THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

54 / 80
勇者のSTAR

 

「プロデューサー、番組内容を変更してこのUMAの突撃調査をしましょう!」

「ヤーなーのー! ミキ、あんな危ない目に遭うなんて聞いてなかったのー!」

「やらなきゃいけないのなら、私だってひと肌脱ぎますとも!」

「冗談じゃないのっ!」

「ほんと美希には困ったものね」

『「ハニー、真の姿にっ!」』

「一緒に地球の平和を守ろうね、ハニー!」

「実際に直面してみたら……震えが止まりません……」

 

 

 

『勇者のSTAR』

 

 

 

「――ウワアァァッ!」

 

 街中での戦闘中、オーブ・ライトニングアタッカーが敵怪獣に殴り飛ばされて、路上に背中から叩きつけられた。

 

『「くぅぅ……やってくれるわね……!」』

『「あいつ、ハンパじゃない強さなの……」』

 

 オーブの中で、フュージョンアップしている律子と美希がうめいた。二人がにらみつける先にいるのは――。

 

「カ―――ギ―――――!」

 

 腹部に五角形の大口を備えた、鳥型の巨大怪獣。その名は宇宙大怪獣ベムスター! しかも普通の個体ではなく、かつて異次元人によって強化改造を施され、更なる力を手にした改造ベムスターだ! その力は計り知れず、オーブをも圧倒するほどであった。

 

「「『ギンガエックススラッシュ!!!」」』

 

 オーブは頭部から三叉型の光弾を飛ばして改造ベムスターに攻撃。しかしそれはベムスターが開いた腹部の口に呑み込まれ、無効化されてしまう。

 

「カ―――ギ―――――!」

 

 しかもベムスターはその口から光線を倍返しにしてオーブに放射した。

 

「オワアアアッ!」

 

 オーブはまたも弾き飛ばされた。律子が歯ぎしりしながらつぶやく。

 

『「駄目だわ……。あいつには、光線はどんなものも効かない! それどころかエネルギーを吸収されてしまってるわ!」』

 

 ベムスターの腹の口は、どんなものでも消化してしまう恐るべき器官だ。この器官によって光線は逆効果となってしまう。ベムスターが大怪獣と称される所以である。

 ならば打撃で、と行きたいところだが、改造ベムスターは肉体強度も高く、オーブの攻撃をことごとくはねのけていた。カラータイマーも既に点滅をしている。このままでは敗色濃厚だ。

 

『奴を倒すには斬撃が有効だ。それも相当な威力と切れ味のな……!』

 

 オーブが律子と美希に助言する。それで二人は、ヒカリとゾフィーのカードを手にした。

 

『「だったらこれで……!」』

『「勝負なのっ!」』

 

 美希と律子はオーブリングにカードを通す。

 

『「ゾフィーっ!」』『ヘアァッ!』

『「ヒカリさんっ!」』『メッ!』

『栄えある力、お借りしますッ!』[ウルトラマンオーブ! ブレスターナイト!!]

 

 オーブはライトニングアタッカーから赤と青の姿に変わり、右腕より光剣を伸ばす。

 

「「『ナイトZブレード!!!」」』

 

 光剣を構えて駆け出し、ベムスターに猛然と斬りかかる!

 

「セェアッ!」

「カ―――ギ―――――!」

 

 ――だが斬撃は、交差された爪によって止められた。

 

「フッ!?」

「カ―――ギ―――――!」

 

 更に剣は弾き返され、オーブはぶちかましを食らって吹っ飛ばされた。そこに眼球からの光弾の散弾も浴びせられ、オーブはますますダメージを受ける。

 

「グワアァァッ!」

『「うあぁっ!」』

『「こ、これでも駄目なんて……!」』

 

 カラータイマーの点滅が早くなってきた。もう残り時間はわずかしかない。それなのにベムスターは未だ健在。絶体絶命だ。

 

『「こうなったら、奥の手よっ!」』

 

 律子はオーブオリジンのカードをかざし、美希の握るオーブリングに通す。

 

『「プロデューサー、真の姿にっ!」』

[覚醒せよ! オーブオリジン!!]

 

 オーブカリバーを召喚して、オーブオリジンへと変身。

 

『銀河の光が、我らを呼ぶ!!』

 

 そしてカリバーのリングを回して土の文字を光らせる。

 

「「『オーブグランドカリバー!!!」」』

 

 オーブがカリバーを地面に突き刺すことで、黄色いエネルギーが弧を描いてベムスターの足元から襲い掛かった!

 

「カ―――ギ―――――!」

 

 凄まじい衝撃に襲われ、立ち昇る土煙の中に消えるベムスターの姿。

 

『「やった!?」』

 

 律子は一瞬、ベムスターを撃破したものかと思ったが――。

 改造ベムスターは土煙から上空へと飛び出し、そのまま宇宙へと猛スピードで退散していった。残り少ないエネルギーからの破れかぶれの一撃では仕留めるまでには至らなかったようだ。

 

『「ま、待ちなさいっ!」』

『「律子…さん! もう時間がないの!」』

 

 追いかけようとした律子だったが、美希の言う通り最早オーブに変身していられる時間は数秒も残っていなかった。オーブの姿はその場で消え、ガイたち三人が分離する。

 

「逃げられちまったか……」

 

 ガイがベムスターの逃げた後の空を見上げてボソリとつぶやいた。その後ろでは、律子と美希が気まずい表情で目を泳がせていた。

 

 

 

 宇宙へと逃げていった改造ベムスターだが、恐らくは再び地球に攻撃を仕掛けてくることだろう。それは明日になるかもしれない。765プロは終業後、急遽ベムスター対策の会議を開く運びとなった。

 ホワイトボードには亜美と真美が『ベム☆トーバツ会議!』と大きく記した。会議の進行を務めるのはもちろんガイだ。

 

「奴も最後の一撃で痛手を負ったはずだが、怪獣の自然治癒速度なら明日にはもう全快しててもおかしくはない。それまでに奴を倒す手段を講じておきたい。ずるずる戦いを長引かせたら被害は増すばかりだからな」

 

 ガイが会議の目的を明確にすると、貴音が最初に口を開いた。

 

「オーブオリジンを見せて逃げられたのは少々痛いですね。向こうもオーブカリバーを警戒してしまったことでしょう」

「俺もそう思う。だから今度は別の形態で奴に通用しそうなのを選出して、そいつで行こうと思う」

 

 ガイがうなずくと、亜美が張り切って意見した。

 

「破壊力だったらパワーストロングだよ! あのマッチョなボディからのパンチは流石に受け止められないよー」

 

 だがすぐに伊織に反論された。

 

「でもあんな重たい身体で肝心の攻撃を当てられるかしら。向こうは宙を自在に飛ぶことも出来るのよ」

「うっ……それもそっか」

 

 言葉に詰まる亜美。攻撃、防御、そしてスピード。この三つを全て兼ね備えているのが改造ベムスターの厄介な部分であった。

 他のアイドルたちも話し合う。

 

「スピードも重要なんだけど、パワーもなかったら意味ないし……。なかなかに難しいね……」

「普通のフュージョンアップじゃまず無理だろうね……」

 

 真や響が相談していると、春香が挙手してガイに提案した。

 

「サンダーブレスターかサンダーストリームならいけると思います!」

 

 しかしガイは、美希と律子――特に律子の様子を一瞥して答えた。

 

「いや――考えたんだが、あの怪獣はブレスターナイトで倒そうと思う」

「えっ!?」

 

 アイドルたちが、律子が驚いて顔を上げる。

 

「でも、ブレスターナイトは一度負けてるじゃないですか。それなのにどうして……」

「いや、あれが本当の力じゃない。俺たちはまだ、ブレスターナイトの真の力を引き出していないんだ」

 

 ガイは美希と律子の後ろに回って、二人の肩に手を置く。

 

「それが出来るのはこの二人だ」

 

 指名された片方の律子は困惑する。

 

「で、ですがプロデューサー、どうやったらそんなことが……」

「決まってるだろ?」

 

 ガイは不敵な笑みを返して告げた。

 

「特訓あるのみだッ!」

 

 

 

 特訓、を宣言したガイは律子と美希の二人を連れて、レッスンスタジオまでやってきた。そして二人へ告げる。

 

「さっきも言ったが、俺たちはブレスターナイトの力を完全に引き出せてない。ゾフィーさんとヒカリさんはウルトラ戦士の中でも優れた力と知恵を持ったお人。その真の力を以てすればあらゆる宇宙怪獣にも互角に戦えるが、もちろん力は強いほどに扱いが難しくなる」

 

 美希たちは当初のサンダーブレスターを思い返す。あれも完全制御までに時間が掛かったものだ。

 

「だからこんな状況になってる訳なんだがな」

「それでプロデューサー、そのための特訓というのは一体何をするんでしょうか」

 

 律子が問いかけると、ガイがその説明に移った。

 

「今までお前たちみんな、互いの息を合わせて二人でのフュージョンアップを可能としてきた。だが今度は、それこそ一分の狂いもないほど呼吸をシンクロさせないと駄目だ。そこで……」

 

 言いながらドン、と床にコンポを置くガイ。

 

「やることは単純だが、これから教えるダンスの練習を通して二人の呼吸を一致させる。当然ながら、ただ踊るだけじゃなくて互いの動きをピッタリ合わせないといけないぜ。それが出来るまで終わることは出来ない! 用意はいいか?」

 

 覚悟を問われて、美希、律子の順番に返答する。

 

「もちろんなの! いつでも始められるよ!」

「わ、私もです!」

「よし。それじゃあすぐに開始するぞ! 着替えてこい」

「「はい!」」

 

 トレーニングウェアに着替える最中、律子は美希を横目でながめながら考える。

 

(最近は少しはマシになってきたけど、美希は才能はあってもぐうたらな子。ここは私が年上として、しっかりリードしないといけないわね……)

 

 律子の脳内によぎるのは、765プロに入社してからこれまで見てきた美希の姿――。

 

『あっ、律子なのー』

『律子さん! でしょう!? 年上はちゃんと敬いなさい!』

『えぇ~……? いいじゃんそんなの、ドーリョーなんだから』

『良かないわよ! 親しき仲にも礼儀あり! 大体あんたは他人に対する敬意が足りないの。そんなんじゃ将来苦労するわよ……!』

『うえぇ~……』

 

 美希は出会った当初から生意気な態度で――。

 

『美希! またこんなところで昼寝なんかして! レッスンはどうしたの!?』

『あふぅ……眠たいからお休みするの……』

『そんな舐めたこと通ると思ってるの!? とっとと起きなさいっ! サボりなんて許さないわよっ!』

『やー!』

 

 しょっちゅうレッスンをサボろうとして――。

 

『美希ぃっ! 真面目にレッスン受けなさいって何度言われたら分かるの! トレーナーさんからまた苦情が来たわよ!』

『えー? ミキはちゃんと出来てるからいいじゃん』

『そういう問題じゃないの! 全くあんたって奴は、自分の才能にあぐらをかいて……プロデューサーもちゃんと言い聞かせてくれないから美希が甘ったれるんですよ!』

 

 レッスンに出たら出たで真面目にやらないし――そんなこんなでいつも頭を悩まされていた。

 だからここは自分が引っ張らないといけない……そう考えて、特訓を開始したのだが……。

 

「律子! またターンが遅れたぞ! これで四度目だ!」

「あっ! す、すみませんっ!」

「そこのステップは左足からだ! もう一度最初からだ!」

「すみません……!」

 

 実際にガイから叱責されてばかりなのは、自分の方であった。ガイが用意したダンスは、もう大分アイドルとしての経験を積んでいるはずの今の律子でも難しいもので、何度もとちってしまっていた。

 対する美希は――完璧にやり遂げていた。たった一度のレクチャーだけで頭から最後まで覚え切り、少しの間違いもなく踊っていた。しかもその集中力は尋常ではなく、何度律子がミスしようとも一瞬たりとも途切れていなかった。

 先ほど律子が回想した人物像とは、正反対の顔つきが美希から窺えていた――。

 

(こ、これが美希なの……? そりゃあ最近はやる気になってるのは知ってたけど、まさかここまでなんて……)

 

 律子は汗だくになりながら愕然とする。美希はまだまだ手の掛かる甘えん坊だと思っていたのに……その評価は、全く外れていた――。

 

「……一旦休憩にするか。流石に体力が持たなそうだ」

 

 律子が膝に手を突いてぜいぜい息を切らしていても、美希の方は背筋を伸ばしたままであった。美希は疲労困憊の律子を気遣う。

 

「律子…さん、大丈夫? ミキ、ちょっと速かったかな?」

「そうだな。美希、この特訓の肝は律子との呼吸を合わせることだ。もうちょっと律子に合わせることを意識するべきだ」

 

 ガイが注意し、美希が返事をするのを――律子がさえぎった。

 

「いえ……美希は何も悪くありません。私がついていけてないだけです……」

「律子…さん?」

 

 美希が律子へ振り返り、ガイは目を細めて律子を見つめる。

 律子はうつむき加減で語った。

 

「初めは、私が美希をリードしないとって思ってました……。でも本当は分かってたんです。美希はもう、私にリードされる必要のないくらい成長してるって……。でも、それを認めたくなかった。認めるのは……とっくに追い抜かれてるってことを受け入れるってことだから……」

「……」

「それだけじゃない……私は、765プロの誰よりもアイドルの才能がありません。客観的に見れば、私の成績が一番劣ってるのは一目瞭然です。先の戦いだって、私が怪獣を取り逃がしたようなもの……。でもそれを認めたくなかったから、心の中で虚勢を張ってました。だけど……もう認めざるを得ません。このまま行っても、私は足を引っ張るだけだって……。プロデューサー、やっぱり春香の案を採用して……」

 

 特訓の辞退を申し出る律子の言葉を、今度は美希がさえぎった。

 

「そんなことないよっ!」

「美希……?」

 

 美希は律子の手を取り、じっと瞳を見つめながら熱弁する。

 

「律子…さんは、ずっと765プロのために頑張ってきたの。ミキたちは、半分は律子…さんに支えられてきて、キラキラ輝けるようになったんだよ。最初はぐうたらだったミキのことも、あきらめずに面倒見てくれてた。そんな律子…さんが、みんなの足を引っ張る訳なんてないの! 弱音なんて言わないで。このままでいいの? そんなわけないよ!」

 

 懸命に訴えかける美希が、告げる。

 

「出来ないなんて言わないで。一緒だったらどこにだって行けるの。ね? ……律子さん」

「美希……!」

 

 美希の言葉を受け止めて、律子が表情を変えて、ガイに振り向いた。

 

「プロデューサー……やっぱり、続きをお願いします! 何度つまずいたって、私はやり遂げますからっ!」

 

 律子の顔つきを見て取ったガイは、口元をほころばせた。

 

「先に心が一つになったみたいだな……。その調子なら特訓完了も遠くないッ!」

 

 二人を鼓舞して、ガイが特訓の再会を宣言。

 

「よぉし、行くぜッ! 言うまでもないことだが、張り切ってやれよ!」

「「はいっ!!」」

 

 コンポが再生を始め、美希と律子はダンスを再開。二人とも、先ほどよりも更に激しく、しかし生き生きとして。

 

「高く!」

「高く!」

「高く!」

「高く!」

「「もっと高くへ! 私たちは行けるっ!!」」

 

 二人の特訓は、ガイが営業のために離れてからも、途切れることなく続いた――。

 

 

 

 そして翌日の早朝。

 

「カ―――ギ―――――!」

 

 ひと晩経過して完全に傷を癒やした改造ベムスターは、早速再び都心に着陸して街の破壊を始めた。その現場に、カメラを手にした亜美と真美が駆けつけてくる。

 

「昨日逃げた宇宙怪獣が再度現れました! オーブも苦戦した大怪獣に、東京はどうなってしまうのか!」

 

 熱く実況する真美に、亜美がそっと耳打ちする。

 

「兄ちゃんたちはどうなったんだろうね……? あの後どうなったか聞いてないけど……」

「どうなんだろ……。律っちゃんとミキミキ、特訓を終わらせたのかな……?」

 

 そのガイたち三人は――既にベムスターの正面にやって来ていた。

 

「おいでなすったか……。それじゃあ律子、美希」

 

 無人の車道の上で、名前を呼ばれた二人が固くうなずく。

 

「見せてやろうぜ! お前たちの成果をッ!」

「はいっ!」「うんっ!」

 

 美希がゾフィーのカードを、律子がヒカリのカードを握る。

 

「ゾフィーっ!」

[ゾフィー!]『ヘアァッ!』

 

 美希がカードをオーブリングに通すことで、ゾフィーのビジョンが美希の隣に立った。

 

「ヒカリさんっ!」

[ウルトラマンヒカリ!]『メッ!』

 

 律子の隣には、ヒカリのビジョン。そしてガイがリングを掲げる。

 

「栄えある力、お借りしますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 ゾフィーとヒカリのビジョンと、美希と律子が、オーブと融合する!

 

『ヘアッ!』『テェアッ!』

[ウルトラマンオーブ! ブレスターナイト!!]

 

 膨大な輝きと結晶の渦の中から、赤と青の身体のオーブが飛び出してベムスターの前に着地。そして――颯爽と右腕を横に流すと、バサッと青いコート型のマントが現れ、オーブに羽織られた。胸には燦然とスターマークが輝く。

 この姿こそが、ゾフィーの武勇とヒカリの叡智によって誕生する、真のブレスターナイトだ!

 

(♪ウルトラマンゾフィー(インストゥルメンタル))

 

『俺たちはオーブ! 光の誉れ、只今参上!!』

 

 堂々と名乗り口上を発したオーブに、改造ベムスターがいきなり両眼から散弾光線を発射する。

 

「カ―――ギ―――――!」

「ムンッ!」

 

 それをオーブは――全く動じず、胸を張っただけ!

 その胸筋により光線は完全に受け止められ、オーブは一切のダメージがない!

 

「!?」

 

 あまりのことに衝撃を受けるベムスターだが、すぐに意識を切り換える。今度は腹部の口からより強力な破壊光線を放射。

 

「「『ナイトZブレード!!!」」』

 

 対するオーブは右腕より光剣を伸ばし――光線を切り裂きながら前進!

 

「オォォォリャアッ!」

 

 光線を切り払いながら距離を詰めて、ベムスターに斬撃を浴びせる。

 一戦目では難なく受け止められた攻撃だが、今度はベムスターの爪を粉砕して本体の表面を切り裂いた!

 

「カ―――ギ―――――!」

 

 深手を負うベムスターだが負けじと反撃を仕掛ける。――が、オーブの剣圧に押されて腕はあっさりと弾かれた。

 オーブはがら空きのベムスターのボディに、光剣の乱撃を入れた。

 

「ジェアァッ!」

「カ―――ギ―――――!」

 

 ベムスターから激しく火花が飛び散る。オーブの圧倒的な優勢に、亜美と真美はピョンピョン飛び跳ねて大喜びしていた。

 

「やったー! すごいぞオーブ兄ちゃーんっ!」

「何て強さだー! 怪獣がタジタジだぁーっ!!」

 

 そしてオーブの中では、律子と美希が手を取り合いながらベムスターを見据え、オーブの身体を動かしていた。

 

『「いけるわ! 私たち、この力を使いこなしてるっ!」』

『「うんっ! 今のミキたちはサイキョーなのー!!」』

 

 二人は飛び抜けた努力と集中力により、昨晩の内には既に特訓を終え、心と呼吸を完全にシンクロさせることに成功させていたのだ!

 ベムスターは昨日とはまるで別人のような強さのオーブに大混乱し、たまらず空に飛び上がっての逃亡を図る。

 

「カ―――ギ―――――!」

『またも逃がすかッ!』

 

 だが足をオーブに捕らえられ、地上に引きずりおろされて叩きつけられた。

 

「シェエアッ!」

「カ―――ギ―――――!」

 

 ショックで痙攣するベムスター。その隙にオーブが宙に舞い上がってベムスターを見下ろし、右腕を肩の上に掲げた。その手先が激しく光る。

 

「「『ナイト87シュート!!!」」』

 

 膨大な輝きの光線がベムスターに命中!

 ベムスターは光線を呑み込む暇もなく、途轍もないエネルギーを一身に受けたことで大爆発。その肉体は黒い煙となって霧散していった。

 

「シュウワッチ!」

 

 改造ベムスターを圧倒したオーブはマントを翻し、そのまま空の彼方へ飛び去っていく。その後ろ姿に、亜美と真美は笑顔で大きく手を振っていた。

 

 

 

「……というのがおおまかな顛末だ」

「ほんとあの時の兄ちゃんたち、すごかったよねー!」

「律っちゃんもミキミキも、すっごい頑張ったんだって!」

 

 戦闘終了後、ガイと戦いを見届けていた亜美、真美が春香たちへ説明を終えた。

 話を聞いた春香たちはわっと盛り上がる。

 

「よかったぁ~! 美希も律子さんも、あの力を使いこなすことが出来て!」

 

 皆、美希と律子の努力とその成果を自分のことのように喜んでいたのだが……そんな中で伊織が苦虫を噛み締めたような顔になった。

 

「その余韻で律子の奴……あんな感じになったのね……」

 

 伊織たちが振り返ると――律子が美希の手を引っ張ってやって来た。

 

「みんなっ! 何をぼやぼやしてるの!? 仕事の人は早く現場に! レッスンのある人はすぐにスタジオへ! 時間を無駄にしてたらもったいないわよーっ!」

「り、律子…さん、何もそんなに張り切らなくても……」

 

 美希が苦笑いしながら律子をなだめようとしたが、振り向いた律子の目には情熱の炎がまざまざと燃え上がっていた。

 

「何言ってるのよ! 私たち765プロの快進撃はまだまだこれからよ! 足を止めてちゃ勢いがしぼんじゃうわ! このまま一直線にトップアイドルの道を駆け上がるのよ~!!」

「は、はぁ……」

 

 律子のものすごい熱意に、真剣になった美希でさえ引き気味であった。

 律子は特訓の中で芽生えた熱い感情が今になってもまだ収まり切らず、今まで以上に熱心な……言い換えればひどく暑苦しい性格になってしまったのだった。

 そして律子の熱意は、冷や汗を垂らしている春香たちにも飛び火する。

 

「ほらほら何ぼさっとしてるの! 立ち止まってる暇はないって言ったでしょ!? 早く支度するっ! さぁさぁ早くっ!!」

「ち、ちょっと待って下さいよ律子さ~ん!」

「プロデューサーも突っ立ってないで! あなたが動かないことには私たちは始まらないんですよ!」

「わ、分かった分かった! 分かったから押すなって!」

 

 しつこく急かす律子にすっかり参るアイドルたちやガイの様子を、小鳥と高木が苦笑いを浮かべてながめていた。

 

「律子さん、すっかりたくましい感じになりましたね~……」

「ははは……まぁいいことではあるよ。やる気があるというのは……」

「小鳥さんも社長も! お二人は年長者なんですから、特にみんなを引っ張らないと駄目ですよぉっ!」

「ひぃっ!?」

 

 しかしそんな二人にも律子の激が飛んできて、思わず悲鳴を上げてしまう小鳥たちであった。

 このように765プロはしばらくの間、皆が律子に振り回されてくたくたになったのでしたとさ。ちゃんちゃん。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

やよい「高槻やよいですぅ~! 今回ご紹介するのはー、うっうー! ウルトラの母ですぅーっ!」

やよい「ウルトラの母は『ウルトラマンタロウ』で初登場した女の人のウルトラマンです。その名前の通りウルトラの父の奥さんで、タロウさんはこの人の子供なんですよぉ。治療を専門とする銀十字軍の隊長さんで、普段はウルトラクリニック78で働いてます。本名はウルトラウーマンマリーさんって言います」

やよい「その役職の通り、誰かを助ける時は大抵、身体を治したりアイテムをあげたりといった裏方での活躍です。でも『タロウ』第三話でライブキングを倒すだけの光線をタロウさんと一緒に撃ったりと、戦闘が出来ない訳じゃないところを見せてますぅ」

やよい「基本的にウルトラ兄弟を助けるのはゾフィーさんやウルトラの父、ウルトラマンキングさんの場合が多いので、ウルトラの母の出番はそう多くはないんですが、登場する時はまさにお母さんみたいな優しさでみんなを導くんですぅー!」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『BRAVE STAR』だ!」

ガイ「『MASTER PRIMAL ROCKIN’ RED』収録の、比較的新しい歌だな。「勇気の星」を意味するタイトル通り、かなり熱い内容の歌詞が特徴だぞ!」

やよい「うっうー! 私もやる気に溢れてるのは大好きですよー!」

やよい「それじゃ、次回もよろしくお願いしまーすっ!」

 




 如月千早です。プロデューサーたちが以前倒したはずのハイパーゼットンが出現しました! 私たちはその現場にいつも居合わせる少女を捜し始めたのですが、その先に行き着いたのは……え? 私のお母さん……!?
 次回『蒼いリボンの少女』。お母さんと少女にはどんな関係が……?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。