トップアイドルを目指して精進を重ねる傍ら、風ノ魔王獣マガバッサー出現から今日まで、次々に現れる怪獣の脅威からガイとともにウルトラマンオーブとなって世界を守ってきた765プロアイドルたち。その日々の中で、皆で笑い、泣き、苦労や喜びを分かち合うことで育まれた絆と勇気がオーブの光に認められたことにより、彼女らはウルトラ戦士の力を借りて、今ここに「ウルトラマンオーブ」になるという奇跡を起こしたのである!
「シェアッ!」
アイドルたちの変身した十四人のオーブの内、十二人が颯爽と大空へ飛び上がり、一旦宇宙空間を抜けて別々の方向へと飛び去っていった。彼女たちは世界中に散らばり、各都市を攻撃しているマガタノオロチの眷属怪獣を退治しに向かったのだ。
その内の一人、スカイダッシュマックスに変身した響はモスクワ上空で竜巻を引き起こしているマガバッサーを発見して一直線に急行していった。
『「やぁーっ!」』
響はその身一つで猛然とタックル! 不意打ちをもらったマガバッサーは対処できずに大きくはね飛ばされた。
「ミィィィィ――――! プォォォ――――――!」
グルグル回りながらはねられたマガバッサーだが空中で体勢を立て直して、響へ竜巻を繰り出す。しかしスカイダッシュマックスの超速飛行は風の速度も大きく上回っており、響は暴風も突き抜けてマガバッサーに迫っていく。
『「こんな竜巻なんてなんくるないさー!」』
突進とともに繰り出されたパンチがまともに決まり、マガバッサーは再び弾き飛ばされた。
バーンマイトとなったやよいはパリの美しい街並みを蹂躙するマガグランドキングに、頭上から炎の飛び蹴りを仕掛けた。
『「えーいっ!」』
「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
バーンマイトの猛火の如きパワーは、マガグランドキングの超重量の巨体も一撃で蹴り飛ばし、横転させた。
『「うっうー! 悪い子はお仕置きですぅー!」』
やよいの正義に燃える心に同調するように、全身が燃え上がるバーンマイトがマガグランドキングにぶつかっていき、重量差を物ともしないで押し込んでいった。
『「はぁーっ!」』
シドニーに到着したナイトリキデイター=律子は両腕から光剣を伸ばし、マガジャッパに斬りかかる。
「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」
ナイトリキデイターの流麗ながら精緻な剣技を見切れず、頭部に食らったマガジャッパが悶絶してよろめいた。
『「悪臭はもうたくさんよ! 文字通り元を断ってやるわ!」』
大きく見得を切った律子が激しく二刀を振るい、マガジャッパを押していった。
『「オーブスラッガーランス!」』
ハリケーンスラッシュ=伊織は上海でオーブスラッガーランスを召喚し、火球で身を包んで街を火の海に変えていたマガパンドンへ突撃。ランスのレバーを三回引いてスイッチを叩く。
『「トライデントスラッシュ!」』
超速の乱撃が火球に叩き込まれ、火球はズタズタに切り裂かれてマガパンドンの姿が露出された。
「ガガァッ! ガガァッ!」
地上に叩き落とされたマガパンドンは伊織へ火炎弾を連射するが、伊織はスラッガーランスを回転させて火炎弾を全て遮断した。
『「真冬にこんなガンガン暑くするんじゃないわよ! この伊織ちゃんが直々に社会の常識を教えてあげようじゃないの!」』
言い切った伊織が火炎弾を突っ切って距離を詰め、ランスの穂先をマガパンドンの双頭に振り下ろした。
『「はぁっ!」』
ニューヨークの市街の中心ではエメリウムスラッガー=千早が頭頂部のスラッガーを手に取り、ハイパーゼットンデスサイスへと投擲した。
「ピポポポポポ……ゼットォーン……」
ハイパーゼットンは宙を切り裂いて飛んでくるスラッガーから、テレポートで逃れる。しかし、
『「そこっ!」』
絶え間ない歌の練習で誰よりも優れたリズム感覚と鋭敏な聴覚を有する千早は、微細な空気の振動からハイパーゼットンのテレポート先を見切り、スラッガーの軌道をコントロールして出現すると同時に命中させた。
「ピポポポポポ……!」
『「オーブスラッガーショット!」』
胸を切り裂かれてひるんだハイパーゼットンへ千早は更にふた振りのスラッガーを放って、腕のカマのつけ根を切断してハイパーゼットンの武器を奪った。
『「ちょあーっ!」』
フォトンビクトリウム=真美はその剛腕を突き出して、アリチクスの顔面に強烈な拳を炸裂させた。
「キィ―――キキキッ! ゴオオオオォォォォ!」
『「何のっ!」』
ふらついたアリチクスだが蟻酸を吐いて反撃。しかし真美は腕を盾にしてガード。フォトンビクトリウムの頑強なボディは蟻酸でも溶かされることはない。
『「再生怪獣は弱いってのが相場だもんねー! すぐにやっつけちゃうよ!」』
真美はノリノリで剛腕を振るい、アリチクスをガンガン攻めていった。
『「えぇいっ!」』
ストリウムギャラクシー=あずさはバニアボラスに真正面から体当たりを決める。ストリウムギャラクシーのパワフルな突撃は、屈強なバニアボラスもはね飛ばすほどの威力であった。
「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」
バニアボラスが双頭から火炎と溶解液を吐き出すが、あずさは高々とジャンプして跳び越え、飛び蹴りを相手の喉元に食らわせた。
『「これ以上の悪いことは許しませんっ!」』
温厚なあずさもバニアボラスの破壊行為には怒り、阻止するべく戦いを挑むのだ。
『「うりゃーっ!」』
ライトニングアタッカー=亜美の電撃を纏ったパンチが、ガーゴルゴンの伸ばしてきた肩の蛇の首を跳ね返した。
「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」
ガーゴルゴンは以前の敗北の記憶から、最大の武器である石化光線を放とうとしない。しかしそれ故に亜美には決め手に欠け、押され気味であった。
『「一度やっつけた相手だもん! ラクショーだねっ!」』
対する亜美には相当な勢いがあり、流れは完全に彼女が握っていた。
「ウアアアアアアアア! ギイイイイイイイイ!」
クレッセンホーが両眼から熱線を発射するが、ゼペリオンソルジェント=美希はマルチアクションを完璧に使いこなした高速の身のこなしでかわし、相手の背後に回り込んだ。
『「遅すぎてあくびが出るの! あふぅ」』
挑発までかましながら、クレッセンホーを背後から捕まえて、今度はパワーを高める。
『「とりゃあーっ! なのっ!」』
大きく投げ飛ばしたバックドロップで、クレッセンホーは頭から地面に叩きつけられた。
「キイイイイイイイイ!!」
EXエレキングはスペシウムシュトローム=雪歩が飛ばした光刃をかわし、身体をくねらせながらの突進で迫っていく。外れた光刃は地面に当たって大きな穴を穿つ。
しかしこれこそが雪歩の狙いだった。
『「やぁっ!」』
雪歩は猛然と迫り来る怪獣を少しも恐れず、その首を捕らえると同時に地を蹴って飛び上がった。エレキングの長い身体が地上から離れて浮き上がる。
『「穴掘って埋めますぅー!」』
そのままエレキングを、今しがた作った穴へと投げ込んだ。
「キイイイイイイイイ!!」
エレキングの身体がズッポリと穴に収まり、身動きが取れなくなって長所の機動力が封じられた。
『「せいっ! たぁっ!」』
「ピッ! ギャアアアアアアオウ! キャァ――――――!」
レオゼロナックル=真はディノケルビムが振り回す棍棒状の尻尾をはたき落とし、相手の懐に飛び込んで鉄拳を二発、三発とタイミング良く打ち込んだ。
『「乱暴に棍棒を振り回すような雑な攻撃、食らうもんか!」』
空手の実力者たる真には力任せなだけの攻撃など通用しないのであった。
『「バーチカルスラッガー!」』
スラッガーエース=貴音は額に手をかざしてバーチカルスラッガーを握り、バキシマムに斬撃を浴びせる。
「ギギャアアアアアアアア!!」
バキシマムが鋭い爪の生えた腕を振るうが、貴音の華麗な足取りに翻弄されるばかり。
『「これよりの狼藉はまかりなりません! 成敗致します!」』
バキシマムの爪を切り払った貴音が堂々と宣告した。
「シェエアッ!」
「ウオオォォッ!」
東京に残ったスペシウムゼペリオンとサンダーブレスターはマガタノゾーアとマガゼットンを引き受け、スペシウムゼペリオンはマガタノゾーアに飛びついて顔面に膝蹴りを入れ、サンダーブレスターはラリアットでマガゼットンをはね飛ばした。
「プオオォォォォ――――――――!」
「ピポポポポポ……」
マガタノゾーアとマガゼットンは触手と光弾で反撃するが、触手はスペシウムゼペリオンの光輪で切り払われ、光弾はサンダーブレスターのサンダークロスガードで防がれた。
闇と光の魔王獣を相手取る、光と闇のオーブを見上げて、ジャグラーは唖然と口を開いていた。
「馬鹿な……あいつら十三人だろ? もう一人は一体誰なんだ……?」
数が合わないことの疑問に、ジャグラーはサンダーブレスターを凝視していてハッと気がついた。
「ま、まさか……!」
スペシウムゼペリオンの中の春香は、肩を寄せ合ったサンダーブレスターに呼びかける。
『「なかなかやるね――春香っ!」』
『「そっちこそ流石私といったところかしら――春香」』
サンダーブレスターの中にいる、黒春香が不敵に笑いながら返答した。
光と闇の側面に分かれ、一時的に二人となった春香は一分の狂いもないコンビネーションで、マガゼットンとマガタノゾーアに飛び掛かっていく。
『「「ヴぁいっ!!」」』
「世界中に散らばったウルトラマンオーブが、怪獣と交戦しています!」
「す、すごい……!」
世界中のオーブの戦闘をモニターで目の当たりにしている本部のビートル隊員たちは皆、常識を超越した出来事に驚愕するとともにオーブたちの奮闘ぶりに目を奪われていた。
その間に、菅沼は密かに彼らから距離を取って高木に囁きかけた。
「高木、いつも君には驚かされるよ。これが、お前の見出した子たちの起こした世界を救う奇跡なんだな」
「さて、何のことかね?」
「とぼけなくたっていい。――彼なんだろう? 若かった頃のお前を導き、そして今ではあの頃と変わらない姿でお前の一番の部下となっている、あの不思議な青年」
菅沼の指摘に、高木は不敵に微笑むだけであった。
菅沼は構わずに、高木に質問を重ねる。
「しかし、ずっと疑問に思ってたんだが――どうしてアイドルなんだ? 戦いをさせるならば、格闘技やスポーツの選手みたいな者の方が適任だったんじゃないか?」
その疑問に、高木は柔らかく微笑みながら答えた。
「確かに、戦いをするだけだったらその方が適してただろう。――しかし、強さだけがあればいいのなら、それでは怪獣と同じだ。私は、世界に光をもたらす救世主になれるのは、それだけじゃない――人々に笑顔と希望を与えられる者ではなくてはいけないと考えたんだよ。スポットライトに照らされて、その気持ちを歌に乗せるような、そんな人間だとね」
「なるほど……それが、アイドルだったという訳か。実際、お前の言う通りになっているな」
菅沼は自分のやってしまったことと、高木が導き出した結果を比較して、最大級の苦笑を浮かべた。
「本当に……お前には敵わないなぁ」
「みんな……!」
世界中で戦うオーブたち=765プロアイドルの姿はネット上で中継され、小鳥もハム蔵やいぬ美とともに律子の置いていったタブレットで応援しつつ見守っていた。
その後ろで、ジャグラーがポツリとつぶやく。
「俺は、何だったんだろうな……」
耳に留めた小鳥が振り向くと、ジャグラーは力のない声で自嘲をしていた。
「あんな小娘どもまで光に選ばれたってのに……俺は闇にもなれなかった……。俺は何がしたかったんだ……」
すっかり腑抜けた様子になっているジャグラーに、小鳥は渋面を作って怒声を向けた。
「いつまでふて腐れてるのっ!」
顔を上げたジャグラーの肩を、小鳥が力強く掴む。
「みんなと夜明けのコーヒーを飲みたいとか言ってたわよね。だけど今戦わないと! どんな善人にも悪人にも夜明けなんて来ないのよ!?」
小鳥の呼びかけの言葉に、ジャグラーの顔色が変化していく。
「あなたがいなかったら、春香ちゃんはいなかった。今のプロデューサーさんも、みんなもいなかった。――あたしたちの光は、あなたがいたからなのよ」
そして小鳥は、そんな彼に手を差し伸べた。
「さぁ、立って。どんな夢も、光も、遅すぎるなんてことないんだから!」
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
マガゼットンとマガタノゾーアは春香が引き受けたが、マガタノオロチは単体でもオーブをはるかに上回るほどの力の持ち主。そのパワーでオーブを追い詰め、鋭い牙で肩に食らいついた!
「グウウゥゥゥッ!」
激しく苦しみ悶えるオーブ。オーブカリバーの柄を回転させて叩きつけることでどうにか引き離すも、ダメージが深くてカラータイマーが点滅を始めた。
『「「プロデューサーさんっ!」」』
オーブの窮地に思わず振り向く春香たちだが、彼女たちもマガゼットンとマガタノゾーアを捨て置くことは出来ず、救援に回ることは出来なかった。
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
それをいいことにマガタノオロチはオーブにとどめを刺そうとする。
その時! 白刃の一閃が走り、マガタノオロチが斬り伏せられた。同時に袈裟に斬られてずり落ちたビルの陰から――巨大魔人態に変身したジャグラスジャグラーが、蛇心剣の鍔を鳴らした。
「……!」
咄嗟に見上げたオーブに、ジャグラーが振り返らずに手だけ差し伸べる。――オーブはその手をぐっと掴んで立ち上がった。
小鳥は二人が並んだ姿に、笑顔でうなずいていた。
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
マガタノオロチは肩を並べたオーブとジャグラーに、持てる限りの遠距離攻撃を繰り出す。それをオーブがバリアで防ぐ。
「シェアッ!」
彼の背中を蹴ってジャグラーが跳んだ。そのままマガタノオロチの頭上に飛び掛かり、ひと太刀を入れる。
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
大きく斬られたマガタノオロチだが力は弱まらず、四つの眼からジャグラーへ雷撃を放つ。だが素早く飛び込んできたオーブのカリバーが雷撃を絡め取ってジャグラーを守った。
「フゥゥゥゥゥ……トワアアアァァァァッ!」
オーブは絡め取った雷撃ごとカリバーを叩き込んだ! マガタノオロチの全身が爆炎の中に隠れたが――。
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
自身の攻撃が乗った一撃でもマガタノオロチは止まらず、オーブとジャグラーに激突して二人同時に弾き飛ばした。
「ウワアアアアァァァァァッ!」
ジャグラーがオーブに力を貸しても、マガタノオロチはそれすらも上回る。勝ち目はないのか――!?
だがその時! 空の彼方から無数のゼットビートルが編隊を組みながら、マガタノオロチに向かって押し寄せてきた!
「!!」
そしてありったけのミサイル攻撃で、マガタノオロチの顎の下の一点――律子たちが見つけたマガタノオロチ唯一の弱点を狙い撃ち始めた!
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
散々オーブとジャグラーの渾身の攻撃を食らいながらも平然としていたマガタノオロチが、ミサイル一発を食らっただけで激しく飛び上がってもがき苦しんだ。律子の見つけ出した答えは、正しかったのだ。
そしてその弱点を託され、全責任を負ってビートル全機に攻撃命令を出した渋川がオーブへと叫んだ。
「オーブ! マガタノオロチの泣きどころはそこだ! そこだけが脆いんだぁーッ!」
「フッ!」
知らされたオーブとジャグラーが即座に駆け出す。弱点を知られたマガタノオロチは迅雷を吐き出して二人の接近を阻止しようとするが、オーブとジャグラーは前転ジャンプで跳び越えて止まらなかった。
「フゥゥゥゥッ! デヤァッ!!」
距離を詰めた二人の全力の拳が、マガタノオロチの弱点に突き刺さる!
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
マガタノオロチの顎の下から火花が噴出し、弱点が剥き出しになった。遂に開かれた突破口だ!
『「やったっ! とうとうやったよ!」』
『「ええ! こっちも片をつけるわよ!」』
春香と黒春香はオーブたちの逆転に応えるように、二人で巨大な光輪を作り上げて投げ飛ばした。
『「スペリオン光輪!」』
『「ゼットシウム光輪っっ!」』
二つの光輪はマガゼットンとマガタノゾーアの反撃を断ち切りながら飛び、本体をバッサリと両断した。
「ピポポポポポ……」
「プオオォォォォ――――――――!」
ぶった斬られた二体は跡形もなく爆発四散し、マガタノオロチに先んじて消滅した。
世界各地のオーブたちも、眷属怪獣に必殺攻撃を繰り出して勝負を決めていた。
『「スラッガーエーススライサー!」』
貴音が高速回転して突撃し、バキシマムをバーチカルスラッガーで切り刻んで消し飛ばした。
『「レオゼロビッグバン!」』
真が燃え上がるチョップを振り下ろして、ディノケルビムの頭蓋を叩き割って全身を木端微塵にする。
『「ウルトラフルバースト!」』
雪歩が空中から光線技の連射を穴の中のEXエレキングに叩き込んで、大爆発によって穴ごと消し去った。
『「マルチフラッシュスライサー!」』
美希の放った大振りの光刃がクレッセンホーを貫き、クレッセンホーは肉体が崩れ去って消滅。
『「アタッカーギンガエックス!」』
亜美が手足を大きく伸ばして最大威力の電撃を繰り出し、ガーゴルゴンを撃って燃やし尽くした。
『「ストキシウムタイフーン!」』
あずさが撃ち出した竜巻がバニアボラスを呑み込んで、バニアボラスはバラバラに爆散した。
『「フォトリウムナックル!」』
真美の鉄拳がアリチクスを一撃で粉砕する。
『「
千早は三つのスラッガーを打ち飛ばし、加速したスラッガーがハイパーゼットンデスサイスを貫通して大爆発させた。
『「ビッグバンスラスト!」』
伊織がマガパンドンにスラッガーランスを突き刺し、内側から爆破して消し飛ばした。
『「ストライクナイトリキデイター!」』
律子の手の平から発射された光弾がマガジャッパに直撃し、一瞬で吹き飛ばす。
『「ストビュームダイナマイトぉー!」』
やよいが全身を燃え上がらせてマガグランドキングに激突し、張り手を顔面に食い込ませる。
『「ハイターッチ! いぇいっ!」』
猛火に覆われたマガグランドキングが粉々に吹っ飛んだ。
『「ミラージュラッシュフィニッシャー!」』
そして響が超スピードでマガバッサーに全方位から拳の猛打を叩き込んで、マガバッサーはダメージに耐え切れずに爆発四散した。
世界中の怪獣を撃破したアイドルたちは、再び宇宙を経由して東京、オーブオリジンの元へと急行していく。
残すは大元であるマガタノオロチのみ。ジャグラーはオーブと、駆け寄ってきた春香たちに告げる。
『よし、ありったけの光線を奴にぶち込んでやれ』
しかしマガタノオロチも最後の最後まであがきを見せる!
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
触手を伸ばしてオーブたちを牽制しながら、ジャグラーを捕まえて引き寄せたのだ!
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
そして右腕に食らいつく!
『うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』
『「「ジャグラーっ!」」』
思わず叫ぶ春香たち。このままでは、ジャグラーを光線に巻き込んでしまう。マガタノオロチはそれが狙いなのだ。
『な、なめるなよオロチッ!』
だがジャグラーは捕まったまま剣をマガタノオロチに突き刺して、逆にマガタノオロチを抑え込む。
「ピュウオ――――――――――ッ!!」
その姿勢のままオーブたちに指示するジャグラー。
『俺と一緒に撃て! このチャンスを逃したら、次はないぞッ!』
しかしやはり躊躇うオーブたち。この場に戻ってきた十二人も、マガタノオロチに密着されているジャグラーの図に驚愕する。
ジャグラーはそんな彼らの背を押した。
『撃てぇ―――――ッ! ウルトラマンオーブぅぅぅ――――――――!!』
――彼の言葉にオーブは決断し、顔を上げた。
『みんな行くぞッ!』
オーブの呼びかけに仲間全員がうなずき、オーブカリバーの力が解放される。
[解き放て! オーブの力!!]
『オーブスプリームカリバー!』
オーブカリバーは立ち並んだオーブたちの前に広がる光のリングに変わり、彼らのエネルギーをフルチャージさせる。
――この光景を目にしている小鳥が焦りを見せた。
「犠牲を出しての勝利なんて……! あたしにも、光を――!」
強く願って差し出した手の平に――二枚のカードが飛び込んできた。
「っ!!」
『フワッ!』『イィィィーッ! サ―――ッ!』
コスモスとエックスのカードだ――。
そしてオーブたち十五人が、必殺光線を発射する!
『「スペリオン光線!」「ワイドスラッガーショット!」「クロスレイスペローム!」「ストビューム光線!」「クラッシャーナイトリキデイター!」「ストキシウムカノン!」「オーブランサーシュート!」「ナックルクロスビーム!」「ギンガエックスシュート!」「フォトリウムシュート!」「ゼペリジェント光線!」「マクバルトアタック!」「エメタリウム光線!」「ゼットシウム光線!」』
『オリジウム光ぉぉぉぉぉ線ッッ!』
十五の光が一つとなった光の奔流が、ジャグラーごとマガタノオロチに突き刺さる――。
『じゃあな――』
別れの言葉を告げたジャグラーに、横からひと筋の光が飛び込む――。
光はマガタノオロチの肉体をえぐり、闇を切り裂き、引き千切っていき――マガタノオロチは爆散して崩壊していく。
「ピュウオ――――――――――ッ!!!」
八つの闇の蛇の首が断末魔となって飛び出したのを最期に、それをも呑み込む壮絶な爆発がマガタノオロチをこの世から完全に消し去ったのであった。
「よぉしッ!!!」
ビートル隊本部で、全隊員がオーブの完全勝利に歓喜に打ち震えた。そんな彼らに菅沼が宣言する。
「作戦終了。お疲れさま」
皆が頭を下げる中指令室を後にしようとする菅沼の表情が、一瞬で緩んだ。そして彼を待っていた高木に呼びかける。
「高木、今日は久々に一緒に飲もうか? 奢るぞ」
しかし高木はその誘いをやんわりと断る。
「すまないが、みんなが待っているんだ。社長として、労をねぎらってやらんとね」
夕陽が激戦の痕跡をまざまざと残す地上を赤く照らす中、アイドルたちの変身したオーブがすぅっと消えていった。そして一人残ったオーブオリジンは、地面に突き刺さった蛇心剣を見つめてうなだれる。
――しかしふと横に目をやると、顔を上げて空に飛び上がっていった。
「シュワッチ!」
オーブが夕陽に向かって去っていく中――フルムーンザナディウムが、そっと両手を地上に下ろした。
その上には、ボロボロになりながらも辛うじて息があるジャグラーが横たわっていた――。
――夕陽が照らす波打ち際、765プロの総員は、プロデューサーとしてのスーツ姿から風来坊のレザージャケットに着替えたガイと面と向かっていた。
「プロデューサーさん、行っちゃうんですね……」
春香の言葉に、ガイはおもむろにうなずく。
「マガタノオロチの影響はまだ各地で残り続けてる。俺はオーブとして、世界の安定を取り戻さなくちゃいけない。――世界中が、ウルトラマンオーブを待っているんだ」
テンガロンハットを被ったガイに、高木たちが思い思いの言葉を口にする。
「遂にお別れの時だね……。君には長い間、世話になった……」
「うぅぅ……寂しくなりますぅぅぅ……!」
小鳥がしとどに溢れる涙をぬぐい、アイドルたちもガイに別れの言葉を向ける。
「プロデューサー……本当にお世話になりました」
「お陰で私、たくましくなれましたぁ!」
「風邪を引かずに元気でいて下さい、プロデューサー!」
「後のことは私が引き継ぎます!」
「これからも私たち、一生懸命頑張ります」
「すぐにトップアイドルに登り詰めてやるんだからね! 楽しみにしてなさいよ!」
「プロデューサー……海外でも、どうか見守ってて下さいね!」
「兄ちゃん、ずっと元気でいてねー!」
「真美たちのこと忘れたらショーチしないかんねっ!」
「自分たちも、絶対絶対忘れないから!」
「いつの日か必ず、わたくしたちの名前を海の向こうのあなた様にお届けします」
しかし美希だけは、すがりつくように口走った。
「ハニー、ミキも連れてって!」
「ちょっと美希! あんたって奴は……」
「だってぇ……」
突っ込んだ伊織に唇を尖らせた美希に、ガイは苦笑いする。
「馬鹿言うなよ。お前たちはお前たちの夢を突き進め。それが俺にとっても一番の喜びさ」
と説いたガイは、アイドルたちの顔を見回して告げた。
「何、俺は風来坊さ。これが今生の別れなんかじゃないぜ。お前たちが俺を必要とする時――俺は必ず帰ってくる。この曲と一緒にな」
ハーモニカを手に持ち上げたガイが、ニカッと微笑んだ。
「それまでの、しばしのお別れってだけさ」
クールな笑顔を最後に、ガイはいつも奏でているあの曲――過去と今をつなぎ、そして未来を結んでいくオーブの歌とともに、彼女たちの元から離れていく――。
「ルぅー……ルルルぅー……ルールルルルぅー……」
春香がそのメロディに合わせて、静かに歌を口ずさんだ。
皆に見送られながらのガイの旅立ちを、ジャグラーもニヒルに笑いながら見送り、彼もまたどこかへと立ち去っていった――。
「おーい! みんなー!」
ガイを見送る春香たちの元に駆け寄ってきたのは渋川。彼はガイの背中を見やって驚く。
「あれ!? ガイ君どこ行くの?」
「まぁ、色々ありまして……。それよりどうしたんですか?」
小鳥が尋ね返すと、渋川は興奮した様子で告げた。
「みんなすごいぜ! 765プロのサイトが、世界中で2億4千万アクセスだって! 知ってるかい!?」
「えぇー!? ほんとですか!?」
律子を中心に、その事実を確かめるアイドルたち。
「うわぁほんとだ! すっごい!」
「世界中が真美たちのこと見たんだー! 流石にドキドキだぁ……!」
興奮を抑え切れない亜美と真美。一方で渋川は、小さくなっていくガイの背に向けて叫んだ。
「おーいッ! 紅ガイ! ……あばよ」
そして千早は、そっと春香に問いかけた。
「春香、プロデューサーを止めなくてよかったの? あれだけ、離ればなれになることを不安に思ってたのに」
それに春香は――活力の溢れた表情で答えた。
「いいの。プロデューサーさんの言ってくれたことで気づいたから」
「プロデューサーの言ってくれたこと?」
「うん。私たちのつないだ絆に、距離は関係ない……。たとえどこにいても、私たちはいつもつながってる……!」
春香はじっと、ガイと、水平線の向こうの夕陽を見つめていた。
「この先、私たちはそれぞれ別々の道を歩んでいくのかもしれない。だけど、同じだから……! 私たちはみんな、同じ方向に向かって歩いていってるんだから……!」
「あの太陽に向かって、まっすぐ――!」
『765プロのウルトラヒーロー大研究!』
春香「皆さん、これが最後のウルトラヒーロー大研究です! 最後のご紹介は――二つのパワーで戦う銀河の風来坊、ウルトラマンオーブです!」
千早「オーブは2016年、ウルトラシリーズ50周年記念として制作された『ウルトラマンオーブ』の主人公です」
雪歩「前作『ウルトラマンX』が王道路線だったこともあって、『オーブ』はそれまでにない色んな要素が取り入れられた挑戦作となりましたぁ」
やよい「歴代のウルトラマン二人の力と融合した姿になるのが一番の目玉ですね」
律子「主人公を取り巻く環境も、初めて防衛隊ではなくなりました」
あずさ「オリジナルの怪獣も、魔王獣という強さが子供に分かりやすい設定が設けられて登場しました」
伊織「主人公にやたら執着する、一概に悪役と言い切れないライバルキャラも登場したわね」
真「こうして見ると、特撮と言うよりはゲームか漫画みたいな感じですね」
亜美「でもでも大事なのは、ストーリーの面白さとキャラクターの魅力だよね!」
真美「その二つの点なら、十分成功してるって言えるっしょー!」
美希「そしてオーブは途中で、それまで無くしてた自分の本当の姿を取り戻したの」
響「一番シンプルな姿が最終形態ってのも、創作全体で見ても斬新かもね」
貴音「そうして半年の放送ながら数々の激戦があったのを、オーブは駆け抜けたのです」
ガイ「そして最後に紹介するアイマス曲は『まっすぐ』だ!」
ガイ「最初の家庭用版『アイドルマスター』のエンディングに選ばれたこの曲は、完成度の高さから数ある歌の中でも特に人気が高い一曲だ。君もアイマスをプレイして最後にこの歌が流れたら、感動は必至だぜ」
春香「どうか皆さんも、ご自身の道をまっすぐ進んでいって下さい――!」
ALL「それじゃあ皆さん――!」
「ウルトラマンオーブ・オールスター!!」
「皆の光と絆を結び、今ッ! 輝きの向こう側へ!!」
次回、特別編
『絆の力で、輝きの向こう側へ!!』