THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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Miraclemaker(A)

 

「“むくつけなる巨大な魔物、禍邪波が現れ、水を禍々しく乱す”」

「じゃあ、水が突然臭くなった怪奇現象の原因って……」

「日本だけじゃないです!」

「今の内に止めないと、数え切れない人たちが苦しんじゃう……!」

「ここにいる私たちが、どうにかしないといけないんですっ!」

「一人じゃまともに変身できなくなったような男が」

「俺は本気のお前と戦り合いたい」

「こんなもんか? 今のお前は」

「最後の一枚もこの調子で頼むぜ……オーブ」

 

 

 

『Miraclemaker』

 

 

 

 ――六月の東京都心。気温、約40℃。

 

「あっつぅ~……」

 

 765プロ事務所では、アイドルたちがあまりの暑さに汗だくとなり、すっかりへばっていた。亜美と真美が、デスクに向かって事務仕事の手伝いをしている律子に後ろから這い上がるようにしなだれかかる。

 

「ねぇ律っちゃ~ん……エアコンの修理の人はいつになったら来るの~……?」

「扇風機だけじゃ、とても耐えらんないよ~……」

「ちょっと、くっつかないでよ。余計暑くなるじゃない……」

 

 事務所のエアコンには「修理中」という張り紙がでかでかと貼ってあった。

 

「いつ来るのかなんて、私にも分からないわ。明日か明後日か、もっと先かも……」

「え~!? 今日中に来てもらわないと、真美たち溶けちゃうよ~!」

「しょうがないでしょ。この突然の猛暑のせいで、どこのお店もてんてこまいみたいなんだから……」

 

 はぁぁ、と大きなため息を吐く律子。事務所はエアコンが壊れてしまったため、窓を全開にして扇風機で風を通しているが、気温が高すぎて効果が出ているとは言いにくいありさまであった。

 

「や~だ~! 耐えられないよ~! 誰か何とかして~!」

「はしたないですよ、亜美。苦しい時にこそ、精神を平静に保つのです。心頭滅却すれば火もまた涼しです」

 

 駄々をこねる亜美を貴音が咎めたが、

 

「そういうお姫ちんだって、玉のような汗かきっぱなしじゃん」

「これは……生理反応は致し方ないものです」

 

 亜美の言い返しに、そう弁解する貴音であった。

 響は扇風機の一台の前に陣取りながら、あぁ~と声を出す。

 

「あ~つ~い~ぞ~……。本州の梅雨は六月じゃなかったのか? それなのに空気はカラッカラで、気温ばっか高くなって……。ねぇ律子、これどういうこと?」

「だから、何でもかんでも私に聞かないでよ。でも確かに変ね……。いくら地球温暖化や都市部のヒートアイランド化現象が騒がれてるとはいえ、予報じゃこんな急激な気温上昇なんて話は一つもなかったのに……。これも異常気象の一種かしら?」

 

 律子がぼやいていると、ガイがビニール袋を片手に事務所に帰ってきた。

 

「お前たち! アイス買ってきたぞー!」

 

 途端にアイドルたちは顔に生気が戻り、目を輝かせた。

 

「アイス~!! わーい、兄ちゃん大好きー!」

「ほら、一人一本な」

 

 一人一人にアイスキャンディーを配るガイだが、その時ケータイが着信を知らせる。レッスンに出かけている春香からだった。

 

「おっと悪い。……春香、どうした? まだレッスンが終わるには大分早いだろ」

『プロデューサーさん! それが、あずささんがまだスタジオに来ないんです』

「何? まさか……」

『はい……またどこかで迷子になってるみたいですね……』

 

 電話口で大きなため息を吐く春香。765プロアイドル最年長の三浦あずさは、とても落ち着きのある大人の女性なのだが、極度の方向音痴という重大な欠点を抱えているのだった。

 

「またかぁ……。あずささん、どうして何度も通ってるスタジオまでに迷子になるんだ?」

『私に言われても、何とも……。それで悪いんですがプロデューサーさん、迎えに行ってもらえませんか?』

「えぇッ!? この炎天下の中をか!?」

『お願いします』

 

 春香に続いて、小鳥もガイに頼む。

 

「プロデューサーさん、行ってあげて下さい。迷子になったあずささんは、一人じゃ目的地にたどり着けないですし……」

「全く、しょうがないな……。もしもし、あずささん?」

 

 はぁ、と息を吐いたガイはあずさのケータイに電話を掛けた。

 

『あっ、プロデューサーさん。すみません、私また迷子になっちゃったみたいで……』

「春香から聞きました。何か現在地が分かりそうなものは周りにないですか? 下手に動かず、じっとしてて下さいよ」

 

 あずさからの情報で彼女の現在地を判断したガイが、通話を切って踵を返す。

 

「それじゃあ行ってくる」

「兄ちゃーん、いってら~」

「お外暑いけど、がんばってねー」

 

 亜美たちがガイを見送った後で、雪歩が苦笑いを浮かべた。

 

「あずささん、相変わらずだね……」

 

 それから真が小鳥にこんなことを尋ねかけた。

 

「ねぇ小鳥さん、社長はどうしてあずささんも、ウルトラマンオーブの変身役の候補にしたんでしょうね?」

「えっ?」

「あずささん、普段からおっとりしてるというかのんびりしてるというかで、一番荒事には向かないタイプじゃないですか。それなのにどうしてかなって思って」

 

 と聞かれて、小鳥は肩をすくめた。

 

「さぁ。あたしにも、社長の考えの全部が分かる訳じゃないし。でも社長のことだから、あずささんにも光る何かを見出したはずよ」

「ふぅん? ボクにはよく分かんないけど……」

 

 小首を傾げた真を尻目に、亜美、真美、響はアイスキャンディーを袋から取り出して、大口を開けて被りつこうとしていた。

 

「いっただきまーす!」

 

 しかしその瞬間、窓からぶわぁッ! と凄まじい熱風が吹き込んで、アイスが一気に消し飛んでしまった。

 

「きゃっ!? 何今の!?」

「あぁぁー!? アイスがぁぁぁぁ――――――――!?」

 

 ガーン! とショックを受ける亜美、真美、響、貴音。

 律子は窓から外に顔を出して、ギョッと目を見開いた。

 

「そ、空に巨大なファイアーボールが!?」

 

 その言葉の通り、東京上空にギラギラとした太陽のような巨大な火の玉が発生していた。今の熱波は、火の玉発生の余波のようである。

 他のアイドルたちも火の玉を視認して、それぞれ驚きを露わにする。

 

「何だあれ!? あまりの暑さに、火の玉が出来ちゃったの!?」

 

 真の言葉を律子が否定する。

 

「いいえ! ファイアーボール現象は通常可燃性のガスや蒸気が空気に触れた時に発生するもので、どんなに暑くなろうとも気温とは関係しないわ!」

「じゃあ、あの火の玉は何ですかぁ!?」

 

 雪歩が叫んだ時――巨大な火の玉の内部に、双頭の鳥のような影が蠢いた。

 

 

 

 上空に出現した火の玉により、気温は更に急上昇。街の人々は急激に熱中症を引き起こし、次々と倒れていく。

 この事態はもちろん、あずさを迎えに出かけたガイも確認していた。空の火の玉の中に影を見上げてつぶやく。

 

「今度は火ノ魔王獣のお出ましか!」

 

 そこに春香が駆けつけてくる。

 

「プロデューサーさん、ここにいましたか!」

「春香! この騒ぎを聞きつけたか」

「はい! また魔王獣の出現ですか……!?」

「ああそうだ。また俺に、お前の力を貸してくれ!」

「分かりました!」

 

 早く魔王獣を倒さなければ、街中に死者が発生する惨状に発展する。春香はガイの要請にうなずき、ウルトラマンのカードを手にした。

 

「ウルトラマンさんっ!」

 

 カードをガイの出したオーブリングに通す。

 

[ウルトラマン!]『ヘアッ!』

 

 続いてガイがティガのカードを手にした。

 

「ティガさんッ!」

 

 カードをリングの間に通して、二人のウルトラマンのビジョンが現れる。

 

[ウルトラマンティガ!]『ヂャッ!』

 

 ガイがオーブリングを高々と掲げて、トリガーを引く。

 

「光の力、お借りしますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 ガイと春香、ウルトラマンとティガの姿が重なり合い、一つとなる。

 

[ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!]

 

 変身を遂げたオーブが飛び出していき、空の巨大火の玉へと一直線に向かっていった。

 

 

 

「ウルトラマンオーブ!!」

 

 火の玉へ飛んでいくオーブの姿を目の当たりにして、律子がアイドル仲間たちに振り返った。

 

「臨時『アンバランスQ』スタートよ! みんな、ついてきなさいっ!」

「おぉー!」

 

 カメラを手に取った律子を先頭にアイドルたちが一斉に事務所から飛び出していったが、

 

「……暑いっ!!」

 

 外に出たところで火の玉から放たれる熱波をもろに浴びて、たまらず引き返していった。

 

「みんな、傘よ!」

「ありがとうございます! 再出動よ!」

「おぉー!」

 

 小鳥から受け取った傘や麦わら帽子、上着などとにかく影を作れそうなものを盾に、気を取り直して事務所を飛び出していった。

 

 

 

 春香inオーブは火の玉に接近して、射程圏内に入れたところで空中に停止した。

 

『まずはあの炎を鎮火することからだ! 春香ッ!』

『「はいっ!」』

 

 春香とオーブの動きがシンクロし、手の平を合わせて前に突き出す。

 

「シュワッ!」

 

 すると手の間から大量の水が噴射され、火の玉に浴びせられる。

 

「オーブって手から水も出るんだ!」

「まこと、多芸ですね」

 

 響と貴音がオーブの水流について実況とコメントをした。

 オーブはそのまま水を絶え間なく噴射し続けたが――火の玉の燃える勢いは一向に衰える気配がなかった。

 

『「効果なしです、プロデューサーさん!」』

『くッ……だったら直接攻撃だ! 火の玉をぶった切るぞ!』

 

 オーブが両腕を左右に開き、右手に鋸歯の光輪を作り出す。

 

「『スペリオン光輪!!」』

 

 更にエネルギーを流し込み、自分の身長以上の直径まで巨大化させて投げつけた!

 

「オォォッ! シェアッ!」

 

 光輪が火の玉にめり込んで真っ二つにしようとするが……火の玉が激しく燃え盛ったことで消滅させられた。

 

『「これでも駄目なの!?」』

『まだまだ……! 行くぞ春香ッ!』

『「は、はいっ!」』

 

 オーブのボディの紫色の部分が光ると、火の玉の周囲を超高速で回り出す。あまりのスピードに、オーブが分身しているように見える。

 

「『スペリオン光線!!」』

 

 その状態から光線を発射し、360度全方位から照射する。これで火の玉を消し去る作戦だ。

 だがオーブが停止し、光線が途切れても、火の玉には全く変化が見られなかった。

 

「オーブの攻撃が全然効かない……!」

「頑張ってー! オーブ兄ちゃーんっ!」

 

 地上から大声で叫んでオーブを応援する亜美たち。そうしていると、彼女たちの元にあずさが駆けつけてきた。

 

「律子さん!」

「あずささん! 無事でしたか!」

「はい。……あのオーブは誰が?」

「美希とは連絡がついたから、多分春香……。でもさっきから苦戦しっぱなしなんです」

 

 あずさは不安げに、火の玉の前で手詰まりになっているオーブを見上げた。

 オーブの方は、とうとう胸のカラータイマーが赤く点滅を開始した。

 

『もう限界が近い……! 残念だが打つ手なしだ、一旦退却するぞ……!』

『「で、でもそうしたら地上が……!」』

 

 地上に目を落とす春香。街の中には、熱波によって倒れる人が今も増加中だ。

 それを視認した春香が、決意を固めた顔で重々しくうなずくと、オーブが火の玉の真下に回り込んだ。

 

『待て春香! どうするつもりだ! まさかッ!』

『「えぇぇぇぇーいっ!」』

 

 オーブは真下から火の玉に突撃し、バリアで熱を遮断しながら火の玉をはるか上空へと押し上げ始めた。

 

「火の玉を押し上げてる!」

「あのまま地上から遠ざける作戦か!」

 

 叫ぶ雪歩と真。春香の狙いは上手く行き、火の玉が地上から離されるにつれて熱波が収まっていく。

 だがあずさがハラハラしながらつぶやいた。

 

「でも、もう残り時間が……!」

 

 オーブは既に大気圏を抜け、火の玉を宇宙空間まで追放していた。しかしカラータイマーの点滅もどんどん早まっていく。

 

『これ以上は危険だ春香! 限界に達したら、お前もどうなってしまうか……!』

『「あ、後もう少しだけ……!」』

 

 制限時間のギリギリまで火の玉を地球から引き離したオーブであったが――遂にカラータイマーの輝きが消えてしまった。

 

『「あっ……!」』

 

 同時にオーブから全ての力が失われ、地上へ向けて真っ逆さまに転落、大気圏を突き抜けていく。

 

『「あああぁぁぁぁぁっ!!」』

『春香……! ぐぅッ……!』

 

 摩擦熱で赤熱化したオーブは、その後地上へ垂直に落下。街の中に、轟音を立てて墜落した。

 

「あぁぁー!? オーブがぁー!」

「た、大変! すぐ行きましょう!」

 

 血相を抱えた律子たちが、大急ぎでオーブの墜落した現場へと走っていった。

 

 

 

「うっ、うぅ……」

 

 オーブが落下した地点は、オーブの体型に道路がめり込んでいた。オーブの肉体は既に消え、陥没の中で春香が身を起こす。

 

「あ、あれ……? どこも怪我してない……」

 

 だが春香自身の身体には傷一つなかった。宇宙から大気圏を抜けて転落したというのに。

 

「プロデューサーさん!」

 

 が、ガイの方へ振り返った春香は――ボロボロのガイが仰向けに倒れたまま全く身動きしないのを目にして、息を呑んだ。

 

「そんな……!」

 

 今のガイの姿に、春香は顔色が青ざめる。

 

「どんなに戦っても私たちが苦しくならないのは、ダメージは全部プロデューサーさんが受け持ってたから……!? プロデューサーさぁんっ!!」

 

 慌ててガイの元へ駆け寄ろうとした春香だったが、それより早く別の者がガイの側に現れた。

 

「じ、ジャグラスジャグラー……!」

「何をしている?」

 

 ジャグラーは倒れたままのガイを冷たい目で見下ろした。

 

「お前はこんなものじゃないはずだ……」

 

 そしてガイの腕を強く踏みつけた。ガイの身体がビクンッ! と跳ね上がる。

 

「ぐあぁッ!」

「や、やめてっ! プロデューサーさんにひどいこと……!」

「邪魔だ! 今はこいつと話をしてるッ!」

 

 ジャグラーにすがりついて止めようとした春香だが、ジャグラーに一気に陥没の外へ投げ飛ばされた。

 

「きゃあぁっ!」

「お前は選ばれた戦士なんだろう? なぁ、光の戦士……。女一人の身代わりになるので精一杯なのか?」

 

 ジャグラーはガイの胸ぐらを掴んで無理矢理立たせた。ガイはキッとジャグラーをにらみ返す。

 

「どうした? もっと俺を愉しませてくれよ」

 

 それも意に介さず、ジャグラーはガイを勢いよく投げ飛ばした。ガイは建物の外壁に叩きつけられ、バタリと地面に落下する。

 

「プロデューサーさんっ!!」

 

 春香に駆け寄られるガイに、ジャグラーが最後に告げた。

 

「あまり時間はないぞ……」

 

 それを最後に、その姿が土埃の中に消えていった……。

 直後に、律子たちが現場に駆けつけてくる。

 

「春香! ぷ、プロデューサー!!」

「ひ、ひどい……!」

 

 ガイの惨状に、アイドルたちは絶句した。そこに渋川も走ってくる。

 

「おい! お前たちもいたか!」

「叔父さん……!」

「プロデューサー君じゃねぇか! こりゃひでぇ、誰がこんなこと……!」

「すぐに手当てを! とりあえず、私たちの事務所まで!」

「よしッ!」

 

 渋川に手を貸してもらいながら、アイドルたちはガイを事務所へと運んでいく。それを、春香が思い詰めた表情で見つめている。

 そんな春香の様子を、あずさが見つめ返した。

 

 

 

 事務所に運び込まれたガイは、ソファの上に寝かされて美希と千早に看病されていた。

 

「ハニー、早く元気になって……熱っ!? すっごい熱いの!」

「人の体温とは思えない熱さだわ……!」

 

 ガイの額に乗せたタオルを取り替えようとした美希と千早が、タオルのあまりの熱さに手で持てずに慌てた。律子はガイのバイタルをチェックして、思わず息を呑む。

 

「脈拍360、血圧400、体温に至っては90度……。とても普通の人間じゃ生きてられない状態だわ……」

「プロデューサー、やっぱり宇宙の人なんですね……」

「改めてそのことを実感したわね……」

 

 律子の言葉に、やよいと伊織が息を吐きながらも昏睡状態のガイを心配して目を伏せた。

美希たちはありったけの氷をガイに添えて、どうにか体温を下げようとする。

 一方で春香は、己を責めてスカートの裾をぎゅっと握りしめた。

 

「私のせいだ……! 私が忠告を聞かずに無理をしたから、プロデューサーさんをこんな目に……」

「春香……」

 

 アイドル仲間たちは、春香にどう声を掛けてやればよいか分からずに戸惑っていた。

 すると彼女たちに代わり、高木が春香に呼びかけた。

 

「いや、天海君が最後まであきらめずに戦ったことで、被害を最小限に抑えることが出来たんだ」

「社長……?」

 

 顔を上げる春香。

 

「あのまま火の玉が地上に陣取っていたら、大量の死者が出る事態にまでなっていただろう。君の頑張りは、多くの命を救ったんだ。そこは誇ってもいいことだ」

「でも、プロデューサーさんは私をかばって、こんなことに……」

「ガイ君がダメージの全てを受け止めているのは、力を貸してくれる君たちを傷つけまいとする男の心意気なんだ。その意を汲んでやってあげたまえ。それに、死んだ者なんて一人もいないんだよ? なのに助けた君にそんな暗い顔をされていては、逆にガイ君が苦痛に感じてしまうよ。目覚めた彼には、自責ではなく感謝の顔を向けてあげなさい」

 

 高木の説得により、春香は一旦うつむいた後、努めて明るい表情となって顔を上げた。

 

「はい……! 社長、ありがとうございます」

「うむ、いい表情だ。アイドルはどんな時も元気でないとね!」

 

 春香に元気が戻ったのを見て取って、仲間たちはほっと胸を撫で下ろした。

 それからガイの看病をしながら、今後の行動方針について話し合う。指揮を執るのは律子だ。

 

「火の玉は春香の尽力で宇宙まで押し出されて、ひとまずは最悪の事態は避けられたけれど、根本的な解決には至ってないわ。高度414キロの高空からでも、未だにその影響は地上に及んでる」

 

 現在の気温は42℃であり、猛暑は今も続いている。恐らく火の玉を消滅させないことには、この熱地獄からは解放されないであろう。

 

「ウルトラマンオーブの力でも抹消することが出来なかった火の玉……プロデューサーが目を覚ますまでに、攻略の作戦を立てておかないといけないわね。それと情報収集は、私と小鳥さんでやるわ。他のみんなはプロデューサーの看病をお願い。でも夜になったら、家族が心配するって人はちゃんと家に帰るのよ」

「ミキはハニーの看病のために残るよ! 家にはミキから外泊の許可をもらうの」

「私も、今日は事務所に泊まってプロデューサーについてるわ」

「私も……!」

「私も、みんなと一緒にプロデューサーさんの看病をします」

 

 美希、千早、春香、あずさが申し出て、この四人と律子、小鳥がガイの看病と作戦立案を担当することが決定した。

 地上を焦熱地獄にする巨大な火の玉に対抗するために、765プロは夜間も活動を続行していったのだった。

 


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