オオオォォォ――――――……!
変身を遂げて沖縄の街の中に立ち上がったオーブとジードに、ギャラクトロンMK2が早速標的にしてまっすぐ向かってくる。オーブたちはそれを完全と迎え撃つ。
「ハッ!」
「シュアァッ!」
間合いを詰めたオーブとジードは、先制攻撃としてそれぞれ前蹴りとパンチを食らわせた。しかしギャラクトロンは二人の同時攻撃にびくともせず、腕に備わった刃を振り回してくる。咄嗟に回避するオーブたち。
「トゥアッ!」
オーブはバク転でギャラクトロンから距離を取ったが、ジードは掴まって投げ飛ばされた。背中から叩きつけられるジード。
「ウワァァッ!」
『ジード!』
『「危ない!」』
オーブと春香が思わず声を上げた。ギャラクトロンは倒れたジードに追撃を掛けようとするが、それを制してオーブが左腕と右腕をそれぞれ横と上にピンと伸ばした。
「『スペリオン光線!!」』
ギャラクトロンは即座に攻撃を中断し、肩の装置からシャッターを閉じるようにバリアを張って飛んできた光線を遮断。バリアは割られるが、ギャラクトロン自体にダメージはない。
この間にジードは立ち上がって体勢を立て直した。
「ナイスフォロー!」
「ジード兄ちゃん! 気をつけてね!」
真が指を鳴らしてオーブの援護を称え、亜美はジードに注意を促した。
ジードが隣に並ぶと、オーブが再びフュージョンアップして形態を切り替える。
[サンダーストリーム!!]
「フゥンッ!」
目つきが鋭くなり赤黒の上半身となったオーブの姿に、ジードが思わず吃驚。
『似てる!』
『「気にしないの!」』
ジードの肩をバンと叩いたオーブがギガトライデントを握る。
「『ジードクロー!!」』
ジードの方はクローを召喚し、ともにギャラクトロンへ再度突貫していく。
『行くぞぉッ!』
武装した二人に対抗するように、ギャラクトロンが後頭部のトサカを切り離して武装。大斧ギャラクトロンベイルでギガトライデントの刺突を受け止める。
「フゥゥンッ!」
「ダァァッ!」
ジードクローの振り下ろしは反対の腕で受け止めつつ、胸をぶつけて二人をはね飛ばした。
「ヌアッ!」
地面を転がったオーブたちだがすぐ起き上がり、ジードは両腕にエネルギーをスパーク、オーブはギガトライデントを地面に突き立てて二人同時に必殺技を繰り出す。
「『サンダーストリームネプチューン!!」』
「『レッキングバースト!!」』
地面を蛇行していく光の奔流と必殺光線に対し、ギャラクトロンは再びバリアを展開。二人の攻撃が大爆発を巻き起こすが、黒煙の中からギャラクトロンが悠々と脱け出てきた。
「今のを耐えたぁー!?」
「これは難敵となりそうですね……」
ジードたちの猛攻をものともしないギャラクトロンに、真美が驚愕。貴音は険しい顔でギャラクトロンをにらんだ。
サンダーストリームネプチューンとレッキングバーストの合わせ技を凌いだギャラクトロンに対し、オーブとジードは同時にタイプチェンジ。
[レオゼロナックル!!]
[リーオーバーフィスト!!]
遠距離攻撃はバリアに阻まれるとして、近接戦闘に長けた形態にチェンジし、ギャラクトロンに飛び掛かっていく。
ギャラクトロンが繰り出す戦斧の斬撃を、ジードが斧の側面を殴って軌道をそらし、その隙にオーブが斧を掴んで動きを止めた。
「デヤァッ!」
オーブが隙を作っている間にジードが燃える脚の蹴り上げをギャラクトロンにお見舞い。相手の体勢が崩れたところでオーブも鉄拳を食らわせた。
「フッ! ハァッ!」
「デアァッ!」
二人の強烈なパンチとキックが炸裂するも、ギャラクトロンは一回転しながらの水平斬りでオーブたちに反撃。二人が押されて後ずさる。
『「くっ、強い……!」』
額に流れた汗をぬぐう春香。思わず冷や汗が噴き出るほどに、ギャラクトロンの攻撃は強力であった。
更にギャラクトロンは、戦斧を投擲してくる!
『「っ!」』
咄嗟に身構える春香とオーブであったが、オーブたちの目の前に突然空から銀色の光が高速で降り立ち、剣の切り上げで斧を弾き返した。
『おりゃあッ!』
斧を弾いてジードたちを助けた銀色の巨人は鎧を解除し、ブレスレットに戻して青と赤の肉体を衆目に晒した。
「あの人は!」
「ウルトラマンゼロだわ! 久しぶりね!」
千早と伊織がその巨人の出で立ちを目の当たりにすると、弾んだ声を発した。
オーブとジードを助けた巨人は、オーブたちと同じウルトラ戦士、ウルトラマンゼロ! 宇宙警備隊からのウルトラサインを受けて、地球の救援のためにはるばる別宇宙から駆けつけてきたのである。
『ゼロ!』
『待たせたな』
『お久しぶりです、ゼロさん』
三人目のウルトラ戦士の登場に斧をキャッチしたギャラクトロンが警戒している間に、オーブがゼロに挨拶した。
『おう! 今は仲間と一緒に旅してるんだな、オーブ』
『ええ』
『主役は遅れて来るって奴ですか?』
ジードがトントンと手首を叩いて腕時計のジェスチャーを取った。
『まぁな。さぁ行くぜ! 俺たちのスーパーノヴァ、見せてやろうぜッ!』
『はい!』
『「よーし! ファイトぉーっ!」』
春香たちの力強い返事を背に受けながら、ゼロがギャラクトロンに肉薄する!
「シェアッ! オラッ!」
回し蹴りで戦斧を弾くと、肩を捕らえてバリア発生装置のトゲに狙いをつける。
『エメリウムスラッシュ!』
額のビームランプから照射されるレーザーが、両肩のバリア装置を破砕! これでもうバリアは使用できない。
「『ナックルクロスビーム!!」』
「『バーニングオーバーキック!!」』
そこにオーブの額からの光線と、ジードの炎の飛び蹴りがギャラクトロンを襲った!
「シャッ!」
転がって攻撃の直撃をもらったギャラクトロンから離れたゼロは、同時にルナミラクルゼロに変身。オーブたちの方も三度のタイプチェンジ。
[スラッガーエース!!]
[ムゲンクロッサー!!]
バーチカルスラッガーとゼロツインソード・ネオ、ミラクルゼロスラッガーを駆使した三人の縦横無尽の斬撃が、ギャラクトロンを八方より攻め立てる!
「いい調子だぞ!」
「いっけー! なの!」
三人の目にも止まらぬ斬撃の嵐がギャラクトロンを押していくのに、響と美希が歓声を発した。
ゼロたちは空中で集い、オーブとジードがギャラクトロンの左右を抜けるコースで急降下していく。
「「ハァッ!」」
二人の一閃が入ると、ゼロがストロングコロナゼロとなってギャラクトロンの正面から拳を叩き込んだ。
『ガルネイトバスタァァーッ!』
決まった――と思われたが、ギャラクトロンは金色に発光してゼロを押し返した!
『おわッ!?』
「はわっ! ゼロさん!」
衝撃をそのまま返されて倒れ込むゼロ。やよいが頬に手を当てて叫んだ。
[ストリウムギャラクシー!!]
[ダンディットトゥルース!!]
ともにウルトラホーンのある形態となったオーブとジードがギャラクトロンの正面に回り込み、立ち上がったゼロと今度は三位一体の拳撃をギャラクトロンに浴びせた!
『うらぁぁぁッ!』
これには流石によろめいたギャラクトロンだが、よく見ればこれだけの攻撃を食らい続けて、大した損傷が見られない。
「す、すごい頑丈ですぅ! あれだけ攻撃されて、何ともないなんて……!」
「あれは確実に対ウルトラマン用の改造個体だわ。むしろ当然の耐久力ね……」
衝撃が走る雪歩の一方で、律子が冷静にギャラクトロンの性能を考察した。
が、街では大変な事態が起こっていく!
「うわああぁぁぁぁぁ―――――!!」
「!? 街の人たちがっ!」
地球がデジタル化した惑星クシアに覆い尽くされたことにより、ギルバリスの侵蝕が地球上の生命を襲い、人々がデータ化されてデジタルの空に吸い上げられていくのだ。
あずさたちも驚愕したが、それ以上に動揺したのがジードであった。
『街の人たちがッ!』
焦ったジードは、一体化している八幡に構わずにカプセルを交換し、一人でフュージョンライズしてしまう。
[ノアクティブサクシード!!]
『「!? ジードさん、ちょっと待って……!」』
ジードが功を焦ってウルティメイトゼロソードを振り上げ、ギャラクトロンに突っ込んでいく。春香が呼び止めるが、ジードの耳には入っていない。
『みんなを守らなくちゃ! 僕がッ! 僕がぁぁぁぁぁッ!!』
『待てジード!』
オーブも制止するも、既に遅かった。
ギャラクトロンは向かってくるジードに、腹部から怪光線を浴びせる。
「ウワァァッ!?」
するとジードの身体がたちまちの内にプリミティブの状態に戻された上に、データ化されて消されていった!
「じ、ジードさんっ!!」
あまりのことに目を見張った千早を始めとして、全員がジードの消滅に唖然となった。
ジードがデータ化されて電脳空間に引きずり込まれたことに対して、オーブの判断は早かった。
『エックスさんの力で、ジードを救出に行きます!』
『頼んだぜ! こっちは任せろぉぉぉぉッ!』
ゼロがギャラクトロンへと突っ走っていき、彼が時間を稼いでいる内に春香が三枚のフュージョンカードを使用。
『三つの光の力、お借りしますッ!! オーブトリニティ!!!』
春香がギンガ、ビクトリー、エックスのカードをリングに通して、オーブがオーブトリニティに変身。更にその身体を、クローを備えた青いジャケットが覆う。
「『ゴモラキャリバー!!」』
オーブは両手のクローをX字に振るうことで空中に電脳空間につながる穴を開き、迷わずその中へ飛び込んでいった。
『う、うわああぁぁぁぁぁぁッ……!!』
ギャラクトロンが放った電脳ウィルスによってギルバリスの電脳空間に引きずり込まれてしまったジードは、データ化した肉体が急速に分解される猛烈な苦痛に襲われていた。逃れようとしても、身動き一つ取ることが出来ない。絶体絶命のピンチ。
しかしそこに、電脳空間に突入したオーブトリニティが救出に駆けつける。
『しっかりしろ、ジード!』
『オーブさん……!』
ジードを抱え、現実空間へと引き返そうとするオーブ。――だがそこにギルバリスの魔の手が襲い掛かり、電脳ウィルスが四方からオーブたちに牙を剥いた!
『ぐわああぁぁぁぁぁッ!』
二人纏めてウィルスに侵されるオーブたち。このままでは、オーブまでがデータの海の藻屑となってしまう!
その時に、春香がオーブに呼びかけた。
『「プロデューサーさん、ジードさんをお願いします……!」』
『春香!? お前まさか……!』
『「大丈夫です……! 絶対……戻りますからっ!」』
データ化されている春香がオーブの中から抜け出て、オーブを電脳空間と三次元世界をつなぐ穴に向けて押し出したのだ!
『は、春香ぁぁぁッ!!』
これによってオーブの肉体データは間一髪で現実の空間に戻されたが――春香が抜けたことでフュージョンアップの効果が途切れ、オーブオリジンとなったことで空中に開いた穴が消失。春香を電脳空間に残したまま閉じてしまった。
『くそッ……!』
春香を犠牲にしてしまったオーブだが、歯を食いしばって冷静さを保つ。――が、ジードはそうではなかった。
『よくもッ、よくもぉぉぉぉぉおおおおおおおッ!!』
激情に駆られ、考えなしにギャラクトロンへと突撃していく。
しかしその行動は読まれており、ギャラクトロンが腕からの光線の一斉放火を放ってくる!
『はッ!?』
『危ねぇッ!』
ゼロとオーブが咄嗟にジードをかばったが、そのために彼らが光線の直撃を食らってしまった! 巻き起こる大爆発!
「ゼロぉ!?」
「プロデューサーぁぁ!!」
「ガイッ!!」
叫ぶジャグラーたち。爆発に吹っ飛ばされたジードの眼前からは……ゼロとオーブの姿が、どこにもなくなっていた。
『ゼロ!! オーブさん!!』
二人までもやられたジードは、遂に激情に染まり切った。
『うわあああああぁぁぁぁぁぁァァァァァァァァアアアアアアアアアアッ!!!』
双眸が真っ赤に変色したジードが腕を鉤十字に組み、光が混じらない暗黒光線を発射する。
『レッキングバーストォォォォォオオオオオオオオオッ!!』
突貫しながらのレッキングバーストがギャラクトロンに直撃。更にそのまま押し倒して光線を浴びせ続け、ギャラクトロンの装甲をバキバキに砕いていく。
耐久の限界に達したギャラクトロンが爆裂して四散。そこでようやく正気に戻ったジードは、同時にエネルギーが底を突いて、倒れながら変身が解除された。
「うぅ……」
「リクぅ!!」
「何てこと……!」
倒れたまま失神したリクの元へと、ペガや千早たちが慌てて走っていった。
千早たちは倒れたリクを抱えながら、星雲荘が停泊している砂浜にまで引き返してきた。アイルがリクの手当てをしている間に、現在の状況を纏める。
「そ、そんな……ハッチーが……」
「天海さんまで、ギルバリスの餌食に……」
言葉を失って力なく立ち尽くす結衣たち。ジードの変身が解除されたのに、八幡がどこにもいないことから、彼も春香と同じようにジードをかばって電脳空間に閉じ込められたと律子が分析したことを聞いたショックで絶望しているのだ
律子たちも悔しそうにうなだれる。春香はもちろんのこと、ゼロも、オーブも戦闘終了後にもどこにも見つからなかったのだ。二人も苦楽をともにした仲間が安否不明となって、流石の彼女たちも動揺を禁じ得なかった。
皆が沈んでいると、アイルから生命エネルギーを分け与えられたリクがうっすらと目を開けた。
「愛瑠さん……」
「よかった……」
目を覚ましたリクに、皆の目が集まる。
「大丈夫? リク……」
案ずるペガにうなずきながら、ゆっくりと身体を起こしたリクは、皆に問いかける。
「ゼロと、ガイさん、春香さんは……?」
だが、誰もが沈黙したまま。それでどうなったかを察するリク。
「僕のせいで……」
わなわなと手を震わせながら、リクは自責の念に駆られた。
「ガイさんが、忠告してくれたのに……それを無視して……ウルトラマン失格の僕は、ヒーローなんかじゃないッ!!」
「やめてっ!」
自棄を起こすリクを、いろはが喚くように制止する。
「ウルトラマンはもうリク先輩しか残ってないんですよ!? リク先輩がそんなこと言ってたら……誰が先輩を……」
「だってそうじゃないかッ!!」
だがリクは聞き入れない。
「すぐ隣にいた人すら守れなかった……。MK2より強いんでしょ、ギルバリスは……。僕一人じゃ、地球は守れないッ!!」
誰よりも己を責めるリクに、雪乃たちは掛ける言葉が見当たらない。
――いや、アイルが前に出て、リクの腕を掴んだ。
「リクくん、来て」
短く呼び掛け、アイルはリクを連れていった。
アイルがリクを引っ張っていった後、材木座が憔悴した表情でポツリとつぶやいた。
「ゼロ……ゼロはどうなってしまったのだ……」
「ウルトラマンオーブも、あんなことになるなんて……」
陽乃が悼むように独白すると、ジャグラーがフンと鼻を鳴らした。
「あいつがあれくらいでくたばるかよ。そんな奴だったら、とっくの昔に決着ついてるぜ」
言いながら、あずさたちの方に振り向くジャグラー。
「お前らだって、ガイと天海春香が本当にくたばったなんて思っちゃいないだろ」
それにあずさが、毅然とした顔つきでうなずいた。
「ええ。プロデューサーさんも、春香ちゃんも、きっと生き延びてる。私たちは信じます。あきらめるのは、最後の時だけで十分ですから」
何の根拠がなくとも、信じる。それがただの強がりではなく、心からのことであることが、あずさたちの表情が物語っていた。彼女たちは、動揺はしても絶望はしていないのだ。
『……流石、強い人たちだな』
ゼナが感嘆して評していると、律子の通信端末に着信が入る。
一旦皆から離れて通信に出ると、その相手は意外な人物だった。
『秋月律子君、無事か!?』
「エックスさん!」
かつて765プロが共闘したウルトラ戦士の一人、エックス。彼も今はあらゆる宇宙に放たれているギャラクトロンから次元宇宙を守護するのに忙しいはずだ。
『話は聞いている。そちらの状況を見るに、大分窮地に置かれているようだな……。よければ、私が応援に向かおう! 私だったらサイバー空間を通ってバリアを抜けることが出来る』
エックスからの申し出に、律子は少し思案して、次のように返した。
「ありがとうございます。ですが、私たちなら大丈夫です。それより、やってほしいことがあります」
『やってほしいこと?』
律子がその内容を伝えていると――リクたちの宇宙船から、けたたましい緊急警報が鳴り響いた。
「どうしたの、レム!」
宇宙船の内部に駆け込んだライハが問うと、レムが皆に事態を報告した。
[周辺に、無数のギャラクトロンが転送されています]
サイバー浸食された空に次々と魔法陣が現れ、その一つ一つからギャラクトロンが投下。沖縄の街を蹂躙していく。
ウオォンッ、ウオォンッ……!
「きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――――――!!」
悲鳴を上げてギャラクトロンの軍団から逃げ惑う沖縄の人々。しかし、今の地球のどこに逃げられる場所があるというのか。
『総力を挙げて、ギガファイナライザーを奪うつもりか……!』
モニターに表示された外の惨状にゼナがそう発した直後に、結衣がハッと気がついて脂汗を垂らした。
「ちょっと待って! さっきの戦いから、まだ一時間も経ってないよ!?」
「えっ? どういうこと?」
海老名が聞き返すと、レムが今の言葉の意味するところを告げた。
[リクは二十時間のインターバルを挟まないと、ジードにフュージョンライズすることが出来ないのです]
「えぇーッ!? そ、それって超やべーじゃんッ!!」
戸部が仰天して声を荒げた。
ゼロとオーブが消え、ジードも変身することが出来ず。ウルトラ戦士がいない沖縄を、ギャラクトロン軍団が我が物顔で侵攻していく!