太正?大正だろ?   作:シャト6

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第三十五話

あれからなんとかさくら達の説教から解放された俺は、今地下に向かっている。ま、解放といってもまた脇侍が出現したからなんだけどな。で、深夜に出現したが無事に撃退し、戻ってきたさくら達を迎える為に地下に向かった。到着すると、緑色の光武の前でさくら達が集まっていた。

 

大神「…どうしたんだ?紅蘭がどうかしたのかい?」

 

さくら「分からないんです…光武の中から出てきてくれなくて…」

 

「一体何があったんでしょうか?」

 

大神「光武の中から出てこない?それで…皆は何をしてるんだい?」

 

大神の疑問も最もだな。カンナの手には肉まん、アイリスはウサギのぬいぐるみ、すみれは工具、マリアはそれを見て呆れている。

 

カンナ「ほらほら、紅蘭!肉まんだぞ!!うまいぞ~!出て来いよ!」

 

紅蘭「……」

 

すみれ「紅蘭が肉まんなんかで喜ぶ訳ないでしょう。カンナさんじゃあるまいし」

 

だよな。悪いが俺もすみれの意見に賛成だわ。カンナの奴だったら出てきそうだな。

 

カンナ「なんだと~っ!じゃ、てめぇならどうすんだよ!」

 

するとすみれは、持っていた工具をカンナに見せる。

 

すみれ「お~っほっほっほっほっ!紅蘭にはこれが一番ですわ。ほら、紅蘭。貴方が欲しがっていた、本場アメリカ製の工具ですわよ」

 

紅蘭「……」

 

しかしすみれの言葉でも反応しない。

 

アイリス「アイリスもぬいぐるみ持ってきたんだよ~!ほらほら、かわい~よ~っ!!」

 

さくら「で、こうやって皆で説得してるらしいんですけど…」

 

大神「説得?」

 

あ、これやっぱ説得だったのか。説明されなきゃ分からんな。

 

大神「もっと真面目にやれよ。皆がやってる事は、説得になってないじゃないか」

 

「そうですね。これは説得ではなく、ただ物で釣ってるだけですよ皆さん」

 

マリア「隊長と森川さんの言う通りよ。こんな事で紅蘭が出てくると思っているの?」

 

さくら「そうですよ…悪ふざけはよくないと思います」

 

すみれ「何をおっしゃるさくらさん。…悪ふざけとは心外ですわ。皆で楽しくやっていれば、お祭り好きの紅蘭のこと、誘われて出てくるはず。つまり…『天岩戸作戦(あまのいわとさくせん)』ですわ!」

 

天岩戸作戦って…

 

さくら「そ、そうだったんですか!?すみません、そこまで考えが至らず…」

 

おいおいさくら、そんな作戦真に受けるなよ。

 

マリア「さくら…何納得してるの。上手くいくわけないでしょ」

 

マリアに全面的に同意だ。

 

マリア「紅蘭もいい加減にしなさい。今回の戦いの失敗は、貴方だけの責任じゃないんだから。隊長の怪我もたいしたことなかったし、誰も貴方を責めたりしないわ」

 

いや、それもあるが大半の理由はあの時マリアに聞いた事だろな。

 

紅蘭『…もうええやろ。ほっといてんか…皆は機械の事…この子らの事、分かりたないんやろ…』

 

「やっぱりそうでしたか」

 

大神「紅蘭…俺も機械の事好きになるから。な、紅蘭。機嫌直してくれよ」

 

大神、今紅蘭にその言葉は不味いと思うぞ。

 

紅蘭『ウチが聞きたいんは、上辺だけの言葉なんかやない!』

 

ほら見ろ、言わんこっちゃない。

 

紅蘭『そんな考えやから!千秋楽でしか使わんセットを作ってくれなんて言うんや!!機械なんて、壊れても直せばええやなんて言えるんや!!』

 

すみれ「も、もしかして…わたくしが…」

 

紅蘭『すみれはんだけやない…皆、同じ事言うた!大キライや!!人間なんかより、機械の方がエエ!!』

 

なるほど。それで紅蘭の様子がおかしかったって訳か。確かに、紅蘭は花組の中では特に機械の事を気にかけている。機械を自分の子供の様に思ってる。俺自身もそこまでは思えないが、長年使ってる機械とかは愛着が湧くからな。紅蘭の気持ちも分からなくもない。

 

紅蘭『この子らは、ウチを必要としてくれる!必要としてくれてるんや…』

 

大神「紅蘭…」

 

「……」

 

紅蘭『うぅ…皆大キライや…』

 

「…大神さん、皆さん、今は紅蘭を1人にしてあげた方がいいかと思います」

 

マリア「そう…ですね」

 

大神「分かりました。皆、ひとまず上に行こう」

 

そして大神達は上に行った。ま、俺は格納庫に残ってるがな。

 

「さて…」

 

俺は紅蘭が入ってる光武を見る。

 

「紅蘭さん…いや、紅蘭」

 

紅蘭『…森川はん?』

 

「確かに大神達は、機械…光武とかをお前より大切には思ってない。俺自身も同じだ」

 

紅蘭『……』

 

「だがな、俺も少しはお前の言う事も分かってるつもりだ。紅蘭ほど機械に思い入れはないが、自分が長年使ってた機械ってのは、なんだかんだで愛着が沸くもんだ。この懐中時計とかな」

 

俺はこの時代に来て初めて買った懐中時計を取り出す。

 

「すみれとかが言った言葉は、確かに紅蘭にとっては辛い言葉だ。俺はお前のその性格は否定しない。だが、お前の思いをあいつらにぶつけるのも違うんじゃないか?」

 

紅蘭『!?』

 

「脇侍や光武だってそうだ。確かにお前がこいつら(光武)の心配をするのも分かる。だがな、そんな事を気にしながら戦えば、街の人達どころか、戦ってるお前らまで危険な目に合う」

 

紅蘭『それは…』

 

「分かってる。お前もそれくらいの事はな」

 

紅蘭『……』

 

「とにかく、まずは顔を見せろ。別に上には戻らなくてもいい。俺がお前の話を聞いてやるよ」

 

すると光武が開き、中から紅蘭が降りてきた。

 

「さて、取り合えず適当な場所に座って話すか」

 

近場にあった毛布を手に取り、紅蘭の手を引き一緒に包まる。

 

紅蘭「も、森川はん///!?」

 

「風邪ひくだろ」

 

俺は問答無用で紅蘭を包む。

 

紅蘭「…ありがとうな」

 

そして紅蘭は、泣き疲れたのかそのまま眠った。俺は寝る訳にはいかないしな。それから数時間後、格納庫にあやめがやって来た。

 

あやめ「森川さん…」

 

「ん…あやめか」

 

俺もいつの間にか寝てたみたいだな。

 

あやめ「紅蘭は?」

 

「まだ寝てるよ。こいつも色々と溜め込んでたみたいだな」

 

あやめ「そうね。心が一人ぼっちの時って、誰かに側にいてほしいものなの…ありがとう、森川さん。紅蘭の事思ってくれて…」

 

「気にすんな。俺自身も、紅蘭の気持ちが少し分かっただけだよ」

 

あやめ「そう…それでね森川さん。紅蘭の事で…見てもらいたい物があるの」

 

「見てもらいたい物?」

 

あやめ「ええ。30分後に支配人室来てほしいの」

 

「分かった」

 

あやめ「それじゃあ、後で」

 

そしてあやめは出て行った。そして少しいて紅蘭は目を覚まし、再び光武の中に戻って行った。

 

「仕方ないか。取り合えず支配人室に行くか」

 

俺は紅蘭を残し上に上がって行った。

 

 

 

 

 

紅蘭「光武…ウチ、もう疲れた…森川はん以外…ウチの事も、お前達の事も…分かってくれへんのやな」

 

紅蘭は、森川が出て行ったのを確認してそう呟くのだった。

 

 

 

 

 

「さて、時間までまだ少しあるな」

 

言われた時間までまだある。少し劇場をぶらつくか。適当に歩いてると、玄関から声が聞こえた。見ると箒を持ったさくらと由里、そして大神がいた。

 

由里「…分かろうとしたの?紅蘭の事、分かってあげようと思ったの」

 

さくら「…したと思う。だって…紅蘭はあたしの大切な友達だし…」

 

由里「今のさくらさんと同じ様に、紅蘭は…機械の事も大切な友達と思ってたのよ」

 

「そうですね」

 

俺は話に加わる為、さくら達の会話に混ざる。

 

さくら「森川さん」

 

「紅蘭さんは、光武を友達…いえ、自分の子供の様に思ってます。その気持ちを少しは分かってあげて下さい」

 

大神「……」

 

さくら「…ごめんなさい」

 

由里「あたしや森川さんに謝ってもしょうがないでしょ。紅蘭に謝らないと…」

 

「そうですね。キチンと気持ちを込めて謝れば、きっと紅蘭さんも許してくれますよ」

 

由里「それと大神さん…紅蘭の事責めたりしたら、許さないからね。あの子は…強いんじゃない。いつも我慢してるよの。皆の為にって…」

 

大神「…分かってる。紅蘭は…優しい子だからね」

 

そして由里は戻って行った。さくらも気にしながら中に戻って行った。

 

「大神さん、よかったら紅蘭に話しかけてあげて下さい。由里さんも言いましたが、紅蘭さんは我慢して溜め込むタイプなので」

 

大神「そうですね」

 

「では自分もあやめさんに呼ばれていますので」

 

そして俺は支配人室へと向かったのだった。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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