THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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天と海と命の島

 

 千早たちと、声を掛けてきた女性は道端に寄って会話を交わす。

 

「失礼します」

 

 律子が女性にタブレットを向けて、その全身をスキャンした。すると首に提げているペンダントの宝石が、地球には存在しない鉱石だという結果が出る。

 

「やっぱり……あなた、地球の人ではありませんね?」

 

 律子が尋ねかけると、女性は静かにうなずいた。

 

「そういうあなたたちも、ただの地球人じゃないみたい」

 

 聞き返され、貴音が自分たちの所属を伝えた。

 

「わたくしたちは765プロの者です」

「そう……あの噂の765プロの。私はアイル。地球では比嘉愛瑠という名前」

 

 宇宙人の女性、アイルはそう名乗り、律子と亜美、真美に顔を向けた。

 

「そういえば、あなたたち三人は、以前ジードと共闘してたね」

 

 ウルトラマンジードとの関係を言い当てられ、律子たちは面食らった。

 

「アイル姉ちゃん、何でそのこと知ってんの?」

「見てたから」

 

 何でもないことのように言うアイルだが、当時彼女とは出会っていない。その時たまたま千葉にいて自分たちの活躍を目撃したのか、はたまた千里眼のような能力でも持っているのだろうか。

 

「それで、どうしてまたこの沖縄に?」

「それなんですけど……」

 

 千早が、ジャグラスジャグラーがこの地球に向かったこと、ギルバリスが恐らくジャグラーを追いかけて地球を襲撃するだろうことを打ち明けた。

 

「そう……」

「アイルさんは、ギルバリスのこと何か知りませんか?」

 

 雪歩が駄目元で問いかけると、アイルは何やら意味ありげに押し黙った。

 

「アイルさん?」

「……実は今、ジードとその仲間たちがここ、沖縄に向かってきてる」

 

 アイルが急に話題を変える。

 

「えっ、ジード兄ちゃんたちが!?」

「何たる偶然……いえ、この巡り合わせは偶然ではないのかもしれませんね」

 

 貴音が響に振り向きながらつぶやいた。響は「声を聞いたから」と沖縄に着陸したのだ。

 それからアイルは、千早たちに真剣な面持ちで告げた。

 

「そのことで、みんなにお願いがあるの」

 

 

 

 その後765プロ一行は、那覇市の繁華街へと移動してきた。

 

「アイルさん、どうしてあんなこと頼んだんだろう?」

 

 雪歩がアイルからの依頼について小首を傾げた。アイルから頼まれたこととは、自分をこれから沖縄にやってくるジードたちと引き合わせることなのだが、自分が宇宙人であることは伏せて、アウトドア教室を開いている一般人ということにしてほしいと言ったのであった。

 

「何か事情がおありのようでした。ギルバリスのことも何かご存じのようですし、ひとまずは彼女に従いましょう」

 

 貴音の言葉で皆がそれを了承する。それはいいのだが……。

 

「で、どうやってジードと仲間たちに自然に接触して、その方向に話を持ってくかなんだけど……」

 

 律子が述べながら、物陰から少しだけ顔を出して大通りの様子を、半目で見やった。

 

「……本当に響に任せちゃっていいのかしら?」

「イーヤーサーサー! ハーイヤ!」

 

 その視線の先では、響が観光客向けに沖縄伝統の踊り、エイサーを披露する集団の中にしれっと混じって、一緒にエイサーを踊っていた。

 アイルの指示でジードの一行を発見すると、響はさも偶然彼らを見かけた風を装って接触することを提案し、自らがその実行役となったのだ。が……。

 

「けど何でエイサーの列に混ざる必要があるのかしら」

「しかもハム蔵を頭に乗っけたままだよー。あれじゃ怪しまれるって、ひびきん……」

「っていうか真美たちは顔見知りなんだし、フツーに話しかければよかったんじゃ?」

 

 亜美と真美も呆れた表情で響の奇行を見やった。千早の方は、ジード――朝倉リクの一団の方に目をやって驚きを見せる。

 

「見て、みんな! ジャグラスジャグラーが一緒にいるわ」

「ほんとですぅ! 向こうもジードさんたちと接触してたんだ」

「じゃあ、響のあれは意味なかったわね……」

 

 ジャグラーは当然響の顔を知っている。案の定、リクたちに話しかけに行った響は即正体を見破られていた。

 

「おい、こいつは何の冗談だ? 我那覇響」

「あっ、ジャグラスジャグラー!? 何でこの人たちと一緒にいるんだ!」

 

 早速ジャグラーと揉めそうになる響。

 

「あ~もう。私たちも行きましょ」

 

 律子たちはやれやれといった感じに物陰から出て、響の元へと歩いていった。

 

「我那覇さん、今のどの辺りが自然な接触だったの?」

「ひびきん、もちょっと上手くやってよ~。明らか不自然じゃーん」

「うっ……ごめんだぞ……」

 

 リクたちの近くに行くと、彼と行動をともにしている仲間の一人、目つきが良くない男子高校生が律子、亜美、真美の顔をひと目見て驚きを浮かべた。

 

「あなたたちは、765プロの……ってことは……」

「ふふ……久しぶりね、ジード部のみんな。その後お変わりなかったかしら?」

「やっほー、兄ちゃん姉ちゃん。何だか大所帯だねー」

 

 男子高校生は以前、怪獣のために命を失い、ジードが融合することで蘇生した比企谷八幡だ。律子たちが会った時には彼が変身をしていた。

 他の女子高生二人は、長髪のクールビューティーが雪ノ下雪乃。短髪の活発そうなギャルが由比ヶ浜結衣。残る三名は初対面である。

 

「彼女たちが、比企谷たちが共闘した765プロというところの子たちか。私は平塚静だ」

「どうも初めまして~♪ 一色いろはって言いまーす」

「あー……この眼鏡は材木座義輝っす」

「これはご丁寧に。わたくしは四条貴音と申します」

「如月千早です」

「萩原雪歩ですぅ」

「改めて、自分は我那覇響だぞ。こっちはハム蔵」

「ぢゅいッ」

 

 初対面組が自己紹介し合うと、ジャグラーがこちらに尋ねかけてきた。

 

「お前ら、どうしてこんなところにいるんだ」

 

 それに亜美と真美が頬を膨らませながら、咎めるように返した。

 

「そんなの、あんたがギルバリスにちょっかい掛けたって聞いたからに決まってるっしょー!? またそんな危ないことして~!」

「ギルバリスが追いかけてるみたいじゃん。よそ様に迷惑掛けちゃダメって言われてるでしょー!?」

「また何かたくらんでるんじゃないでしょうね」

「ふッ……さて、どうだろうなぁ」

 

 千早にジトッとにらまれたジャグラーは、わざとらしく顔をそらした。

 八幡たちは、今のやり取りでこちらとジャグラーの関係性のおおまかなところを感じ取ったようであった。

 

「僕たちは今、赤き鋼というものを探してるんだ。みんなは何か知らない?」

 

 リクからそう聞かれ……千早たちは一旦彼らから距離を取り、ヒソヒソと声を潜めて相談し合った。

 

「どーする? やっぱアイル姉ちゃんの言った通りにする?」

「土壇場で約束を反故にする訳にはいきません。どのような意図があるのかはともかくとして、わたくしたちは手筈通りに行いましょう」

 

 自分たちの振る舞いをリクたちが訝しんでいるので、響が代表して回答した。

 

「探し物なら、沖縄の伝説に詳しい人を知ってるさー。紹介してあげるね!」

 

 

 

 そして響たちはリクたち一行を、街を離れた林の中へと連れてきた。

 

「こんなところで待ち合わせですか?」

「まぁまぁ、もうすぐ来るって」

 

 わざわざ人気が全然ないような場所へ移動してきたことを訝しむ雪乃を、響がなだめた。そうしていると早速、連絡を受けたアイルが斜面の下からやってくる。

 

「ほら、噂をすれば。おーい、ここだぞー!」

 

 響が大きく手を振ると、アイルは足を速めて近寄ってきた。

 

「お待たせしましたぁ」

「すいません、急にご連絡しちゃって」

 

 事前の指示通りに、律子が何食わぬ顔で演技を始めた。

 

「いえ。こちらが千葉市神話研究会の?」

 

 リクたちの方も、アイルが既に全部を知っているということなど夢にも思っていないので、彼女にそう紹介するように言ってきていた。響がそんな彼らにアイルのことを紹介する。

 

「みんな、こちらはえっと……アウトドア教室をやってる比嘉愛瑠さん」

「はじめまして、比嘉愛瑠です。みんなから愛瑠って呼ばれてます」

 

 そう名乗ったアイルに、リクが代表して挨拶を返した。

 

「朝倉リクです」

「よろしくね、リクくん」

 

 アイルが差し出した手を、リクがはにかみながら握った。――アイルと面向かってから、何やら浮ついた調子で握手するリクの様子をながめて、亜美と真美がニヤッと笑う。

 

「おやおや~? リク兄ちゃんの態度がちょっと変だね~」

「もしかして、アイル姉ちゃんみたいな人がタイプなのかな? んっふっふ~」

「こら二人とも、下世話な話はよしなさい。聞こえるでしょ?」

 

 亜美と真美をたしなめる律子。千早と雪歩、貴音は八幡たちの方を観察して、小声で言葉を交わす。

 

「アイルさんが宇宙人ということ、気づかれてはないみたいね」

「傍目から見たら、地球人と違いなんてないものね」

「ですがジャグラーはやはり鋭いです。既に察している様子」

 

 貴音はジャグラーが、アイルのペンダントを怪訝に見つめていることに目を留めていた。

 

「あの、赤き鋼の伝説について調べたいんですけど」

 

 もじもじしてなかなか話を切り出さないリクに代わって、八幡がアイルに尋ねかけてきた。アイルは少し考え込みながら、次のように返答する。

 

「赤き鋼……私も詳しいことは。でもそういう伝説のある場所を回ってみる? 何か手掛かりがあるかも」

「是非!」

 

 リクが勢い余りながら了承した。

 

 

 

 こうして一行はアイルの先導の下に、沖縄各地の古い伝承が残るスポットを探索して回ることとなった。

 その内の一つ、巨大な岩壁に挟まれた斎場御嶽でアイルが解説する。

 

「琉球王朝時代、このような場所で祭事が行われ、人々が祈りを捧げてきたの」

「何をお祈りしてたのかな?」

 

 結衣が誰となく聞くと、リクが人差し指を立てて言った。

 

「多分、みんなが元気で、幸せでいられますように! ってお祈りしてたんじゃないかな」

 

 リクの答えに、一同が思わず破顔する。

 

「本当にそうならいいんだがな」

「実に子供みたいな考えね」

「な、何だよー。いけないの?」

 

 平塚や雪乃にクスクスと笑われたリクが少々気分を害したが、雪歩と貴音は擁護する。

 

「でも、私はそういうの嫌いじゃないですぅ」

「まこと。そのような単純ながら素朴な願いが、平和を築く礎なのです」

「うん。私も、リクくんの考えはとってもいいって思う!」

 

 アイルに称賛されると、リクは照れ臭くなって頭をかいた。

 

「ふふ。あのウルトラマンベリアルのクローンというからどんな人だろうと思ってたけど……リクさんって、純粋な人みたいね」

「ええ。宇宙警備隊から立派なウルトラ戦士と認められるだけのことはあるわ」

 

 リクの人となりを知らなかった千早が、律子と密かに微笑み合った。

 一方で、アイルに振り向いたいろはがふと尋ねかける。

 

「ところで、愛瑠さんってどうしてアウトドア教室やってるんですか?」

「私はね、自然が大好きなの。たくさんの人にも好きになってもらいたくて」

「何で自然好きなんですか?」

 

 いろはが聞き返すと、アイルはそっと御嶽の岩肌をなでながら、どこか遠い目で語った。

 

「命を、感じるからかな……」

 

 アイルの様子の変化に、響たちは思わず彼女に視線を集めた。

 

「大地から、生きる力を感じる。たくさんの命といるって、思えるから」

 

 妙に実感のこもった言葉に、響たちはそっと顔を見合わせた。

 

「何か、アイルさんの星にはよっぽどの事情があるみたいだね……」

「……人工頭脳ギルバリス……サイバー惑星クシア……まさか……」

 

 律子が顎に指を掛けて、何かを考え込んだ。

 

 

 

「ねーねー、材木座の兄ちゃんは何でひと言もしゃべんないのー?」

「……こいつのことはほっといてやってくれ」

 

 その後、首里城のふもとまで足を運んだところで、急に貴音が立ち止まった。

 

「四条さん、どうしたんですか?」

「あれを」

 

 雪歩が振り向くと、貴音が指差した先に、見慣れない形のシーサー像、その前に両端がコブのように膨れた棒状の石器がポツンと鎮座していた。

 

「これは?」

「こんなシーサー像、ガイドブックにはないですよ」

 

 シーサー像に近づいていってよく観察するリク。いろははガイドブックをペラペラめくって確認した。

 律子はタブレットをかざして石器を分析する。

 

「……見た目は石だけれど、未知の金属反応があるわ」

「まさか、赤き鋼?」

「とにかく、確かめてみましょう」

 

 訝しむ八幡に次いで、千早が石器を手に取って反応を窺う。……が、目立った変化は一切起こらない。

 

「何も起きないわね……」

 

 ここで材木座が眼鏡に指を当てて格好つけながら、千早たちの前では初めて発言しつつ前に出てきた。

 

「ふッ……ここはこの剣豪将軍の出ば」

「どいてろ」

「おうふッ!」

 

 が、ジャグラーに押しのけられて変な声を出しただけだった。

 ジャグラーは千早から石器を受け取り、低い声を発しながら意識を集中する。

 

「おおぉぉ……!」

 

 ――しかし、やはり何も変化は見られなかった。

 やがてアイルがジャグラーから石器を受け取り、次の通りに告げた。

 

「赤き鋼は、正しい心を持った、選ばれた戦士にしか使えない」

「……フッ! 先に言えよ。だったら俺は駄目に決まってるじゃねぇか」

 

 ジャグラーはぶっきらぼうに皆の輪から外れる。

 

「またこのパターンか」

 

 吐き捨てたひと言で、ガイから彼の事情――光を求めながら光に選ばれず、失意の果てに闇に堕ちた過去があることを聞いている響たちは、何とも言えない感情となった。

 

「愛瑠さん。どうして、赤き鋼のことを?」

 

 リクがアイルに振り返って尋ね、アイルが何かを告げようとする。

 しかしその寸前に、沖縄の空に巨大な魔法陣が開き、白い龍人型のロボット――765プロに因縁深いギャラクトロンが地上に降下してきた!

 しかもその機体は、シャフトがない代わりに後頭部に巨大で鋭利なトサカがあり、五本指の腕に換装され、顔面や四肢を甲冑のようなパーツで覆った改造を施されたものだ!

 

「ギャラクトロン!!」

「新型だわ!」

 

 街を蹂躙しながら接近してきたギャラクトロンに、一同がバッと振り返った。

 

「遂にここまで……!」

 

 ギャラクトロンの方も一行を発見し、そしてアイルの手の中の石器に注目した。

 

[見つけました。赤き鋼]

 

 ギャラクトロンのアイカメラ越しに石器を確認したギルバリスがつぶやき、ギャラクトロンが千早たちに狙いを定めて進撃してきた。

 

「みんな、こっちだ!」

「一旦退避です!」

 

 リクと貴音が真っ先に動いて、皆を先導して逃走を図る。

 

「ひ、ひぃ……! ゼロぉ……!」

「早くしろッ!」

 

 怖気づいて足がすくむ材木座は、ジャグラーに引っ張られていった。

 海の方へと全速力で逃げていく一行だが、ギャラクトロンはどんどんと接近してくる。このままでは逃げ切れないと判断したリクがジードライザーに手を掛ける。

 

「ジーッとしてても……!」

 

 だが変身しようとしたのを、ギャラクトロンが指先から照射した光線の爆撃によって阻止された。悲鳴を発するいろはたち。

 

「きゃああっ!」

「くっ……! こっちがウルトラマンだってバレてるわ……!」

 

 うめく律子。そのまま接近してくるギャラクトロンに対して、アイルが胸のペンダントを掲げ、叫んだ。

 

「グクルシーサー!」

 

 ペンダントの宝石が光り輝き、それに反応して石器が置かれていたシーサー像の目が光った。そして一瞬にして石像から巨大な本物のシーサーに変化し、ギャラクトロンの正面へと飛び出していく。

 

「グルルル……ウオオオォォォン!」

 

 グクルシーサーと呼ばれた怪獣はギャラクトロンに突進して、侵攻を食い止めた。即座に狙いを怪獣に移したギャラクトロンだが、胸部に後ろ蹴りをもらって突き飛ばされる。

 

「あいつ……!」

「愛瑠さん今、怪獣を召喚した!?」

 

 結衣たちが目を見張る。雪歩らも怪獣の存在までは知らなかったので面食らう。

 

「愛瑠さん……!」

 

 起き上がったリクも驚愕の目でアイルを見る。すると彼らの背後に、リクたちの使用している宇宙船が飛んできた。

 

『早く乗れ!』

「早く早く!」

 

 宇宙船の内部から他のリクの仲間たちが退避を促す。

 

「みんな、急ぐぞ!」

「はい!」

 

 平塚が皆を手で仰いで誘導、いろはたちが続々と宇宙船に乗り込んでいく。グクルシーサーは勇ましくギャラクトロンに立ち向かっているものの、すさまじいパワーに押し返され始めていた。

 

「ウオオオォォォン!」

 

 ギャラクトロンに殴り飛ばされるグクルシーサーを見て、響と貴音がうなずき合う。

 

「真美、ハム蔵を頼むぞ!」

「合点承知!」

 

 ハム蔵のことを真美に託して、貴音とともに殿に立つ響。

 

「ここは自分たちに任せるんだ!」

「さぁ、お早く!」

「愛瑠さんも早く……!」

 

 リクがアイルを逃がそうとするが、いつの間にか姿が消えてなくなっていた。

 

「愛瑠さん……!?」

「リク! 急げッ!」

 

 最後まで残っていた八幡がリクとともに宇宙船へと走り、響と貴音はオーブライトリングとコスモス、エックスのフュージョンカードを取り出す。

 

「コスモスさんっ!」『フワッ!』

「エックス殿っ!」『イィィィーッ! サ―――ッ!』

「「慈愛の心、お借りしますっ!!」」

[フュージョンアップ!]

 

 ウルトラフュージョンカードとオーブライトリングの力で響と貴音が合体し、オーブの姿に変身を遂げた。

 

[ウルトラマンオーブ! フルムーンザナディウム!!]

 

 倒れるグクルシーサーにギャラクトロンが指先からの光線を放つが、その間に割って入ったオーブ・フルムーンザナディウムのバリアが光線を遮断しグクルシーサーを守った。

 

『「これ以上の狼藉は許しません!」』

『「君、大丈夫か!?」』

 

 響が呼び掛けると、味方と判断したグクルシーサーはコクリとうなずいた。

 

『「よかった……」』

『「響、来ますよ!」』

 

 ギャラクトロンは即座にオーブに狙いを移して、後頭部のトサカを切り離し、戦斧にして武装。オーブに斬りかかってくる。

 

『「たっ!」』

 

 素手で斧を受け流してギャラクトロンに立ち向かうオーブだが、斧の圧力はすさまじく、力を受け流してもオーブは身体が抑えつけられた。

 

『「くっ、手強いぞ……!」』

『「ここは無理に倒そうとしなくて結構です。皆が逃げ切る時間だけ稼ぎましょう!」』

 

 オーブは攻撃をさばき続けることで、ギャラクトロンをこの場に釘づけにした。やがて宇宙船が沖合まで逃れ、ギャラクトロンの射程圏外まで離れると、ギャラクトロンもあきらめたか再び魔法陣を使って退散した。

 

『「ふぅ……」』

 

 ひとまず危機を脱したことで響が息を吐くと、姿が見えなくなっていたアイルが再び現れ、グクルシーサーにペンダントをかざす。

 グクルシーサーが光となってペンダントに吸い込まれていき、響と貴音もフュージョンアップを解除してアイルの元に着地した。

 

「ありがとう、グクルシーサーを助けてくれて」

「アイルさん……」

 

 礼を述べてきたアイルと、響たちは視線を交わした。

 


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