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。俺と爺さんは支配人室を出て、爺さんはそのまま帰って行った。俺は劇場内をブラブラ歩いていると、マリアがいた。

 

「マリ…」

 

声をかけようとしたが、俺は止めた。見るとさくらが1人寂しく食事をしていた。

 

マリア「森川さん」

 

「どうも。さくらさん、大丈夫でしょうか?」

 

マリア「……」

 

流石にマリアも、簡単には答えれないか。

 

さくら「私って…ホントダメだわ…」

 

あちゃ〜。かなりまいってるな。只でさえ前の時もすみれの奴にボロクソ言われてるだけにな。

 

「これは、暫くはそっとしておいた方がいいかも知れませんね」

 

マリア「そうですね」

 

「大変そうですね。花組の隊長…」

 

話していると、俺はテーブル残されてる料理を見つけた。数口食べただけで、殆ど残っている。

 

「…あいつら」

 

マリア「森川さん?」

 

俺は、店をする時に決めた事がある。客相手でも、食べ物を残した奴には容赦しない。つまり…

 

「…お」

 

「「お?」」

 

「お残しは…許しまへんでえええええええええええ!!!!!!

 

俺の怒鳴り声が、劇場全体に響き渡った。

 

「「……」」

 

それを見たマリアとさくらは、言葉を失っていた。俺は二人を見て、ニッコリと笑いながら言う。

 

「マリアさん、さくらさん」

 

「「は、はい!」」

 

「すみませんが、すみれさんとアイリスを連れてきていただいていいでしょうか?」

 

「「わ、分かりました!!」」

 

すると二人は、急いで二階に行きすみれとアイリスを呼びに行った。そしてすぐに戻ってきた。何故かおっさんやあやめもいるがな。

 

すみれ「なんですの森川さん」

 

アイリス「どうしたの大輔お兄ちゃん」

 

「お二人とも、これを見てください」

 

俺は残ってる料理を二人に見せる。

 

「二人は、これを残しましたか?」

 

すみれ「ええ。美味しくいただけませんでしたので」

 

アイリス「アイリスも」

 

「……」

 

俺はそれを聞くと、二人の首根っこを掴んで椅子に座らせる。

 

すみれ「な、なんですの!」

 

「…食べて下さい」

 

「「えっ?」」

 

「ですから、食べて下さい」

 

俺は残ってる料理を二人に突き出す。

 

すみれ「ですから、美味しくいただけなかったと…」

 

「せっかく、お二人の為に作ってくれた料理を、美味しくいただけない。ただ自分の気分で言っていますよね?」

 

俺は淡々と二人に話す。

 

「私はね、店を経営する時に、ただ一つ決めた事があるんです」

 

すみれ「な、なんですの…」

 

「絶対にお客には、食い逃げとお残しは絶対に許さないと」

 

俺はそう言うと、しゃもじを取り出し仁王立ちする。

 

「「……」」

 

「ですので…お残しは…」

 

するとマリアとさくらは耳を塞いだ。

 

「許しまへんでえええええええ!!!!」

 

「「は、はい!」」

 

俺の声に、二人は涙目になりながら残ってた料理を食べた。食べ終わるまでは、俺はずっと二人を睨んでたがな。

 

「「ご、ごちそう…さまでした」」

 

完食した二人を見て、俺は笑顔になる。

 

「はい、お粗末様でした。せっかく作っていただいたんですから、残しては失礼ですよ。次からは気をつけて下さいね」

 

「「は、はい…」」

 

俺はそう言い残し、食器を流し場に持っていった。

 

米田「…おっかねぇな」

 

あやめ「はい」

 

マリア「流石に、二人の自業自得とはいえ…」

 

さくら「なんだか可哀想です」

 

後ろでそんな話が聞こえたが、俺は特に気にしない。残す奴が悪い。因みに、それ以降花組の間では、絶対に食べ物を残さないという決まりができたそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直仁「そ、そんな事があったんですね…」

 

直仁の顔がひくついてる。

 

すみれ「あの時は、本当に生きた心地がしませんでしたわ」

 

カンナ「あたいが親父の敵討ちに行ってる時に、そんな事があったのかよ」

 

紅蘭「けど、確かにウチらは出された料理は全部食べてたな」

 

大神「俺もその注意事項は聞いていたが、まさか森川さんが原因だったとは」

 

「いや〜、お恥ずかしい」

 

今でも残す奴と食い逃げには容赦しないけどな。

 

直仁「それで、その後はどうなったんですか?」

 

「そうですね。あの後は、さくらさんが新人として初めて舞台に立つことが決まったんです。マリアさんの推薦で」

 

さくら「そうでしたね」

 

「ですが、当然すみれさんは舞台を降りるように言ってましたね」

 

すみれ「当然ですわ。あの頃のさくらさんは、本当にドジでしたものね。今も然程変わりませんが」

 

さくら「……」

 

はいはい。喧嘩は止めてくれ。

 

「そしてその時ですね。黒之巣会が相生橋に出現したのは…」

 

俺は再び話しだした。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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