THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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Miracle Meister

 

 ギャラクトロン軍団の沖縄襲撃はリクとアイルもすぐに察知し、森林を抜けてきたが、その二人の近くにまで既に三機ものギャラクトロンが迫っていた!

 

「うっ!」

 

 ギャラクトロンの一機から放たれた光線からどうにか逃れると、アイルがペンダントを掲げる。

 

「グクルシーサー!」

「ウオオオォォォン!」

 

 ペンダントから大地を守護する聖獣グクルシーサーが召喚され、ギャラクトロン一機に飛び掛かって動きを封じ込む。

 グクルシーサーが時間を稼いでいる間に、ジャグラーがアイルの傍らに現れて呼び掛けた。

 

「おい、そのペンダント貸せ。そいつには生命のエネルギーを増幅する力があるんだろ?」

 

 突然の要求にためらうアイルだが、グクルシーサーだけでは多数のギャラクトロンを抑えていられるはずがない。

 

「早くッ!」

 

 ジャグラーが声を荒げて、アイルはペンダントを彼に渡した。ジャグラーはリクにも目を向ける。

 

「テメェは戦わねぇのか」

「……僕は……」

 

 まだ先ほどのショックが抜け切れていないリクは後ずさりし、座り込んだ。どの道、二十時間経過しなければ再度フュージョンライズすることは出来ない。

 

「臆病モンが。引っ込んでろ」

 

 リクに見切りをつけたジャグラーは、ペンダントの力で自らの生命力を増大させ、巨大な魔人態となってギャラクトロンと互角に戦えるだけの状態となった。

 

『はぁッ!』

 

 蛇心剣を抜いてギャラクトロンの一体に猛然と肉薄していき、振るわれたギャラクトロンブレードを弾いて袈裟斬りを叩き込んだ。

 グクルシーサーやジャグラーが戦っている間に、ペガを宇宙船に残した千早たちはリクの元を目指して全速力で走っていた。

 

[皆さんは、リクとギガファイナライザーの保護をお願いします]

『うむ。急ぐぞッ!』

 

 ゼナが皆を急かすが、いくら急いだとしても人間の足で、巨大なロボットより速く走れるはずがない。彼らは瞬く間に、ギャラクトロンの大群によって包囲される形となってしまった。

 

「す、すごい数だよぉ……!」

「この前あれだけやっつけたってのに、もうこれだけの数をそろえてるなんて……!」

 

 流石に顔が強張る雪歩と真。雪乃たちの方もおびえていると、千早が振り返って告げた。

 

「ここは私たちに任せて!」

 

 765プロアイドルたちは六組のペアを組んで、それぞれオーブライトリングを取り出した。

 

「オリジナルのオーブのプロデューサーがいないと、私たちも全力を出すことが出来ないけど……」

「不足する光は、私たちで補いましょう!」

 

 つぶやく律子とあずさ。頭数は減るが、二人組となることでエネルギーを補強してギャラクトロン軍団に立ち向かう作戦だ。

 

「我那覇さん、行くわよっ!」

「なんくるないさー!」

 

 千早と響、雪歩と真美、やよいと真、伊織とあずさ、亜美と貴音、美希と律子のペアが、ライトリングにフュージョンカードを通してフュージョンアップを敢行!

 

[スカイダッシュマックス!!]

[フォトンビクトリウム!!]

[ゼペリオンソルジェント!!]

[ナイトリキデイター!!]

[パワーストロング!!]

[ブレスターナイト!!]

 

 アイドルたちが六人のウルトラマンオーブとなって、一気呵成にギャラクトロンたちへと突撃していく。

 

『「はぁっ!」』

 

 スカイダッシュマックスが超高速で敵の間を走り抜けて旋風を巻き起こし、ギャラクトロンたちの姿勢を崩す。その隙にフォトンビクトリウムとパワーストロングが重い拳を打ち込んでいき、ナイトリキデイターとブレスターナイトの剣が切り裂き、ゼペリオンソルジェントが援護射撃する。数の不利には、連携で対抗する。

 

『「やぁっ! なの!」』

 

 ブレスターナイトがジャグラーと鍔迫り合いしていたギャラクトロンの肩を裂き、押しのけた。

 

『「ジャグラー、無事!?」』

『「今だけは一緒に戦うの!」』

『ふん……好きにやりな』

 

 律子と美希の呼びかけに、ジャグラーはぶっきらぼうな返答。

 アイドルたちの加勢でギャラクトロン軍団と互角になったかと思われたが、しかし、ここで敵に強烈な増援が現れる。

 

『「はわぁっ!? た、大変ですっ!!」』

 

 あまりのことに大声で叫ぶやよい。彼女たちの前に、ギャラクトロンMK2が再度出現したのだ! 亜美が信じたくないといった風に喚く。

 

『「二体目なんて、そんなのありぃ!?」』

『「そりゃあ、予備があるに決まってるわよね……! くぅっ……!」』

 

 言いつつも苦しげにうめく律子。MK2は戦斧を振るうと、防御が固いフォトンビクトリウムを易々と吹っ飛ばした。

 

『「うわああああぁぁぁぁぁっ!」』

 

 悲鳴を発する真美たち。MK2一体で再び劣勢になる千早たちだが、悪い事態はこれに留まらなかった。

 

「ひぃぃぃ―――――!? 何だぁこいつら!?」

 

 森林の方から悲鳴が上がり、目をやると、雪乃たちが単眼のアンドロイドの集団に取り囲まれていた。

 

『「いけない! 地上制圧用のアンドロイド兵士だわ!」』

 

 律子の言う通り、ギルバリスがギャラクトロンと別に送り込んだアンドロイド兵士バリスレイダーが、雪乃たちを襲っていた。

 助けなければならないが、こちらもギャラクトロンの群れに囲まれて身動きが取れない状態にある。

 

『「このまんまじゃまずいわよ!?」』

『「それは重々承知していますが……!」』

 

 伊織も貴音も、気持ちばかり焦るが状況は好転させられない。千早は一瞬、クシアのバリアに覆われた空を見上げた。

 

『「プロデューサー、春香……! どうか無事でいて……!」』

 

 千早は自分たちも危うい状況に置かれて、なお二人の身を案じていた。

 

 

 

 電脳ウィルス攻撃によってデータ化されてしまった春香は、気がつけば光のない暗黒の世界の中にいた。

 

『ここは……早く、みんなのところに戻らないと……!』

 

 前後左右の区別もつかないような空間に放り出され、自分の今の状態すら把握することも出来ない。そんなありさまにも関わらず、春香は仲間たちのところに戻ろうと、必死にあがいた。

 

『私は……絶対、あきらめない……! 光に手を伸ばし続けて……未来を掴み取る……!』

 

 ゴールも分からないのに決して折れず、ひたすら前に進もうとする春香――その前方に突然、ヌッと巨大な影が現れた。

 

『!! あなたはっ!』

 

 全身が漆黒の色彩なのに、暗黒の世界でくっきりと全身が見える、威圧感に溢れた巨人――ウルトラマンベリアル。

 春香はかつて、一人だけ彼のカードに選ばれた。ある意味では最も因縁深いウルトラマンであるが、直接本人と対面するのはこれが初となる。

 

『フハハ。やっと会えたな、俺の力を使いこなす娘よ』

 

 ベリアルの方もそのことを感じ取っていたのか、春香にそう呼び掛けてきた。

 

『先を急ぐようだが、出口も見えないこの世界でどこに行こうというのだ。何なら、俺がお前の進むべき方向を示してやろうか』

『本当ですか!?』

 

 ベリアルの申し出に驚く春香だが、続く要求に更に驚愕することとなる。

 

『ただし、お前が俺の息子、ジードの伴侶となるならばだ!』

『えっ!?』

『心に強い光と闇を両立させているお前と、俺の血を継ぐジードの運命が合わされば、俺の血脈は宇宙で誰にも負けぬ無敵の存在となることだろう! どうだ、お前も己が子孫が宇宙の頂点に立ち続けるとなれば悪い話ではあるまい』

 

 と交渉を持ち掛けてくるベリアルに、春香は、

 

『――それは出来ません』

 

 毅然と断った。

 

『ほう……?』

『私の未来は、私が切り開きます! どんなことがあろうとも、他人に委ねるつもりはありません! ジードさんだって、自分の運命を誰かに決められるのは認めないでしょう』

『フハハ、言ってくれる。だが、俺の誘いを蹴ればお前は永遠に闇の中をさまよい続けるかもしれん。それでもいいというのか?』

 

 ベリアルの脅迫にも、春香は決してひるまなかった。

 

『それでも、私は自分の足で進んでいきます! あの太陽に向かって、まっすぐ!!』

 

 そう宣言した春香の胸の内から、本当に太陽のような輝きが生じ、闇の世界を照らし始めた。

 

『この光は……!』

 

 春香から生じる光が、遠く先のかすかな光を見つけ出した。それが出口だと、春香は直感する。

 

『あそこだっ! みんな、待っててね!』

 

 春香は迷わず駆け出し、ベリアルを追い越していく。更に彼女の光は形を成していき、オーブライトリングとなった上に一枚のフュージョンカードがリングを通った。

 

[ゾフィー!]『ヘアァッ!』

『ゾフィーさんっ!』

 

 出口に向かって駆けていく春香の背中を見つめながら、ベリアルが呆れたような愉快そうな笑みを浮かべた。

 

『フッ……俺の力を継ぐ者は誰も反抗的で、無茶を押し通すもんだ……。いいだろう、この俺がお前の進む道を祝福してやるぞッ!』

 

 ベリアルのカラータイマーからカード型の闇の欠片が飛び、それがライトリングを通り抜けた。

 

[ウルトラマンベリアル!]『ヘェアッ!』

『ベリアルさんっ……!』

 

 一瞬だけ、ベリアルを一瞥した春香は、黙祷を捧げてライトリングを固く握り締めた。

 

『光と闇の力、お借りしますっ!』

 

 地を蹴って飛び上がった春香が、光の中へと飛び込んでいく――。

 

 

 

 サイバー惑星クシアの鋼鉄の大地の上では、沖縄を侵攻するギャラクトロンとバリスレイダーの軍勢を指揮する、塔に収まっているギルバリスのコアが、新たなるギャラクトロンの部隊を送り込もうとしていた。

 

[地上攻撃部隊第二陣、転送開始。抵抗する者を残らず殲滅するのです]

『「そうはさせないわっ!」』

 

 その瞬間、ギルバリスの前方に黒い巨人が空から飛び降りてきて、大地を揺るがした。

 

[ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!]

『「闇を抱いて、光となる!! 闇ですらない正義は、スクラップにして粗大ゴミに出してあげるわ!!」』

 

 サンダーブレスターの中から、春香がバサリとマントを翻してギルバリスに言い放った。

 

[指令変更。侵入者を抹消するのです]

 

 ギルバリスは淡々と命令し、ギャラクトロンを春香の方に差し向けて取り囲ませた。

 

『「そこに跪きなさいっ!!」』

 

 だが春香はうろたえも恐れもせず、ギャラクトロンを殴り飛ばしながらギルバリスに向かって飛び出していった!

 

 

 

 懸命にギャラクトロン軍団を押し返していたグクルシーサー、ジャグラー、765プロアイドルたちだったが、それでも圧倒的な物量の差と、二体目のMK2の前に崖っぷちにまで追いつめられていた。

 

『ぐッ! ぐわぁッ!』

「ウオオオォォォン!」

 

 ジャグラーとグクルシーサーが叩き伏せられる。そこに、リクたちの宇宙船が飛来してきた。

 

[援護射撃を開始します]

 

 宇宙船の船体から偏光ビームが放たれ、ジャグラーたちを斬りつけるギャラクトロンの背面を撃ち抜いた。ペガが宇宙船から叫ぶ。

 

「みんな、大丈夫!?」

『お前ら遅せぇよ』

 

 吐き捨てたジャグラーだが、それが隙となった。別のギャラクトロンが既に接近していて、クローで殴りつけてきたのだ!

 

『ぐわあああぁぁぁぁぁぁッ!?』

『「ジャグラー!!」』

 

 強烈な一撃をもらって倒れるジャグラー。伊織たちが叫んだが、MK2の斧を受け止めているのが精一杯で救援には回れない。

 

『ぐッ……!』

 

 すぐには起き上がれないジャグラーに、ギャラクトロンの凶刃が迫る――!

 が、その瞬間に白刃のひと太刀がギャラクトロンに浴びせられ、ジャグラーから追い払った。

 

『んッ!?』

 

 そしてジャグラーに差し出されたのは、銀色の腕。

 

『どうした? 宇宙の平和を守るんじゃなかったのか』

 

 皮肉げに聞いたのは――オーブオリジン!

 

『「プロデューサー!!」』

 

 アイドルたちが一斉に、疲労もダメージも一瞬忘れるほどの歓声を発した。

 

『ふん……守り抜いた後でテメェをぶっ潰す』

『勝手にしろ。行くぞ』

 

 ジャグラーがオーブの手を取り、二人並んで立ち上がった!

 

「シュアッ!」

 

 オーブが斧でナイトリキデイターとブレスターナイトを押さえつけているMK2へと走り、オーブカリバーの柄のリングを回した。

 

『オーブグランドカリバー!』

 

 地面に突き刺した刀身からエネルギーが奔り、伊織たちが左右に逃れた後にMK2に命中して爆発を食らわせる!

 

『蛇心抜刀斬!』

 

 直後にジャグラーの刀の振り抜きが、MK2に炸裂! MK2も一時的な活動停止を余儀なくされる。

 アイドルたちは一旦オーブの元に集い、体勢の立て直しを図る。

 

『「もう、遅いわよプロデューサー!」』

『「今までどこに行ってたんだ?」』

 

 伊織が安堵して憎まれ口を叩き、響がそう尋ねると、オーブは何でもないことのように答えた。

 

『すんでのところで、ゼロさんのシャイニングの力で未来に逃れてな。ゼロさんももちろん無事だ』

 

 そのゼロもたった今変身し、ゼロビヨンドとなってギャラクトロンに百裂キックを食らわせているところであった。

 

『ブラックホールが吹き荒れるぜ!』

 

 ゼロがギャラクトロンを一体破壊。アイドルたちも、オーブオリジンが戻ったことで光エネルギーが増大し、力がみなぎってきた。

 

『みんな、春香は先にクシアに乗り込んでる。すぐ迎えに行きたいところだが、リクがギガファイナライザーを呼び起こすまでここを抑えるぞ!』

『「はいっ!!」』

 

 オーブの指示にアイドルたちが応じ、勢いを増してギャラクトロン軍団に立ち向かう。

 しかし、敵も勢いだけで相手をし切れるような戦闘力でも物量でもない。特にMK2は、オーブオリジンとジャグラーの二人がかりでも押し返されるほどのパワーである。

 

『くッ、やはり強いな……!』

『ジードの奴め、まだか……!』

 

 斧と光線の合わせ技に防戦一方のオーブとジャグラーだが、てこずっている間にグクルシーサーがギャラクトロンの攻撃の前に倒れた!

 

「ウオオオォォォン!」

「グクルシーサーっ!」

 

 無防備になったアイルに、ギャラクトロンのレーザーが襲い掛かる!

 

「くぅっ!!」

 

 アイルはペンダントからバリアを張り、レーザーをどうにか受け止める。

 

「愛瑠さん!!」

 

 目を見張ったリクに、アイルはレーザーを防ぎながら呼び掛けた。

 

「リクくん……君は一人じゃない! たくさんの素敵な仲間がいること、忘れないでっ!!」

 

 そこまで語ったところで限界が来て、バリアが破られる。

 

「あああぁぁっ!!」

 

 業火の中に呑み込まれるアイル。

 

「愛瑠さぁんッ!!」

 

 絶叫するリク。オーブたちも、アイルの惨状に目を見張った。

 

「ウオオオォォォン!」

 

 アイルをやられたグクルシーサーは憤怒し、エネルギーの塊となってギャラクトロンに突進し、破壊した。

 

『「アイルさんが……! うおおぉぉっ!」』

 

 響が発憤し、スカイダッシュマックスのスピードが更に上がってギャラクトロンを薙ぎ倒した。他の五人もリクたちの前に回り込んで、彼らを守る態勢を取る。

 

『「これ以上は、誰も傷つけさせないっ!」』

 

 千早が豪語し、全員でギャラクトロン軍団を押し返していく。

 そうして時間を稼いでいる内に、彼女たちの背後ですさまじい閃光がほとばしり、五人もの戦士が立ち上がってきた!

 

[ウルトラマンジード!! ウルティメイトファイナル!!!]

 

 遂に赤き鋼――ギガファイナライザーを手にして新たなる姿に覚醒したウルトラマンジード・ウルティメイトファイナルと、ジードマルチレイヤ―によって分身したソリッドバーニング、アクロスマッシャー、マグニフィセント、ロイヤルメガマスターの五人だ!

 オーブたちやジャグラー、ゼロが、ジードたちの周りに集合する。

 

『ようやく主役の登場か』

 

 オーブは空を、惑星クシアを見上げてジードに告げた。

 

『春香が待ってる。俺たちは先にギルバリスを叩いてくるぜ。ここは任せた!』

『はいッ!』

 

 地上に残存する敵はジードたちに任せ、オーブとアイドルたちがクシアで戦う春香のところへと一挙に飛び立っていった。

 

「シュウワッチ!」

 

 そしてジャグラーの方には、インナースペースに闖入者が現れる。

 

『「プロデューサー。私たちを置いて、楽しそうなことしてるじゃないの」』

『「ほんとツレないよねー、プロデューサーはぁ」』

『「ここからを、本番にしよう」』

 

 麗華、りん、ともみの魔王エンジェル三人だ。

 

『お前ら、いつの間に』

『「まぁまぁ、そんなことはいいから。ほら、早くしないと765プロにいいとこ全部持ってかれちゃうよ?」』

 

 肩をすくめながら、麗華はダークリングを取り出した。

 

『やれやれ……んじゃ、久しぶりにやるとするか』

 

 ジャグラーがため息を吐き出しながら、闇とともに空間跳躍する。と同時に、麗華たちが怪獣カードをダークリングに通していった。

 

『「ゼットンさんっ」』

[ゼットン!]『ピポポポポポ……』

『「パンドンさんっ!」』

[パンドン!]『ガガァッ! ガガァッ!』

『「ブラックエンドさんっ……」』

[ブラックエンド!]『ガアアアアアアァァァァ!』

『闇の力、お借りしますッ!』

『超絶合体! ゼッパンエンド!!』

 

 ジャグラーは魔王エンジェルとともに、超合体魔王獣ゼッパンエンドに変身し、惑星クシアに乗り込んでいった。

 

 

 

『くっ、うぅっ……!』

 

 クシアの鉄の大地の上では、春香が満身創痍となって膝を突いていた。

 相手にしているのは、ギャラクトロン軍団ではない。彼女の予想外の奮闘によってギャラクトロンたちは後退させられ――代わりに春香を追いつめているのは、戦闘形態となったギルバリス自身!

 ウォォォォオオオオオ――――――ン……!

 亀と龍が合わさったようなシルエットの巨大ロボットであるが、全身から突き出ているのは全てビーム砲とミサイルランチャー等の破壊兵器! ありとあらゆるものを破壊することしか考えていないような機体こそが、ラストジャッジメンター・ギルバリスのありさまを体現し切っていると言えよう!

 

[抵抗は無駄です。平和に歯向かう生命体は残らず、抹殺します]

 

 ダメージにより立ち上がることが出来ない春香に、ギルバリスがビーム砲の砲口を向けて消し飛ばそうとしてくる。流石に春香の額に嫌な汗が流れるが、

 

「シュワッ!」

 

 ギルバリスの足元にオリジウム光線が撃ち込まれ、牽制で発射が阻止された。その隙に春香の周りに着地したのは、オーブ率いる765プロの仲間たち。ゼッパンエンドも近くにテレポートしてくる。

 

『「プロデューサーさん!」』

『悪い、遅くなったな』

 

 春香にひと言謝ったオーブは、ギルバリスを見据えるとアイドルたちに呼びかける。

 

『ここまで来たら遠慮は無用だ。俺たちの絆の全力、あいつに見せてやろうぜ! 765プロッ!』

『「ファイトぉぉぉぉぉ―――――っっ!!」』

 

 七人のオーブの身体が十三色の光となってオーブオリジンに融合していき、オーブリングにアイドルたちの心の光が集まって極彩色に輝いた!

 

『諸先輩方ッ!』

『ヘアッ!』『ヘアァッ!』『デュワッ!』『ジェアッ!』『トワァーッ!』『トァーッ!』『イヤァッ!』『ヂャッ!』『デヤッ!』『デュワッ!』『デアッ!』『フワッ!』『シェアッ!』『シュアッ!』『セアッ!』『メッ!』『ヘェアッ!』『セェェェェアッ!』『ショオラッ!』『テヤッ!』『イィィィーッ! サ―――ッ!』

 

 オーブが持つ全ての種類のカードがリングに飛び込み、力を一つにして六芒星型の武器を作り出す。

 

[オールスターフュージョン!!]

『オーブスラッシャースター!』

 

 スラッシャースターを握り締めたオーブが、大きく腕を回す。

 

『皆さんの光の力、お借りしますッ!! オーブ・オールスター!!!』

 

 ガイとアイドルたち全員のフュージョンアップにより、オーブは奇跡の最強形態、ウルトラマンオーブ・オールスターに変身を遂げた!

 

『俺たちはオーブ! ウルトラマンオーブ・オールスター!! 皆の光と絆を結び、今ッ! 輝きの向こう側へ!!』

 

 オーブ・オールスターとゼッパンエンドを相手に、ギルバリスが両腕を肩部から180度回転させ、びっしり並んだ砲門をオーブたちに向けると、ビーム砲撃を一斉掃射してきた!

 

『ゼッパンエンドシールド!』

 

 それに対してゼッパンエンドがバリアを展開して防御。光線をゼッパンエンドが止めている間に、オーブが飛び出していってギルバリスに接近しようとする。

 

「オオオォォッ!」

 

 雨あられと飛んでくるビームをスラッシャースターで切り払うオーブ。頭上から次々飛来するミサイルは、ゼッパンエンドの火炎弾が撃ち落とす。しかし両者の連携をもってしても、オーブがなかなかギルバリスに近づいていく隙間がないほどに弾幕が激しい。

 

『「ボクたちを近づかせないつもりか……!」』

 

 火の雨となるギルバリスの猛攻に、皆と一緒にオーブに力を与えている真が戦いの衝撃に耐えながら歯ぎしりした。しかし、春香が言い切る。

 

『「でも、私たちは前に進む! 止めさせはしないっ!」』

「オリャアァッ!」

 

 オーブが気合いとともに、スラッシャースターを前に突き出して光線を切り裂き進んでいく。が、彼がギルバリスの元へたどり着く前に、控えているギャラクトロン軍団が魔法陣の中に吸い込まれていく。

 

[地上攻撃部隊を転送します。ギガファイナライザーを抹消すれば、コアが破壊されることはありません]

 

 オーブたちと戦いながら、先にジードを始末してしまおうというギルバリス。だが、そこに律子が叫んだ。

 

『「そうは行かないわっ!」』

 

 直後、ギルバリスが異常を感知した。地球に転送したはずのギャラクトロンたちが、片っ端から全く違う場所へと送られていくのだ。

 

[何者かのハッキングにより、攻撃部隊の転送先が書き換えられています。これは……]

 

 

 

 魔法陣で転送されたギャラクトロン軍団は、ハッキングによって地球の沖縄ではなく、ミッドチルダスペースの亜空間に設けられた広大な特殊バトルフィールドで実体化した。

 

「来たっ!」

「攻撃用意!」

 

 バトルフィールドには時空管理局の全兵力が既に待機しており、ギャラクトロンの出現とともに攻撃態勢を取った。彼らとともに鬨の声を上げたのは、ウルトラマンエックス。

 

「イィィィーッ! サ―――ッ!」

 

 彼は律子の頼みにより、密かにサイバー惑星クシアのデータに潜り込み、ギャラクトロンの転送先が全てこの空間になるように細工していたのだ。この無関係の生命の犠牲の心配がない場所で、ギルバリスの残存兵力を一網打尽にする作戦であった。

 

『これ以上、如何なる命も踏みにじらせない! 私たちが相手だッ!』

 

 エックスを先頭に、管理局の勇士たちが一斉にギャラクトロン軍団に勝負を仕掛けていった!

 

 

 

「シュワッ!」

 

 そしてオーブは遂に、ギルバリスを間合いの中に収めることに成功。ギルバリスは瞬時に腹部から電磁光線を発して返り討ちにしようとする。

 

「『ライトムーンバリア!!」』

 

 だがオーブは電磁光線を浅葱色のバリアで遮断。ならばとギルバリスが一本角を振り下ろしてオーブを貫こうとしてくるのに、オーブはスラッシャースターを構える。

 

「『ブルースラッガーソード!!」』

 

 スラッシャースターが青いスラッガーの形となって投げ放たれ、角をへし折ってギルバリスの各部を斬りつけた。オーブがスラッガーをキャッチしながら後ろに転がる。

 

『食らえぇぇぇッ!』

 

 そこにゼッパンエンドが一兆度火球を発射して、ギルバリスを爆炎に呑み込んだ。

 更にオーブが、スラッシャースターから超大型の赤い光輪を作り出して投げ飛ばす。

 

「『レッドサンダー光輪!!」』

 

 光輪がギルバリスの機体を貫通し、真っ二つにする。

 

『「決まった!」』

『「だけど、コアはやっぱり無傷のはずよ! とっ捕まえて、ジードの前に引っ張り出しましょう!」』

 

 叫ぶ律子。レッドサンダー光輪が決まったことで、ギルバリスの爆散は確定したかと思われたが……。

 

[抵抗は、全て無駄です。知的生命体は誰しも、死滅する運命にあるのです]

 

 壊れゆくギルバリスの左右に、鋼鉄の地面の中から二体のロボット怪獣の残骸がせり上がってくる。

 

[知的生命体自身が造り出した、争いの道具によって]

『あれはッ!』

 

 驚愕するオーブとジャグラー。ギルバリスの左右に引きずり出されたのは、ネオフロンティアスペースの地球人類の心なき科学の象徴、デスフェイサーと、コスモスペースの無慈悲な宇宙正義の暴力、グローカービショップであった。

 この二体のロボット怪獣を、ギルバリスはデータ化して分解し、自らに取り込む!

 

『何だと……!?』

 

 ボディの修繕も兼ねた強化改造をこの場で、自らに施すギルバリス。

 そしてギルバリスの機体がひと回りほども巨大化。ケンタウロス体型となり、背面にはバーニアを備える。両腕はガトリングガンとシザーアームが追加され、ただでさえ多かった重火器が更に追加された。

 心を持たない暴走する正義の果て……生きとし生けるものを滅ぼし尽くすまで止まらない、ギルバリス・ジャッジメントデイ!

 

『――来るぞッ!』

 

 ギルバリス・ジャッジメントデイから、最早面に見えるほどの密度のビーム、ミサイル、電撃、機銃、熱線、光球などあらゆる重火力が放たれた!

 

『うおわぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 この圧倒的な飽和攻撃の前にはバリアも意味をなさず、ゼッパンエンドシールドも容易く破られてオーブもゼッパンエンドも吹き飛ばされた。

 

『ぐぅッ……!』

 

 それでも立ち上がろうとするオーブに、ギルバリスの胸部からネオマキシマ砲が速射された!

 

『ガイッ!』

 

 咄嗟にゼッパンエンドがオーブを突き飛ばして逃がしたが、代わりにゼッパンエンドがネオマキシマ砲の餌食となる!

 

『ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――ッッ!!!』

『ジャグラぁぁぁぁぁぁ―――――――――ッ!!』

『「れ、麗華ぁぁぁ!?」』

 

 絶大な砲撃の中に消えていくゼッパンエンドに、オーブと伊織が絶叫した。

 後には、塵すら残らない。流石の春香たちも、皆青ざめたが……。

 

『――あぁぁぁッ! もうやってられっかッ!!』

 

 姿はなくなっても、ジャグラーの悪態が念話でオーブたちの耳に届いた。ギリギリのところで脱出したようである。

 

『「もうやーだーっ! あんなの相手にするとかしんどすぎー!!」』

『「ということで、ひと足お先に失礼」』

『「まっ、後は適当に頑張っといてねー」』

『「……全く……」』

 

 りん、ともみ、麗華の捨て台詞に、伊織たちは責めることもせず、ただ苦笑を浮かべた。

 

『「しかし、どうしますか? あの様子では、戦えば戦うほどギルバリスは脅威を増していきます」』

 

 どんどんと破壊力を増大させるギルバリスを警戒する貴音。ゼッパンエンドも抜けた現状、彼女たちは崖っぷちに立たされている……。

 それをオーブが否定した。

 

『いや。あいつらがこっちに向かってきてるぜ……ジードたちがな!』

 

 オーブたちが時間を稼いでいた間に、地上のジードたちはギャラクトロンを全て撃破。こちらに向けて飛行しているのをキャッチしたのであった。

 生命を焼き払う鉄の悪魔との決着は、もう間近だ!

 


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