太正?大正だろ?   作:シャト6

17 / 115
第十六話

「今日は暇だな…」

 

店を開けて昼過ぎ、今日は客がまばらで今は暇している。すると、どこからかサイレンが聞こえてきた。

 

「なんだ!?」

 

俺は慌てて外に出る。周りを確認するが、脇侍が出たわけではなさそうだ。

 

「すみません」

 

俺は近くにいた人に聞く。

 

「何かあったんですか?」

 

「ああ、実は浅草にある活動写真館が潰れてな。幸い怪我人なんかはいないみたいなんだが」

 

「そうですか。呼び止めてすみません」

 

俺は聞いた相手にお礼を言い、店に戻る。

 

「しっかし、活動写真館が潰れたとはな。原因は分かってないみたいだが…」

 

俺は起きた事件が気になったが、はっきりとした情報がない。

 

「少し調べてみるか」

 

俺は久々に、本格的に今日起きた事を調べる事にした。そうと決まればすぐ行動だ。神から貰った特典を最大限に生かす。地下に行き、機械を起動させ道具を使い調べ始めた。それから暫くして、様々な情報が俺の所に舞い込んでくる。これを正確に繋ぎ合わせる。

 

「なるほど」

 

すると、ある事が分かった。

 

「活動写真館が崩れる直前に、1人の男と女の子が騒いでいた。その2人の特徴は、女の子は外国人で金髪。男は黒髪でツンツン頭…ん?ツンツン頭だと?」

 

俺は気のせいかと思うが、ある男の事を思い浮かべる。

 

「ま、まぁ気のせいだろ。で、その男は帝劇のモギリと同じ服を着ていた…おい、完全にあいつだろ!!って事は、一緒にいた金髪の子供ってアイリスか!?」

 

まさかあの2人がいたとはな。ってか大神、モギリ服でうろつくなよ…

 

「…次だ次。今回放映してたのは…【珍獣大登場】か」

 

この作品は、とある研究者が深い山奥に住んでおり、ある化け物の研究をしていたって話か。

 

「…アイリス、昔閉じ込められ化け物と呼ばれてた時の事を思い出したんだなこれは」

 

アイリスは、昔親に城の地下に閉じ込められていた。だが、それは親がアイリスを世間から護る為の行為だ。しかし、子供のアイリスにはそれが伝わらない。

 

「これは、また面倒な事になってるな」

 

活動写真館の事件の犯人は分かったが、それとは別の問題が持ち上がった。

 

「大神は恐らくこの事を知らないんだろうな」

 

そう思いながら日付を見る。

 

「ああそうか。今日はアイリスの誕生日だったか。だから2人で出かけてたんだな」

 

となると、今頃大神の奴おっさんに大目玉喰らってるだろな。

 

「少し行ってみるか」

 

俺は店を閉め、劇場に向かった。中に入り支配人室に向かう。

 

「失礼します。米田さん、入りますよ」

 

ノックをして中に入る。するとおっさんの他にマリアもいた。

 

米田「森川!?こんな時間にどうしたんだ?」

 

「…今は2人だけみたいだな。いや、今日起きた事について聞きに来たんだよ」

 

マリア「今日ってもしかして」

 

「ああ、浅草の活動写真館の事だよ」

 

米田「もう知ってやがったのか」

 

おっさんは頭を掻く。

 

「ああ。今回脇侍の事は聞かなかったからな。調べてみたら、原因はアイリスだったって知ってな」

 

米田「そうか」

 

「勘違いするなよ。俺はアイリスを咎めに来たんじゃねぇ。活動内容を見て心配になって見に来たんだよ」

 

マリア「活動写真の内容ですか?」

 

マリアは俺に質問する。

 

「ああ。今回大神とアイリスが見に行った活動写真だが、そのタイトルが【珍獣大登場】だ。内容を調べたら、アイリスが暴走した理由も納得でな」

 

米田「どんな内容なんだ?」

 

俺はおっさんとマリアに活動写真の内容を説明する。すると2人は悲しい顔をする。

 

マリア「そうだったんですか」

 

米田「アイリスの奴、まだどこかであの事を思い出したんだな」

 

「ああ。特に小さい時に受けた事だ。簡単には払拭出来ないだろうな」

 

「「……」」

 

おっさんとマリアは、俺の言葉に何も言わない。いや違うな、言わないんじゃなくて言えないんだよ。大人は、未来ある子供を守る。その肝心な大人が、子供のアイリスにビビってるんだからな。

 

「そういえば、大神の奴がアイリスを追い掛けたらしいけど」

 

米田「ああ。アイリスが部屋から出て直ぐに追い掛けてった」

 

「そうか。けど、おそらく行っても無駄だろうな。アイリスからしたら、ここにる劇場のスタッフ達は全員大人だ。だから、今日1日は誰とも会いたくないだろうさ。俺を含めてな」

 

マリア「そうですか」

 

そして再び部屋の空気が重くなる。

 

「ま、これ以上いても意味ないし、今日のところは帰るわ」

 

米田「そうか。すまんな、態々アイリスの事を見に来てくれてよ」

 

「気にすんな。じゃあな」

 

そして俺は部屋から出ていった。玄関に向かってる途中でさくらと会った。

 

「ようさくら」

 

さくら「森川さん。もうお帰りですか?」

 

「まあな。で、そっちはどうだ?」

 

そっちとは勿論アイリスの事だ。

 

さくら「はい…それが紅蘭が説得に出たんですが、心を詠まれたみたいで」

 

あ~、そういえばアイリスは花組で一番霊力が高かったな。その上、人が考えてる事が読み取れるんだったな。

 

「なるほど。で、紅蘭がああなってるって訳か」

 

カンナと大神に肩を借り、ボロボロになってる紅蘭を見た。

 

さくら「そうなんです。私、アイリスが心配で」

 

「それは皆思ってる事だ。けど、少なくとも今日1日は大人しく放って置いてやれ。向こうも、子供だが1人になりたいだろうしな」

 

さくら「…分かりました」

 

さくらは俺に言われ、納得してそうでしていないという表情をする。

 

「悪いな。俺はアイリスの事情を知ってるからそう言うしか出来ないんだよ」

 

さくら「アイリスの事情…ですか?」

 

「そうだ。だが、それを言う事は出来ない。本人の口から言わない限りはな」

 

さくら「……」

 

その言葉にさくらは下を向く。

 

「とにかく、今日はもう遅いからお前も休め。肌にも悪いぞ?」

 

俺は頭を撫でて劇場から出て行った。さて、今の現状アイリスから話を聞くのは難しい。だからといって、先延ばしにしても意味がない。どうするか…

 

「…もう一度資料を見直すか」

 

そう決めた俺は、家に戻りアイリスの資料を見返す事にしたのだった。いい解決策が見つかればいいけどな。

織姫とレニに対して

  • 大輔に織姫&レニ両方
  • 大輔に織姫。大神にレニ
  • 大輔にレニ。大神に織姫
  • 大神に織姫&レニ両方

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。