「私たちいつになったらトップアイドルになれるのかしら」
「みんなしてすごく個性的だし、売れる要素は十分にあるはずなんですけどねぇ」
「私たちにはちゃんとした実力があるわ」
「ウチの千早に、やらせてあげて下さい!」
「今こそ765プロ躍進の時だ!」
『大きな災いが、起きようとしています』
「……私……これを、私がやったの……?」
「春香は今までどおりの春香だよ」
「今日は君と私で育てた事務所の記念日となるんだからね」
「「「「「「765プロ、ファイトーっ!!!」」」」」」
――765プロ事務所で、アイドルたちがパソコンの画面で、春香のとあるインタビュー映像を目にしている。
『ネヴァー・セイ・ネヴァー。『出来ないなんて言わないで』。それが私たち765プロのモットーです。私たちはつい最近までなかなか陽の目が当たらなくて、苦しい思いもしました。ですがネヴァー・セイ・ネヴァーを合言葉に、どんなことも乗り越えてきたんです。これを見てる皆さんも、どんなに辛い出来事があったとしても、最後まであきらめないで頑張って下さい――』
春香のメッセージを聞いた亜美と真美が口を開いた。
「いやー、はるるんも知ったようなこと言うようになったじゃん?」
「『出来ないなんて言わないで』だって。いつぞやは『アンQ』の仕事を嫌がって他人に押しつけようとしてたのにねぇ」
「ちょっとちょっとぉ~!? 意地悪なこと言うのやめてよ~!」
痛いところを突かれる春香が冷や汗を垂らして抗議した。その後ろでは、律子と小鳥がホワイトボードをながめている。
「いや~……このボードがこんなに文字で埋め尽くされる日が来るなんて。ずっと待ち望んでましたが、まだちょっと信じられない気持ちですよ」
「感謝祭ライブの後から、次々出演依頼の電話が舞い込んできたんですよ。ほんと大変でした」
少々くたびれているが、どこか満ち足りたほくほく顔の小鳥が言った。彼女の正面のホワイトボードには、数え切れない仕事の予定が書き込まれている。
先日の感謝祭ライブは大反響を呼び、その結果765プロは、皆が期待していた通りに一躍有名となり、アイドルたちもまた一気に人気を上昇させた。彼女たちは最早日陰の存在ではなくなったのだ。
「こんなに有名になったら、もうハニーに恋人役をやらせるなんてことは出来ないね」
「だぁかぁらぁ~、掘り返すのやめてったら~!」
美希にまでからかわれる春香の情けない声にアイドルたちはそろって笑い声を上げた。そんなところにガイがやってきて、皆に呼びかける。
「お前たち、感謝祭は本当によく頑張ったな。遂に結果が実った!」
「プロデューサーさん!」
「だがこれで満足してるようじゃ駄目だぜ。むしろお前たちの活動の本当の始まりはここからだ。ようやくスタートラインに立ったってところなんだからな。有名になったからって気を緩ませるんじゃないぞ」
ガイの注意に、アイドルたちは皆表情を引き締める。
「そんな感じだ。それじゃあ更にトップへ近づくことを目指して、これから頑張っていけよ! 俺も精一杯支えるからな!」
「はいっ!!」
激励に応えたアイドルたちが、本日の活動を開始する――その直前に、事務所に来客があった。
「律子さん、お客さんですよ」
「え? 私にですか?」
小鳥が告げた直後、事務所の中に一人の男性が入ってきた。
「よぉ~律子ちゃん! 元気そうで何よりだ!」
「小舟さん!?」
それは律子が世話になっていたコフネ製作所の社長、小舟惣一であった。765プロも、宇宙人に狙われた製作所を助けたことがある。
「こんなに朝早くから、一体どうしたんですか?」
「いや何、大した用事じゃないんだがな。ただ、ウチの奴らから律子ちゃんたちが遂にメジャーアイドルになったって聞いたんで、そのお祝いに来ただけさ! どうせだったら花輪でも送りゃあよかったかな?」
豪快に笑いながら答える小舟。
「わざわざありがとうございます。でもそれならもっと落ち着いてる時でも……。小舟さんも、自分のところの会社があるじゃないですか」
「いや、律子ちゃんたちこれから忙しくなるだろ? だからみんなそろってるのは今の内だけだろうと思ってな。間に合ってよかったぜ」
小舟は事務所に持ち込んだプラスチックの容器をアイドルたち一人一人に配っていく。
「ほら! こいつは俺からの餞別、特製焼きそばだ! 昼にでも弁当として食べてくれ!」
「まぁ! まことにありがとうございます」
「やったー! 小舟さんの焼きそば、美味しいから大好きですぅー!」
貴音とやよいを始めとしたアイドルたちは大喜び。そんな中で小舟は何気ない感じで律子に話しかける。
「ところで律子ちゃん、ライブの時もオーブが大活躍だったみてぇだな」
「はい。また助けてもらいました」
「さっすが! 正義の味方は憎いねぇ」
話すことは出来ないが、その時のオーブの一人は自分なので、律子は内心誇らしくなる。
ところが、
「けど、こないだ黒いムキムキの姿になったろ。あれはいただけねぇなぁ~」
そのひと言に、春香たちは思わず喉を詰まらせた。それに気づかずに小舟は語る。
「いくら相手が強いからって、ありゃあやりすぎだぜ。もっと被害を少なく出来たはずだよな? あれじゃあ正義の味方とは呼べなくなるね」
「こ、小舟さんはそう思いますか」
渇いた愛想笑いを浮かべる律子。
「ああ。昔から言ってるが、俺は正義ってのは誰かを守るもんだと考えてる! 壊すことしか出来ないのは、正義とは呼べねぇな」
と、小舟が話した直後――。
「むっ、何やら面妖な気配……」
「四条さん、どうしたんですか? ……えっ? あれは……?」
最初に貴音が窓の外に目を向け、それに気がついた雪歩が同じ方向を見やって、唖然と口を開いた。
「何なに? どうしたの?」
他のアイドルたちも窓の外に注目し、あっと言葉を失った。
窓から見える空の一角に、円形の紋様が浮かんでいる。そうとしか言いようのない光景が広がっているのだ。
「えっ、何あれ……」
「……魔法陣……?」
真と響がつぶやくと、一つの紋様の周りに複数の紋様が現れ、紋様同士が立体を作るように位置を変えていく。そして全ての紋様から放たれたレーザーが、3Dプリンターのように巨大な物体を作り上げていく。
「な、何なの? 何が起こってるの!?」
「あらあら……不思議ね……」
あんぐりとする伊織に、頬に手を当てて首を傾げるあずさ。そして完成した白い巨大な物体――うずくまったような姿勢のロボットが、街中に落下して地響きを鳴らした。震動は事務所にまで伝わり、アイドルたちが一瞬転げそうになった。
「何だありゃあ……」
小舟も唖然としている中、律子が一番に興奮した声を発した。
「すごい! 見たこともない巨大ロボットだわ! 一体どこから送られてきたのかしら? 近くに行きましょうっ!」
「あっ、ちょっ、律子さーん!?」
律子が勢いのままに飛び出していってしまい、春香たちは思わずその後に続いていった。
車道の真ん中に落下した巨大ロボットの周囲には、当然ながら人垣が出来ていた。野次馬たちは皆奇異と好機の目で、ロボットを遠巻きに観察している。
「すみません! 通して下さい! 通してーっ!」
野次馬の間を無理矢理に抜けた律子たちが、ロボットの側へと近寄っていく。ロボットのシルエットは竜人と称するのが最も相応しいだろうか。尾はなく、代わりのように後頭部から長いシャフトが伸びている。眼に当たる部分のレンズには光が灯っておらず、起動しているかどうかは不明である。
律子はこのロボットを近くから観察して判断した。
「やっぱり、地球の文明じゃ到底作れない代物だわ! ってことは違う星、違う世界の文明の生み出したもの! それが送られてきた現場に居合わせるなんて、何てラッキーなのかしらー!!」
「律っちゃん、テンション高い……」
「律子ちゃん、こういうの好きだからねぇ」
ハイになって叫ぶ律子の様子に冷や汗を垂らした亜美に、小舟がそう言った。
千早はそっとガイに囁きかける。
「プロデューサーはこのロボットのこと、何か知らないですか?」
ガイは首を横に振った。
「いや……見たことないな。少なくとも、この宇宙の文明の製造品じゃなさそうだ」
その時、ロボットの近くから765プロアイドルのものではない少女の声音が起こった。
「ねぇ見てよしまむー、しぶりん! ロボットだよロボットー! ロボが空から降ってきたよー! 私たち、夢でも見てるのかな!?」
「ちょっと落ち着いてよ、未央。すごいのは分かるけど……」
「みんなこっちを見てますよ、未央ちゃん」
「あれ、あの子たちは……」
そちらに目を向けた765プロアイドルたちと、声の主の三人の少女の視線がばっちりと合った。その三人の内の一人、ブレザー姿のサイドテールの少女が大声を上げる。
「あー!? もしかして、765プロの人たちですかぁ!?」
「えっ、765プロの……?」
「あっ、ほんとだぁー! すっごい! あの765プロの先輩たちともこんなところで会えるなんてっ!」
三人の少女がそれぞれ興奮した様子でこちらに駆け寄ってきた。野次馬たちは765プロの名前に反応してざわめくが、今の注目は謎のロボットの方が勝っているので、さほど騒ぎにはならなかった。
「君たちは?」
ガイが尋ねかけると、サイドテールのキュートな少女が一番に自己紹介した。
「申し遅れました。私、島村卯月って言います! こっちは渋谷凛ちゃんと本田未央ちゃんです!」
「渋谷凛です……」
「本田未央ですっ! 私たち、346プロからデビューしたばっかりのアイドルユニット、ニュージェネレーションでーすっ! よろしくお願いしますっ!」
黒髪のクールな雰囲気の少女と、茶髪のパッションが溢れている少女もそれぞれ名乗る。
「あなたたちもアイドルだったんだ。私は天海春香です! よろしく!」
「こちらこそ! 春香さんたちとこんな場所でお会いできるなんて思ってませんでした。すっごく光栄です!」
春香が代表して手を差し出し、卯月と固く握手を交わした。一方で未央がロボットの方へ身体を向ける。
「765プロの皆さんも、このロボットを見に来たんですよね? あれ、私たちのすぐ近くに降ってきたんですよ! 驚きましたよ~もぉ~!」
ダダダッとロボットの側へ駆け戻る未央。相当活発な性格のようだ。
「ねぇねぇしぶりん、私たちが一番近くにいたんだから、私たちが第一発見者ってことになるよね。だったら名前つけようよ名前!」
「えっ、名前?」
未央は後から歩いてきた凛に提案した。
「そうそう! 第一発見者の特権だよ! そうだなー……竜っぽい見た目だし、ギャラクシードラゴンってのはどうかな!?」
未央の命名に、凛は眉をひそめる。
「ギャラクシー? 宇宙から来たと決まった訳じゃないのに?」
「えーいいじゃん。イメージだよイメージ」
「駄目だめ。安直だし。そんなのより……イタリア語で『救世主』って意味の、サルヴァトロンがいいんじゃないかな」
「えー? それこそダメだよ蒼いよー。如何にもお洒落感押しつけてる感じが気に入らないなー」
未央の物言いにムッとする凛。
「随分と言ってくれるね。誰にでも考えられるようなありきたりの名前よりはずっとマシだと思わない?」
「むぅっ!? 何さしぶりん、私のセンスに文句あるってのー!?」
「文句つけてるのはそっちでしょ!?」
命名を争って口喧嘩となる凛と未央に、卯月が慌てて止めに入る。
「お、落ち着いて下さい二人とも! こんなところで喧嘩しないで下さいよぉ~!」
「ちょっとちょっと。アイドルがロボットの名前なんかで言い争いにならないの。みんな見てるわよ」
伊織も呆れて仲裁しようとしたが――その時に、ロボットの腹部の赤い発光部から光が生じ……そこから音が発せられた。
ポン、ポロン、ポン、ポン――。
「……?」
ピアノを奏でるような、澄んだ音色の音楽。凛たちは思わず手を止めて、音を奏でるロボットを見上げた。他の人たちも同様に、ロボットに注目する。
「歌ってんのか……?」
「歌……」
小舟のひと言を、千早が繰り返した。
卯月は呆気にとられている凛と未央を引き離した。
「……ほらほら凛ちゃん未央ちゃん。ロボットさんも喧嘩はダメって言ってますよ」
頭を冷やした二人は、バツが悪そうに向かい合った。
「……言い過ぎたね、ごめん……」
「こっちこそ……ごめんね」
二人が謝罪し合って仲直りすると、ロボットは音と光を止め、再び静かとなった。
一連の流れを目の当たりにした律子がつぶやく。
「あの二人の争いを、止めた……?」
「まぁ、いいロボットさんなんですね」
あずさがニコニコ顔で言った。
卯月はポンと手を叩いて凛と未央に告げる。
「そうだ、ギャラクトロンです!」
「えっ?」
「ギャラクシードラゴンとサルヴァトロンを合わせて、ギャラクトロンにしましょう! それなら二人とも文句ないですよね?」
「うん……結構いい感じだね!」
「正義のロボットってイメージにぴったりだね」
未央たちも納得すると、卯月はロボットの表面を撫でて呼びかけた。
「あなたの名前はギャラクトロンですよー。ギャラクトロンさん、これからよろしくお願いします!」
「あぁーちょっと駄目よ! 未知のロボットなんだから、素手で触っちゃ!」
それを慌てて制止しようとする律子。だが、
「えっ?」
ロボット、ギャラクトロンの発光部が再び赤く光り――その光が卯月に向けられた。
「卯月!?」
「しまむー!?」
突然のことに立ち尽くす卯月に光の輪が被せられ、足元から頭へと抜けていった。
「な、何だかくすぐったいです……」
「君、大丈夫か!?」
光はすぐに消え、呆然としている卯月の元にガイが駆け寄って尋ねかけた。
ガイの心配をよそに、卯月には異常は見られなかった。
「は、はい。どこも痛くもないです。ただ……」
「ただ?」
「何だか、ギャラクトロンさんがしゃべったような気がしました。この世界の平和を守るって……」
卯月の言葉に未央が興奮する。
「それってウルトラマンオーブみたいに!? じゃあ、ギャラクトロンはオーブの仲間になるかもしれないってこと!?」
「その可能性は高いね」
凛がうなずくと、未央はますます声を弾ませる。
「すっごいじゃーん! 正義の巨人とロボットが共闘して、悪い怪獣と戦う! ぴかるん辺りが好きそうな展開だぁ~!」
未央の言葉を聞いた野次馬もおおッ!? と沸き上がる中、渋川が現場に到着した。
「はいすいませーんビートル隊でーす! 通して通してー! あれ、春香ちゃんたちまぁーたいるの! どこにでも現れるね~」
「変な言い方しないで下さい。私たちの事務所の近所だから当然です。それより」
律子が小舟を招きながら、渋川に打診する。
「あのロボットのこと、小舟さんとこで調べさせてもらってもいいですか? そしたら私もロボットのデータもらえるし!」
「えぇ? ちょいちょい、いきなりそんなこと言われても……」
「いいじゃないですか、小舟さんとこはそっちの技術班も一目置いてるって言ってたでしょ? 腕は確かですよ! ねぇ」
律子に聞かれた小舟が自信満々にうなずいた。
「ああ! 俺も是非ともあいつを調べたくなった! 渋川さん、一つお願いしますよ! この通りッ!」
小舟が頭を下げて頼み込むので、渋川も流石に参ってしまった。
「いやいやいや、頭上げて下さいよ! 仕方ないなぁ、小舟所長にはいつもお世話になってるし……。とりあえず、上に報告しますんで。沙汰は追って知らせますね」
「ありがとうございますッ!」
「やったー!」
上手く事が運んで喜ぶ律子。ある程度話が纏まると、ガイが765プロアイドルたちへと向き直った。
「それじゃあ後のことは渋川さんたちに任せようか。お前たちは、そろそろ仕事に出発しないとな」
「あぁーそうだった! 遅刻するよ遅刻ー!」
「私たちも、事務所に向かう途中でした!」
仕事のことを思い出した真たちが慌てて解散していく。卯月たちも足早に立ち去ろうとするが、その前に春香と卯月がもう一度向き合った。
「卯月ちゃんたちも、これからアイドル活動がんばってね。いつか一緒に歌える時が来たら嬉しいな!」
「ありがとうございます! 私もそんな時が来るのを目指して、がんばりますっ!」
笑顔を交わし合って、二人はそれぞれ別の道へと分かれていった。
――一方で、美希とやよいは千早を交えてギャラクトロンのことで談笑していた。
「すごかったね~、あのロボット。まさか歌うなんて思ってなかったの」
「歌うロボットって夢がありますねー。それも争いを止める歌なんて! ねぇ千早さん」
やよいが千早に同意を求めたが……千早はやや険しい顔をしていた。
「そうかしら……。私は、ギャラクトロンの歌は今一つ気に入らなかったわ……」
「えっ? 千早さん……?」
誰よりも歌が好きな千早とは思えない意見に、美希たちは虚を突かれた顔となった。
それに構わずに、千早は言った。
「さっきの歌……確かに落ち着く旋律ではあったけど……何だか、温かみが感じられなかったんだもの……」
その後ギャラクトロンはビートル隊の監視下に置かれ、ギャラクトロンが降り立った地区の一帯は封鎖され、一般人立ち入り禁止となった。別の場所で移送することも検討されたのだが、ギャラクトロンが根っこを張ったかのように何をしてもその場から動かなかったからだ。
最低限の安全のために、ギャラクトロンにはワイヤーが張り巡らされて動き出さないようにされた。しかしそうされる間にも、ギャラクトロンは全くの無抵抗だった。
夕方、一日の仕事を済ませて舞い戻ってきた律子は小舟から、今までに解析されたデータを見せてもらう。
「あれは全て未知の物質で出来てる。しかも物理法則を無視した構成があちこちにあるぞ。こんなすげぇもん、どっから来たんだ……」
「どこから? やっぱり宇宙のどこかの星からかしら?」
律子につき添ってきた伊織と春香の内、伊織が律子に聞く。
「ギャラクトロンに大気圏を突入した痕跡は全くないわね。機体表面に、摩擦跡が一切ないから」
「別次元の文明が作ったものかもな」
傍から様子を見守っているガイが意見すると、小舟が相槌を打つ。
「その可能性も否定できねぇな。ここを見てみろ」
小舟が指したパソコンの画面には、何かの波長のようなものが映し出されていた。
「成分から言えば……これはゲル状のバネだ!」
そのひと言に仰天する律子。
「ゲル状のバネ!? そんなの、常識じゃ考えられないですよ……」
「全くだ。こんなとんでもねぇもん……世界中探したって誰にも作れやしねぇ!」
「所長、この音なんだけど……」
小舟が呼んだ製作所の社員の一人が口を開くと、彼の操作しているパソコンの周りに皆が集まった。
画面には、ギャラクトロンが地中へと何らかの音波を出し続けている構図が表示されている。
「特殊なソナーを使って、地球の様子を探ってるんじゃねぇかな……」
「頑なに動こうとしなかった理由はそれか!」
「きっとこの星の環境を調べてるんじゃないでしょうか。何とかコミュニケーションを取る方法を見つけないとね! 春香と伊織も手伝ってよね!」
「えぇー!? 私たち、専門的なことはさっぱりなんですけど……」
「それに仕事だってあるじゃないの!」
「何かアイディア出してくれるだけでいいから! あぁーもうちょっと早く来てくれたら、つきっきりで調べられたんだけどな~」
非常に残念がる律子に、春香たちはガイを交えて肩をすくめた。
「あれだけ事務所を軌道に乗せることにこだわってたのにな」
「ロボットのことになるとすぐ見境をなくすんだから」
苦笑しながらも、一生懸命な律子のことをガイたちは温かく見守った。
じっとうずくまったまま動く気配のないギャラクトロンとコミュニケーションを取ろうと、律子たちは様々な方法を試していった――。