THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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天照らす聖剣(B)

 

 空の穴から現れたマガオロチの尾を見上げ、驚愕に染まっている春香たちの反応に、ジャグラーが愉快そうにほくそ笑んだ。

 

『そうだ。お前たちが引き千切ったマガオロチの尻尾だ。あの後俺が回収してたのさ』

 

 マガオロチとの戦いのことを思い出す春香。あの時は精神的な余裕がなかったので気にならなかったが、確かに投げ捨てた尾がいつの間にか消えてなくなっていた。

 視線をジャグラーに戻した真と伊織が、動揺しながらも問う。

 

「でも、そんなのを今更出して何のつもりだ!?」

「まさか、マガオロチを復活させようってつもり!?」

『いいや。もっと面白いことに使うのさ』

 

 答えながら、ジャグラーはダークリングと怪獣カードを手に握る。

 

『ゼットンよ!』

 

 光ノ魔王獣マガゼットンに酷似した怪獣――そのルーツとも言える宇宙恐竜ゼットンのカードをリングに通す。

 

[ゼットン!]『ピポポポポポ……』

『パンドンよ!』

 

 次に、同じようにマガパンドンに酷似した双頭怪獣パンドンのカードを通す。

 

[パンドン!]『ガガァッ! ガガァッ!』

『お前たちの力、頂くぞッ!』

 

 そしてダークリングを掲げてトリガーを引いたジャグラーが空の穴へと飛び上がっていき――マガオロチの尾と融合した!

 

「何ッ!?」

「今の行動、まさか……!」

 

 戦慄する千早たちを咄嗟に下がらせるガイ。彼らの目前に、空の穴から光の柱が突き刺さると――その中から見たことのない、それでいて既視感がある巨大怪獣が出現した!

 

「ピポポポポポ……ガガァッ! ガガァッ!」

 

 四肢に鋭利な鉤爪、胸部には黄色い発光体が二つ並び、黒い甲殻と炎のような形状の肉体が混ざり合っている。頭部にはパンドンの双頭型の角が生え、顔面はゼットンのもの――の下にサメに似た怪物の顔貌を持った大怪獣。それはまさに、ゼットンとパンドンの特徴を足し合わせたものであった。

 そしてこの怪獣の内部の超空間から、ジャグラスジャグラーが高らかに言い放つ。

 

『『超合体、ゼッパンドン!!』』

 

 ゼッパンドンの威容とプレッシャーに、アイドルたちは本能的に後ずさっていた。

 

「合体怪獣……!」

『『今までの合体怪獣とは訳が違うぞ! 芯にマガオロチの尾を使ってる!』』

 

 その言葉を肯定するように、尾はマガオロチのものである。

 

「ゼットォーン……! ガガァッ! ガガァッ!」

 

 ゼッパンドンの中から765プロ一同を見下ろすジャグラーは、ガイへ向けて強要する。

 

『『さぁ、早くオーブになれ! さもないと街が火の海になるぜ……あの時のようになッ!』』

 

 険しい表情のガイに、春香が面と向かって頼み込む。

 

「プロデューサーさん……私にフュージョンアップさせて下さい!」

「春香……!」

「もう一度だけでもやらせて下さい……! お願いしますっ!」

「ミキにもやらせて! あのまんまで終わりにしたくないの!」

 

 春香と美希からの懇願に、ガイは一瞬だけ逡巡したものの、二人の強い眼差しの前に首を縦に振った。

 

「よし……行くぞッ!」

「はいっ!」「うんっ!」

 

 仲間たちが手に汗を握りながら見守る中、三人はフュージョンアップを行う。

 

「ウルトラマンさんっ!」

[ウルトラマン!]『ヘアッ!』

「ティガっ!」

[ウルトラマンティガ!]『ヂャッ!』

「光の力、お借りしますッ!」

[ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!]

 

 ガイと春香、美希が融合してオーブ・スペシウムゼペリオンとなり、ゼッパンドンの前に立つ!

 

 

 

 遠くの建物上のヘリポートに駆け上がった渋川が、オーブとゼッパンドンのにらみ合う様子を見やった。

 

「ウルトラマンオーブ……!」

 

 オーブへの攻撃命令を受けていた渋川だが――通信機を握り締めた手は、小刻みに震えて彼のためらいを反映していた。

 

 

 

『俺たちはオーブ! 闇を照らして、悪を撃つ!!』

 

 堂々と名乗りを上げたオーブに、ゼッパンドンが襲い掛かってくる。

 

「ゼットォーン……! ガガァッ! ガガァッ!」

「セアッ! ショアァッ!」

 

 それを迎え撃ち、ティガのパワータイプの力を引き出しながら重いパンチやハイキックを連打するオーブだが、ゼッパンドンの巨山の如き肉体は全く揺るがない。反対にゼッパンドンの打撃で押し返される。

 

「ピポポポポポ……ガガァッ! ガガァッ!」

「グワッ!」

 

 ゼッパンドンの口から火炎弾が吐き出される。それを飛んで回避したオーブだが、パンドンの首からの光線で狙われて地上に戻ることを余儀なくされた。

 

「「『スペリオン光輪!!!」」』

 

 光輪を投擲して反撃するオーブ。光輪はゼッパンドンの首へと高速で飛んでいくが、

 

「ゼットォーン……!」

 

 ゼッパンドンは何と歯で光輪を受け止め、そのままバリバリと噛み砕いて食ってしまった!

 

「フッ……!?」

 

 歯に挟まった光輪の欠片をかき出したゼッパンドンは、クイクイッと手招きしてオーブを挑発した。それに応じるようにオーブは光線の構えを取る。

 

「「『スペリオン光線!!!」」』

『『ゼッパンドンシールド!』』

 

 しかし発射された必殺光線は、顔面の左右の穴から発せられた二枚のバリアによって完全に遮断された。ゼッパンドンにダメージを与えることが出来ない。

 

『『ハッ! 光線技はゼッパンドンには通用しない』』

 

 ジャグラーが嘲るように指を振った。春香と美希は冷や汗をかきながらうめく。

 

『「本当に強い……!」』

『「うん……!」』

 

 ジャグラーが「訳が違う」と発言した通り、ゼッパンドンの力はスペシウムゼペリオンを全く寄せつけない、マガオロチを彷彿とさせるほどのものであった。

 美希と春香はリングとフュージョンカードを握り、再フュージョンアップする。

 

『「ゾフィーっ!」』

[ゾフィー!]『ヘアァッ!』

『「ヒカリさんっ!」』

[ウルトラマンヒカリ!]『メッ!』

『栄えある力、お借りしますッ!』

[ウルトラマンオーブ! ブレスターナイト!!]

 

 オーブの姿が赤と青の身体に、胸にスターマークを並べたものに変化し、右腕から光剣を伸ばして敢然とゼッパンドンに斬りかかっていく。

 

「「『ナイトZブレード!!!」」』

 

 が、鋭い刃が叩き込まれる寸前、ゼッパンドンの姿が一瞬にして消失する!

 

『「「えっ!?」」』

 

 気がつけば、ゼッパンドンは背後に回り込んでいた。テレポート能力だ!

 

「デアァッ!」

 

 すぐに追いかけて剣を振るうオーブだが、ゼッパンドンはテレポートを繰り返してオーブを翻弄。攻撃がかすりもしない。

 

『「うっ……!」』

『「そこなのっ!」』

 

 しかし美希がテレポートの動きを読み、振り返りざまに突きがゼッパンドンの中心を捉えた。

 

『「やったっ!」』

 

 喜ぶ二人だが……光剣はゼッパンドンの振り下ろした爪に叩き折られ、残った刀身はゼッパンドンに吸い込まれていってしまった。

 

『「なっ……!?」』

「ピポポポポポ……ガガァッ!」

 

 そしてゼッパンドンは吸収したエネルギーを電撃光線に変えてオーブにお返しする。

 

「ウワアァァァァァッ!」

『「「きゃあああああっ!」」』

 

 手痛い一撃をもらって膝を突いたオーブに、ジャグラーが怒鳴る。

 

『『何を遊んでやがる! 闇の力を使え! さもなければこのまま滅ぼすぞッ!』』

『ぐッ……!』

 

 ためらうオーブに、春香が言う。

 

『「プロデューサーさん……使わせて下さい! 闇のカードをっ!」』

『春香……!』

『「……今度こそ私の、私たちの闇を受け止めて制御します! だから……!」』

『「ミキも、今度こそは暴走を止めるの! ミキたちを信じて!」』

『……!』

 

 オーブからの返事は――ベリアルのカードだった。

 

『俺ももう、闇を恐れない……! お前たちのくれた勇気で、闇を抱き締めてみせるッ!』

『「ありがとうございますっ!」』

 

 美希と春香は、今一度闇のフュージョンアップを決行する。

 

『「ゾフィーっ!」』

[ゾフィー!]『ヘアァッ!』

 

 美希がもう一度オーブリングにゾフィーのカードを通し――春香がベリアルのカードを通す。

 

『「ベリアルさんっ!」』

[ウルトラマンベリアル!]『ヘェアッ!』

 

 そして美希がリングを掲げ、オーブが叫んだ。

 

『光と闇の力、お借りしますッ!』

[フュージョンアップ!]

 

 春香と美希がベリアルとゾフィーのビジョンと重なり、春香は三度闇の姿となる。

 

『ヘアッ!』『ヘェア……!』

[ウルトラマンオーブ! サンダーブレスター!!]

 

 オーブの姿がサンダーブレスターと変わり、ゼッパンドンの前で胸を張る。

 

『闇を抱いて、光となる!!』

 

 オーブの変化にジャグラーがうっとりするようにつぶやいた。

 

『『それでいい』』

 

 

 

「オーブがあの姿になったッ!」

 

 オーブがサンダーブレスターとなったことで、渋川も遂に決断して通信機を顔の前に持っていった。

 

「ウルトラマンオーブ、出現!」

 

 ――ビートル隊の基地では、渋川からの連絡によってゼットビートルの出撃準備が開始される。

 

『ゼットビートル、緊急発進!』

『作業員退避! スカイゲート開け!』

 

 三機のゼットビートルが基地から飛び立ち、戦場へと急行する――怪獣ではなく、オーブを攻撃するために。

 

 

 

「ウアアアアァァァァァァァ―――――!」

 

 オーブは咆哮を発しながらゼッパンドンに突貫し、強烈な乱打を浴びせる。マガオロチ、ギャラクトロンを退けたその力はやはり他のフュージョンアップ形態とは一線を画し、ゼッパンドンも初めてその巨体を揺るがせた。

 

「ゼットォーン……! ガガァッ! ガガァッ!」

 

 だがそれだけで、ゼッパンドンの反撃をもらって押し返される。

 

「グオォッ!」

『『どうしたぁッ! マガオロチを殺った時はこんなもんじゃあなかったはずだ!』』

 

 地面の上を転がったオーブをなじるジャグラー。一方のオーブの中では――息を荒げてゼッパンドンを激しくにらむ春香を、美希が懸命に抑えてなだめていた。

 

『「ふぅーっ……ふぅーっ……!」』

『「春香、しっかり! 闇に呑まれちゃダメなの! 負けないで!」』

 

 春香の様子に細心の注意を払いながら、二人はオーブとともに光線の構えを取る。

 

「「『ゼットシウム光線!!!」」』

『『ゼッパンドンシールド!』』

 

 だがこの光線もバリアに防がれ、それどころかエネルギーをパンドンの口から反射されてその場に倒れ込んだ。

 

『「「うああぁぁっ!!」」』

『ぬるいッ! ガイ、お前の闇はそんなもんか!?』

 

 見下してくるジャグラーに、オーブは地面に拳を叩きつけながら起き上がった。

 

『「あいつ……!」』

『「春香、自分をしっかり持って!」』

 

 ギリギリと歯を食いしばる春香を、美希が励まし続ける。

 ――そして戦場には、ゼットビートルの編隊が目前まで迫ってきていた。

 

『ターゲット確認!』

『まずはウルトラマンオーブに攻撃を集中せよ!』

『ホントにいいんですか!?』

『いいんだッ!』

『了解……!』

 

 そんなことも知らずにゼッパンドンと対峙しているオーブに――背後から、大きな声が掛けられる。

 

「オーブぅ―――! 頑張ってぇーっ!」

 

 オーブが、春香が振り返ると――危険な戦場に、765プロの仲間たちが避難せずにあえて残っていた!

 あずさを初めとして、アイドルたちが口々にオーブ、そして春香へと叫ぶ。

 

「オーブ! 私たちは信じてます!」

「どんな姿になっても! どんなに力に溺れそうになっても!」

「あなたは今まで私たちの、みんなの命を救ってくれました!」

「だから信じてます! あなたが、闇を抱き締めて光になることをっ!!」

 

 小鳥も高木も、強い眼差しでオーブを見上げている。

 

『「……!」』

 

 彼女たちの声により、怒りに染まりそうであった春香の目の色が変わった。

 美希は春香の手を、ぎゅっと握り締める。

 

『「春香、ハニー……! みんな、ミキたちと一緒に戦ってくれてるよ……! 一緒に苦しみを分かち合って、闇を抱き締めてくれてるの……!」』

 

 美希の目尻から、ぽろりと涙の雫がこぼれ落ちた。

 

「逃げろぉッ!」

 

 渋川が千早たちの存在に気づいてビートルへ攻撃中止を伝えようとするも、既に遅かった。

 

『攻撃開始!』

『了解!』

 

 ゼットビートルから砲火が放たれ、オーブの背面に浴びせられる!

 

「ウオォッ!」

 

 想定外の攻撃にのけ反ったオーブに、ゼッパンドンからの火炎攻撃も浴びせられる!

 

「ピポポポポポ……ガガァッ! ガガァッ!」

「ウオオォォォォォ―――――――ッ!」

 

 オーブの姿が――765プロの仲間たちまでも、ゼッパンドンの爆炎の中に呑まれていく――!

 ジャグラーがこの結果に哄笑を発する。

 

『『ハハハハハハッ! みじめな結末だなぁガイ! お前はまた大切なものを守れなかった! 終わりだぁウルトラマンオーブッ!!』』

 

 ゼッパンドンの爆撃は続き、その衝撃と火災はビートルの編隊にも及びそうになる。

 

『全機、退避せよ! 退避だぁッ!』

『了解!』『了解!』

 

 ビートルが離脱していく中でも、ゼッパンドンの攻撃は止まらない。

 

『『ハハハハハハハハハッ!!』』

 

 攻撃を続けながら狂ったように笑っていたジャグラーだが――その笑い声が急に止まる。

 

『『あ……?』』

 

 火炎と煙が晴れると――背を向けてうずくまっていたオーブの背中が現れる。

 オーブは己の身体で、765プロ一同をゼッパンドンの爆撃から守り抜いていた!

 律子はカメラにオーブの姿を収めながら唱える。

 

「視聴者の皆さん、オーブです! ウルトラマンオーブが、私たちの命を救ってくれましたぁっ!!」

 

 アイドルたちの表情が一気に晴れやかなものとなった。渋川も大きくガッツポーズを取って喜びを表す。

 そしてオーブの中では――美希のつないだ手が、握り返された。

 

『「春香……!」』

『「美希……」』

 

 春香は依然として黒い姿のままであるが――その瞳は、いつもの春香の輝きであった!

 

『「もう大丈夫よ――! あなたとみんなのお陰で、私は光になれるっ!」』

『「――春香ぁっ!」』

 

 感極まった美希は、がばっと春香に抱きついた。

 そして春香は、家に伝わる子守唄――ナターシャから彼女の子孫たちへと受け継がれてきた、ガイとの思い出の歌を高らかに歌い上げる。

 

「アァー……アアアーアアアー……アーアーアアアーアァー……」

 

 この歌を耳にしたジャグラーが頭を抑えた。

 

『『うぅ……!? このメロディはぁ……!』』

 

 当の春香の胸元からは、歌とともに温かい光がこぼれ出していた。

 

『「春香、その光は……?」』

 

 春香が胸元から取り出したのは――夢の中でナターシャから授けられた白紙のカード。

 その表面に――剣を握り締めたウルトラ戦士の姿が浮かび上がった。オーブが驚愕の声を発する。

 

『それは……俺の姿ッ!』

『「ハニーの!?」』

『「ええ……これが、本当のプロデューサーさんっ!」』

 

 春香はこのカードを、美希の掲げたオーブリングの中に勢いよく通す。

 

『「プロデューサーさん、真の姿にっ!」』

[覚醒せよ! オーブオリジン!!]

 

 同時にゼッパンドンの――マガオロチの尾に亀裂が走り、その中から光り輝く剣が浮かび上がった。

 

『『この光はッ!』』

 

 剣はそのままオーブの元へと飛んでいき、カラータイマーから春香の手の中へと収まった。

 

『オーブカリバー! あの時本来の姿とともに失ってしまった聖剣だッ!』

 

 春香が剣の柄部分のリングを回すと、剣に光が灯る。そして美希と二人で高々と掲げ、トリガーを引いた。

 聖剣オーブカリバーの柄に、火、水、土、風の四属性を示す象形文字が順々に輝き――新しい、いや最初の姿のオーブがリングの光とともに飛び出していく!

 

「シェアッ!」

 

 そしてオーブは、右手に聖剣を掲げた、銀と赤と黒のシンプルな姿となって大地の上に立ち上がった!

 

『『その姿は……!』』

 

 オーブが己の頭上にオーブカリバーを振り回して円を描き、堂々と名乗る。

 

『俺たちはオーブ! ウルトラマンオーブだ!!』

 

 遂にオーブは――ウルトラマンオーブは、真の姿を取り戻したのだ!

 

『「これがハニーの、本当の姿……!」』

『「――夢で見たのと、同じだ……!」』

 

 ウルトラマンオーブの変身とともに元の姿に戻った春香は、今の姿を、夢で見ていたことを自覚した。あれは――ナターシャの記憶だったのだ。

 仲間たちも大歓喜し、力いっぱい声を張ってオーブを応援する。

 

「行けーオーブ―――っ!!」

「オーブ―――――っ!!」

 

 そしてジャグラーは――狂喜していた。

 

『『やったじゃないか! それをずっと待ってたんだぁガイッ! 本当のお前を――ぶっ潰す時をなぁぁぁぁッ!!』』

「ゼットォーン……! ガガァッ! ガガァッ!」

 

 ゼッパンドンが火炎弾を乱射する。オーブはそれを――全く動じずにカリバーで切り払いながら前進していく。

 

「オオオッ! シェアァッ!」

 

 そしてカリバーの振り下ろしが、ゼッパンドンの肩を切り裂く!

 

『『何ぃッ!?』』

 

 春香と美希はオーブカリバーのリングを回して、土の文字を光らせた。

 

「「『オーブグランドカリバー!!!」」』

 

 オーブが剣先を地面に突き刺すと、黄色い光が円を描きながらゼッパンドンへと土の中を走っていく。

 

『『ゼッパンドンシールドッ!』』

 

 ゼッパンドンはまたもバリアを張って防ごうとしたが――光はバリアを砕いてゼッパンドン本体にヒットし、多大なダメージを与える。

 

『『なぁッ!? シールドを破るとは……!』』

 

 オーブが剣を引き抜くと、春香がカリバーを美希の握るリングの間に差し込む。

 

[解き放て! オーブの力!!]

 

 柄を回すとカリバーに四つの文字全てが輝き、春香がトリガーを引く。

 オーブカリバーの刀身が光り輝き、オーブは頭上に光の円を描いた。

 

「「『オーブスプリームカリバー!!!」」』

 

 春香と美希でカリバーを握り締めながら、オーブとともに振り下ろす!

 

『「「いっけぇぇぇぇぇ――――――っ!!」」』

「ドゥアアァァァ―――――――ッ!!」

 

 エネルギーが集まったオーブカリバーがゼッパンドンへ向けられ、莫大な光の奔流が解き放たれた!

 まぶしく燃えるまっすぐな光がゼッパンドンに突き刺さり――ゼッパンドンは瞬時に爆散した!

 ウルトラマンオーブは剣を振り抜きながらそれに背を向け、残心をその身に湛えた。

 

「――うッ、ぐぅぅッ……!」

 

 ゼッパンドンの爆散跡には、全身焼け爛れたジャグラーが倒れた。地面に落ちたダークリングに手を伸ばすものの……。

 ダークリングは闇の分子に分解しながら、ジャグラーの目の前から消えたのだった。

 

「――あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――――ッ!!」

 

 目の前で起きた現実にジャグラーが奇声を上げる中、オーブは大空に向かって飛び上がっていった。

 

「シュワッチ!」

 

 

 

 ――仲間の元に戻ってきたガイたちを、アイドルたちは跳びはねたり満面の笑みを見せたりで喜びを全力で示しながら迎えた。

 

「兄ちゃーん! やったねー!!」

「はるるんもミキミキも、頑張ったねーっ!!」

「うんっ……!」

 

 春香と美希はひしっと、仲間たちと順番に抱き合う。小鳥と高木はガイに言葉を向ける。

 

「あれがプロデューサーさんの本当なんですね……!」

「遂にやり遂げたな、ガイ君! よかった! 実によかった! 安心した!!」

 

 アイドルたちはガイに声をそろえて感謝を告げる。

 

「プロデューサー、助けてくれてありがとうございますっ!」

「――礼を言わなくちゃいけないのは俺の方だ。お前たちのお陰で、俺は本当の自分に戻ることが……失った光を見つけ出すことが出来たんだ。本当にありがとう……!」

 

 ガイとアイドルたちが微笑み合っているところに、渋川が駆けつける。

 

「おーいッ! 全く無茶しやがって! 高木さんまで一緒になってさ!」

「叔父さん!」

「いやぁ渋川君、すまないね」

 

 高木が平謝りするが、渋川の顔は笑っていた。

 

「高木さんたちには感謝してるんですよ」

「え?」

「お宅の中継映像を見て、ビートル隊は、オーブを攻撃対象から除外した」

 

 そのひと言に、アイドルたちはわっと沸き上がる。

 

「本当!? やったぁぁぁーっ!!」

「世間の非難の声も収まるだろう。この活躍で、765プロの支持もまた回復するだろうな。よかったな春香ちゃん!」

「はいっ!」

「わーい! お仕事が戻ってきまーす!」

 

 大喜びのやよいたちだが、律子がパンパン手を叩いて注目を集めた。

 

「こうしちゃいられないわ! 765プロの信用回復のために、今回のことを纏めてサイトを更新よ! みんな手伝いなさいっ! さぁー事務所に戻るわよー!」

「えぇー!? 亜美たちすっごい頑張った直後だよ!? ちょっと休もうよー!」

「甘ーい! 私たちに立ち止まってる暇なんてないのよ! さぁ急いだ急いだっ!」

「そんなぁ~!」

 

 律子に急かされて天を仰ぎながらも、楽しそうな春香と皆の様子を優しくながめながら、ガイは心の中で独白した。

 

(ナターシャ……君のつないだ命は、百年後の未来を、素晴らしい仲間とともに生きている。安心してくれ……これから先の未来も、俺はずっと守り続ける。輝かせてみせる……! この星に、命が続く限り……!)

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

伊織「にひひ♪ 伊織ちゃんよ! 今回紹介するのは、宇宙正義の代行者からヒーローになったウルトラマンジャスティスよ!」

伊織「ジャスティスは『ウルトラマンコスモス』の映画第二作と第三作に登場した、映画オリジナルのウルトラ戦士よ。彼を主役に据えたOVも商業展開される予定だったそうだけど、実現には至らなくて、主役の座を得ることは出来なかったわね」

伊織「初登場の『THE BLUE PLANET』ではコスモスのピンチを助けるだけの役回りだったけど、『THE FINAL BATTLE』でキャラが大きく掘り下げられたわ。初めは宇宙正義デラシオンに同調して地球を滅ぼすつもりだったけど、地球人の優しさと希望に触れて心変わりして、コスモスと一緒にグローカーやギガエンドラと戦ったのよ」

伊織「しかもコスモスと合体することでウルトラマンレジェンドという戦士になるの! レジェンドの力は普通のウルトラ戦士よりもずっと強力で、ギャシー星人は宇宙の神とも称してたわ!」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『アマテラス』だ!」

ガイ「ゲーム『アイドルマスタープラチナスターズ』のDLC初出で、お祭りがテーマになってる珍しい歌だ。それと同時にストレートなラブソングで、お祭りに参加してる時に思い出したら気分が盛り上がるかもな!」

伊織「天照大御神もお祭り騒ぎで天岩戸から引きずり出されたから、そのイメージから作詞されたのかもね」

伊織「それじゃあ次回も見なさいよね!」

 




 うっうー! 高槻やよいですぅー! 春香さんのいとこ、つまり渋川さんの娘さんが事務所にやってきました。お父さんへの愚痴をこぼす娘さんのために、渋川さんの普段の頑張りを見せてあげることになったんですけど……そう言えば、私たちも渋川さんのお仕事ってよく知らないです~!
 次回『HARD-BOILED HIGH!』。渋川さんっていつもどんな仕事してるのかな?

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