「そのお陰で765プロの注目が一気に集まったのは予想だにせぬ幸運といったところかしらね」
「そこで成功を収めれば、確実にメジャーへの足掛かりを掴めるわよぉ~!」
「私たちにはちゃんとした実力があるわ」
「765プロの実力を示すという目的は達成できたと言っていい」
「今こそ765プロ躍進の時だ!」
「プロデューサーさん! ドームですよ、ドーム!」
「更にトップへ近づくことを目指して、これから頑張っていけよ!」
「はいっ!!」
765プロのアイドルたちがウルトラマンオーブとしての活躍を始めたのは春先。しかしそれからあっという間に時間と季節は巡り、今はもう冬の足音が聞こえそうな時期となっている。
そんなある日に、春香が事務所に出社してきた。
「おはようございまーすっ! ちょっと遅くなっちゃったかな……」
元気良く挨拶した春香だったが、事務所にいるアイドルが伊織と響だけなのを知って、呆気にとられた。
「あれ? 伊織と響ちゃんしかまだ来てないの? 今日はクリスマスライブに向けての全体練習があるのに……」
春香の疑問に、伊織が肩をすくめながら答えた。
「他のみんなは仕事が立て込んでたり、急なオファーが入ったりで遅れてくるか、欠席するかのどっちかよ。初めから通しで練習できるのは、あんたを入れたここの三人だけになりそうね」
「そうなんだ……」
若干肩を落とす春香。響の方は大きなため息を吐く。
「練習初日からこんなに集まり悪いんじゃ、先が思いやられるって奴さー」
「まぁしょうがないわよ。せっかくのお仕事を何度も断ったりとかしたら、業界での評判にも関わるものね。売れたら多忙なスケジュールになるってのは、分かり切ってたことでしょ?」
「まぁそうだけどさー」
伊織と響がぼやく一方で、春香はやや残念そうにつぶやいた。
「久しぶりに、みんな集まれると思ったんだけどな……」
春香の独白にうなずく響。
「確かに。ちょっと前はほとんどの場合でみんな一緒だったけど、有名になってからはそんな機会、全然になっちゃったね」
各人の予定で埋まったスケジュール表を流し見ながらのつぶやきに、伊織が二人の気持ちを切り換えさせるかのように言い聞かせた。
「そんなこと言ってたって始まらないわよ。とにかく、ここにいる面子で出来ることをやりましょう。そうすれば他のみんなだっていくらかは助かるわよ、きっと」
「うん……そうだね! 声援をくれるファンがいるんだもの、頑張っていかないと!」
思い直して張り切る春香たちだったが……そこにガイがやってきて告げた。
「お前たち、悪いが今日の練習は中止させてもらうぞ」
「えー!?」
出鼻をくじかれて仰天する三人。響が問い返す。
「な、何でなんだプロデューサー? また何か問題発生か?」
「ああ。またもウルトラマンオーブ出動案件みたいだ」
ガイはそのように、はっきりと言った。
「戸松源三郎さんを覚えてるか? あの人のところに、ラゴンの親子がまた来たんだそうだ」
「えっ? あの半魚人の?」
春香たちは思わず顔を見合わせた。
それからガイと春香たちの四人は、以前ラゴンの親子がかくまわれた漁港のある町へと移動した。
「もう、いきなり練習を中止してこんな田舎まで移動だなんて、英雄も楽じゃないわね」
源三郎の倉庫までの道すがら、伊織がため息を吐いた。
「しかもアイドル家業の傍らなんだから余計によ。怪獣も、いい加減出てこなくなればいいのに。いつまでポコポコ沸き続けるのかしら」
「伊織、そんな勝手な言い分は駄目だぞ。怪獣にだって事情があるんだ」
うんざりした様子の伊織とは反対に、怪獣の肩を持つ響は春香に同意を求める。
「ねぇ、春香もそう思うでしょ?」
「うん……」
しかし……春香は妙にうつむいたまま、空返事をするだけだった。それを気に掛ける伊織。
「春香、どうしたのよ? 何だか元気ないじゃない。乗り物酔いでもした?」
春香は顔を上げると、先を行くガイの背中を見つめながら、次のように言った。
「ちょっと、伊織のひと言で思っちゃって……」
「何を?」
「プロデューサーさん、怪獣が出ないようになったら、765プロにいてくれるのかなって……」
あ……と、伊織と響は声を漏らした。
「プロデューサーさん、元は魔王獣退治の任務のために地球に来たんだって。魔王獣は全部倒してもまだ怪獣が出続けるから、オーブに変身してるけど……それ以前は任務のために宇宙のあちこちを飛び回ってたそうだし……地球での役目を終えたら、元のお仕事に戻るんじゃないかって……」
春香の言葉に、響と伊織も眉をひそめる。
「そうだよね……。プロデューサー、元々のお仕事はプロデュース業じゃないんだよね。社長が誘ったからやってるだけで……」
「当然の話なのに、考えたこともなかったわ……」
と語る伊織。それだけ、彼女たちにとって紅ガイがプロデューサーとして側にいるのは、当たり前のこととなっていた。
「……私たち、いつかバラバラになる日が来るのかな……」
春香のひと言に伊織たちは何も言えず、押し黙った。そんな重い雰囲気の三人に振り向くガイ。
「どうしたお前ら? いやに覇気がないな」
「い、いえ! 何でもないです!」
慌ててごまかす春香。今は、自分たちの懸念を知ってほしくはない。彼の返答次第では、これから起こるかもしれないことに対する心構えが鈍ってしまいそうだから。
「そうか? ならいいんだが……。それより着いたぞ」
一行は話している内に、源三郎の倉庫の前にたどり着いていた。
「ここでグビラとサメクジラと戦って、海に帰してあげたんだよね」
「何だか懐かしいわねー」
響と伊織がしみじみ懐かしむ中、四人は源三郎に呼びかけて倉庫の中に入れてもらう。
源三郎は喜んで四人を歓迎した。
「おぉー嬢ちゃんたち、よく来てくれたなぁ! ゆっくりしてってくれ、って言いたいとこなんだけどよ、知らせた通りそんな訳にはいかねぇんだ」
「みたいですね。それで、ラゴンの親子はどちらに?」
ガイが早速話を切り出す。
「ああ、こっちだ。かわいそうに、二人ともすっかり怯えてるんだよ。深海で何があったのやら……」
倉庫の奥へ案内する源三郎。そこでは、夏に一行が助けたラゴンの親子がその時のままの姿で四人を待っていた。
「キャアアァァァッ!」
「キャアーッ!」
親子とも春香たちの顔に喜びを見せたが、源三郎の言う通り、その様子には気力が欠けていて、大分憔悴しているようであった。
「何かおっそろしいことがあったみたいなんだけど、俺じゃあ細かいところが分かんないからさ。他に相談できる人もいねぇし、それで嬢ちゃんたちに助けを求めたって訳だ」
「そうだったんですか……」
「それならちょうど響がいる時で良かったわね。響なら言葉が分かるわ」
「響、早速頼むぞ」
「任せといて! 何なに……」
響がラゴンたちから事情を伺う。
「キャアアァァァッ!」
「えぇっ!? そ、そんなことが!?」
「ど、どうしたの? そんなに驚くような大問題なの?」
話を聞いた響のただならぬ様子に、春香たちは気を動転させる。
そして響は、ラゴンからの話を皆に告げた。
「深海に何だか分かんないけどとっても恐ろしい化け物が空から降ってきて、深海の生き物がみんな死にかかってるんだって! グビラもサメクジラも!」
「えぇっ!?」
予想以上の内容に、全員が驚愕。
「自分たちは何とか命からがら逃げてきたって……」
「怪獣まで殺しかけるとは、そりゃあ普通じゃないな……」
「嬢ちゃんたち、何とかならねぇかな! あいつらもこの星に生きる命だ、どうしかしてやりてぇよ!」
慌てる源三郎をなだめるように春香が呼びかけた。
「落ち着いて下さい、戸松さん。私たちでウルトラマンオーブにこのことを知らせて、悪い奴を退治してもらいます!」
「そっか! 何から何まですまねぇなぁ」
「すぐ行きましょう! 響はラゴンの親子についてあげてちょうだい」
「分かったぞ!」
「ぢゅいッ!」
響とハム蔵に弱っているラゴン親子を託すと、ガイと春香、伊織の三人で倉庫を飛び出して海岸にまで駆けつけた。
「それじゃあ行くぜ、二人とも! 用意はいいな?」
「もちろんです!」「当ったり前でしょ!」
三人はオーブリングとカードを取り出し、フュージョンアップを行う。
「ウルトラマンさんっ!」『ヘアッ!』
「ティガっ!」『ヂャッ!』
「光の力、お借りしますッ!」[ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!]
三人融合してオーブ・スペシウムゼペリオンの姿になると、颯爽と海に飛び込んで海中に一直線に潜っていく。
『……確かに、海の奥深くに何かやばいものがいそうな感じだな』
オーブは研ぎ澄まされた第六感により、水深が深まるほどにおぞましいものの気配を肌で感じ取っていた。また、水中を取り巻く暗闇の濃度も、ただ太陽光が届かないだけではないことも感じていた。
オーブが己の身体から発せられる光を照明に潜水していき、その末にいよいよ海底に達しようかというところで、遂に異常を発見することになった。
『「あ、あれは!?」』
『「何あれ!?」』
三人が目撃したものは、「暗黒」としか形容できないような「何か」が、深海を埋め尽くそうというように広がっている異様な光景であった。そしてラゴンの言う通り、グビラとサメクジラがその「暗黒」に捕まって締め上げられている。
「グビャ――――――――……!」
「キイィィーッ……!」
二体とも既に息も絶え絶えだった。焦りを覚える春香。
『「プロデューサーさん、早く助けないと!」』
『ああ! 行くぜッ!』
オーブは右手に作り出した光輪を、いっぱいに拡大していく。
「「『スペリオン光輪!!!」」』
それを「暗黒」に向かって投擲し、切り裂いていく。そうすることでグビラとサメクジラの拘束を解き、二体は脱出することに成功した。
『「さっ、早く逃げなさい!」』
オーブにかばわれながらほうほうの体で逃亡していくグビラたち。一方で、一旦は切り裂かれた「暗黒」はすぐに修復し、更には不定形の状態から一つの形へと収束していく。
「デュッ!」
警戒するオーブ。彼の前で、「暗闇」は両腕がカマ状になった巨大怪獣の姿に変化した。
「グアァ――――――――!」
ギラギラとした赤い眼に、ただの野生生物ならばあり得ないほどの悪意を湛えたこの怪獣は、根源破滅海神ガクゾム! 生きとし生けるもの全てを滅ぼすためだけに生まれた、悪魔のような存在である!
『「あいつが暗闇の正体って訳ね!」』
『「海の平和のためにも退治しましょう!」』
『ああ! 行くぞッ!』
オーブは正体を現したガクゾムに向かってまっすぐに挑んでいく。
「セェアッ!」
海底を蹴ってチョップを仕掛けていくが、ガクゾムのカマに易々と受け止められて逆に蹴りを入れられた。
「ウッ!」
「グアァ――――――――!」
ダメージをこらえて打撃を繰り出していくも、ガクゾムには全て防がれて、カマで殴り飛ばされる結果となる。
「ウワァッ!」
『「うう……流石に水中での戦いは練習してないから、動きづらいったらありゃしないわ……!」』
伊織がうめいた。これまで様々なパターンの戦いを経験してきた765プロアイドルだが、海中は地上とは全く異なる環境。それに慣れていない身では、思うように身体を動かすことは出来ないのは自明の理であった。これではガクゾムにはスピードで大きく負けることになる。
『「だったら遠距離からの攻撃でっ!」』
春香の判断に従い、オーブはスペリオン光線の構えを取る。
「「『スペリオン光線!!!」」』
必殺の光線がまっすぐにガクゾムへと発射された!
「グアァ――――――――!」
だが、光線はガクゾムの胸部の装甲に全て吸収されてしまう!
『「えっ!?」「嘘!?」』
光線はそのままはね返されて、オーブが吹き飛ばされる結果となってしまった。
「ウアアァァァッ!」
「グアァ――――――――!」
ガクゾムは更にカマから自前の光線を飛ばし、オーブを一層苦しめる。
『「うぅぅ……つ、強い……!」』
ガクゾムは「海神」という別名で称されるように、ただでさえその戦闘能力は通常の怪獣とは比較にならないレベル。しかも環境も味方しており、オーブは圧倒的に不利の状況下にあった。
そしてその環境とは、深海というだけの意味ではない。
『くッ、この闇のフィールドのせいでいつもよりもずっと消耗が激しいぜ……!』
オーブは早くもカラータイマーが鳴り出していた。それは、ガクゾムの力によって作られた暗黒の空間が、光の存在であるオーブの力を削いでいるからだ。この空間内ではオーブはエネルギーを通常以上に消耗してしまう。このままでは後一分も変身を維持していることは出来ないだろう。
この光届かぬ世界では、オーブは孤独なのだ――。
『「――だけどっ!」』
しかしそれでも、春香は宣言した。
『「私たちは、暗闇も抱き締めて前に進んでいく! それが私たちの出した答えの一つ……それがウルトラマンオーブだからっ!」』
『「ええ! あの深海の引きこもりに教えてやりましょう! 私たちは、闇の力も抱き締めているって!」』
伊織と春香が手にしたのは、アグルとベリアルのカードだ。
『「アグルっ!」』
[ウルトラマンアグル!]『デアッ!』
伊織がオーブリングにカードを通し、アグルのビジョンが現れる。
『「ベリアルさんっ!」』
[ウルトラマンベリアル!]『ヘェアッ!』
春香の隣にはベリアルのビジョン。そしてオーブが叫ぶ。
『荒れ狂う力、お借りしますッ!』
[フュージョンアップ!]
春香と伊織が、アグルとベリアルのビジョンとともにオーブと融合!
『ジェアッ!』『ヘェア……!』
[ウルトラマンオーブ! サンダーストリーム!!]
宇宙牢獄を突き破り、青い光と闇が渦巻く中から、姿を変えたオーブが飛び出していく!
「シェアァッ!」
海底に着地の際の衝撃で、ガクゾムの巨体が一瞬傾いた。
オーブは上半身が赤と黒、下半身が青と銀という配色の、サメを思わせるような体躯に変化していた。海の力を持つアグルの特性と、闇の力による嵐のパワーを持った戦士、サンダーストリームだ!
(♪アグルの戦い)
『俺たちはオーブ! 闇を包め、光の嵐!!』
名乗りを上げたオーブは、先ほどよりも数倍は速い身のこなしでガクゾムに迫っていく!
「グアァ――――――――!」
「オォリャッ!」
不意を突かれたガクゾムはオーブの回転からの平手打ちをまともに食らい、張り倒された。
『「海を汚しちゃ駄目って教わらなかった!? 私たちが世の中のルールを叩き込んであげるわ、感謝しなさいっ!」』
黒春香の台詞とともに繰り出されるオーブの連続攻撃にどんどんと押し込まれるガクゾム。急に動きが良くなったオーブに混乱を起こしている。
サンダーストリームは海の戦士、アグルの力によって海戦に特化している。更に秘めたる闇の力によって暗黒の環境による影響も無効化していた。最早ガクゾムの優位は完全に覆されたのだ。
「グアァ――――――――!」
それでもガクゾムは抵抗し、両腕のカマをブンブン振り回してオーブを八つ裂きにしようとした。しかしオーブは右手を掲げると、その手の平に稲妻が握り締められて、稲妻が三叉型の矛に変わった。
「「『ギガトライデント!!!」」』
サンダーストリームの専用武器、ギガトライデントだ。その穂先でガクゾムのカマを受け止め、はね返す。
「シェエエアッ!」
「グアァ――――――――!」
オーブの振るうギガトライデントが、ガクゾムの肉体を逆に裂いていく。海流を支配するギガトライデントの斬撃は速く、ガクゾムも対応できるものではなかった。
「オリャアァッ!」
そしてオーブの鋭い刺突がガクゾムの胸部に突き刺さり、装甲をバキバキに砕いた! ガクゾムはよろよろと後ずさってもがき苦しむ。
「グアァ――――――――!」
『「ファンサービスが刺激的すぎたかしら? でもこれで閉幕よ!」』
オーブが掲げたギガトライデントに青いエネルギーが集まり、そしてトライデントを海底に突き刺す。
「「『サンダーストリームネプチューン!!!」」』
青い光が海流のように蛇行しながら飛んでいき、ガクゾムを呑み込む!
「グアァ――――――――!!」
ガクゾムが光の中に消えていき、そして爆発。破片は黒い煙のようになって深海の中に消えていった。
「ヘェアッ!」
ガクゾムを打ち破って海の静けさを取り戻したオーブは、大きく飛び上がって地上の世界へと帰還していく。
『「それにしても春香……闇の力を使うと相変わらずノリノリね」』
『「このノリはどうやっても抑えられないみたい」』
その途中で伊織と春香はそんなことを言っていた。
海の平和を荒らすガクゾムが倒されたことに、源三郎はガイたちにいたく感謝していた。ラゴン親子も再び深海の世界へと帰っていった。もう彼らの平和が乱されることがないように祈る春香たちであった。
「今回の事件も無事に一件落着だな」
砂浜でアイドルたちとともに水平線を見やりながら、ガイが感慨深げにつぶやいた。――だが、すぐに険しい表情で述べる。
「しかし、魔王獣は全て倒したというのに最近怪獣の出現が多いな……。魔王獣によるバランス崩壊の影響が続いてるのか、それとも別の要因があるのか……」
顎に手を掛けて考えるガイ。
「何にせよ、近い内にどうにかすることを考えないとな。目指すは地球のバランスを戻すことだ」
との目標を立てるガイであったが、それを聞いて、春香がやや不安げに問いかけた。
「あの、プロデューサーさん……」
「どうした?」
「プロデューサーさんは……怪獣が出なくなったら、765プロを出ていくんですか?」
春香はガイの返答に恐れを抱きながらも、それでも包み隠さずに尋ねた。このまま先延ばしにしていても、「その時」までに確かめておかねばならないことだからだ。
伊織と響も緊張しながら答えを待つ中、ガイは言った。
「――いや、お前たちをトップアイドルのステージに立たせるまでは、プロデューサーは続けるつもりだ」
「ほんとですか!?」
「ああ。今となっちゃあ、それも俺にとって大事なミッションだからな。そのために努力するつもりでいるさ」
ガイの返答に伊織と響はほっと安堵し、喜んで彼の背中を叩いた。
「だったら一層頑張らないとダメよ~! 今の調子じゃ、ミッション達成はいつになるか分かったもんじゃないわ!」
「ちゃんとやり遂げるようにお願いするぞ、プロデューサー!」
「いててッ! 分かってるから、叩くなお前ら!」
手荒に扱われて悲鳴を上げるガイ。そんな様子に苦笑しながらも――春香の懸念は消えていなかった。
(だけど……それはあくまでプロデューサーさんだけの意向。『ウルトラマンオーブ』として、そうも言ってられない状況になったら、多分その限りじゃなくなる……)
未来がどう転ぶかは分からない。そして今のガイの言葉は、決して「絶対」ではないと春香は分かっていたのだった。
(やっぱり、プロデューサーさんは私たちの元からいなくなるのかもしれない。ううん、それどころか、私たちみんな別々の道を進んでいって、全員が集まることもなくなるのかも……)
その時のことを想像したら、春香の気分は重くなる。そしてその想像は、遠くない内に現実になるかもしれない。
だけど――。
(だけど、今はこのままで、自分たちの光差す道のりと世界の平和のことを考えてるだけでいいよね……。今この瞬間は、私もウルトラマンオーブなんだから……)
未来への一抹の不安は抱えつつも、それでも今の内は自分がやるべきことに専念しよう、とそう考える春香であった。
『765プロのウルトラヒーロー大研究!』
伊織「にひひ、伊織ちゃんよ♪ 今回紹介するのは、ガイアのライバルであり無二の相棒、ウルトラマンアグルよ!」
伊織「アグルは映像作品で初めて登場した蒼いウルトラマンで、『ウルトラマンガイア』のサブウルトラマンよ。それまでのウルトラ戦士といえば正義の味方が当たり前だったけど、アグルは地球を守るものではあっても人類を守る存在ではないという、それまでのウルトラマン像を壊す衝撃的なキャラクターだったわ」
伊織「もちろんガイアの完全な味方ではなく、話によっては彼と対立することもあったわ。シリーズでは初めてとなる正義と正義のぶつかり合いは視聴者に大きな印象を与えて、アグルは制作スタッフの予想を超えるほどの人気を獲得したの」
伊織「その結果、物語前半で退場するはずだったアグルは予定を変えて、V2の姿でレギュラーの座に返り咲いたのよ。だけど本来予定がなかったところに盛り込んだから活躍は控えめになっちゃったんだけど……それでも、ガイアの相棒の地位を確かなものにするほどの知名度を確立したのよ」
ガイ「そして今回のアイマス曲は『私はアイドル♡』だ!」
ガイ「アイドルマスターの当然のテーマであるアイドルを表現した歌なんだが、非常に珍しいことにフルの歌詞が二パターンあるんだ。一般的な方はM@STER VERSION、もう一つはSINGLE VERSIONと呼ばれていて、細かい差異の他に途中の歌詞が全く違うものとなってるから、一度は聴き比べてみてくれ」
伊織「どっちにせよ、伊織ちゃんはこの歌のように生まれながらのアイドルよ!」
伊織「それじゃあ次回も見なさいよね!」
萩原雪歩ですぅ。あの876プロの愛ちゃんたちが、二度と行くことが出来ない幻のカフェを探しに行ったんです。だけどもちろんそのカフェは、普通のお店じゃなくって……。愛ちゃんたちに何もないといいんだけど……。
次回『地図にないカフェのイマージュ』。あなたは夢を覚えてますか?