太正?大正だろ?   作:シャト6

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第三十話

先に店に戻った俺は、すみれ達が寝泊まりする部屋の掃除をしている。ま、ほとんど終わったがな。

 

「うし!こんなもんだろ。布団も3人分用意したし、後はあいつらにやってもらうか」

 

部屋の隅に布団を置いておく。すみれの奴、普段はベットらしいが今日くらいは我慢してもらうしかねぇがな。

 

「さて、店の開店準備をするか」

 

すみれ達が来るからといって、店を休むわけにはいかないからな。ま、普段から自由にしてる分、いるときくらいは店開けとかねぇと客減るしな。そして俺は1階に下り材料の仕込みを始めた。暫くして、外泊の荷物を持ったさくら達が来た。

 

さくら「こんばんは森川さん」

 

紅蘭「今日は世話になります」

 

「ええ、よろしくお願いします。皆さんが泊まる部屋は、以前さくらさんが泊まった部屋ですので、すみませんがさくらさん、お2人の案内を任せてしまってもいいですか?」

 

さくら「はい大丈夫です。任せて下さい」

 

「ではお願いします」

 

そしてさくらの案内で、2階に上がっていった。

 

「おっと、後でさくら達に営業中は下りてこないようの言っとかねぇとな。下りてこられたら、店ん中が一瞬で混乱するからな」

 

流石に劇場の女優が3人も店にいると知れれば、さくら達見たさに野次馬が集まってくるしな。

 

「おし!仕込み終わりッと。店開ける前にあいつらの様子を見に行くか」

 

俺は2階に行き、さくら達の部屋に向かった。

 

「皆さん、大丈夫ですか?」コンコン

 

ノックして中から返事が来るのを待つ。

 

さくら『あ、森川さん。入って来ても大丈夫ですよ』

 

「失礼します」

 

中に入ると、各々が自由に過ごしていた。

 

さくら「本当にすみません森川さん」

 

「気にしないで下さい。それよりすみれさん。すみませんが家にはベットなんて立派な物はありませんので、布団で我慢して下さいね」

 

すみれ「構いませんわ。元々わたくしと怪力女のせいで、森川さんにご迷惑をおかけしている事は重々承知していますわ。ですので、これくらい問題ありませんわ」

 

「よかったです。後皆さん、私は下で店を開けていますので、下に下りてきてはいけませんよ」

 

さくら「?どうしてですか?」

 

いやさくら、それくらい理解してくれよ。

 

すみれ「そんな事も分かりませんのさくらさん。わたくし達は女優なのですよ」

 

紅蘭「せやでさくらはん。ウチらが下に行ったら、森川はんの店にお客さんが溢れかえってまうで」

 

さくら「あ、そうか」

 

「ええ。皆さんは人気ですので、1人でもウチの店にいると分かれば、それを聞いた人達で店に人だかりができて商売になりませんので」

 

さくら「分かりました。できるだけ此方で待ってますので」

 

「それではお願いしますね」

 

そして俺は下に戻り、看板をひっくり返し店を始めた。チラホラと常連客達が来たが、特に目立った問題も起きず、無事閉店をむかえた。

 

「んっん~…今日も終わったか」

 

俺は腰に手を当て後ろに反る。

 

さくら「森川さん」

 

すると二階からさくら達が下りてきた。そういえばさくら達、まだメシ食わしてなかったな。

 

「すみません皆さん。まだお食事を用意してませんでしたね。すぐに用意しますので、カウンターに座って待っててください」

 

さくら「あっ、お手伝いします」

 

別に手伝わんでもいいが、さっさと終わらせたいからそのまま手伝ってもらうか。

 

「お願いします。ではさくらさんは、味噌汁を温めて下さい。私はその間におかずをもう1品作りますので」

 

さくら「分かりました」

 

そして俺達は料理を作る。すみれや紅蘭も手伝うと言ったが、悪いが狭いんだよ。厨房内…だから俺とさくらで十分なんだなこれが。そして味噌汁も温まり、おかずも出来上がる。

 

「お待たせしました。残り物になりますが、鯖の味噌煮とだし巻きです。後ウチで漬けた漬物と味噌汁です」

 

紅蘭「こら旨そうやな」

 

すみれ「そうですわね」

 

「折角ですし、奥のテーブル席で食べましょうか」

 

そう言うと、すみれと紅蘭は俺とさくらの分の膳も運んでくれた。

 

「それではいただきます」

 

「「「いただきます」」」

 

そして食事も終わり、各々に順番で風呂に入るように言う。一応俺の家にも風呂は作ってる。そして順番に風呂に入り、部屋に戻っていった。俺はまだ食器の片付けてや、今日の売り上げ計算とかもあるからまだ入ってない。すると、二階からすみれが下りてきた。

 

「ん?すみれか。どうした、寝れないのか?」

 

すみれ「はい。少し目が冴えてしまって」

 

「……」

 

だがすみれの顔は、寝れないだけが原因じゃないみたいなんだよな。

 

「…座りな。ホットミルクでも出してやるよ」

 

俺は鍋で牛乳を温める。すみれはカウンター席に座る。

 

「ほら。少しハチミツを入れてある」

 

すみれ「…いただきます」

 

すみれはゆっくりとホットミルクを飲む。

 

すみれ「…美味しい」

 

「だろ♪このハチミツや牛乳はちょっと特別でな。普段は中々手に入らねぇから客には出してないがな」

 

すみれ「その様な貴重な物を」

 

「気にすんな。逆にこういうときだからこそ飲んでほしいんだよ」

 

そして再びホットミルクを飲むすみれ。

 

すみれ「…森川さん」

 

「ん?」

 

すみれ「今日は本当にありがとうございました。私とカンナさんの為に、関係のない森川さんまで巻き込んでしまって」

 

「それこそ気にするな。元々は、俺からおっさんに今日はすみれを預かるって言ったんだよ」

 

すみれ「そうなのですか!?」

 

やっぱ驚くか。そらそうだよな。

 

「ああ。お前らの喧嘩は何時もの事だが、流石に今回ばかりは俺もまずいと思ってな」

 

すみれ「……」

 

「別に喧嘩するなとは言わねぇさ。逆に喧嘩とかしなかったら、余計ストレス溜めるだけだしな。お前やカンナ、お互い譲れないモンがあるからこその衝突だ。んで、お互い1日顔会わせなきゃ、頭も冷えてもう少しまともに話せるだろうと思っただけだ」

 

すみれ「…そうですか」

 

「ま、明日戻るんだ。互いに冷えきった頭で話せよ」

 

すみれ「フフッ…そうですわね」

 

そしてすみれは、カップに入ってたホットミルクを飲みきり立ち上がる。

 

すみれ「私そろそろ寝ますわ」

 

「ああ、そうしろ。今日はゆっくりと寝ろ」

 

すみれ「はい」

 

そう言いすみれは二階に上がろうとする。だが途中で止まり俺の方にやって来た。

 

「?どうした」

 

すみれ「これはお礼ですわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

すみれ「フフッ…ではお休みなさいませ」

 

そしてすみれは部屋に戻っていった。

 

「…ったく、いきなりだから流石に驚くだろうが」

 

まさか唇にするとは俺も思わなかったからよ。動揺が隠せねぇよ。

 

「……」

 

続きの計算をしようとするが、やはり俺も男だ。さっきの事が気になって集中できねぇ。

 

「ハッ!ガキかよ俺は。風呂に入って頭冷やすか」

 

売り上げ計算を明日にするか。取り合えず風呂に入って、変に上がった体温を落ち着けるか。

 

「……」

 

だが俺は、この時アイツがあの現場を見ていた事に気づく事が出来なかった。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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