THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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三浦あずさは晴れ色のように

 

「歌の仕事はいつ取ってきてくれるんですか?」

「色々注文されて、プロデューサーさん大変そうですねぇ」

「うふふ、女は度胸よ」

『「私たちを見てくれてる人の心を、元気づけなくっちゃ……!」』

「大事なみんなと、約束を交わしましたから」

「あそこにいる人たちへと歌いたいんです」

「プロデューサーさんたちの苦しみを、私たちも受け止めます!」

「私たちは、仲間だから……!」

 

 

 

『三浦あずさは晴れ色のように』

 

 

 

 美希、やよい、響の三名は仕事の合間、事務所で先日の千早が出演した歌番組の録画を観ていた。画面の中の千早が『蒼い鳥』を歌い終えると、聴衆はまるで一流のオペラ歌手に対するかのようにスタンディングオベーションを送った。

 

「うっうー! 千早さんの歌はいつ聴いても胸がジーンってしますぅ!」

 

 やよいがニコニコ顔で諸手を挙げた。響もうんうんとうなずいて同意している。

 

「自分はダンス得意だけど、千早の歌は自分のそれと同じかそれ以上だと認めてるぞ」

 

 しかし美希だけはしかめ面だった。

 

「……でも、この千早さんの歌、何だかいつもよりも良くないって思うな」

「え? ほんとですか?」

「そうかなぁ……。変わんないと思うけど」

 

 ピンと来ないやよいと響だが、美希の言を律子が認める。

 

「なかなかいい耳してるじゃないの」

「あっ、律子…さん」

「美希の言う通り、最近千早はいまいち調子が悪いみたいなのよ」

「えぇっ!? 千早(さん)が!?」

 

 驚くやよいたち。どういうことか、律子が説明する。

 

「どんなに練習しても思うように歌えなかったり、実力が伸び悩んだりで苦しんでるみたい。いわゆるスランプって奴ね」

「そんな、あの千早がスランプなんて……」

「スランプなんてどんな人も陥るものよ。特に今の私たちみたいに、脚光を浴びて取り巻く環境が様変わりした時なんて特にね。環境の変化による心身へのストレスって、意外と影響が強いものなのよ。特に千早は繊細な子だし、一番煽りが強いんでしょう」

「うぅー……千早さん、大丈夫でしょうか……」

「ミキたちで何かしてあげられないかな……」

 

 心配するやよいと美希だが、二人を律子がやんわりと制した。

 

「悪いけれど、精神的に落ち込んでるところに下手に刺激したら逆効果になるかもしれないわ。自分自身と向き合うことでのみ解決できる場合もあるし、なるべくそっとしておいてあげた方がいいわよ」

「そっかぁ……」

「ところで、その千早はまだ戻ってこないのか? そろそろ事務所に着いててもいいと思うんだけど」

 

 ふと響が、ホワイトボートに書かれている千早のスケジュールと現在時刻を見比べて尋ねた。すると律子は大きくため息を吐いた。

 

「あー……それが、今日はあずささんと一緒だからねぇ……。さっき小鳥さんに連絡があったんだけど」

「えっ、まさか……あずささんの迷子に巻き込まれたとか?」

 

 首肯する律子。

 

「ちょっと前までだったらプロデューサーがついてたんだけど、プロデューサーも忙しくなったでしょ? まぁ千早がついてたら問題ないだろうと思ってたんだけど……考えが甘かったみたいね」

「あずさにも困ったものなの」

 

 美希が眉を八の字に寄せた。

 

「まぁ幸い今日は時間に余裕あるし、それまでにプロデューサーに何とかしてもらいましょう。それより私たちは私たちの仕事に専念よ」

「はーい!」

 

 律子の呼びかけにやよいが元気良く返事をして、四人はそれぞれの仕事に向かって事務所を出発していった。

 

 

 

 話題に上がっていた当の千早は、あずさとともに見覚えのない街の中を彷徨っていた。

 

「あらあら……ここはさっきも通らなかったかしら? すっかり迷っちゃったわねぇ……」

「迷っちゃったじゃないですよ、あずささん……。時間があるからいいものの、次の仕事に遅刻する羽目になってたらみんなの迷惑になりますよ」

「ごめんなさい、千早ちゃん。私ったらどうしてこうすぐ道に迷うのかしら……」

「まぁ、それを分かっていながら気をつけてなかった私も悪かったかもしれませんけど……」

 

 迷子になっているのにどうもふんわりとした調子のあずさに、千早はすっかりと辟易していた。

 そもそも、千早はあずさのことが765プロで一番苦手だった。嫌いという訳ではないが……アイドルのトップに立つために常にレッスンや自主練に熱心になっている自分と、普段はほんわかとしていてどこか掴みどころのないあずさとは、どうにも反りが合わない。こちらのペースが崩されがちなのだ。スタイルだって……あずさが隣にいたら自己嫌悪に陥ってしまいそうになる。

 特に今の自分は、トップに上っていくどころかいつもの実力が出せていないようなありさま。本当ならこんな道端で時間を浪費している暇はないのだ。早く事務所に戻って、調子を取り戻さないと……。そんな風に内心では焦りを抱えていた。

 

「ともかく、事務所には連絡しました。直にプロデューサーが拾いに来てくれるはずですので、それまで下手に動かず待っていましょう」

「そうね。プロデューサーさん、早く来てくれないかしら」

 

 二人は道路の端に留まって、ガイが来るのを待ち構える姿勢となる。……しかしその間に、千早の横顔をそっと覗き見たあずさが話しかけた。

 

「ところで千早ちゃん、こうしてあなたと二人きりでお話しをする機会ってなかなかなかったわね」

「え、ええ。そうですけど……それが何か」

 

 765プロには十三人ものアイドルが所属している。あずさとは特別親しい訳でもないのでそれも無理のないことだが……あずさは何を言おうとしているのか。

 若干戸惑う千早の心中を知ってか知らずか、あずさは遠慮のない質問を投げかける。

 

「千早ちゃんがアイドルをやってるのって、弟さんのためなのよね」

「……ええ。優は私の歌が好きだったから、日本中、世界中に私の歌が流れるようになれば、天国の優にも聞こえるんじゃないかと思いまして……。私の自己満足かもしれませんけど、優のために何かしなければ気が済まないんです。おかしいでしょうか?」

「そんなことないわ、立派な動機よ。だけど……」

 

 あずさは表情を和らげながら告げる。

 

「私、歌ってあんまり気を張り詰めながら練習しても、上手くはならないものだと思うの」

「はい……?」

「私が言うのも何だけど、最短距離を無理に進もうとするよりも、回り道を通った方が却って早いこともあるわ。荒れた道の上を全速力で走ろうとしたら危ないじゃない?」

「まぁ、そうですね……」

「きっとそれと同じよ。焦ってみても変わらないものなのよ。それに、ガチガチに強張った顔で歌っても聴いてる人もあんまり楽しんでもらえないと思うの。歌って本来は、のびのびと気楽にいながら歌うものじゃないかしら」

 

 急に長々と語るあずさに、千早はむしろ困惑。

 

「それって……私にそうしろってことですか?」

 

 問い返すと、あずさはにっこりしながら首を振った。

 

「ううん、強制するつもりなんてないわ。ただ、私の考えたことを言ってみただけよ」

「は、はぁ……?」

 

 それからあずさはにこにこしたまま何も話さなくなった。千早は、あずさの意図が読めなくてすっかりと当惑していた。

 そんなところに……不意に、あずさのロングスカートの裾がぎゅっと誰かに掴まれた。

 

「あら?」

 

 あずさと千早が見下ろすと、小さな男の子と女の子が涙を湛えながら二人を見上げていた。兄妹であろうか。

 

「あらあら。僕たち、どうしたのかしら?」

 

 あずさがしゃがんで尋ねかけると、子供たちは嗚咽を上げながら答える。

 

「おかあさん、いないの……」

「ここがどこかわからないの……」

「あらあら、迷子なのね……。かわいそうに」

 

 頬に手を当てたあずさは、子供たちに告げる。

 

「分かったわ、私たちが一緒にお母さんを捜してあげる! それで安心でしょう?」

「ほんと!?」

「ち、ちょっと、あずささん!?」

 

 あずさの発言に千早が仰天して待ったを掛けた。

 

「私たちだって迷子なんですよ。それに変装してるとはいえ、目立ったら面倒なことになるかもしれませんし……。この子たちはどこか交番を見つけて、そこで預かってもらったら……」

 

 しかしあずさは反論。

 

「でも、こんなに不安がってるわ。放っておくのはかわいそうじゃない?」

「そうですけど、ですが……」

「ほら、この子たちをよく見て。こんなに泣いてるのよ」

 

 子供二人は、涙ながらに千早の瞳をじっと覗き込んで訴えかけてきた。それで千早はうっ、と言葉に詰まる。

 過去が過去なので、千早も小さい子供には弱いのである。

 

「……分かりました。私も手伝います……」

「ありがとう、千早ちゃん!」

「おねえちゃんありがとう!!」

 

 パァァと顔を輝かせる三人に、千早は頭を抑えながらため息を吐き出した。

 ――そしてあずさと千早は、子供たちと手をつないで繁華街の中を練り歩き始めた。

 

「この子たちのお母さん、いらっしゃいませんかー?」

 

 あずさは遠慮なく声を張って、子供たちの母親へと呼びかける。そんな姿に周囲の人たちは奇異の視線を送り、千早は少しでも正体を隠そうとうつむいたが、

 

「ほらほら。そんなにうつむいてたら気づいてもらえないわよ、千早ちゃ――」

「名前を言うのは勘弁して下さい! 分かりましたから……」

 

 あずさにはほとほと参らされる。仕方なく、千早もあずさと同じように声を出していく。

 

「この子たちのお母さん、いらっしゃいませんかー?」

「お母さん、いませんかー? お子さんを捜されてる方ー!」

 

 しかし一向に見つからないので、あずさがふぅと息を吐く。

 

「困ったわねぇ。私たちもそろそろ時間が差し迫ってきたし……あら?」

 

 悩むあずさの目がふと上に向いて、あるものを捉えた。

 

「あずささん、どうしました?」

「空を見て。あれ、何かしら? 流れ星?」

「え?」

 

 空を見たら、黒い何かが隕石のように地表へ向けて落下してくる。――それも、彼女たちからそう遠くない場所へ!

 呆気にとられている内に黒い物体は地上に落下し、その地点から巨大な生物が身を起こした。

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 全身が赤黒く、まるで直立したシュモクザメのようである。そして腹部など肉体の各所が赤く発光しており、高熱を発して空気を歪めていた。裂けた口の端からはよだれが垂れ、獰猛さを窺わせる。

 冷凍怪獣ラゴラス……それが対となる怪獣グランゴンのマグマコアを取り込んで変異を起こした、進化怪獣ラゴラスエヴォだ!

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 ラゴラスエヴォは腹のマグマコアから火球を連続発射して街を焼き払い始める。人々は一斉に悲鳴を発してパニックとなった。

 

「きゃああああああっ!?」

「逃げろぉぉぉ―――――ッ!」

 

 一気に逃げ惑う大勢の人間。あずさと千早も同様であった。

 

「大変だわ!」

「すぐに避難しましょう! この子たちを安全な場所まで連れていかなくては!」

「ええ、そうね!」

 

 あずさはすぐに子供たちを連れて駆け出す。

 

「あ、あずささーん! そっちは怪獣の進行方向ですっ!」

 

 千早が慌てて軌道修正した。

 

 

 

 ガイはあずさたちがいた場所に到着していたが、二人の姿がないので頭をかいていた。

 

「参ったな……。あずささんも千早も、どこ行っちまったんだ」

 

 その時に、ラゴラスエヴォが出現して街の破壊を始めたのを目撃する。

 

「!!」

 

 ガイは即座に懐からケータイを取り出して、次の営業先に連絡を入れた。

 

「申し訳ありません。近くで怪獣災害が発生したため、三分待ち合わせに遅れます!」

 

 ケータイを仕舞い込むと、即座にラゴラスエヴォへ向かって駆け出した。

 

「全く、プロデューサーとウルトラマンの兼業は大変だぜ!」

 

 

 

 あずさたちはどうにかラゴラスエヴォの背後の方に回り込んで、怪獣に引き返す気配がないのを確認して一旦息を吐いた。

 

「この辺りなら大丈夫そうですね……」

「僕たち、怪我はないかしら?」

「うん!」

 

 そこへガイが走ってきて、彼女たちの姿を認める。

 

「あずささん! 千早! ここにいましたか!」

「まぁ、プロデューサーさん!」

「来てくれたんですか!」

 

 三人は無言でうなずき合うと、あずさが子供たちに優しく告げた。

 

「あなたたちは怪獣に見つからないように隠れててね。怪獣がいなくなるまで、出てきちゃダメよ」

「お、お姉ちゃんたちは!?」

「私たちは……怪獣を追い払ってくるから」

「え?」

 

 子供たちがポカンとしている内に、あずさたちは駆け出して曲がり角へ飛び込んでいった。

 そして誰の目もない内に、あずさと千早がタロウとメビウスのカードをかざす。

 

「タロウさんっ!」[ウルトラマンタロウ!]

「メビウスさんっ!」[ウルトラマンメビウス!]

「熱い奴、頼みますッ!」[ウルトラマンオーブ! バーンマイト!!]

 

 三人はフュージョンアップしてウルトラマンオーブとなり、ひねりをつけた大ジャンプでラゴラスエヴォを飛び越えてその面前に颯爽と着地した。

 

『紅に燃えるぜ!!』

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 ラゴラスエヴォはすぐに立ちはだかったオーブへ狙いを移し、腹からの火炎弾を発射する。

 

「セアッ! オリャッ!」

 

 オーブはそれを拳で粉砕。ラゴラスエヴォは次に口から火炎とは真逆の冷凍光線を吐き、オーブの腕を凍らせた。

 

「デアッ!」

 

 だがオーブが腕に熱を込めることで、すぐに解凍。燃える炎の戦士であるバーンマイトには、多少の火炎攻撃も冷凍攻撃も通用しないのだ。

 

『「これ以上街は壊させないわっ!」』

 

 千早の意気込みに合わせるかのように、オーブは猛然とラゴラスエヴォに突っ込んでいって打撃を仕掛ける。

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 が、ラゴラスエヴォは己の肉体で正面からオーブのパンチを受け止めた!

 

『「なっ!? びくともしない……!」』

 

 炎を纏った拳を繰り出していくオーブだが、ラゴラスエヴォはガード。それを崩すことが出来なかった。

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 逆にラゴラスエヴォの打撃や尻尾の振り回しはオーブの巨体を傾け、殴り飛ばす。

 

「ウオアァッ!?」

『「くっ……何てパワーなの!?」』

『「これは相当手強いわね……」』

 

 うめく千早とあずさ。ラゴラスエヴォはグランゴンの核となるマグマコアを取り込んで、完全に己の力としている。つまり怪獣二体分のパワーを発揮しているのだ。攻めに優れたバーンマイトでもそれを破るのは苦しかった。

 

『「小技が通じないのなら、大技で一気に決めましょう!」』

 

 体勢を立て直したオーブが両腕を振り上げ、胸部に熱と炎を溜めて火球を作り出す。

 

「「『ストビュームバースト!!!」」』

 

 バーンマイトの必殺攻撃がまっすぐラゴラスエヴォへ飛んでいく!

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 しかしラゴラスエヴォはそれに対して、口と腹からそれぞれ冷凍エネルギーと熱エネルギーを放射。この二つを融合させて莫大な光球に変え、ストビュームバーストにぶつけてきた。

 衝突する二つのエネルギー。その結果――ストビュームバーストの方が破られて光球がオーブに直撃する!

 

「ウワアアアァァァァァァァッ!」

『「「きゃああああああっ!!」」』

 

 その威力はすさまじく、オーブは大きく弾き飛ばされて千早とあずさにもかなりの衝撃が襲った。

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 高々と咆哮を発してにじり寄ってくるラゴラスエヴォに、オーブは立ち上がりながらも後ずさる。

 

『「何て奴なの……! どうすれば……!」』

 

 焦る千早。まさかストビュームバーストが真正面から破られるとは思わなかった。しかしストビュームダイナマイトでは接近するまでに迎撃されてしまうだろうし、防御を固めても意味がないだろうし、かわそうものなら街が大惨事になるのは目に見えている。どう対処すればよいのか……。

 

『「早くどうにかしないと……街がもっとひどいことに……!」』

 

 焦燥して下唇を噛み締める千早に――あずさがそっと呼びかけた。

 

『「千早ちゃん……深呼吸よ」』

『「えっ!?」』

『「こんな逆境にこそ、落ち着くのよ」』

 

 あずさの言葉に、千早は一瞬苛立つ。

 

『「今はそんなこと言ってる場合じゃ――!」』

 

 しかし、千早の手をあずさがそっと握り締めた。手の平から伝わるあずさの体温はほんのりと温かく、安らぎが感じられた。

 

『「大丈夫。私を信じて……ね?」』

 

 にこっと微笑むあずさの表情に、千早は我に返る。

 そしてすぅっと息を吸い込んで――吐き出す時には、表情が一変していた。

 

『「ええ……。ありがとうございます、あずささん」』

『「うふふ、どういたしまして。それじゃあ……」』

 

 千早とあずさの手元にオーブリングと、マックスとタロウのカードが現れる。

 

『「次はこれで行きましょう!」』

『タロウさんとマックスさん! 超パワーが潜在するお二人か! これならッ!』

 

 千早とあずさは直ちに再フュージョンアップ!

 

『「タロウさんっ!」』

[ウルトラマンタロウ!]『トァーッ!』

『「マックスさんっ!」』

[ウルトラマンマックス!]『シュアッ!』

 

 二人の左右にタロウ、マックスのビジョンが現れて、リングのトリガーを引く。

 

『超パワー、お借りしますッ!』

[フュージョンアップ!]

 

 タロウとマックスのビジョンと、千早とあずさがウルトラマンオーブと融合!

 

『トワァッ!』『ジュワッ!』

[ウルトラマンオーブ! ストリウムギャラクシー!!]

 

(♪ウルトラマンタロウ(インストゥルメンタル))

 

 赤いボディにウルトラホーンを頭から生やし、肩は金銀のプロテクターが覆う姿となると同時に高々とジャンプ、そして飛び蹴りをラゴラスエヴォの頭部に炸裂した。

 

「ダァッ!」

 

 不意打ちに転げるラゴラスエヴォ。反対に華麗に着地したオーブが名乗りを上げる。

 

『俺たちはオーブ! 宇宙の悪に、立ち向かう!!』

 

 そしてまっすぐにラゴラスエヴォに突っ込んでいき、ボクシングスタイルで連続パンチを浴びせる。

 

「デヤァァァッ!」

 

 腹部に猛打を入れられたラゴラスエヴォが悶絶。最後の強烈な一発がラゴラスエヴォを殴り飛ばした。

 

「オリャアッ!」

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 更にスライディングキックが追い打ちし、転倒するラゴラスエヴォ。

 

「トアァッ!」

 

 オーブの攻め手は緩まない。ラゴラスエヴォをすくい投げて地面に叩きつける。

 ストリウムギャラクシーはタロウとマックス、爆発的なパワーを秘める両戦士の力を宿しており、パワーとスピードの両立を果たしている。その二つから生じる怒濤の攻勢には流石のラゴラスエヴォも押されっぱなしだ。

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 しかしラゴラスエヴォは起き上がると口腔と腹部にエネルギーを充填し、先ほどの合体光線を再度放とうとする。

 

『「千早ちゃん、思いっきり行くわよー!」』

『「はいっ!」』

 

 対するオーブは左腕を掲げて、光を一点に集中。同時に全身が虹色に光り輝く。

 そして腕を逆L字に組み、相手の攻撃発射と同時に必殺光線を繰り出した!

 

「「『ストキシウムカノン!!!」」』

 

 互いに壮絶な熱量の光球と光線が激突!

 初めは拮抗していたが――ストキシウムカノンが光球を押し返してラゴラスエヴォに命中した!

 

「キィィィィッ!! ギャアアアアアアアア!!」

 

 ラゴラスエヴォは大ダメージを食らってマグマコアも潰れる。だが耐久力も流石なもので、まだ倒れてはいない。

 それにあずさはオーブのカードをかざして、千早の握るオーブリングに通す。

 

『「プロデューサーさん、真の姿に!」』

[覚醒せよ! オーブオリジン!!]

 

 カードはオーブカリバーとなって、あずさと千早で柄を回してトリガーを引く。

 聖剣の光によって、オーブはオーブオリジンへと変身を遂げた!

 

『銀河の光が、我らを呼ぶ!!』

 

 同時にあずさはオーブカリバーをリングに差し込んで、そのパワーを解放する。

 

[解き放て! オーブの力!!]

 

 オーブがカリバーで頭上に大きく円を描き、刀身にエネルギーをフルチャージさせてラゴラスエヴォへ振り下ろす。

 

「「『オーブスプリームカリバー!!!」」』

 

 膨大なエネルギーの奔流がラゴラスエヴォに突き刺さる!

 

「キィィィィッ! ギャアアアアアアアア!」

 

 ラゴラスエヴォは断末魔を残して、黒い煙のようになって弾け散った。

 

『「やったぁっ!」』

『「これでひと安心ね」』

 

 千早とあずさは勝利に喜び、胸をなで下ろす。――しかしオーブは、ラゴラスエヴォの散りざまにかすかな疑問を感じた。

 

『今の怪獣、消え方が変だったな……』

 

 

 

 ラゴラスエヴォの撃破後、子供たちの母親は二人を必死に捜し回っているところを無事に発見された。子供を返すと、母親は二人を守った千早たちに何度も何度も感謝の気持ちを告げてくれた。

 子供たちも、満面の笑みでお礼の言葉を言った。

 

『おねえちゃんたち、ありがとう!!』

 

 ――千早はその笑顔に、記憶にある弟の優の笑顔を重ね、口元が緩んだ。

 

「おッ。千早、何だかいい顔になったじゃないか」

 

 それを見て取ったガイがひと言告げ、千早はハッとなって顔を上げた。

 

「私がいい顔、ですか?」

 

 ガイはおもむろにうなずく。

 

「ああ。最近は変に根を詰めてていっぱいいっぱいって感じだったが、今は大分余裕がある感じだ。その顔なら、のびのびと歌えると思うぜ」

 

 ガイの発言に千早はあることに気づいて、あずさの方へ振り返る。

 

「あずささん……ありがとうございます。あずささんの言ったこと、分かったような気がします」

「うふふ、私は何もしてないわ。千早ちゃんが自分で解決しただけよ」

 

 笑顔で謙遜するあずさ。釣られて千早も笑いをこぼす。

 そんな二人をガイが急かす。

 

「そうだった、先方を待たせてるんだった。あずささんたちも急いで下さい! 次の仕事が待ってますよ!」

「はーい、プロデューサーさん! 私たちはうかうかと回り道もしてられないわねぇ」

「ですね。あずささん、今度は迷子にならないで下さいよ」

「分かってるわよぉ」

 

 とか言いながらあずさがまたも道をそれそうになったので、千早とガイは苦笑しながらも彼女を引き戻すのであった。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

あずさ「三浦あずさです。今回ご紹介するのは、ウルトラマンで先生のウルトラマン80です」

あずさ「80さんはその名前の通り、1980年放送の『ウルトラマン80』の主人公です。特徴は何と言っても中学校の教師というお仕事に就いてたことです。これは今になっても特撮の世界では他に例を見ない、特殊な設定です」

あずさ「この学校の先生と言う設定は、80年代の新しいウルトラマンということで、今までにない新しいことをしようという試みのために作られました。もちろん物語の舞台は学校となり、それまでに例のなかった怪獣特撮と学園ドラマの融和が図られたのですが、様々な問題のためにこの路線は1クールで打ち切られてしまいました。残念ですね……」

あずさ「その後は今までのようなSFドラマになったのですが、『先生』という個性はやはり視聴者さんたちの記憶に強く残り、今でも80さんが話題になる時は必ず先生の設定がつき纏います」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『晴れ色』だ!」

ガイ「アニメの第八話『しあわせへの回り道』で使用された挿入歌で、あずささんのソロ曲だ。焦るよりもゆったりと心の余裕を持つことが大事なことを謳う、あずささんそのものを表してるかのような一曲だな」

あずさ「皆さんも色々と苦労することがあるでしょうけど、晴れ色の気持ちを忘れないでいて下さぁい」

あずさ「それでは次回もよろしくお願いします。うふふ」

 




 四条貴音です。ご友人の結婚ぱぁてぃに出席された小鳥嬢ですが、そこでの愚弄で生じた負の念が騎馬武者の怨霊を呼び起こしてしまいました! 恐ろしいことです……。プロデューサー、伊織、真! 小鳥嬢のご友人の命を狙う怨霊を止めなければなりません!
 次回『私の中の幸』。小鳥嬢の幸せとは何でしょうか?

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