THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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ユウキトリッパー(B)

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 ダム湖に向かって林の中を練り歩いていくマガジャッパを律子、伊織とともに追いかけながら、渋川は通信機でビートル隊本部と連絡を取った。

 

「はい了解! ……もう少ししたら、本部の隊員たちが到着する!」

「それまでの間、少しでも進行を食い止められないかしら!?」

「いいものがあるわ!」

 

 律子が持ってきていたSAPガンをショルダーバッグから取り出した。

 

「あっ! それ事務所で使ってた奴!」

「あいつの身体は粘膜で覆われてる! きっと吸水性ポリマーが効果的だわ! これを怪獣の頭上に向けて撃って下さい!」

「えッ誰が?」

 

 律子はSAPガンを渋川に押しつける。

 

「俺!? 俺がやるの!?」

「他にいないじゃないですか!」

「渋川さんビートル隊でしょ!? 早くしてよ!」

 

 律子と伊織にせがまれ、渋川はSAPガンを受け取った。

 

「よし俺に任せとけ。おい、後ろ支えといてくれ!」

「お願いしますよ!」

 

 SAPガンを肩に担いだ渋川の背中を律子が押さえ、発射態勢を取る。照準をマガジャッパの頭頂部に合わせ、引き金に指を添えた。

 

「よーし行くぞ! それぇッ!」

 

 ポリマーの弾丸が勢いよく射出され、マガジャッパの頭上で弾けた!

 

「グワアアアァァァァァ!?」

 

 多量のポリマーがマガジャッパの粘膜の水分を吸収して固まり、マガジャッパの頭頂部が白いポリマーで固められた。これに動揺したマガジャッパの足が止まる。

 

「やった! 効いてるわ!」

「狙い通りね!」

「よーし、もう一発浴びせてやるか!」

 

 効果が上がったことに勢いづいた渋川が前に飛び出していき、マガジャッパを更に固めようとする。

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 だがそこにマガジャッパの水流が飛んできて、渋川は衝撃で吹っ飛ばされる!

 

「おわああぁぁぁぁぁ――――――――――ッ!!」

「渋川さーん!?」

 

 更にマガジャッパは尻尾をブンブン振り回して木々を薙ぎ倒し、滅茶苦茶に水流を発射し始めた。

 

「きゃあぁっ! 危ないっ!」

「怒らせただけじゃない! やよいたちはまだなの!?」

 

 暴れるマガジャッパから必死に逃げながら、伊織はガイを捜しに行った春香とやよいへ意識を向けた。

 

 

 

 律子たちがマガジャッパの進行を止めようとしていた頃、春香とやよいの方は林を駆け巡ってガイの姿を捜していた。

 

「プロデューサー! どこですかぁーっ!?」

「ここは圏外だからケータイはつながらないし……早くプロデューサーさんを見つけないと……!」

 

 焦る春香だったが、不意に顔を上げるとやよいを突き飛ばした。

 

「やよい危ないっ!」

「ひゃあっ!?」

 

 直後に暴れるマガジャッパの水流が近くに飛んできて、二人は風圧に身体を押されて倒れ込んだ。

 

「いたた……は、春香さん! 大丈夫ですか!?」

「な、何とか……うっ!?」

 

 立ち上がろうとした春香は足首を抑える。

 

「痛っ! 倒れた拍子に、ひねっちゃった……」

 

 春香の捻挫に顔が青ざめるやよい。

 

「ご、ごめんなさい……! 私をかばったせいで……!」

「やよいのせいじゃないよ……。それより、私の代わりにプロデューサーさんを見つけてきてっ!」

「は、はいっ!」

 

 すぐ駆け出そうとしたやよいだったが、その前に一人の男の影がぬっと現れた。

 

「やぁ、そこの君は二度目だね」

「あなたはっ!」

 

「プロデューサーが言ってた……!」

 

 ジャグラスジャグラーだ。ジャグラーは春香の腫れた足首に目を留めた。

 

「怪我をしたのか。大丈夫かな?」

「……あなたには、関係ないことです……!」

 

 敵意を露わにして、ジャグラーをきっとにらみ返す春香。だがジャグラーは気に留めずに口の端を吊り上げる。

 

「君たちのことは知ってるよ。ガイに力を貸して、ウルトラマンオーブになることにしたようだね。でもどうしてだ? 君たちは、戦いなどに何の関係もない女の子じゃないか。どうしてわざわざあいつに協力しようというんだ。他の人間に任せておけばいいじゃないか」

「他の人がどうとかじゃないです! 私たちに、世界中の人を助けられる力がある……それだけのことです!」

 

 毅然と言い返す春香だったが、ジャグラーは冷笑するばかりだ。

 

「使命感かい? 立派だなぁ。けれど、あれを見るといい」

 

 マガジャッパを煽ぐジャグラー。山のように巨大な生物は、身体を揺さぶるだけで地面をめくり、太い樹木をへし折る。遠くから見ているだけでもぞっとする光景だ。

 

「たとえウルトラ戦士に変身しようとも、怪獣と戦うということは常に死の危険がつき纏うということ。使命感なんかで、その恐怖を振り払えるものかな? 世界中の人のためにと言えば聞こえがいいが、誰とも知らない者のために命を投げ打つということだよ?」

「誰とも知らない人のためだけじゃないですっ!」

 

 なじるようなジャグラーの言葉に、やよいが反論した。

 

「ん?」

「あの怪獣のせいで、ウチの水がすっごく臭くなっちゃいました! そのせいで弟たちは手が洗えなくって、大好きなおやつを食べられなかったんですよ! 世界の平和とか、そんな大きいことは私にはよく分からないことですけど……」

 

 やよいは目に力を込めて、宣言した。

 

「どんな相手でも私は、弟たちのおやつの時間を取り戻すために戦いますっ!」

 

 それを聞いたジャグラーは……プッと噴き出した。

 

「ハハハハッ! 何を言うかと思えば、おやつの時間を守る? そんな笑える言葉を聞いたのは初めてだッ!」

「――ウチのアイドルの覚悟を笑うんじゃないぜ、ジャグラー!」

 

 ジャグラーを諌める声をとともに、ガイがやよいたちの側に駆けつけてきた!

 

「プロデューサー!」「プロデューサーさんっ!」

「ガイ……!」

 

 ガイはやよいたちの盾となりながらジャグラーと向かい合い、きっぱりと言い放った。

 

「世界の平和とかの大きなことは、そういう身近なところを守るところから始まっていくもんだ。それを馬鹿にするような奴には、平和だとかを語る資格はないぜ」

「プロデューサー……!」

 

 自分の思いを支持してくれるガイの背中を、やよいは嬉しそうに見つめた。一方でジャグラーは、一転して不機嫌な表情に変わる。

 

「……ふん、好きにしろ」

 

 捨て台詞を残して素早く立ち去っていくジャグラー。それからガイはやよいと春香に振り向く。

 

「すまない、待たせちまった。……春香、怪我しちまったのか」

「私のことはいいです……! それより、早く怪獣をやっつけて下さい! あれがダムにたどり着いたら東京中が大混乱です!」

 

 春香の頼みを受けてうなずくガイ。

 

「分かった。やよい、俺にお前の力を貸してくれ!」

「は、はいっ!」

 

 怪我をして立てない春香に代わり、やよいがティガのカードを受け取った。そしてガイがオーブリングを構える。

 

「ウルトラマンさんッ!」

 

 ガイがウルトラマンのカードをリングに通し、ウルトラマンのビジョンが現れる。

 

[ウルトラマン!]『ヘアッ!』

 

 続いてやよいがティガのカードをリングに通した。

 

「ティガさんっ!」

 

 やよいの隣にティガのビジョンが現れる。

 

[ウルトラマンティガ!]『ヂャッ!』

 

 やよいと二つのビジョンに挟まれながら、ガイがリングを掲げた。

 

「光の力、お借りしますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 ウルトラマンとティガのビジョンが、やよいを巻き込んでガイと重なり合った。

 

『シェアッ!』『タァーッ!』

 

 ガイがオーブの姿に変身する!

 

[ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!]

 

 巨大化したオーブが林の中に立ち上がり、決め台詞を放つ。

 

『俺たちはオーブ! 闇を照らして、悪を』

「ジャパッパッ!」

 

 だが途中でマガジャッパが飛びかかってきて中断させられた。

 

「ウッ!?」

 

 臭いの元であるマガジャッパの体臭は、水を更に上回る悪臭。それに密着されては、オーブも鼻が曲がって悶絶する。

 

『「うああぁぁぁっ! く、臭いですぅぅぅ~っ!」』

『こ、この野郎ぉ~……!』

 

 オーブが前蹴りをマガジャッパの腹に入れて押しのけ、頭にチョップを連打する。

 

「デアッ! ……ウゥッ……!」

 

 しかし悪臭のせいで精神がかき乱されて、腕に力が入らない。自分からマガジャッパより離れてよろめく。

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

「ウゥゥッ!」

 

 どうにか襲いかかってくるマガジャッパに抵抗して攻撃するも、やはり集中できない打撃ではマガジャッパにほとんどダメージを与えられていなかった。マガジャッパは少しも弱らない。

 

『「だ、駄目ですぅ~! これじゃ戦いになりません……!」』

『接近戦は不利だ! スペリオン光輪だ!』

『「は、はいっ!」』

 

 オーブが手の平からスペリオン光輪を出し、何発もマガジャッパに投げつける。

 

『「えいえいっ!」』

 

 が、全てマガジャッパの鱗に当たると軽い音を立てて、弾かれてしまった!

 

『「えっ!?」』

「ジャパッパッ!」

 

 尻尾の振り回しを脇腹にもらって、逆にオーブの方がその場に倒れた。

 

『「ど、どうしてですかぁ!? 春香さんが使った時は、もっと威力があったのに……!」』

 

 動揺するやよいに、オーブが告げる。

 

『奴の防御力もあるが、どうやらやよい、ウルトラマンさんとティガさんの力はお前とは波長が合わないようだ……!』

『「波長が合わない!? それって……」』

『残念だが、力を十分に発揮できていない……!』

 

 春香、美希の時と違って、やよいの動かすスペシウムゼペリオンはパワーが半減した状態であった。それが苦戦の最も大きい理由であった。

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 マガジャッパは腕の内側に並んだ吸盤で、空気を猛烈な勢いで吸引し、オーブの身体も引き寄せる。

 

「ウワアァァァァッ!」

 

 マガジャッパは捕まえたオーブの顔に、口から悪臭の吐息を吹きつける。

 

「ウワアアアア……!」

 

 ますます苦しんだオーブは力を失い、大地の上に横たわってしまう。

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 一方のマガジャッパは全身がスゥッと透き通っていき、完全に見えなくなった

 

「消えた!?」

 

 オーブの戦いを撮影している律子たちがあっと驚く。

 

「あれで誰にも気づかれずに、湖から湖へ移動してたのね!」

 

 立ち上がったオーブもマガジャッパを見失って辺りを見回す。その背後からマガジャッパが姿を現して体当たりをかました!

 

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

「ウワァァッ!」

 

 腹這いに倒れ込んだオーブに、マガジャッパの尻尾が叩きつけられる。一方的に痛めつけられるオーブ!

 

『「プロデューサー、ごめんなさい……!」』

 

 オーブの中で、やよいは涙ながらに謝罪する。

 

『「私のせいで、怪獣にやられちゃいます……! 私が春香さんや美希さんみたいだったら……」』

『泣くことはないぞ、やよい……!』

 

 そんなやよいに、オーブは言い聞かせた。

 

『衣装が合わないのなら、チェンジするのさッ!』

 

 そう言ってやよいの手の中に、オーブリングと新たな二枚のカードが現れた!

 

『「はわっ!」』

『さぁッ! そのタロウさんとメビウスさんのカードをリングに!』

『「は、はいっ!」』

 

 指示された通しに、やよいはリングを握り締めながら二枚のカードをリードしていく。

 

『「タロウさんっ!」』

 

 角のあるウルトラマンのカードを通すと、リングが赤く光って、絵柄のウルトラマンのビジョンが出現した。

 

[ウルトラマンタロウ!]『トァーッ!』

 

 次いでやよいは二枚目の、菱型のカラータイマーのカードを通す。

 

『「メビウスさんっ!」』

 

 リングが白く輝き、二人目のウルトラマンのビジョンが現れた。

 

[ウルトラマンメビウス!]『セアッ!』

 

 それからオーブが高々と叫ぶ。

 

『熱い奴、頼みますッ!』

 

 オーブの言葉に合わせてやよいはリングを掲げ、トリガーを引いた。

 

[フュージョンアップ!]

 

 赤、白、黄色の光の波動がリングから放たれ、二人のウルトラマンはやよいとともにオーブの肉体と融合。

 

『トワァッ!』『タァッ!』

[ウルトラマンオーブ! バーンマイト!!]

 

 炎のメビウスの輪と銀色の波紋を伴いながら、姿の変化したオーブが空高く跳躍した!

 

「ウゥゥリャアッ!」

 

 ひねりをつけながらの飛び蹴りが、マガジャッパの頭部に炸裂! マガジャッパを張り倒す!

 

「あれは……!」

「姿が変わった!?」

 

 目を見張る律子たち。今のオーブは頭に雄々しい二本角が生え、ボディは燃え上がる炎のように赤々としたものに変化していた。

 

『俺たちはオーブ! 紅に燃えるぜ!!』

 

 この姿は、ウルトラマンタロウとメビウス、二人の熱い魂の焔の力をその身に宿した、バーンマイトだ!

 

『「うっうー! 何だか私も、メラメラと燃えてきましたぁー! 勇気100倍ですぅーっ!」』

 

 やよいもバーンマイトの熱い波動に同調しているかのように、泣き顔が一転して瞳に炎を宿していた。

 

『よしッ! この姿は波長がばっちりみたいだな! 行くぞやよいッ! READY GO!!』

『「はぁいっ!」』

 

 元気良く返事をしたやよいとともに、オーブがマガジャッパに鉄拳をぶち込む。

 

「セアァッ!」

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 マガジャッパが大きく殴り飛ばされてひるみ、オーブはそこに膝蹴りで追撃していく。マガジャッパはダメージがダンダン響いて、押されていく。

 オーブはおもむろにマガジャッパの悪臭が一番出ている突き出た鼻を掴んだ。

 

『「こんな臭いのをそのままにしてちゃ、めっ! 蓋しちゃいまーすっ!」』

 

 そして鼻をねじり、片結びした。鼻を結ばれたマガジャッパは慌てふためいて腕をバタバタ振り回す。

 オーブの力は戦う毎にドンドン上がって、勢いは加速していく!

 

「オォリャッ!」

 

 マガジャッパの首を抱え込むと、ブンブン振り回してヒコーキ投げを決めた! 更に投げ飛ばしたマガジャッパにフライングボディプレスを仕掛け、右腕に炎を纏わせて灼熱のパンチを浴びせる!

 

「オォッリャアッ!」

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 鼻の結び目を解いたマガジャッパが水流攻撃を飛ばしたが、オーブはスライディングでかわしながら燃えるキックでマガジャッパをはね飛ばした。

 

『「やぁぁーっ!」』

「グワアアアァァァァァ! ジャパッパッ!」

 

 ひたすら追いつめられるマガジャッパはもう自棄になったか、全身を使って突進してくる。しかしオーブはそれを真正面から迎え撃つ!

 

『フィニッシュを決めるぞ、やよいッ!!』

『「はーいっ!!」』

 

 オーブの全身が一挙に燃え上がり、こちらからマガジャッパに向かって走っていく!

 

「『ストビューム!! ダイナマイトぉー!!」』

 

 マガジャッパと衝突するその瞬間、オーブの張り手がマガジャッパの顔面にめり込んだ。

 

『「ハイ! ターッチ!!」』

 

 マガジャッパが紅蓮の焔に包まれ、大爆発! 爆風とともに熱波が飛んで、あまりの熱量に近くの木々がパチパチと燃え上がった。

 今の爆発でマガジャッパは跡形もなく消滅。後に立っているのは……カラータイマーをまぶしく輝かせるオーブ!

 

『「いぇいっ!」』

 

 オーブが真上に飛び上がると同時に放たれた波動によって、木々に燃え移った炎は一瞬にして消し止められたのであった。

 

「やったわぁっ! これで悪臭騒ぎも解決ね!」

 

 飛び去っていくオーブを見送った律子がぐっと手を握り締めたが、その時に伊織がつぶやく。

 

「そういえば、渋川のおじさんはどうなったの?」

「あ……! そうだった! 大丈夫かしら!?」

 

 渋川のことを思い出して慌てる律子。

 だがそこに、

 

「おーいッ!」

 

 渋川が林の奥から大きく手を振りつつ駆けてきた。

 

「渋川さん! 大丈夫でしたか!?」

「ああ! この通りピンピンしてるぜ!」

「もう、ビートル隊が市民に心配かけないでよ」

「ハッハッ! 結果オーライだ!」

 

 肩をすくめて安堵の微笑を浮かべる伊織に、渋川はグッとサムズアップした。

 

 

 

 ガイはやよいと春香に見守られながら、マガジャッパのクリスタルからまた新たなカードを引き抜いていた。今度はウルトラマンに酷似した姿のウルトラ戦士の絵柄であった。

 

「こいつはウルトラマンジャックさんの力でしたか。お疲れさまです、よろしくお願いします!」

 

 ホルダーにカードを収めたガイが、春香たちの元に戻ってくる。

 

「さぁて、カードも回収したし! みんなのところに帰るか! よっと」

 

 ガイはその場に座り込んでいた春香を軽々と抱え上げ、お姫さま抱っこする。それで目を真ん丸にする春香。

 

「えぇぇっ!? ぷ、プロデューサーさん、何するんですかぁ!?」

「まだ足が痛むだろう。遠慮することはないぜ」

「そ、そうじゃなくって! こんなところ、他の人に見られたら……!」

 

 カァァと赤面する春香だったが、

 

「ん? 春香お前、ちょっと臭い残ってるんじゃないか?」

「こらぁーっ! 女の子にそんなこと言わないっ!」

 

 茶化したガイに思い切り怒鳴った。

 

「うっうー! プロデューサーと春香さんは仲良しさんですぅ!」

 

 ガイの後に歩いていくやよいがにこにこ笑いながらそう言った。

 

 

 

 ――マガジャッパの力の残滓もまた、ジャグラーによってカードに変えられた。

 カードの臭いを芳しそうに嗅いだジャグラーが、独りつぶやく。

 

「最後の一枚もこの調子で頼むぜ……オーブ」

 

 

 

 マガジャッパが退治され、水の臭いが消えると、町の店は営業を再開。

 そして765プロ事務所の近くの銭湯では、ガイが湯船に浸かって大きく息を吐いた。

 

「はぁぁ~……やっぱり仕事上がりの風呂は、地球上において最っ高の贅沢だな……」

 

 そこに一緒に銭湯に入っているやよいの弟たちが集まってくる。

 

「ほんっと、あったかいお風呂ってサイコーだね、プロデューサーのおじちゃん!」

「お、おじちゃん!? せめてお兄ちゃんで頼むよ~」

 

 軽くショックを受けたガイに、やよいの弟たちはおかしそうに笑った。

 そんな男風呂を仕切り越しに見つめた律子が、呆れたように独白した。

 

「プロデューサー殿、このお風呂に入りたいがために張り切ってたのね……。全く拍子抜けしちゃうわ……」

「あっははは……。まぁいいじゃないですか、大きなことは身近からって言ってたし」

 

 苦笑いを浮かべた春香が弁護した。

 伊織はシャワーを浴びつつ、小鳥を相手に語る。

 

「それにしても、いつでも綺麗な水が使えるってのがこんなにもありがたいって思ったのは生まれて初めてだわ……。普段当たり前に使ってるものにも、感謝する気持ちを持たなくっちゃねぇ」

「そうね。水も大事な資源! 大切にしなくちゃいけないわね」

 

 やよいは妹のかすみの頭を洗ってあげている。

 

「かすみ、どう? 気持ちいい?」

「うん! お風呂ってすっごい気持ちいいね、やよいお姉ちゃん」

「でしょ? ふふふっ」

 

 取り戻した日常の穏やかなひと時を噛み締めながら、やよいは満足げに微笑んでいた。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

やよい「高槻やよいでーす! 今回紹介するのは、うっうー! ウルトラマンメビウスさんでーすっ!」

やよい「メビウスさんは2006年放送の『ウルトラマンメビウス』の主人公ですぅ! 1981年で終了した『ウルトラマン80』から、二十五年ぶりのウルトラ兄弟シリーズの作品だったんですよー。はわっ! すごいですぅ!」

やよい「ウルトラマン四十周年記念作でもあるから、それまでのシリーズの要素をふんだんに入れた作品だったんです。昔の怪獣の再登場から始まって、先輩ウルトラマンの活躍などのシリーズの積み重ねがあるからこそ出来ることをいっぱいやったんですよー」

やよい「メビウスさん自身も、お仲間との絆を作っていってどんどん強く成長していって、最後にはすっごい強敵に勝ったんですよぉ! 感動ですぅー!」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『ゲンキトリッパー』だ!」

ガイ「CD『MASTER SPECIAL 01』初出のやよいソロ曲で、タイトル通りに元気いっぱいなイメージの明るいポップな歌だ! 如何にもやよいらしいと言えるな!」

ガイ「しかしいつも思うが、やよいは舌っ足らずな割にソロ曲に英単語が含まれる割合が多いな」

やよい「何でもそういうの、分かった上でやってるみたいですよぉ」

やよい「次回もよろしくお願いしまーすっ!」

 




 どうも、秋月律子です! 東京上空に突如巨大な火の玉が現れました! そのせいで街は猛暑に見舞われ大惨事! 立ち向かったプロデューサー殿まで重態の有り様! この窮地を救えるのは一体誰なの!?
 次回『Miraclemaker』。あずささん、それ本気ですか!?

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