THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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私たちのM@STERPIECE

 

 765プロ事務所では小鳥と高木が、洋館に向かったまま戻らないガイたち、彼らの様子を確かめに行った未来たちの安否を案じていた。特にデアボリックが街を襲い出し、オーブとエックスが倒されてからは、ともすれば倒れてしまいそうなほどに気持ちが焦燥していた。

 しかし律子が置いていき、静香が撮影を代行したカメラからパソコンの画面に流れているウルトラマンオーブ・オールスターの英姿によって、一気に安堵へと変わったのだった。

 

「社長、見て下さい! この姿……!」

「ああ……! あれこそが、みんなのたどり着いた境地……!」

 

 小鳥も高木も、オーブの姿から状況を把握し、そして彼らの勝利を固く信じた。

 

 

 

 ムルナウはオーブ・オールスターの全身から醸し出される、視覚からではなく魂に直接訴えかけてくるような神々しい迫力に衝撃を受けていた。

 

「何なのあの美しさ! 私の宝石より美しいなんて……!」

 

 サデスはじっとしていられないほどに大興奮。

 

『すごいじゃないかぁーガイ君ッ! 感動したッ! 僕も、本気で行くぞーッ!!』

 

 そして未来、静香、翼はオーブを力いっぱいに応援した。

 

「いっけぇぇぇ――――っ!! 765プロぉぉぉぉぉ――――――――っっ!!!」

 

 それに応えるように、オーブの中の宇宙で貴音がスラッシャースターを手にする。

 

『「エース殿っ!」』

『テェェーイッ!』

 

 貴音の後ろにエースのビジョンが生じ、スラッシャースターが臙脂色に輝いた。

 

「『カーマインスペースギロチン!!」』

 

 そして投擲されたスラッシャースターが三つの臙脂色の光輪に分かれ、サデスを六つに切断する!

 

『スッ! テッ! ピィィィ―――――ッ!!』

 

 バラバラに切り刻まれたサデスは一瞬の内に爆発四散!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 マガタノデアボリックはサデスを一蹴したオーブに一斉砲火を繰り出した。が、その時に貴音がスラッシャースターを亜美と真美に渡す。

 

『「ギンガ兄ちゃんっ!」「ビクトリー兄ちゃんっ!」』

『シュワッ!』『オリャアッ!』

 

 エースと同じようにギンガとビクトリーのビジョンが亜美と真美の後ろに浮かび、スラッシャースターからエネルギーをカラータイマーに移す。

 

「「『イエローツインエスペシャリー!!!」」』

 

 オーブの全身から銀河型の円盤と無数の光弾が放たれ、砲弾を全て押し返してデアボリックに直撃した!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 デアボリックは肉体の各所が爆発に見舞われる。

 

『おお……!』

『すごい……!』

「感心してんじゃねーよっ!!」

 

 ため息を漏らした側近のスーパーヒッポリト星人、テンペラー星人を怒鳴りつけるムルナウ。

 

「お前らも行くんだよっ!」

 

 テーブルのベルがチーンッ! と叩かれると、二人の足元に落とし穴が開いて円盤から投下されていった。

 

『あぁーッ!?』

 

 増援として送り込まれたヒッポリト星人とテンペラー星人は、デアボリックに追撃を掛けようとしていたオーブの背面を光線で狙い撃つ。

 

『はぁーッ!』

「グワァァッ!?」

 

 オーブはデアボリック、ヒッポリト星人、テンペラー星人に囲まれ、同時に襲い掛かられる。

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

『はぁッ!』

『むぅんッ!』

 

 三方向から飛んでくる殴打をさばきながら、スラッシャースターが亜美真美から伊織に渡された。

 

『「あんたたち邪魔よ! アグルっ! ゼロっ!」』

『ジェアッ!』『テヤッ!』

 

 伊織の後ろにアグルとゼロのビジョンが現れ、スラッシャースターを額へと持ち上げる。

 

「『ピンクリキデイタースラッシュ!!」』

 

 一回転しながら額から発射したピンク色の光線で敵を薙ぎ払う。

 

『ぐうわあぁッ!』

 

 一旦はデアボリックたちを押し返すものの、二人の宇宙人も強豪種族。そうそう簡単には倒れなかった。

 765プロオールスターズ全員とフュージョンアップし、過去最高に力がみなぎっているオーブだが、身体は一つだけ。三対一のハンディキャップでは流石に攻めあぐねている。

 

「頑張れー! オーブ!」

 

 苦闘するオーブを懸命に応援している未来たち。すると、その場に、

 

「フッフッフッフッフッ……!」

 

 麗華たちを連れたジャグラーがぬっと現れた。静香が一番に気がつく。

 

「あなたたちは、魔王エンジェル!?」

「何でここに……!?」

 

 もう何度目かの驚きを浮かべる未来たちに構わず、ジャグラーはダークリングを持ち上げた。

 

「さぁ、クライマックスだ! 麗華、りん、ともみ、用意はいいか!?」

「いつでもいけるわっ!」

「遂にこの時が来たんだねー!」

「ちょっと緊張するかも……」

 

 ジャグラーの呼びかけに麗華たちが応え、そして三人は怪獣カードを取り出した。

 

「そ、そのリングとカードはっ!」

 

 目を剥いた翼たちの前で、麗華からカードをリングに通す。

 

「ゼットンさんっ」

[ゼットン!]『ピポポポポポ……』

 

 麗華の隣にゼットンのビジョンが現れ、次いでりんがカードを通す。

 

「パンドンさんっ!」

[パンドン!]『ガガァッ! ガガァッ!』

 

 りんの横にパンドンのビジョンが出現。最後にともみがカードを通した。

 

「ブラックエンドさんっ……」

[ブラックエンド!]『ガアアアアアアァァァァ!』

 

 ともみの元にブラックエンドのビジョンが出てくると、ジャグラーがダークリングを高々と掲げた。

 

「闇の力、お借りしますッ!」

 

 ダークリングの力によって魔王エンジェルが三体の怪獣のビジョンとともに、ジャグラーと融合!

 

『超絶合体! ゼッパンエンド!!』

 

 爆発の中から、大怪獣に変身したジャグラーが飛び出していく!

 

『ハハハハハハハハハッ!』

 

 ゼッパンドンの肩から一対の巨大な角を生やし、先端がハサミ状の尻尾を持った怪獣。魔王エンジェルと、三体の怪獣の力をその身に宿した、超合体魔王獣ゼッパンエンドだ!

 これに愕然とする亜美。

 

『「ぱ……パクり! パクりだよ兄ちゃんっ!」』

『人聞きの悪い。リスペクトと言ってもらおうか!』

 

 しれっと豪語したゼッパンエンドが、オーブの背後から火炎弾を連射した!

 

「グッ!?」

 

 一瞬身を固めたオーブだったが、火炎弾はデアボリックたちの方に降り注いだ。

 

『うわあああぁぁぁぁぁぁ―――――――!?』

『熱ッ! あーついッ! あぁ――――ッ!』

『「あんたたち……!」』

 

 伊織が驚いてゼッパンエンドに顔を向けると、その中から麗華たちが返した。

 

『「765プロ。あんたたちは、私たちがステージの上で倒すのよ」』

『「あんな奴らに横取りなんかさせないんだから!」』

『「という訳で、よろしく」』

 

 ゼッパンエンドが前に出て、マガタノデアボリックと対峙する。

 

『オロチよ、下克上させてもらうぞ!』

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 デアボリックが集中砲火を繰り出すが、ゼッパンエンドは正面にバリアを展開。

 

『ゼッパンエンドシールド!』

 

 砲撃は完全に防がれ、更に反射されてデアボリックに返された。

 

「ピュウオ――――――――――ッ!!」

『おのれぇッ!』

『裏切り者どもめぇッ!』

 

 代わってヒッポリト星人とテンペラー星人が光線を撃ち込むも、ゼッパンエンドは火炎攻撃で押し返した。

 

『ぎゃあああぁぁぁぁぁ―――――ッ!!』

『ふッ、流石ブラック店長から譲ってもらったカードを使ってるだけのことはある』

『「何度も頭下げた甲斐があったね」』

 

 ともみがそうつぶやいた。

 オーブも負けてはいられない。デアボリックの砲火を走り抜けながら、天高く跳躍。真がスラッシャースターを手にする。

 

『「ジャックさんっ! レオさんっ!」』

『ヘッ!』『ダァッ!』

 

 エネルギーを突き出した脚に移し、黒く輝くきりもみ回転キックでデアボリックに攻撃。

 

「『ブラックスピンキーック!!」』

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 飛び蹴りがデアボリックの横面を捉え、デアボリックは横転した。

 

「いっけぇー! そこだぁーっ!」

「怪獣も宇宙人もやっつけろー!!」

 

 未来や翼たちはノリノリでオーブとゼッパンエンドを応援するが、その時、

 

『誰をやっつけろですって?』

「えっ!?」

 

 背後からガッツ星人が忍び寄り、三人を拘束光線で捕らえた!

 

「きゃああああっ!?」

『動くな、ウルトラマンオーブ。今すぐ抵抗をやめなさい。彼女たちが死ぬことになりますよ』

 

 卑劣にも未来たちを人質にするガッツ星人! ゼッパンエンドも吐こうとしていた火炎を止めざるを得なかった。

 

『うッ!?』

『ヘッヘッヘッ!』

『うりゃああああぁぁぁぁぁッ!』

 

 それをいいことに、ヒッポリト星人とテンペラー星人はゼッパンエンドに光線と火炎をあらん限り食らわせた!

 

『「「「うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」』

『うぐああああぁぁぁぁぁ―――――ッ!』

 

 無抵抗のところを散々にやられ、ゼッパンエンドも耐え切れずに消滅。ジャグラーたちは合体が解けて地面に投げ出された。ダークリングも転がっていく。

 

「……一つ、分かったことがある……」

「何……? プロデューサー……」

 

 倒れたまま発したジャグラーに聞き返す麗華。

 

「正義の味方って……めんどくせぇ」

「同感……」

 

 そして四人そろって、がっくり倒れ伏したのだった。

 ゼッパンエンドが退けられたことで、オーブは再び三体の敵に襲われる。

 

『大人しくしろぉッ!』

『ふははははぁッ!』

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

「ウゥゥッ!」

 

 未来たちを盾にされているため、オーブはろくな抵抗も出来ずに袋叩きにされる。

 

『「こ、このままじゃまずいよ……!」』

『「しかし、人質をどうにか出来ないことには……!」』

 

 焦る真と貴音。オーブはこのままなす術なくやられてしまうのか!?

 

『素晴らしい。これぞ史上最大の……!』

 

 しかしその時、ガッツ星人の頭に銃撃が浴びせられた!

 

『ぐわぁッ!?』

「誰か忘れちゃいないかな?」

 

 渋川であった。ガッツ星人が倒れたことで、光線が消えて未来たちは自由になる。

 

「渋川さん!」

「助かったよぉーっ!」

「おいッ! 逃げろッ!」

『おのれぇぇぇーッ!』

 

 すぐに起き上がって追ってくるガッツ星人から、渋川は未来たち三人を連れて逃げていく。

 

『「今よっ!」』

 

 すかさずあずさがスラッシャースターを握る。

 

『「タロウさんっ!」』

『トワァッ!』

「『パープルファイヤーダイナマイト!!」』

 

 スラッシャースターを振って紫色の爆発を起こし、デアボリックたちを纏めて吹っ飛ばした。

 

『ぎゃああああああッ!?』

 

 翼は逃走する途中、道の上に落ちているダークリングを発見した。

 

「あっ! 赤い輪っか見っけ!」

 

 すぐに拾い上げると、静香が言う。

 

「あずささんが教えてくれたことには、これが悪者たちの力の源だとか!」

「よーし、壊しちゃえ!」

 

 未来たちが協力してダークリングを引っ張るが、そこにガッツ星人が追いついてきた。

 

『やめろッ! やめなさいッ!』

「わぁぁぁ来たぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

 ダークリングを持って走る未来たち。ガッツ星人が近づくと、パスを回して遠ざける。

 

「はい静香ちゃんっ!」

「翼っ!」

「渋川さんっ!」

『寄越しなさい! 投げるんじゃないッ!』

 

 だが渋川から未来へ渡されると、未来はキャッチし損ねて落としてしまった。

 

「わぁぁぁっ!?」

「何やってんだよおいッ!」

「未来のドジーっ!」

 

 そこをガッツ星人に取られてしまう。

 

『リングはもらった!』

「とりゃあーっ!」

『あ痛いッ!』

 

 しかしその瞬間に魔王エンジェルが飛び込んできて、三人掛かりのパンチをもらってガッツ星人は殴り飛ばされた。

 放り出されたダークリングは、ジャグラーが受け止めた。

 

「ジャグラスジャグラー!?」

 

 驚愕する渋川。ジャグラーは彼らに目をやりながら語った。

 

「こいつは、宇宙で一番邪な心の持ち主の元にやってくる。……ダークリング、愛してるぜ」

 

 そしてダークリングを投げ飛ばし、その先の空間を蛇心剣で切り裂いた!

 

『あッ!? あああぁぁ―――――ッ!!』

 

 ダークリングは虚空の彼方へと転落していく。

 

「あぁーもったいない……」

「また巡り会えるよ」

 

 惜しむりんにともみが諭し、閉じる空間の穴に消えるダークリングを見送った。

 

「ノオオオォォォォォォォォォォォォ――――――――――――――――――っっ!!!」

 

 絶叫するムルナウ。ダークリングが消えたことで、拡張されていたムルナウの魔力もまた消え去るのだ。

 つまり、宝石にされたものは全て元に戻る!

 

「トゥアッ!」

「テヤッ!」

「ショアッ!」

 

 宝石にされていたウルトラマン三人から光弾が発射され、オーブを取り囲んでいたデアボリックたちを弾き飛ばした!

 エックス、ギンガ、ビクトリーの三人が復活したのだ!

 

「やったぁぁぁっ!」

 

 喜ぶ未来たちの後ろで、ジャグラーたちは苦笑しながらひっそりと立ち去っていった。

 

『「エックスさんたち! ありがとうございます!」』

 

 オーブが三人の元へ向かい、律子が礼を述べた。エックスはオーブに告げる。

 

『君たち皆のあきらめない心が、私たちの光を呼び戻したんだ!』

『「ギンガ兄ちゃん! ビクトリー兄ちゃん! はじめましてー!」』

『「いつも二人のカードにお世話になってまーす!」』

 

 亜美と真美ははしゃぎながら本物のギンガとビクトリーに挨拶した。ギンガがはにかむ。

 

『「元気な子たちだな。よしッ、一緒にあいつらやっつけようぜ!」』

『「俺たちと、お前たちの絆を見せる時だ!」』

 

 並び立つ四人のウルトラ戦士。宇宙人たちの方にもガッツ星人が巨大化して加わる。

 そして両陣営互いに光線を撃ち合いながら突撃し、正面からぶつかり合った!

 

「ショオラァッ!」『ぬぅぅッ!』

「テヤァッ!」『いやりゃあッ!』

「イィィッ! シェアァッ!」『ふぅぅぅんッ!』

「ウゥッ! シュアァッ!」「グギャアァァァ――――!!」

 

 ギンガとテンペラー星人、ビクトリーとヒッポリト星人、エックスとガッツ星人、そしてオーブとデアボリックが衝突! 各個に激しく格闘する様を、未来たちが魅せられたようにカメラに撮り続ける。

 その途中で、未来たちは自分らの姿もカメラに入れながら、ネットから視聴している人たちに向けて呼びかけた。

 

「これを見てる皆さん! 皆さんの声を、ウルトラマンに届けて下さいっ!」

「わたしたちと一緒に、ウルトラマーン! 頑張れー! って応援して!」

「皆さん! 行きますよっ!」

 

 

「ウルトラマ―――――ンっ!! 頑張れぇぇぇ――――――――っっ!!!」

 

 

 あなたたちの応援の言葉に応えるように、美希がスラッシャースターを握り締めた!

 

『「ゾフィーっ! ティガっ!」』

『ヘアッ!』『タァーッ!』

「『フレッシュ87フラッシュ!!」』

 

 カラータイマーからまばゆい閃光が発せられ、マガタノデアボリックの全身にスパークを引き起こす!

 

「グギャアァァァ――――!! ピュウオ――――――――――ッ!!」

 

 デアボリックは身体を支え切れなくなって倒れ込んだ!

 

『ぬぅぅぅ……! こうなれば秘密兵器ですッ!』

 

 エックスに押し飛ばされたガッツ星人が手を掲げると、頭上にキングジョーのパーツの円盤がワープしてきた。

 

「フッ!?」

 

 しかもただのパーツではない。ガッツ星人に纏わりついて、その身体を覆う鎧となったのだ! 頭部の上半分がキングジョーの兜で包まれたガッツ星人が言い放つ。

 

『これで私はキングガッツ星人です。宇宙最高の鎧を纏った力、見せてあげましょう!』

 

 鎧を装着してパワーアップしたキングガッツに、ダイチは言い返す。

 

『「最高の鎧だったら、こっちにもあるぞ!」』

 

 デバイザーにウルトラマンとティガのデバイスカードを挿し込み、ベータスパークハートを展開する!

 

『ヘッ!』

『シェアッ!』

[ベータスパークハート、セットアップ]

「イィッ! シェアッ!」

 

 白銀のバリアジャケットを装着し、長杖を手にしたエックスの放つ桃色の輝きに照らし返されるキングガッツ。

 

『何と!?』

『「俺たちの創り上げた奇跡、その身に受けてみろッ!」』

『小癪なぁッ!』

 

 ギンガとビクトリーに押し返されたヒッポリト星人とテンペラー星人は詰め寄り、ヒッポリト星人が呼びかけた。

 

『こちらも奥の手だ! いざヒッペラー星人に!』

『それを言うならテンポリト星人だろう!』

『何言ってんだ!』

『何だよ!』

『俺の方が先輩だぞ!』

 

 言い争っている間にギンガとビクトリーは宙に飛び上がって攻撃してくる。

 

『「ギンガサンダーボルト!」』

『「ビクトリウムスラッシュ!」』

『ぎゃああああッ! えぇいもう何だっていいッ!』

『合体だぁぁッ!』

 

 ヒッポリト星人とテンペラー星人が互いのエネルギーと生体情報を混ぜ合わせ、両者を足して二で割らなかったようなゴチャゴチャした一人の宇宙人に合体した!

 

『『ハッハッハーッ! 凄まじいパワーだぞぉ! こいつでねじ伏せてやるッ!』』

 

 だがギンガとビクトリーは失笑した。

 

『「打算だけの合体で俺たちを上回れると思ったら大間違いだぜ!」』

『「真の合体がどういうものかを教えてやる!」』

『「「見せてやるぜ! 俺たちの絆ッ!!」」』

 

 ヒカルのウルトラフュージョンブレスに、ショウがビクトリーランサーを重ね合わせる。

 

『「「ウルトラターッチ!!」」』

 

 ギンガとビクトリーの身体も重なり、一人のウルトラマンとなって降り立つ!

 

『「「ギンガビクトリー!!」」』

 

 全身から半端ではないエネルギーの波動を発するウルトラマンギンガビクトリーに、ヒッポリト星人とテンペラー星人による合体星人は一瞬たじろいだ。

 

『『く、くそぉぉぉ……! 負けてなるものかぁぁぁッ!』』

 

 エックス・ベータスパークハートとキングガッツ、ギンガビクトリーと合体星人が改めて激突し、戦いはヒートアップしていく!

 

「すごいすごーい! あっちもこっちもパワーアップ!」

「いっけぇ―――っ! ウルトラマぁーンっ!」

 

 未来と翼が興奮し切って応援を飛ばすが、その時静香があらぬ方向を指差した。

 

「み、見てあれっ!」

 

 その先には、最初にオーブにバラバラにされたサデスのパーツが転がっているのだが――その腕がピクリと動いたのだ!

 そして全てのパーツが集まっていき、サデスが再生する!

 

『まだイケるまだイケるよぉッ! こんな熱い展開に、死んでる暇なんかな―――いッ!!』

 

 完全に復活したサデスは雄叫びを上げながら、マガタノデアボリックの背後に回り込んだ。

 

『よし行くぞッ! しっかり頼むぞッ!』

 

 後ろからデアボリックを叩いて呼びかけると、背面にある穴状の突起に腕を突っ込んだ。

 

『マガタノデアボリックキャノン、スタンバイ!』

 

 サデスの操作によって、デアボリックが大口を開けてその中からひと際巨大な砲身が突き出た!

 これを一瞥したダイチが目を見張る。

 

『「あれはッ! 一撃で大都市を焦土に変えたという、デアボリックの主砲!!」』

「ッ!!」

 

 その言葉を聞き止めて足を止めるオーブ。

 

『ウルトラマンオーブ、ロックオォンッ!』

 

 発射阻止はもう間に合わない。サデスはオーブに照準を合わせて、発射準備を済ませている。

 

『「コスモスさんっ!」』

『テアッ!』

 

 その代わりに響がスラッシャースターを握り、浅葱色に輝かせた。

 

『撃てぇぇぇ――――ッ!!』

「『ライトムーンバリア!!」』

 

 放たれた暗黒の大砲撃を、オーブは浅葱色のバリアで受け止める!

 

「ウッ、グッ……!」

 

 必死で持ちこたえるだが、バリアは耐え切れずに砕かれてしまう!

 

「ドワアアアァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 バリアで減衰してなお、砲撃はオーブを吹っ飛ばしてビルを突き破り、高層ビルに叩きつけて丸ごと倒壊させるほどの破壊力であった!

 

「お、オーブぅぅぅぅぅぅぅ―――――――――!!!」

 

 たまらず悲鳴を上げる未来たち。オーブは崩壊したビルの瓦礫の上に倒れ、カラータイマーを鳴り響かせていた。

 だがサデスは容赦なく次撃の装填を行う!

 

『まだイケるだろう!? ここで頑張らないと、ゲームオーバーだぞぉー!?』

 

 マガタノデアボリックキャノンに闇のエネルギーが充填されていく。しかしオーブはダメージが大きく、起き上がれずにいる。

 

「ウゥゥ……!」

『「うっ、うぅ……!」』

 

 アイドルたちも苦痛にあえいでいると――オーブの顔の側に、一人の男性が歩み寄ってきた。

 

「お困りのようだね!」

 

 男性の姿に、千早があっと口を開いた。

 

『「あの人は……さっき助けてくれた……!」』

『あなたは、誰です……?』

 

 オーブが問いかけると、男性は千早の時と同じ返答をした。

 

「誰でもない。ただの、風来坊さ!」

 

 そして懐から――真紅のグラスを取り出し、己の顔に身に着けた!

 

「デュワッ!!」

 

 男性――モロボシ・ダンの姿が頭から真紅の戦士に変身していき、巨大化してオーブの側に立ち上がった!

 オーブと千早たちは、一枚のカードと同じ勇姿に驚愕した。

 

『あなたは!?』

 

 戦士の名前を、ガッツが、エックスが、ヒカル、ショウが、ムルナウが叫ぶ。

 

『セブンッ!』

『セブン!?』

『「セブン……!」』

『「セブン!」』

「セブンっセブンっセブンっ!! 忌々しい~! こうなったらあいつもやっておしまいっ!!」

 

 命令するムルナウだが、千早はウルトラセブンを熱く見つめていた。

 

『「お母さんを救ってくれた人……! 私に命と、歌声をくれたっ!!」』

 

 千早の沸き上がる感情によってオーブの力が戻り、両の足で立ち上がった!

 

『「セブンさんっ! マックスさんっ!」』

『『ジュワッ!』』

 

 千早が握り締めたスラッシャースターが青く輝き、スラッガーに変化する。

 

『発射ぁぁぁぁ――――――ッ!!』

 

 サデスがマガタノデアボリックキャノンを撃ってきたが、オーブとセブンは同時にスラッガーを投擲!

 

「『ブルースラッガーソード!!」』

「デュワァッ!」

 

 二つのスラッガーが暗黒光線を切り裂いて進み、サデスの腕を切断する!

 

『うわぁぁ――――――ッ!? 手ッ、手ぇッ!!』

 

 文字通りサデスから切り離されたデアボリックは支えがなくなって転倒した。

 

「『ウルトラセブンさん……!」』

 

 呼びかけたオーブと千早に、セブンはおもむろにうなずき返した。

 腕を切り落とされたサデスだがすぐに立ち上がる。

 

『流石生涯現役ぃッ! そう来なくっちゃ面白くないぜぇッ!』

 

 新しく腕を生やしたサデスが全身でセブンに飛び掛かっていくが、受け止められて地面に叩きつけられた。

 

「デュワッ!」

『うあっちゃあッ!?』

 

 セブンはそのままサデスと格闘。この様子に、ムルナウはいよいよ怒りが頂点に達した。

 

「おのれぇぇぇ~どいつもこいつもぉぉぉぉ~! こうなったら、容赦なしよぉぉっ!」

 

 円盤からオーブに叫びつけるムルナウ。

 

「オーブっ! 宇宙を見てみなさいっ!」

「フッ!?」

 

 空を見上げたオーブは――超視力で、地球の衛星軌道上に恐ろしいものを発見してしまう。

 

『あ、あれは……!?』

 

 何と宇宙空間に、おびただしい数のバルタン星人が待機しているのだ!

 

「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ……!」

「万が一の時のために、ダークリングで召喚しておいたバルタン星人の大群よ! こいつらに地球全土を襲わせてやるっ! どんな力があろうとも、違う場所には手出しできないでしょう!」

 

 ムルナウは最早何もかもをかなぐり捨て、一切の手段を選ばずオーブたちに報復しようというつもりであった!

 

「地球はあんたたちのせいで壊滅するのよ! ざまぁみなさいっ! オーホホホホホホっ!!」

 

 狂気の高笑いを上げるムルナウだったが――そのバルタン星人の大群に、いきなり光線が浴びせられた!

 

「フォオッ!」

「な、何事!?」

 

 動揺したムルナウが確認すると――宇宙にいるのはバルタン星人だけではない。ウルトラマンゼロが、バルタン星人に攻撃したのだった!

 

『へッ……待たせたな!』

 

 ゼロはオーブにテレパシーで呼びかける。

 

『オーブ! こっちは任せな! 仲間、連れてきたぜ!』

 

 そしてバルタン星人に立ち向かうのはゼロだけではない。彼の後ろに――ミッドチルダの管理局の次元航行船団が陣形を整えていた!

 宇宙空間広域にフィールドが張られ、魔導師たちも大勢船の外に出てバルタン星人の軍団と対峙している。その内の一人が、ダイチに通信で呼びかけた。

 

『ダイチくん、聞こえてる!?』

『「なのはさん!」』

『地球には一切手出しさせないから! そっちも、必ず勝って!』

『「……分かりました! みんな、ありがとうッ!」』

 

 ダイチは駆けつけてくれた仲間たちに気持ちいっぱいの感謝の言葉を告げ、改めてキングガッツと激突する。

 

『よぉーしみんな! 行っくぜぇぇぇーッ!』

 

 ゼロの鬨の声を合図に、別世界から地球の危機を救いに集った魔導師たちは一斉にバルタン星人と交戦する!

 

「ちっくしょおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――――――――――っ!!」

 

 思惑の全てを打ち破られたムルナウは、ただただ地団太を踏む以外になかった。

 いくつもの世界から、たくさんの仲間に支えられているオーブは、熱くたぎる感情を胸にパワーを回復させる。

 

『ここが俺たちの、最高のステージだ! ラストスパート、決めていくぞぉぉッ!!』

『「「「「「「「はいっっっ!!!」」」」」」」』

 

 アイドルたちの応答とともに、オーブはもう一度マガタノデアボリックに向かっていった!

 


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