THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

49 / 80
私の中の幸(B)

 

『光を越えて、闇を斬る!!』

 

 ウルトラマンオーブが目の前に登場すると、戀鬼はホテルに向かう足取りを止めてオーブを見据えた。

 

『オーブスラッガーランス!』

 

 戀鬼と対峙するオーブはスラッガーを回転させてオーブスラッガーランスを召喚し、戀鬼へと構える。

 一方の戀鬼は、腰に佩いていた刀を鞘に収めたまま手に取ると――その場に突き立てて無手となった! 驚愕する真と伊織。

 

『「剣を置いた!?」』

『「私たちなんか素手で十分って言いたい訳!? なめるんじゃないわよ!」』

 

 激昂する伊織。オーブはランスのレバーを三回引き、エネルギーをチャージする。

 

「「『トライデントスラッシュ!!!」」』

 

 戀鬼に向かって容赦のない高速の連続斬撃を浴びせるが――戀鬼は残像が残るほどの超高速の体さばきで斬撃を全て回避してしまう。

 

『「なっ!? 何よあのあり得ない身のこなし!」』

『奴は亡霊! 実体がないんだ! だから動きが物理法則に縛られないんだ!』

 

 更に戀鬼はランスの軌道を見切り、はっしと受け止めて斬撃を食い止めた。

 

『「つ、捕まった!」』

『「放しなさいよぉっ!」』

 

 怒鳴る伊織だが、戀鬼が聞き入れるはずがない。ランスをひねり上げてオーブとにらみ合う。

 

「ウオオオオオ……!」

 

 口腔内に妖気をたぎらせながらオーブの腹部に膝蹴りを入れ、ひるませた隙にランスを奪い取って前蹴りを食らわせた。

 

「ウワァッ!」

 

 背面から倒れ込むオーブ。戀鬼は奪ったランスを左に投げ捨てた。

 

「つ、強い……!」

 

 律子や小鳥は戀鬼の意外なまでの戦闘力に目を見張っていた。いくら怨霊とはいえ元々はただの人間だったものが、ウルトラマンオーブを圧倒するとは!

 

『「な、なかなかやるわね……! だったらこっちだって容赦なしよっ!」』

 

 強がった伊織がオーブのカードを二本の指で挟み、真の持ったオーブリングへと通す。

 

『「プロデューサー、真の姿に!」』

[覚醒せよ! オーブオリジン!!]

 

 カードをオーブカリバーに変えて、その力でオーブオリジンへと変身を遂げた!

 

『銀河の光が、我らを呼ぶ!!』

 

 オーブカリバーを掲げたオーブオリジンの姿に、律子たちはぐっと拳を握った。

 

「オリジンならきっと戀鬼にも負けないわ……!」

 

 対する戀鬼は、オーブカリバーを見据えながら刀を鞘から引き抜いた。刀身にはまがまがしい戀鬼の妖気が纏わりついている。

 カリバーを構えるオーブと、全身に怪しい妖気を漂わせる戀鬼の剣と剣の決闘が開始される!

 

「セアッ!」

 

 先手を取って横薙ぎを繰り出すオーブだったが、戀鬼は重力を無視した大ジャンプでカリバーの刃を跳び越えた。その高度から一気に刀を振り下ろしてくる!

 

「フッ!?」

 

 どうにかオーブの反応の方が早く、戀鬼の剣の振り下ろしをかわすことが出来た。そこから反撃に転じる。

 

「ショワッ!」

 

 袈裟切りを仕掛けるオーブだったが、戀鬼は瞬時に反応。剣をぶつけてオーブカリバーを弾き飛ばした!

 

『「しまった!」』

『「くっ! 素手でもやってやるわよ!」』

 

 カリバーを弾かれても果敢に殴りかかるオーブだが、戀鬼は拳を受け止めてオーブを背負い投げる。

 

「ウアァァッ!」

「シュアッ!」

 

 剣を振りかざして斬りかかってくる戀鬼を後ろ蹴りで押し返すオーブ。それでもやはり武装している相手に素手というのは苦しく、相手の一閃をバク宙でかわすとともにカリバーの元に着地して拾い上げた。

 

『「強い……!」』

『「元々戦国時代の武将だった訳だしね……! それでも、この強さは……!」』

『元の武将と姫の怨念に加えて、これまで想い石に願を掛けた人たちの想念も上乗せされてるんだろう……! あの人間をはるかに超える巨体と妖気がその証だ……!』

 

 戀鬼の剣の腕に苦戦するオーブだが、それでも闘志は揺るがずにまっすぐ戀鬼に突進していった。

 

「ドゥオオオオオッ!」

 

 カリバーと刀がぶつかり、鍔迫り合いとなるオーブと戀鬼。しかし戀鬼の口からは膨大な妖気が溢れ出て、その勢いでオーブをじりじりと押していく。

 

「グッ……!」

 

 オーブの苦闘する様を目にしながら、小鳥が固唾を呑んでいる陽子に告げる。

 

「全部、あたしのせいなの……。あの侍は怨霊……幸せそうなカップルを妬んで、結婚式の日に花嫁を斬りに来る……。それをあたしが呼び起こしてしまった……」

 

 オーブの後ろ蹴りで押し返された戀鬼だが、決して殺気は衰えずに何度もオーブに斬りかかってきている。

 

「あれの目的は……陽子、あなたなの……。侍が履いてる靴が、証拠……」

「本当だ……小鳥さんの靴履いてる……!」

 

 律子のビデオカメラが、戀鬼の履いている靴を捉えた。黒い、女物の靴である。

 律子が小鳥に顔を向けると、小鳥は後悔の念を浮かべながら語った。

 

「あたしは昔、自分の思い描く夢に向かって頑張ってました。だけど、くじけてしまって……。それでも未練があって、すがりつく生活を続けてて……。そんなところに、陽子の幸せそうな姿と自分を比べちゃって……」

「小鳥……」

 

 陽子が呼びかけながらも、小鳥は涙をこらえながら続けた。

 

「あたしの心の奥深くにある、小さな妬みが、想い石をかつての怨霊に戻してしまったんです……! もう、どうしたらいいのか……」

 

 オーブが必死に戀鬼を止めようと切り結んでいるが、怨念に取り憑かれている戀鬼は一歩も退かずに剣戟を繰り広げている。このままでは、活動時間に制限のあるオーブが著しく不利である。

 

「陽子、ごめんなさい……。あたし、最低だ……!」

 

 自責する小鳥に――陽子は言う。

 

「分かるよ……」

「……え?」

「私、小鳥の気持ち分かる……!」

 

 小鳥が陽子と顔を向かい合わせる――。

 一方で、戀鬼は刀身に口から吐く妖気を纏わりつかせて、剣を構え直した。

 

『「何をするつもり……!?」』

『「気をつけて! きっとやばい奴に違いないよ!」』

 

 警戒する伊織と真。そして妖気を纏った剣で戀鬼が再度斬り掛かってくる!

 

「セアッ!」

 

 相手の斬撃をカリバーで弾き返していくオーブだが、斬撃の威力が先ほどより明らかに増しており、防御する度オーブの手が痺れる。

 

『「お、重い……!」』

『「こらえてっ!」』

『「分かってるわよ!」』

 

 どうにか耐えようとする伊織たちだったが、カリバーを上に弾かれてがら空きになったボディに、戀鬼が凶刃を走らせる!

 

「フゥアッ!」

「グアァァッ!」

 

 深々と斬られたオーブがよろめき、腹這いに倒れ込んだ。

 

『「うっ、ぐぅぅぅ……!」』

『「や、やられた……!」』

 

 真たちも相当なダメージを受けて悶え苦しむ。オーブのカラータイマーが点滅し、いよいよ危機を表した。

 

「っ!」

「あっ、小鳥さん!」

 

 この時に小鳥が弾かれたように走り出し、律子が急いでその後を追う。

 オーブを斬り倒した戀鬼は背を向けて、ホテルへと再び向かい始めた。このままでは結婚式が行われるホテルが両断されてしまう。

 

『「ま、待てぇ……!」』

『「そっち行くんじゃないわよっ! 私たちはまだやれるわよ!?」』

 

 止めようとするオーブだが、傷が深くてすぐに立ち上がることが出来ない。

 その間に戀鬼がホテルの前に立ち、刀を構えて今まさに切断しようとする――!

 

「やめてぇーっ!!」

 

 そこに、ホテルの屋上まで駆け上がってきた小鳥が力の限り叫んだ。小鳥の姿を認め、戀鬼の動きがピタリと止まる。

 小鳥は息を切らしながらも戀鬼に向かって懸命に呼びかける。

 

「あたしなんかのちっぽけな想いに惑わされないで下さい!」

 

 彼女の後に屋上まで上がってきた律子と陽子、朗。陽子は戀鬼にじっと見つめられる小鳥の姿に青ざめた。

 

「駄目ぇっ! 小鳥逃げてぇっ!」

「危ないッ!」

 

 身を乗り出す陽子を必死に止める陽子。一方で律子は鞄からタブレットとメガホン型のスピーカーを取り出し、ある動画を再生してその音声を戀鬼に向けた。

 

『想い石様、ありがとーう!!』

 

 それは想い石の特集番組のラストにあった、それまで想い石に恋愛を成就してもらったカップルたちの感謝の言葉の寄せ集めであった。

 感謝の言葉を受けた戀鬼から、動きが消える。

 カップルたちの感謝をバックに、小鳥が戀鬼へと呼びかけた。

 

「陽子を傷つけようとしたのもあなたですけど、この人たちの幸せを祝福してたのもあなた! どっちの自分が好きだったか、幸せだったか! 考えて下さい!」

 

 小鳥の言葉に、戀鬼はうつむく。

 

「だって、自分の幸せを決めるのは自分だからっ!」

 

 小鳥の呼びかけを振り切るように剣を振りかぶる戀鬼だが、それでも小鳥は逃げようとはせずに呼びかけ続けた。

 

「自分の気持ちに耳を傾けて下さい! あなたには出来ます! ……あたしと違ってっ! 出来るからっ!!」

 

 小鳥の叫びを受け止めた、戀鬼が――。

 剣を下ろし、オーブへと振り返った。

 

『「戀鬼……!」』

 

 そして――剣を自分の正面に突き刺して、腕を開く。

 

「……!」

 

 涙ぐむ小鳥。

 オーブは戀鬼の気持ちを汲み、うなずき返す。

 

『「真……!」』

『「うん……!」』

 

 伊織と真はオーブカリバーのリングを回し、水の文字に合わせて力を解放する。

 

「「『オーブウォーターカリバー……!!!」」』

 

 天高く掲げたカリバーを中心に辺りの空間が清らかな水に包まれ、戀鬼を水しぶきが覆った。

 雨のように降り注ぐ水を一身に浴びながら見上げる小鳥へ、戀鬼が最後に振り返る。

 

「……ごめんなさい……!」

 

 小鳥は水しぶきと涙に頬を濡らしながら、戀鬼へと謝った。

 

「シュアッ!」

 

 そうしてオーブの一閃が戀鬼へ浴びせられ、戀鬼の幽体が水の中に分解されていく。

 

「ウアアアァァァァァ……!」

 

 水とともに邪念が晴れていき、空もまた快晴に戻った。他者の幸せを妬む怨霊はここに、再び封じられたのである。

 小鳥たちは戀鬼の消えた跡を、誰も声もなく静かに見つめる。

 

「シュウワッ!」

 

 空に虹が掛かる中を、オーブが飛び上がって去っていったのだった。

 

 

 

 その後、陽子は小鳥に朗との結婚の詳細を打ち明けた。

 

「彼の親族ね……私との結婚に反対しているの」

「え?」

「だから彼は、東都ホテルの経営から外された。それで私も、仕事を辞めざるを得なくなったの」

 

 陽子の退職の背景を知り、彼女をかすかでも妬んだ小鳥は己を恥じた。

 

「ごめんなさい……あたし、何にも知らなくて……」

「ううん。私たちには、このホテルがあるもの!」

 

 守り抜かれたホテルを見上げる小鳥たち。ここは東都ホテルの系列ではなく、陽子たちの所有物件だったのだ。

 

「全財産を投資した。ゼロからのスタートよ」

「だからここから逃げなかったんだ……」

 

 真たちはホテルが無事であったことに、心から安堵していた。

 

「だから、私小鳥の気持ち分かるの。将来への問題は山積み。途中でくじけてしまうかもしれない。その不安で押し潰されそうな時だってあるから……私だって、みんなのことが羨ましいの。小鳥のことだって羨ましい」

「え?」

「だって……あんなに素敵な仲間に囲まれてるんだもの」

 

 ガイたちの方を一瞥した陽子だが、はにかみながら小鳥に視線を戻す。

 

「でも……自分の幸せを決めるのは自分、でしょ?」

「陽子……」

「私も頑張るから……小鳥も頑張って。小鳥の夢は、まだ続いてるんでしょ?」

「――うんっ!」

 

 小鳥と陽子は、互いにひしっと抱き締め合う。

 

「おめでとう、陽子……」

 

 真と伊織、律子はそっと微笑みながら、小鳥をこの場に残して立ち去っていった。――しかしガイだけは留まり、戻ってきた小鳥を迎えて言った。

 

「小鳥さん……俺は、あなたの夢を叶えてあげられなかった。今回の件はそれが大元です。謝るなら俺が……」

 

 と申し出たガイに、小鳥はゆっくりと首を振った。

 

「いいえ……肝心なところでプレッシャーに押し潰されてしまったのはあたしです。プロデューサーさんのせいじゃありません。それに……今が不幸な訳じゃありません」

「え?」

「辛いことはいっぱいありました。時間を巻き戻せたら……と考えたことだって一度や二度じゃありません。だけど……」

 

 小鳥は先に帰っていく伊織たち三人の、談笑する後ろ姿を見つめて微笑む。

 

「今のあたしは、とっても素敵な後輩たちに囲まれて、あの子たちの夢を支えてます。そんな自分も、誰かを羨む必要がないくらい幸せなんだって気づきました。あたしの幸は……既に私の中にあったんです」

 

 ふふっ、と柔らかに笑う小鳥。

 

「これからは迷いません。一生懸命、あの子たちをトップに押し上げてみせます! プロデューサーさんも、遅れないで下さいね!」

「――はいッ!」

 

 ガイも安堵した笑みを浮かべて、小鳥にうなずき返した。

 そして二人で伊織たちの後を追いかける中、小鳥は最後にこれからのことを熱心に相談している陽子と朗の方へ振り返って、ひと言残した。

 

「あなたたちと、あたしたちに……ずっと……ずっと……幸あれ」

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

真「どうも! 菊地真ですっ! 今回ご紹介するのは、宇宙警備隊の偉大な大隊長、ウルトラの父です!」

真「ウルトラの父は『ウルトラマンA』で初登場したウルトラマンです! 先述の通り、宇宙警備隊隊長ゾフィーさんの更に上の役職である大隊長でして、父親のような偉大さを尊敬されてウルトラの星ではウルトラの父という敬称で呼ばれてます。本名はケンと言って、『ウルトラ銀河伝説』で設定されました」

真「宇宙警備隊の最重要職だけあって普段は地球に姿を見せることはほとんどありませんが、ウルトラ兄弟全員がピンチになった時などの重要な局面で息子たちを助けてきました。ですが兄弟よりもずっと高齢ということもあって、本調子で戦えたことがあまりないのが残念なところです」

真「ウルトラの父という名前で誤解されがちですが、実の子供はタロウさんだけで、ウルトラ兄弟はほとんどが血のつながりはありません。ですけどエースさんは児童誌などの設定でウルトラの父に義理の息子として育てられたため「お父さん」と呼んでると説明されてました」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『幸』だ!」

ガイ「『ANIM@TION MASTER 生っすかSPECIAL』に収録された小鳥さんのソロ曲だ。小鳥さんは元々公式サイトだけのサブキャラだったんだが、人気を博してゲーム本編にも登場するようになった。そして歌唱力も設定されて度々専用の新曲が発表されてる、ある意味じゃシンデレラガールズ以上のシンデレラなんだ!」

真「ところでプロデューサー……ボクがウルトラの「父」の担当なのは、何か他意を感じるんですが……」

ガイ「……」

 




 天海春香ですっ! プロデューサーさんのオーブカリバーから指令が発せられて、私たちは新宿の地下に潜入することに。そこで待ってたのは恐ろしい大怪獣! そして雪歩の見た夢は、これと何か関係が……?
 次回『First Nexus』。自由な空へと飛び上がれ!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。