太正?大正だろ?   作:シャト6

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第二十九話

泥棒事件から3日が過ぎた。その間は世間は捕まったネズミ小僧の逮捕の話で持ちきりだった。俺の店にも、来る客来る客同じ話をする。んで、劇場の方は今日からすみれとカンナが主役の孫悟空が開演している。んで、最早お決まりのように、俺は舞台袖から劇を見ている。

 

カンナ「やいやいやいやい!古今東西の…あ、妖怪変化どもぉ!この三蔵法師の一番弟子!孫悟空様に刃向かうたぁ、いい度胸だぁ。まとめて極楽浄土に送ってやるから、あ、感謝しろい!!」

 

すみれ「ハッ!身の程知らずの石猿め!この美と愛の化身、妖鬼夫人が直々に、ハッ、地獄に送って差し上げてよ!!オホホのホー!!」

 

『アハハハハハ!』

 

すみれの台詞に、観客達は笑っていた。

 

紅蘭「すみれはん…毎度ながらハマっとるわ」

 

大神「カンナの孫悟空といい、すみれくんの妖鬼夫人といい……イメージにぴったりだな」

 

「大神さん。例え思っていても本人達には絶対言ってはいけませんよ」

 

アイリス「でも、すみれ後で絶対『何で私が悪役ですの!?』って言うんだろ~ね」

 

さくら「ふふ、きっとそうね」

 

絶対に言うだろな。またおっさんとあやめの胃がやられそうだな。今回の孫悟空の配役は、孫悟空がカンナ、妖鬼夫人がすみれ、三蔵法師がマリア、猪八戒がさくら、沙悟浄がアイリスとなっている。今回紅蘭は、大神と同じで裏方の仕事だ。

 

カンナ「覚悟しやがれ!この、この、くぅぅ…ヘ、ヘビオンナ!」

 

すみれ「なんの!この大バカ猿!!」

 

(おいおい、すみれの奴、今の絶対台詞だけの感情じゃねぇよな)

 

普段からあいつらは、犬猿の仲だからな。けど、それでも仲が悪いって訳じゃないからいいけどよその辺は、おっさんやあやめ、大神達がやることだからな。

 

カンナ「あっ!?」

 

するとカンナが変な声を出す。俺達は舞台を見ると、すみれの衣装をカンナが踏んですみれが倒れていた。

 

すみれ「ひぇ~~~~っ!?……ドタッ……」

 

『ワハハハハハ!!』

 

当然それを見た観客は大爆笑。

 

紅蘭「あ…やってもうたわ!」

 

アイリス「ヤバ…」

 

すみれ「何なさるんですのっ!?ちゃんとお芝居してくださらないこと!?」

 

カンナ「なんだと!?そっちこそちゃんとやれよ!!このくされババァ!!」

 

売り言葉に買い言葉。カンナの言葉で本格的にゴングが鳴ったのである。

 

すみれ「!!何ですって!このバカザル!マヌケ!勝負ですわ!」

 

カンナ「おーおー!上等だ!かかってこい!!」

 

そして2人は、お芝居の事を忘れて本格的な喧嘩に発展したのだった。

 

「仕方ない」

 

俺はこれ以上客にこの光景を見せるわけにはいかないと思って、勝手に舞台の幕を下ろしたのだ。

 

マリア「森川さん!?」

 

「すみません。あれ以上お2人の喧嘩をお客様達にお見せする訳にもいかないと思いまして。勝手ながら幕を下ろさせてもらいました」

 

マリア「いえ、ありがとうございます」

 

どうやら、マリアの奴も俺と同じ考えみたいだったようだな。さて…面倒だか止めるか。万が一何かが起きて大きな怪我とかされちゃ面倒だからな。

 

「お2人とも!そこまでです!」

 

俺は2人の間に割って入る。

 

すみれ「止めないで下さいませ!森川さん!!」

 

カンナ「そうだぜ!今日と言う今日は勘弁ならねぇ!!」

 

「とにかく!続きをするにしろ話をするにしろ、 まだお客様もいます。ですので、ひとまず楽屋の方に行きましょう」

 

そして俺はすみれ、大神はカンナの相手をしながら楽屋に向かった。

 

大神「…やれやれ。舞台はめちゃくちゃになってしまったね」

 

すみれ「……」

 

カンナ「……」

 

米田「よぉお前ら。随分派手にやってくれたな」

 

「お待たせしました」

 

俺はおっさんと一緒に楽屋にやって来た。

 

さくら「支配人」

 

米田「すみれもカンナも、随分とボロボロになりやがってよ」

 

さくら「森川さん…あの2人ステージが終わってからもずっとあの調子で…まさに、一触即発って感じで」

 

「そうですね~」

 

さくら「大神さん!どうにかしてください!」

 

大神「う~ん…」

 

さくらに言われ、大神は2人の前に行く。

 

(ったく、すみれの奴服とかボロボロじゃねぇか。後で手当してやるか)

 

すみれ「なんですの少尉?わたくし、非常にイラついてますの!」

 

カンナ「うるせえぞ隊長!今、頭にきてんだ!話しかけないでくれ!」

 

あちゃ~、2人とも大神にまで当たってやがるよ。

 

カンナ「このザマス女のせいで、赤っ恥かいちまったぜ!」

 

すみれ「それはわたくしのセリフですわ!この筋肉女!」

 

カンナ「なんだと!?このイヤミ女!」

 

すみれ「怒ってる理由は、どこぞのサル女ですけど!」

 

カンナ「なんだとぉ!このマネキン女ぁ!!」

 

すみれ「なんですってぇ~!」

 

ダメだこりゃ。話せば話すほど状況が悪化してってるわ。

 

すみれ「だいたい、貴女の野生丸出しの演技がいけないんですわ!…お陰で、わたくしの完璧な演技がメチャクチャですわ!」

 

カンナ「へッ、笑わせるんじゃねーよ!おめぇ、服を踏まれてコケるの、これで何回目だ?よっぽど顔面で着地するのがお気に入りようだな!」

 

すみれ「キーッ!なんですってえ!!」

 

カンナ「おもしれえ!さっきの続きをやるか!?」

 

ダメだ。これ以上話しても同じことの繰り返しだ。今日1日は、お互い顔を見ない方がよさそうだな。

 

「おいおっさん」

 

米田「なんだよ」

 

「面倒だが、今日1日すみれの奴ウチで預かってやる。お互い今日1日はこれ以上顔会わせない方がいいと思うぜ」

 

米田「そうだな。頼めるか」

 

「俺から言ったんだ。1日くらいいいさ。けど、後で誰かすみれの話し相手に送ってくれ。流石に俺1人だと面倒だ」

 

米田「分かった。いい加減にしろ!」

 

そしておっさんが声を張り上げて怒鳴る。

 

米田「お前達、今日1日は離れていろ!森川、悪いが今日1日すみれの奴をお前の所に置いてやってくれねぇか」

 

「すみれさんがよければいいですけど?」

 

米田「って訳だ!すみれ、とにかく部屋に行って1日分の泊まる用意をしてこい!」

 

そしてすみれは楽屋を出ていった。

 

米田「後…さくら、そして紅蘭。悪いがお前達も用意してくれ」

 

さくら「えっ?」

 

紅蘭「ウチらもですか?」

 

米田「ああ。流石に森川1人にすみれを任せるわけにはいかねぇしな。カンナの方は、マリアとかがいた方がいいだろ」

 

さくら「分かりました」

 

紅蘭「ほなウチらも用意してこよか」

 

そしてさくらと紅蘭も、外泊の用意をしに行った。

 

「じゃあ米田さん。私は先に戻ってますね」

 

米田「すまねぇな。今日1日はよろしく頼むぜ」

 

「分かりました」

 

そして俺も店に戻るのだった。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

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