特別公演が終わり2週間後、今度はシンデレラの舞台公演が決まり、早速花組は舞台稽古を開始した。俺は初日が始まるまで、さくらのフォローを終えるまで俺は店を休むことにした。任された以上は、キチンとこなすつもりだ。で、早速舞台で台本読みをしてるのを見てたんだが…
すみれ「何ですかそれは!それが台詞?ただ棒読みしてるだけでしょう」
さくら「す、すみません。まさか、私がシンデレラを演じるとは思っていなくて…」
すみれ「そういう問題ではありません。先生!本当にこれで宜しいの?」
「…もう一度頭から」
さくら達と一緒に座ってる、稽古の先生に文句を言うすみれ。だが、その先生は上手くかわしてるっていうか、すみれの扱いに慣れてんだな。そして今日の練習は終わる。
「……」
米田「どうだ?さくらの奴は?」
「…素人の俺が言うのもなんだが、これはヤバそうだな」
俺は既にテンパりかけてるさくらを見てそう言う。
「今はまだ大丈夫だが…時間の問題だな」
米田「そうか」
俺とおっさんは、舞台から出ていく。
米田「森川、お前本当に店休んでよかったのか?」
「ああ。流石に今回ばかりは両立が厳しい。俺がいない間に、さくらのプレッシャーが爆発しないとは限らないからな。なら、初日が始まるまで店を休んで此方にいた方が対処しやすい」
米田「…そうか。なら、お前さんは初日まで支配人室で寝泊まりしてくれ。俺はいつも自分の家に帰ってるからな」
「分かった」
ま、稽古が終わった後帰るつもりだったが、逆にありがたい。これならすぐにフォローがしやすい。
「こりゃ、どうにかして、適度にガス抜きさせないとな…」
さて、どうしたもんか。それからも暫く、さくらの様子を見ることにする。ま、終わり次第話したり飯作ってやったりはしてやったけど、これでガス抜き出来てるかどうか…そして、舞台初日を翌日に控えたのである。
椿「通し稽古どうでした?」
売店で明日の準備をしてる椿と、それを手伝ってる俺。通し稽古を見てきた由里に話を聞く。
由里「……」
すると由里は、首を左右に振る。
椿「ええっ!?初日明日ですよ」
「これは、流石にまずいですね」
由里「そうですね」
俺達3人は、明日の心配をする。
「椿さん、すみませんが少し皆さんの様子を見てきます」
椿「分かりました。手伝っていただきありがとうございます、森川さん」
「いえ、それでは」
断りをいれ、中に入るとすみれがさくらに怒鳴っていた。
すみれ「何なのこれ!これではまるで学芸会じゃない!!さくらさん、貴方は主役なのよ!その意気込みってそんなものですの。貴方の役に対する気持ちって、この程度のものなの」
さくら「……」
あっちゃ~。すみれの言いたい事も分かるが、今のさくらにはトドメの一撃になるぞ。
カンナ「すみれ、もういいって。本番はさ、皆で助けてやりゃいいじゃねぇか」
紅蘭「せやな、言えてるで。さくらはんもやれるって」
他の連中がフォローする。ん~…こりゃまずいな。
「稽古はこれで終了します。今日はグッスリ寝てちょうだい」
そして、さくら以外は舞台から出ていき、照明が落とされた。その日の夜、明日が初日ということもあり、俺が全員に料理を振る舞う。
「皆さん、明日の公演頑張って下さい。何もできませんが、せめて私の料理でもてなさせてください」
カンナ「うほ~!うんまそ~!」
『いただきます』
そして全員が食事を始める。既におっさんや3人組は帰ったが、花組の連中と大神、そしてあやめが俺の作った料理を美味そうに食ってる。だが、一番食ってほしい奴が食ってねぇ。さくらだ。
「さくらさん、お口にあいませんでしたか?」
さくら「い、いえ!そうじゃないんです。少し疲れただけで…」
「…そうですか」
俺はそれ以上何も言わない。
カンナ「おふぁわり!」
紅蘭「森川はん、ウチもや!」
「たくさんありますから、ドンドン食べて下さいね」
だが、結局さくらはあまり飯を食わなかった。で、明日に備えて今日は全員早目に寝た。
「ん~まずいな。爆発寸前だ」
俺は、さっきのさくらを見てそう呟く。
「明日の朝イチで、さくらのガスを抜かねぇとな」
そう考えてると、廊下から足音が聞こえた。
「誰だ?こんな時間に」
俺は起き上がり部屋を出る。そして廊下を見るとさくらがいた。
「あれは…さくら?」
さくらが俺に気づかず、そのまま歩いていった。
「あっちは食堂があるが…まさか!?」
俺はある事を思いだし、すぐに食堂に向かう。その途中で、マリアとすみれと鉢合った。
マリア「森川さん」
「マリアさん、それにすみれさんも」
すみれ「こんな時間にどうなさったのです?」
「それは此方の台詞…と言いたいですが、お2人と同じです」
その言葉で、2人はすぐに理解した。
マリア「森川さんも見たんですね」
「ええ。ですが、今は急ぎましょう。嫌な予感がします」
そして俺達は食堂に向かった。到着すると、さくらは冷蔵庫から食べ物を食べていた。
マリア「さくら?」
「さくらさん!さくらさん!!」
俺はすぐにさくらに駆け寄り声をかける。
さくら「…あ、森川さん。それにマリアさんも」
そう言うと、すぐに自分の足下に散らばってる食料を見て絶句する。
さくら「私…私、怖くて、不安で」
「大丈夫だ。落ち着け」
さくらは泣きながら、俺の胸に顔を押し付ける。俺も素の口調でさくらをあやす。
マリア「さくらだけじゃない。初めての初日の主演は、誰でもそうだった」
さくら「私…怖くてできない」
泣きながらそう言うさくら。まさか、こんな風に爆発するとは…完全に油断した俺が悪い。
マリア「アイリスだって紅蘭だって、すみれだって同じ様に苦しんで、それを乗り越えて来たのよ」
マリアが優しくさくらに話しかける。
「マリアの言う通りださくら。誰にだってプレッシャーはあるんだ」
さくら「私には…無理です!」
未だに俺の胸の中で泣くさくら。そして暫く泣いた後、泣きつかれて現在は俺にもたれ掛かって眠っている。
「しかし、まさか睡眠関連摂食障害が出るなんて…」
もたれ掛かったまま寝ているさくらを見ながら、俺はそう呟く。
マリア「森川さん、何ですか?その睡眠関連摂食障害とは?」
「おっと、そう言えばまだこの時代にはそんな病名なかったか」
しまった。うっかり俺がいた時の病名を言っちまった。
すみれ「どうかなさいましたの?」
「なんでもない。とにかく、まずはさくらを自分の部屋で寝させてやろう。その後話してやる」
マリア「そうですね」
俺は寝てるさくらを抱き抱え、さくらの部屋に向かった。ゆっくりベットに寝かせ、俺達は支配人室で話をする。ついでに紅茶を出す。
「睡眠関連摂食障害…寝ている間に体が勝手に起きて、食事をする現象の事だ。今回の場合、初主役に対するプレッシャーで、ストレスが蓄積されたのが原因だろう」
マリア「やはり…」
「起きたから言っておくが、今回俺が店を休んでまでここにいたのは、米田のおっさんに頼まれてなんだよ」
よ」
すみれ「支配人に?」
「ああそうだ。前にあった特別公演の時、おっさんに次回シンデレラの主役はさくらでいくって聞いててな。で、さくらを精神的にフォローしてくれって頼まれたんだよ」
すみれ「そうでしたの。…クシュン」
くしゃみをするすみれ。そら、この時間にその格好は寒いわ。しゃあない、俺の上着をかけてやるか。
すみれ「あ、あの…」
「明日は大事な初日なんだ。大切な女優に風邪ひかせちゃ悪いからな。嫌と思うが我慢してくれ」
すみれ「い、いえ…ありがとうございます///」
素直にお礼を言われると嬉しいな。で、マリア…何で俺を睨む。
「んっん~!ま、フォローしてたつもりが、キチンとガス抜きできてなかったからああなっちまったんだがな。流石に睡眠関連摂食障害が出たときは驚いたが」
マリア「……」
「明日改めて、さくらと話しておくさ。プレッシャーは、人それぞれ違う。そこは理解してやってくれ」
すみれ「…分かりましたわ」
流石のすみれも、今回に限っては理解してくれたか。
すみれ「それと、別のお話なのですが…森川さん、それが普段の話し方ですの?」
「そうだ。この事は米田のおっさん、あやめ、さくら、マリアが知ってる」
マリア「森川さん、おそらくアイリスもかと」
「マジかよ。んじゃ、後知らないのは大神と紅蘭、カンナ、3人娘の連中だけか。また随分とバレたもんだな」
俺は笑いながらそう言う。だってよ、最初はおっさんだけだったんだぜ?
すみれ「そうですか。でしたら、私の前でもその様に話して下さらない?もちろん、他の方達の前では普段通りで構いませんわ」
「そうか。なら、そうさせてもらうぞすみれ」
すみれ「は、はい///」
…何で頬を赤く染める。これ、さくらにマリア、最近ならアイリスで見たぞ。
マリア「……」
…マリアさん。睨むより、普通に無言で素の目で見られる方が、数倍怖いですから!そして話は終わり、それぞれが眠りについた。翌朝、初日というだけあり、客席は満員でチケットは完売。当日券も即売り切れた。後は劇が始まるのを待つだけ…だったんだが。
紅蘭「なんやて!?さくらはんが楽屋に立て籠った!!ベル鳴ったでどないすんねん!?」
さくらは、やはり昨夜の不安を払拭できず、あろう事か楽屋に立て籠ってしまった。どうするか…
すみれ「……」
するとすみれは、楽屋の方に歩いていった。嫌な予感がするのは、気のせいじゃねぇだろうな。やれやれ…
(念のため俺も様子を見に行くか)
俺はすみれの後を追い掛けた。楽屋の前に到着すると、あやめの姿しかなかった。すみれの奴、どこ行ったんだ?
あやめ「さくら、とにかくここを開けてちょうだい」
さくら『私…やっぱりできません』
中から弱々しい声が聞こえた。こりゃマジでヤバそうだな。
すみれ「どいて下さいまし」
すると、すみれがやって来た。手にさくらの刀と自分の薙刀を持って。まさか…
すみれ「きええええええ!!!!」
俺の考えは当たり、見事薙刀でドアを真っ二つにしたのだった。
さくら「す、すみれさん!?」
流石のさくらも、ドアを真っ二つにするとは思っていなかったみたいだな。ってか、俺も思わねぇよ。そのままさくらの腕を掴み、舞台に引っ張っていったすみれ。そのままさくらを前に投げ、持ってた刀も放り投げた。
すみれ「抜きなさい」
さくら「えっ?」
すみれ「抜きなさい!その曲がった根性、叩き直してあげますわ!!」
そう言いながら、薙刀で攻撃する。さくらも素早く落ちてた荒鷹を拾い上げ防いだ。何だかんだで、体に染み付いてんだな。
さくら「や、止めて下さいすみれさん!」
すみれ「聞く耳持ちませんわ!!」
すみれの攻撃を防ぐさくら。そして、荒鷹を抜き反撃した。腕前はさくらが若干だが上であり、そのまますみれの薙刀を弾き飛ばした。
さくら「……」
すみれ「…それでいいのです。その力強さで、お芝居に挑みなさい」
さくら「!?すみれ…さん」
やれやれ。すみれの奴も素直じゃないな。こんな回りくどいやり方しやがってよ。
あやめ「終わったわね。それじゃあ、幕を上げるわよ!お客様が待ってるわ」
『はい!』
そして確実持ち場についた。こうして、さくらの初主役であるシンデレラは、周りのフォローもあり無事公演を乗りきったのだった。…けど、すみれマジでビビったぞあれはよぅ。
織姫とレニに対して
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大輔に織姫&レニ両方
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大輔に織姫。大神にレニ
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大輔にレニ。大神に織姫
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大神に織姫&レニ両方