THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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蒼いリボンの少女(B)

 

 マドックに抗うマーヤだが、マドックは荒々しく彼女の意識を押し込めようとする。

 

「邪魔をするなぁッ!」

 

 そしてマーヤの姿が、テレポートによって消えてしまう。驚く渋川たち。

 

「くっそぉ……どこ行きやがった!?」

「お母さん……!」

「行きましょう!」

 

 辺りを見回す渋川の一方で、千早たちは千種を連れてここから離れていく。

 ハイパーゼットンデスサイスが動きに異常を来たしている間に、ガイたちは正面まで回り込んだ。

 

「プロデューサーさん、やりましょう!」

「千早さんのお母さんの気持ちを台無しにしたこと、後悔させてやるの!」

「ああ……!」

 

 それまで立ち止まっていたハイパーゼットンだが、移動したマドックのコントロールによって今度こそ火球を発射する。

 

「ピポポポポポ……!」

 

 だがその寸前に、ガイがオーブリングにオーブオリジンのカードを通していた。

 

[覚醒せよ! オーブオリジン!!]

「オーブカリバー!」

 

 召喚されたオーブカリバーをガイがキャッチし、柄のリングを回して掲げる。その背中に春香と美希が手を置く。

 そして三人はウルトラマンオーブに変身し、火球を粉砕しながら着地した!

 

『銀河の光が、我らを呼ぶ!!』

「ゼットォーン……!」

 

 ハイパーゼットンデスサイスは即座にオーブへと駆け出し、両手のカマで斬りかかる。それを迎え撃つオーブ!

 

「トワァッ!」

 

 オーブはハイパーゼットンの繰り出す斬撃をかわし、剣で防御しながら抗戦。こちらの剣戟をハイパーゼットンが防いだ隙に蹴りを入れて突き飛ばした。

 

「シェアッ!」

 

 カリバーの振り下ろしを交差したカマで防御するハイパーゼットンだが、オーブは柄で相手を殴り、ひるませたところに後ろ回し蹴りを仕掛けて相手の腕を弾く。

 

「ゼットォーン……!」

「シュアッ!」

 

 ハイパーゼットンの防御を崩すと横薙ぎの一閃を繰り出したのだが、ハイパーゼットンは大きくのけ反って回避。次いでオーブは剣を振り上げて唐竹割りを仕掛ける!

 

「ヘアァーッ!」

 

 だがハイパーゼットンはテレポートで逃げ、空振りしたカリバーの切っ先が地面に深く突き刺さってしまった! 勢いが仇となってしまった。

 

『「あっ、しまった!」』

 

 すぐに抜こうとするオーブだが、その背後にハイパーゼットンが現れる。オーブはやむなく一旦カリバーから手を放し、振り向きざまに前蹴りで迎撃した。

 

「テアッ!」

 

 ハイパーゼットンを捕らえようと飛びつくものの、ハイパーゼットンはテレポートで尾上空に逃げていく。

 

「シェアッ!」

 

 オーブも追いかけて大空へ飛び上がった猛スピードを出しながら光輪を投げ飛ばすが、ハイパーゼットンは振り向きもしないまま全て回避。そのまま逃げるハイパーゼットンを追って、オーブは加速。

 

「セアッ!」

 

 追いつくと即座に拳を振るうが、ハイパーゼットンは何と上半身だけのワープでかわしながらオーブを蹴り飛ばした。

 

「ウワァッ!」

 

 吹き飛んでいくオーブの背後にテレポートで待ち受け、カマで殴り飛ばしてオーブを地上へ真っ逆さまに叩き落とす。

 オーブの中では春香と美希がダメージのフィードバックに耐えながら、ハイパーゼットンデスサイスを強くにらみつけた。

 

『「プロデューサーさんの言った通り、ほんとに強くなってる……!」』

『「でも、負けないの……! 千早さんのお母さんのためにも……!」』

 

 ハイパーゼットンデスサイスは以前よりもテレポートを使いこなし、オーブを完全に翻弄していた。それでもここで負けてなるものかと、果敢に立ち向かっていく。

 そしてオーブとハイパーゼットンの戦いが一望できる丘の上に、トータス号は到着。降車した律子たちと千種は、そこでハイパーゼットンを操っているマーヤの姿を発見する。

 

「いたわ!」

「マーヤちゃんっ!」

 

 思わず駆け寄ろうとする千種の腕を掴んで止める千早と伊織。律子は分析の結果、マーヤの腕輪がハイパーゼットンのコントローラーであることを突き止めた。

 

「まずは彼女の腕輪を破壊して、怪獣のコントロールを遮断しないと!」

「だったら俺に任せろッ!」

 

 律子たちと同じくこの現場に駆けつけた渋川がスーパーガンを抜くが、千早たちを振り切った千種がしがみついて懇願する。

 

「やめて下さい! お願いですっ!」

「如月さん! これ以上は見逃す訳にはいかないんだよッ!」

「後少しだけ! 後少しだけでも……!」

 

 渋川と揉み合いになる千種。伊織は空中でハイパーゼットンに連続キックを仕掛けているオーブを応援する。

 

「頑張ってオーブ! 怪獣を倒してしまえば……!」

「オオオォォォォォッ!」

 

 しかしハイパーゼットンは蹴られながらテレポートで消え、オーブの背後を取ると火球の速射を食らわせた!

 

「ピポポポポポ……!」

「ウワァァァーッ!」

 

 またも叩き落とされるオーブ。ダメージの蓄積と時間経過により、カラータイマーがいよいよ危険を報せる。

 オーブの苦戦に渋川も焦っていた。

 

「もう時間がないんだよ! やむを得ない!」

「お母さん、どうしてそこまでして……!」

 

 千早の問いかけに答えるように、千種は訴えかけた。

 

「マーヤちゃんは戦ってるんです!」

「え!?」

「自分の中に潜んでいるもう一つの意識と……! これ以上の悪さを食い止めるために……!」

 

 千種の言うように、マーヤはハイパーゼットンを操りながら、胸をかきむしって苦しんでいた。マドックの意識に反抗し、肉体の支配を解こうとしているのだろう。

 

「あの子……!」

「ぐぅッ……!」

 

 しかしマーヤは振り返ると、腕輪から千種を狙って光弾を発射してきた!

 

「! 危ないっ!」

「きゃあっ!?」

 

 千早が千種と渋川に飛びついて、光弾から逃れさせた。マーヤは千種を撃とうとした腕を抑え、追撃を食い止める。

 

「マーヤちゃん……!」

「お母さん! 行っちゃ駄目!」

「危険ですよ如月さん!」

 

 マーヤへと向かっていこうとする千種を引き止める千早と渋川だが、千種はそのままマーヤへと懸命に呼びかけた。

 

「思い出して! 私と初めて会った日のことを!」

「う……!?」

「あの時、あなたは空を見上げたままとても寂しそうだった! それから、少しずつ笑うようになっていった……! お陰で私も、寂しくなくなったの!」

「お母さん……!」

 

 千早は思わず母親の顔を見つめる。

 

「私も、ずっと寂しかった! 家族がみんな私の元から離れていって、独りぼっちになってしまって……! だから、あなたが笑顔になることで私も救われていたのよ!」

 

 マーヤは苦しそうな表情で、千種の顔を見つめる。

 

「千早のことを教えたら、会ってみたい、友達になりたいって言ったわよね! 私も、あなたと千早がお友達になれたらそれ以上に嬉しいことはないわ! 今からでも遅くないの……元のマーヤちゃんに戻ってっ!!」

 

 千種の言葉を受け止めたマーヤは――右腕の腕輪に指を掛けた。

 マドックの声が焦り出す。

 

「よせ! やめろッ! それを壊せばお前はダメージを受ける! あの女との記憶も、なくなるんだぞ!?」

「でも……あの人を護れる! 千種さんの中の……私との思い出を護れるっ!!」

 

 指を掛けられた腕輪がミシミシと音を立てて、マドックもそれに合わせるように苦しみ悶えていく。

 

「うッ、ぐわぁッ! やめろぉぉぉぉッ! 人形のくせにぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!」

「私は……人形じゃないっ!」

 

 身体を同じとするマーヤもまた苦痛に顔を歪めるが、それでも腕輪を壊そうとする手は止めない。

 

「マーヤちゃん、もういいの! それ以上は……!」

 

 千種が見ていられずに呼び止めたが、マーヤはそんな彼女に告げた。

 

「千種さん……! ありがとうっ! 千早さんも……私と、お友達になってね!!」

「マーヤちゃんっ!!」

「……マーヤさん……!」

 

 千種と、千早がマーヤの名前を唱えると同時に、腕輪が砕け散ってマーヤの腕から離れた。

 

『うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!』

 

 腕輪を拠りどころとしていたマドックの意識は、腕輪とともに砕けてマーヤの身体から消滅していった。

 そしてマーヤは目を閉じ、その場に力なく倒れ込んだ。

 

「マーヤちゃぁんっ!! しっかりして!」

 

 千種と千早はマーヤの元へ駆け寄り、彼女を抱き起こすが、マーヤの意識はそのまま戻らなかった。

 

「ピポポポポポ……!」

 

 オーブの身体を斬りつけていたハイパーゼットンデスサイスは、腕輪のコントロールが途切れたことで行動に異常を起こし、ふらふらとオーブから離れた。その隙にオーブはカリバーへと向かい、地面から引き抜く。

 

「ピポポポポポポポポ……!」

 

 ハイパーゼットンは身体がふらつきながらも火球を生成してオーブへ放とうとするが、オーブはそこへ突っ込んでいって跳び上がりながらカリバーを振り上げる。

 

『「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」」』

 

 ジャンプ斬りが火球を両断し、ハイパーゼットンの動きも封じ込む。

 

「セェアッ!」

 

 そしてオーブの旋風とともに繰り出された回転斬りが、ハイパーゼットンを空高くに打ち上げた!

 

『「これで終わりにするっ!」』

 

 春香はベリアルのカード、美希はゾフィーのカードを握って、オーブリングへと通す。

 

『「ゾフィーっ!」』『ヘアァッ!』

『「ベリアルさんっ!」』『ヘェアッ!』

『光と闇の力、お借りしますッ!』[ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!]

 

 サンダーブレスターへとフュージョンアップしたオーブはハイパーゼットンの後方に回り込んで、渾身の一撃で地上へと殴り落とした。

 

「ピポポポポポ……ゼットォーン……!」

 

 それでも起き上がるはハイパーゼットンへ、着地したオーブが駆けていく。

 

『「あんたの出演はもうおしまいなのよ! 退場してもらうわっ!」』

 

 黒春香が叫び、オーブが腕を広げて竜巻のような回転でハイパーゼットンへ突撃する。

 

『「「せぇぇぇぇぇぇぇぇいっ!!」」』

 

 回転ラリアットの連撃が叩き込まれ、ハイパーゼットンはズタボロにされて立ち尽くした。

 

『「地獄へとお帰りなさいっ!」』

 

 いよいよオーブは最後の一撃を繰り出す。

 

「「『ゼットシウム光線!!!」」』

 

 光と闇の奔流が直撃し、ハイパーゼットンは背後にばったりと倒れていく。

 

「ゼッ……トォーン……」

 

 倒れるとともに爆散し、地獄からよみがえったマドックの陰謀は、今度こそ完全に潰えたのだった。

 

「トワァッ!」

 

 ハイパーゼットンを打ち倒したオーブが空の彼方へと去っていく。

 ……しかし、全ての敵を倒しても、マーヤは一向に目を覚まさなかった。

 

 

 

 マーヤがまぶたを開いたのは、彼女を如月邸に連れ帰ってからだった。

 

「目を覚ました……!」

 

 それまでハラハラしながら様子を見守っていた春香たちは安堵の息を吐いたものの、マーヤは千種の腕の中で、こう尋ねかけた。

 

「誰……?」

 

 アイドルたちは一瞬目を見開き、そしてやはりというように伏した。

 

「ここは……どこ……?」

 

 不安がるマーヤに、千種は優しく語りかけた。

 

「あなたは、旅の途中にここへ立ち寄ったのよ」

「旅の途中に……?」

「あなたにはたくさんの、行きたい場所、行くべき場所があるの。これからは、あなたの向かうべきところへと旅立つのよ」

「……私は、どこへ行けるの……?」

「どこへだって行けるのよ!」

 

 諭しながら、千種はマーヤのために仕立てた洋服を差し出した。

 

「これも、忘れないで持っていってね」

 

 洋服を受け取ったマーヤは、それを握り締めながらつぶやいた。

 

「何でだろう……何だかすごく懐かしくて……あったかい気持ち……」

 

 そのひと言に、千種は優しい微笑を浮かべて、洋服をマーヤのために用意した旅行鞄の中に入れてあげる。

 千早はそれを手伝いながら、そっと尋ねかけた。

 

「本当にいいの? ここに置いておかなくて……」

 

 千種は少し寂しそうな、それでも優しい笑顔のまま答えた。

 

「マーヤちゃんは、私の寂しさを紛らわすお人形じゃない。あの子にはあの子の人生がある……。だから、鳥かごから飛び立たせてあげなくちゃいけないのよ」

 

 千種が洋服を鞄に仕舞い込むと、それまで様子を見ていたガイがマーヤへと呼びかけた。

 

「おい、風来坊」

 

 振り向いたマーヤに、ガイはこう語った。

 

「どこへだって行ける、か……。だが、帰る場所があると、もっといいかもな」

「帰る、場所……」

 

 それを聞いて、マーヤは千種へ振り返った。千種は柔らかな表情でうなずく。

 

「旅の中で、ここに来たくなったら、いつでも遊びに来ていいからね」

 

 彼女から鞄を受け取ったマーヤは、笑顔を返した。

 

「ありがとう。また来るね」

 

 千種へと深々とお辞儀したマーヤは、去り際の直前に、千早の顔を見つめて尋ねかけた。

 

「あなたは……私のお友達に、なってくれる?」

 

 千早もまた微笑んで、マーヤに答えた。

 

「私だけじゃなくて、これからたくさんの人とお友達になれるわ。……いってらっしゃい」

「……いってきます」

 

 玄関へと向かっていくマーヤの後ろ姿を見つめながら、千早は千種へと囁きかけた。

 

「私も……暇が出来た時には、帰ってくるわね」

「!!」

「その時は、『おかえり』って言ってくれる……?」

 

 千種は口元を抑えて涙をこらえながらうなずいた。

 

「もちろんじゃない……。お母さんなんだから」

 

 そして、マーヤは未来へ向かう扉を開いて、外の世界に旅立っていく――。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

響「はいさーい! 我那覇響だぞ。今回紹介するのは、史上唯一のオーストラリアのウルトラマン、ウルトラマングレートさー!」

響「グレートさんは初めての海外で制作された実写作品『ウルトラマンG』の主人公で、平成に入ってから初めて制作された実写ウルトラシリーズでもあるんだぞ。初めは全六話の予定だったんだけど、七話追加された一クールの構成になったんだ。だから前半と後半で物語の趣がガラリと変わるんだぞ」

響「『G』の特徴は環境問題をひと際ピックアップしてるところさー。グレートさんの設定にもそれは表れてて、他のウルトラマンがあくまで地球の環境が合わないから三分間の時間制限なのに対して、グレートさんは環境破壊のために三分間しか活動できないとなってるぞ。それに最終回の真の敵は、みんなの度肝を抜くような相手だぞ」

響「特撮面では、グレートさんのアクターさんが空手の有段者だったから、アクションには空手特有のキレが盛り込まれてるのがよく分かるぞ。それからオーストラリアの環境を活かしたオープンセットも使われてて、自然光の下での画は他の作品では真似できない独特の美しさになってるぞ!」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『蒼い鳥』だ!」

ガイ「千早の初のソロ曲で、もう数百曲にも及ぶアイマスの楽曲の中でもトップクラスに有名な歌だ。歌が得意だが暗い過去を背負ってる千早のキャラクターが特に表現されているぜ!」

響「自分はダンスが得意だぞ! ゲームだと映像じゃみんな同じ動作なんだけど……」

響「次回もよろしくお願いするさー!」

 




 ミキなの。何だか海底でおかしなことが起こってるみたいなの。春香とでこちゃんがハニーと調べに行くんだけど、春香は最近の765プロが一つに集まることが少ないのを気にしてるみたいで……。そんな調子で大丈夫なのかな?
 次回『私は英雄』。ミキたちって、これからどこに向かっていくんだろう?

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