THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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フューチャーをつかめ!(B)

 

「ひっ……!?」

 

 背後から自分の肩に顎を乗せてきたジャグラーに、美希の背筋にぞわぞわと悪寒が駆けていった。一方のジャグラーは美希の横顔を確かめる。

 

「お嬢ちゃんは765プロのアイドルだね。君たちのこと、いつも注目してるんだ。昔馴染みが勤めてるからねぇ」

「あなた……ここで何してるの……!?」

 

 美希の問いにジャグラーは答えず、一方的に語り出す。

 

「恋は矛盾に満ちている。謎が多いほど、危険が多いほど強く惹かれ虜になっていく。まるでこの世界そのものだ……」

 

 そして美希の首をきつく締め上げ始めた!

 

「うっ……!? く、苦し……!」

 

 必死にもがく美希だが、ジャグラーの力に敵わない。逆にもがけばもがくほど、美希の顔色は青ざめていく……。

 

「おい」

 

 そこに、美希にとって聞き慣れた声が割り込んできた。

 

「うちのアイドルに手を出すな」

 

 振り向いた美希の目に、ガイの姿が飛び込んだ。

 

「プロデューサー……!」

 

 ジャグラーもガイの方へ振り返ると、美希を捕まえたままじりじりと下がっていく。それに合わせて前に進み、距離を保つガイ。

 その時、地下駐車場に低いうなり声のような音が響いた。

 

『グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ……!』

「……土ノ魔王獣が目覚める!」

 

 それを耳にしたガイが口走った。

 

「土の魔王獣……!」

「そいつが目覚めれば、地上のものは全て土に呑み込まれ、消滅する。街も、人も……!」

「……!」

 

 美希はガイの語る光景を想像して、一気に顔を青ざめさせた。

 ガイはジャグラーの顔をにらんで言い放った。

 

「ジャグラー、お前の思う通りにはさせない」

「――いいや、もう止められないね!」

 

 いきなりジャグラーが美希を投げ飛ばした!

 

「きゃああっ!」

 

 宙に投げ出された美希を咄嗟にその身で受け止めるガイだが、その隙にジャグラーは真っ黒いリング――ダークリングと一枚のカードを取り出した。

 

「かつてウルトラ戦士に封印された、土ノ魔王獣マガグランドキング。この怪獣たちのパワーを得、悠久の眠りより目覚めよッ!」

『グガアアアア!』

 

 ダークリングに通されたカードが土の中へ飛んでいき――地中に封印されている大怪獣の核に吸収されていった。

 直後、駐車場全体を徐々に大きくなっていく震動が襲う。ジャグラーがガイに向けて、怪しく笑いながら告げた。

 

「お前の吹くメロディよりもっといい音色を聴かせてやる! 魔王獣の雄叫びをッ!」

 

 そう言い残してどこかへと走り去っていくジャグラー。残されたガイと美希のいる駐車場の天井に亀裂が走った。地盤が沈もうとしているのだ。

 

「きゃあぁぁぁっ!」

 

 悲鳴を上げる美希を腕の中に抱えているガイが、短く言いつけた。

 

「しっかり捕まってろよ!」

 

 天井が砕けて土砂が雪崩れ込む直前に、ガイが大きく跳躍した。

 

 

 

 間一髪、ビルが沈下する寸前にガイと美希は地上への脱出に成功した。

 

「あ、ありがとう、プロデューサー……」

「何。アイドルを助けるのがプロデューサーだ」

 

 しかし安心するには早い。四か所の龍脈のポイントが破壊されたことで、その対角線上にある一点に負の力が一気に流れ込んでいき――地中に封印されていた土ノ魔王獣が地上に這い出てきたのだ!

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 マガバッサーよりも更に巨躯の、全身が鋼鉄で出来上がったかのようなおぞましい大怪物。それが土ノ魔王獣、マガグランドキング!

 マガグランドキングが出現しただけで地面が裂け、周囲のビルが簡単に倒壊していく。

 

 

 

 地上に逃げていたジャグラーは、マガグランドキングの威容を見上げて独りごつ。

 

「万物は土から生まれ土に還る。命は一瞬の灯火……この世は一瞬で終わる」

 

 

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 復活したマガグランドキングはガイたちのいる方向へ進撃を開始した。近づいてくるマガグランドキングを見上げて舌打ちするガイ。

 

「止められなかったか……!」

 

 それから腕の中より下ろした美希の顔に振り返り、頼み込んだ。

 

「美希! 俺とともに戦ってくれ!」

「えっ!? 戦ってくれって……ミキに変身しろってこと!?」

 

 大きく動揺する美希。

 

「そ、そんなの出来ないの……! 怖いよ……!」

 

 美希はマガグランドキングの巨体から放たれる重厚な威圧感に震え上がっていた。しかしそこをガイは説得する。

 

「周りには大勢の人がいる……! 今オーブにならなければ、彼らが土の中に呑み込まれてしまうんだ! 今頼れるのは美希だけなんだ……どうか頼む!」

「……!」

 

 言われて、美希は自分たちの周辺に目をやった。ガイの言う通り、突然出現したマガグランドキングから何人もの人間が逃げ惑っていた。

 

「うッ、うわぁぁぁー! こっち来るなぁーッ!」

「助けてぇぇぇ――――――っ!」

 

 美希の脳裏に、マガバッサーの竜巻によって崩壊していく街の光景がよみがえった。このままだと、この場にいる人たちも、あの時のように……。

 それを意識して、美希も決心を固めた。

 

「……分かった! やるだけ、やってみるね!」

「ありがとう!」

 

 二人は人目のないところに駆け込んで、ガイがオーブリングを手にした。

 

「ウルトラマンさんッ!」

 

 リングに通されたカードが光の粒子になり、ウルトラマンのビジョンに変わる。

 

[ウルトラマン!]『ヘアッ!』

 

 ガイに続いて、美希もティガのカードをリングに通した。

 

「ティガっ!」

 

 美希の隣にティガのビジョンが現れる。

 

[ウルトラマンティガ!]『ヂャッ!』

 

 二人のウルトラマンのビジョンが現れると、ガイはオーブリングを高々と掲げた。

 

「光の力、お借りしますッ!」

 

 トリガーが引かれると、リングから三色の光が溢れ出す。

 

[フュージョンアップ!]

 

 ウルトラマンとティガのビジョンが、美希を巻き込んでガイと重なり合った。

 

『シェアッ!』『タァーッ!』

 

 そしてガイが、オーブの姿に変身を遂げた!

 

[ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!!]

 

 巨大化したオーブが、進撃するマガグランドキングの正面に降り立った。マガグランドキングが反応して足を止める。

 変身したガイ=オーブが決め台詞を放った。

 

『俺たちはオーブ! 闇を照らして、悪を撃つ!!』

 

 

 

 765トータス号で四つ目の龍脈のあるポイントへ向かっていた律子、春香、千早だったが、到着する前にマガグランドキングが出現してしまっていた。

 

「遅かった……!」

「プロデューサーさんは大丈夫なんでしょうか!?」

「分からないわ……! とにかく現場に急ぎましょう!」

 

 律子の運転によって、逃げる人々の反対方向へ走っていくトータス号だったが、マガグランドキングの後に更にオーブが地上に現れるのを春香たちは目にした。

 

「プロデューサーさんだ!」

「でも、誰がプロデューサーと変身を……? 私たちはここにいるし……」

 

 律子が疑問を口にすると、春香がハッと気がついてつぶやいた。

 

「まさか、美希……!」

 

 

 

 オーブは己の内にいる美希に呼びかける。

 

『よし、行くぞ美希ッ!』

『「う、うんっ!」』

 

 美希にはまだ恐怖心が残っていたが、それを振り払うように前に飛び出す。それと連動して、オーブもマガグランドキングへ肉薄していった。

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

「ウゥゥリャアアッ!」

 

 跳躍したオーブがマガグランドキングの首に先制の飛び膝蹴りを決めた。そこから更に回し蹴り、連続チョップと次々に格闘技を仕掛けていく。

 

「トアァッ! ゼアッ!」

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 マガグランドキングがペンチ状の右腕を振るって反撃してきたが、オーブは紫色の光に包まれながら高速で下がり、それをかわした。

 

『いい反応だ美希!』

『「ありがとなの!」』

 

 再度マガグランドキングの懐に飛び込んだオーブは、赤い光に包まれることでパワーを増強し、キックを入れた。マガグランドキングが今度はクロー状の左腕を振り下ろしてきたが、先ほどと同じように回避した。

 美希の才能は戦闘においても発揮され、スペシウムゼペリオンに宿された能力を見事に使いこなしていた。

 ……しかし、どれだけ打撃を打ち込んでもマガグランドキングに応えている様子が微塵も見られない。

 

『「うっ……! こいつの身体、すごい硬いの……!」』

『ぐッ、想定以上の装甲の頑強さだな……!』

 

 むしろ打ち込み続けたオーブの手の方が痛んでいた。オーブがたじろいでいると、マガグランドキングの全身から衝撃波が発せられる。

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

「ウワアァァァッ!」

『「きゃあああっ!」』

 

 衝撃波に押されて後ずさったオーブは、美希に指示を出す。

 

『ここは一気に決めるぞ! スペリオン光線だ!』

『「う、うんっ!」』

 

 美希が右腕を高く伸ばすと、オーブも腕を天にまっすぐ掲げた。

 二人の動きを完全にシンクロさせて、十字に組んだ手より必殺光線を発射する!

 

「『スペリオン光線!!」』

 

 ほとばしる光線がマガグランドキングの中心に炸裂!

 ――だが、命中した光線はマガグランドキングの体表で分散されてしまい、これすらマガグランドキングにダメージを与えることが出来なかった……!

 

「フッ!?」

『「そんな……!?」』

 

 動揺するオーブに、今度はマガグランドキングから光線が発射された。

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 胴体に縦一列に並ぶ発光体にエネルギーが渦巻いて、禍々しい輝きの怪光線がうなる。オーブは危険を感じて咄嗟に左へ飛び込んだ。

 光線はオーブの背後に建っていたビルに当たると、外壁を綺麗に貫通してぽっかりと大きな風穴を開いた。

 

『「ひぃっ……!?」』

 

 ビルを倒壊するのではなく、貫く恐ろしい威力。美希は急激に恐怖に駆られた。

 しかもマガグランドキングは、その怪光線を連射してくる。

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

『「いやぁぁぁっ!」』

 

 次々飛んでくる怪光線から、パニックになった美希は必死に逃れる。光線はビルをどんどん貫いて破壊していく。

 

『落ち着け美希! 落ち着くんだ!』

『「嫌っ! やめてぇぇぇぇっ!」』

 

 ガイの呼びかけも聞こえないほど美希は恐慌状態に陥っていた。

 

「怪獣の猛攻にウルトラマンオーブは大ピンチに立たされてます! オーブ、頑張って!」

 

 なす術のないオーブを、戦いを撮影している律子たちが懸命に応援していた。

 

「負けないでプロ……オーブさん!」

「きっとどこかに、あの怪獣の弱点が……!」

 

 だが彼女らの近くのビルが光線に貫かれ、自重に耐えられなくなったビルが三人の方向に倒れてきた!

 

「あぁぁぁぁっ!?」

 

 気づくのが遅れた春香たちの頭上に、折れたビルが落下してくる……!

 

『「みんな!?」』

 

 すると美希が三人の悲鳴で我に返り、そちらへ全速力で駆けていった。

 

『「たぁぁーっ!」』

 

 オーブは危ないところで瓦礫をはっしと受け止め、三人を救うことに成功した。

 

「あ……ありがとう……」

 

 春香たちの無事を知って、美希はほっと息を吐いた。

 

『「危なかったの……」』

『よくやったぞ、美希。お見事だった』

 

 褒めたたえるオーブだが、マガグランドキングは冷酷にもそこを狙って怪光線を発射してきた!

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

「ハッ!」

 

 咄嗟にガードを固めたオーブだが、防ぎ切れずにはね飛ばされた。

 

「ウアアァァッ!」

『「きゃああああああっ! う、撃たれたの……!」』

 

 オーブががっくりと片膝を突き、生命の危険を知らせるカラータイマーが赤く点滅し出した。

 しかし、一心同体になっているはずの美希自身に苦痛は感じられなかった。

 

『「あれ……? どうして痛くないの……?」』

『だ、大丈夫だ美希……!』

 

 不思議がる美希に、オーブがかすれた声になりながらも告げた。

 

『お前のことは、何があろうと俺が守る……! どんなダメージだって、俺が受け止め切ってやる……!』

『「プロデューサー……!」』

 

 ガイの必死な思いを感じ取って、冷静さを取り戻した美希は、ハッとあることに気がついた。

 

『「見て! そこのビル、さっきレーザーに撃たれたのに、傷一つついてないよ!」』

『何!』

 

 美希の言うビルとは、全面がガラス張りであった。それでオーブもマガグランドキングの放つ光線の性質に気がつく。

 

『そうか! 奴のレーザーは……それだったら!』

 

 オーブは傷ついた身体を立て直して、マガグランドキングの正面に堂々と立った。

 

『いいか? 奴の撃ってきたタイミングに合わせて、俺の言った通りにするんだ!』

『「分かったの!」』

 

 間合いを測り、一定の距離を保つオーブに対して、マガグランドキングがまたも光線を発射!

 

「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!」

 

 その瞬間、オーブは腕を回してバリアを作り出した。しかもそのバリアは、鏡面になっていた。

 

「ハッ!」

 

 シールドは貫かれず、空に向けて光線を反射していた。しかし強烈な圧力がオーブに掛かり、のけ反りそうになる。

 

『ぐッ……! ここで押し切られたら俺たちの負けだ……!』

 

 うめくオーブに、美希は力を込めて呼び掛けた。

 

『「大丈夫なの!」』

『美希?』

『「プロデューサーには、ミキがついてるからっ!」』

 

 美希が腕に渾身の力を込めると、シールドの向きが修正されてマガグランドキングと水平になった。

 

『「えええぇぇーいっ!」』

 

 その結果怪光線はマガグランドキング自身にはね返され――胸部を真ん丸に貫いた!

 

「グ……グルウウウ……」

 

 己の武器によって自身に風穴が開いたマガグランドキングの腕がだらんと垂れ、大暴れっぷりが嘘のようにその場に立ち尽くした。

 「何でも貫く矛」と「何でも防ぐ盾」は両立できない。マガグランドキングの場合は、矛の方が上だったようだ。それが弱点であった。

 

『今だ! もう一度行くぞ!』

『「うんっ!」』

 

 オーブが再度腕を伸ばし、スペリオン光線発射の構えを取った。

 

「『スペリオン光線!!」』

 

 スペリオン光線はマガグランドキングの風穴に叩き込まれ、体内を熱せられたマガグランドキングは一瞬膨張したかと思うと、すぐに大爆発を起こして粉々に吹き飛んだ。

 

『「やったぁぁっ!」』

 

 マガグランドキングを撃破すると、オーブが美希を称賛した。

 

『よく頑張ったな、美希。お前のお陰で、あの強敵を倒すことが出来た』

『「……でも、街を守ることが出来なかった……」』

 

 背後を振り返る美希。そこには、いくつものビルが穴だらけになった街の光景が広がっている。

 

『「これじゃ、ミキが頑張った意味なんて……」』

『――そんなことはないさ』

 

 落ち込む美希を、オーブが諭して励ます。

 

『確かにあちこち穴だらけになっちまったが、人の力はそれを直すことが出来る。だが、あのまま怪獣が暴れて人の命が失われていたら、それも出来なかった。お前は命という、最も大切なものを守り切ったんだ』

『「命……それを、ミキが守った……?」』

『ああ。紛れもない、お前の力がこの俺を、世界中の人を助けた。お前は世界中に希望の光を射し込む、煌めく星になれる! 俺が保証するぞ』

『「ミキが……きらきら煌めく星に……!」』

 

 オーブの激励により、美希の表情に明るさが戻る。それに安堵したオーブが空に飛び立ち、この場を後にしていった。

 

 

 

 ――マガグランドキングの暗黒の力の残滓は、ジャグラーのダークリングによって集められた。力の残滓はマガグランドキングのカードに変化する。

 

「俺からもお礼を言わなきゃな、ウルトラマンオーブ……」

 

 カードを指で挟んだジャグラーが、不敵にひと言つぶやいた……。

 

 

 

 オーブから戻ったガイは、美希や駆けつけた春香たちの立ち会いの下、遺されたマガグランドキングのクリスタルにオーブリングをかざした。マガクリスタルが砕け散り、破片がオーブリングに集まって、角を生やした真紅のウルトラマンのカードに変わる。

 

「やはり封印してたのはウルトラマンタロウさんの力でしたか! お疲れさまです」

 

 ガイはカードホルダーから三枚のカードを取り出し、その中にタロウのカードを加えてペコリと頭を下げた。

 

「これから、世話になります」

「……プロデューサーさん。その新しいカードも、オーブへの変身に使えるんですか?」

 

 春香がふと質問すると、ガイがニヤッと機嫌良さそうに笑った。

 

「まぁな。全部が自由自在に使えるって訳じゃないが、組み合わせ次第で……」

「組み合わせ次第で? どうなるんですか?」

「……いや、これは実際に使う時までのお楽しみにすっかぁ!」

「えぇー!? もったいぶらずに教えて下さいよー!」

 

 せがむ春香を適当にいなして、ガイはトータス号の方へ歩いていった。千早たちはその様子に苦笑して、二人の後に続いていった。

 

 

 

 ガイたちが事務所に帰ると、五人を待っていた仲間たちに事の顛末を話した。

 

「そっかぁ。じゃあミキミキもオーブになって戦うことにしたんだね!」

「うんっ!」

 

 真美に聞き返され、美希はにこにことした笑顔で肯定した。

 一度は事務所を飛び出した美希だったが、マガグランドキングとの激戦を経て、オーブに変身する仲間として加わることを決意したのだった。

 

「やったー! これでみんなそろってウルトラマンオーブだねー!」

 

 亜美を始めとして、アイドルたちが美希の加入を喜ぶ。すると美希はラムネを飲んでいるガイにとことこと近づいていって、はにかみながら呼びかけた。

 

「これからミキも頑張るね。一緒に地球の平和を守ろうね、ハニー!」

「……ハニー?」

 

 ガイはもちろん、突然の美希の物言いに他の面々も目が点になった。それにお構いなしに美希が続けて言う。

 

「プロデューサーはミキの運命の人なの! だからこれからはハニーって呼ぶね! ハニー♪」

 

 上機嫌の美希が、ガイの腕にガバッと抱きついた。ガイの腕に、美希の自慢の胸がむにゅっと押しつけられる。

 

「おわぁッ!?」

「なっ、なななっ!?」

 

 驚くガイ。衝撃を受けるアイドルたち。春香は真っ赤に茹で上がった。

 

「ほら、ミキの心臓ドキドキしてるでしょ? ハニーと一つになってた時もすっごいドキドキしてて、それで感じたんだ。この人がミキの運命の人だって!」

「お、お前! 誤解されそうな言い方はよせ! それに俺とお前で何歳離れてると……」

「愛の前には歳の差なんてカンケーないって思うな!」

「ち、ちょっと美希っ!」

 

 ガイと美希の間に、春香が慌てて割って入った。

 

「やる気になったのはいいけど、ちょっと考えが飛躍しすぎじゃないかな!? プロデューサーさん困ってるでしょ!?」

「えー? そんなことないよねハニー。あっ、そうそう。ミキがオーブの力を一番使いこなせるんだから、これからハニーのパートナーは全部ミキがやるね。春香はお役御免なの」

「ちょっ! 何で私だけ名指しなの! それにまだ最初なんだし、そんなの分からないでしょ! プロデューサーさんからも何か言って下さいっ!」

「お、俺か!?」

「他に誰がいるんですかっ!」

 

 やいのやいのと揉める春香、美希、ガイの様子をながめて、他のアイドルたちがそれぞれ吐息を吐いていた。

 

「はぁ~……ミキミキ、すっごい大胆だねぇ」(真美)

「恋の暴走機関車って感じだねー」(亜美)

「全くね。それにしても、美希ったらあんなに胸を押し当てて……くっ」(千早)

「飛び出したかと思えば勝手なこと言い出して……ほんと美希には困ったものね」(律子)

「でも美希さん、楽しそうです!」(やよい)

「美希だけ楽しくてもしょうがないと思うけど」(響)

「プロデューサーもプロデューサーよ。もっとしっかりしてほしいわね」(伊織)

「よいではないでしょうか。全て丸く収まったのですから」(貴音)

「羨ましいわぁ、美希ちゃん。私も早く運命の人を見つけたいわ」(あずさ)

「美希、女の子してるなぁ……。ボクもいつかはあんな風な、恋する乙女に!」(真)

「私も、あれくらい男の人に物怖じしないようになれたら……」(雪歩)

 

 小鳥も美希を見つめてはぁ~とため息を吐く。

 

「いいわねぇ、美希ちゃん。私にも早く運命の人が来てくれないかしら……。あぁ、私にはいつ春が訪れるの……?」

「ハッハッハッ、元気出したまえ音無君。生きてれば、いつかいいことがやってくるさ!」

 

 高木が無責任な感じに励ました。

 最後に美希が、ガイに向けて元気いっぱいに告げた。

 

「大好きハニー! ミキのこと、ずっと見ててね♪」

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

美希「あはっ、ミキなの♪ 今回紹介するのは、古代の巨人、ウルトラマンティガだよ」

美希「ティガは1996年放送の『ウルトラマンティガ』の主人公なの。テレビのシリーズとしては、『ウルトラマン80』から十六年ぶりにもなる新作だったんだよ。平成になってからは初の作品なの」

美希「そしてティガは初めてM78星雲やウルトラ兄弟の設定が全く関係しない世界観で作られた、ほんとの意味で新しいウルトラマンだったんだよ。超古代のウルトラマンって斬新だよね」

美希「三つの姿を使い分けるタイプチェンジの要素もティガで初めて入れられたの。そういう意味では、今のウルトラマンの基礎はティガって言えるんじゃないかな」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『ふるふるフューチャー☆』だ!」

ガイ「CD『MASTER ARTIST 03』で初出の美希のソロ曲で、歌詞にはゲーム後半からの美希を想起させる単語がいっぱいだ。実質上、美希の専用曲だな」

ガイ「かなり甘ったるい内容の歌だから、公の場で聞いて身悶えなんかしたりしないよう注意してくれよ! 変な目で見られるぞ!」

美希「ゲームのアイマスをやってくれれば、あまーいミキがたっぷり見られるよ♪」

美希「それじゃ、次回もまた見てねっ!」

 




 にひひっ、伊織ちゃんよ♪ もう最悪~! 町中の水からすっごい嫌な臭いが出るようになって、鼻が曲がりそうよ! これも魔王獣の仕業! 水を臭くする魔王獣を倒すためにやよいが変身したんだけれど、えぇっ!? やよいにはスペシウムゼペリオンの力を使いこなすことが出来ないの!?
 次回『ユウキトリッパー』。危ない、やよいっ!

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