「あれが大魔王獣なんですね!?」
「な、何なのあいつ!? 魔王獣とは比べものになんない強さじゃんっ!!」
「オーブが、敗れた……」
「怪獣に怯え、東京から逃げ出す人が続出してます!」
「――わああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「この姿何よ!?」
『「畏れ! ひれ伏し! 崇め奉りなさいっ!」』
「いつものオーブじゃないよぉ……」
「……私……これを、私がやったの……?」
――関東一帯を一時は壊滅の危機に落とし込んだマガオロチは、オーブ・サンダーブレスターによって撃破された。被害は怪獣災害の歴史上最大であったが、それでも人間はたくましく今日を生き、復興に取り掛かっている。
そして本日は、765プロが初めて経験することになる大規模ライブ『765プロ感謝祭』の本番である。
「みんな、遂にこの日がやってきたわね! 今日はみんなの……ううん、765プロ全体の飛躍となるとっても大事な一日となるわ! いつも以上の力を出して、だけど焦らずに最高のステージにしてちょうだいね!」
舞台となるアリーナの控え室で、小鳥がライブ開催を待つアイドルたちに精一杯のエールを送った。
……が、アイドルたちの雰囲気はどこかどんよりとしていた。
「あ、あれー……? みんな、どうしちゃったの? あんなに楽しみにしてたじゃない。それなのに今日そんな暗い顔してちゃいけないわ!」
あんまりな状況に小鳥が冷や汗を垂らすと、春香が若干うつむきながら口を開いた。
「すみません……。でも、先日のことのショックが、抜け切らなくって……」
「ああ、あの戦いの……」
小鳥はマガオロチとの決戦を思い出す。初戦では圧倒的な力でオーブを退け、やよいと真まで意識不明の状態に追いやったマガオロチも衝撃的ではあったが……今の彼女たちの心に影を落としているのは、それを倒したオーブの方であった。
ウルトラマンベリアルの力を使用した、光と闇の戦士、サンダーブレスター……そのフュージョンアップは春香にも影響を与え、冷酷無比な覇者に変えてしまった。その春香が突き動かすオーブも、マガオロチを倒すためとはいえ周囲の被害を鑑みない残虐ファイトを行い、その姿は他の者たちにも強い衝撃をもたらしたのだった。それでこんな雰囲気になってしまっているのである。
それでも小鳥は皆を元気づけようと、こう呼びかけた。
「だけど、今はあの時とは無関係でしょう? みんながこれから相手をするのは、大勢の人たち。凶悪な怪獣とは全然違うわ。みんながこれからするべきことは、観客の皆さんを楽しませること。この前のことはきっぱりと忘れて、ライブに集中すればいいのよ!」
しかし、当事者故に最もショックの強い春香は、そう簡単には気分が切り替わらなかった。
「でも、あの時の私は、確かに私自身でした……。怒りに駆られて、あんなことをしでかしちゃったんです。あんな残酷な私が、どんな顔してステージに立てばいいのか……」
落ち込んでいる春香を、先に立ち直ったやよいが励ます。
「大丈夫ですよ、春香さん!」
「やよい……」
「確かにちょっと暴れすぎだったかもしれないですけど、春香さんは正義のために戦ったじゃないですか! 春香さんが悪い人になったとか、そんなことは全然ないですぅ! だから大丈夫かなーって!」
真もやよいに同調して春香に言葉を掛ける。
「そうだよ! 闇のカードも、もう使わなければいいだけじゃないか! 今までは闇の力なんかなくても勝ててたんだし、マガオロチが特別だっただけだよ。これからは光の力だけで戦う! それでおしまいにしよう」
他のアイドルたちもうなずいて賛同。そして美希が春香に告げる。
「あの時は驚いちゃったけど、ミキももう気にしてないの。春香は今までどおりの春香だよ。だからお客さんたちにも、いつもの春香を見せればいいの!」
「美希……うん、ありがとう」
最後に小鳥が言い聞かせる。
「生きてれば色んな苦しみを経験するわ。何もあの戦いが特別な苦しみなんてことはない。……だけどどんな時だって、輝いたステージに立てば最高の気分を味わえるの。こんな時こそ『ネヴァー・セイ・ネヴァー』、『出来ないなんて言わないで』の精神を思い出すのよ。いいかしら?」
「――はいっ! 天海春香、張り切って歌います!」
小鳥の説得で春香も立ち直り、彼女の勢いに皆が笑顔となった。
その頃、アリーナの通路のベンチに腰を掛けているガイの隣に、高木が腰を落とした。
「やぁガイ君、いよいよ本番当日がやってきたね」
「社長……」
「私も、みんなの輝くステージ姿を楽しみにしてたよ! ……だが、こんな日に君は何だか覇気がないね」
高木は、ガイの不調を感じ取っていた。
「いかんねぇ、プロデューサーの君の不安はアイドルたちに伝わるよ。何を思い悩んでいるのか、話してみるといい。こういう時は一人で抱え込まないことが大切だよ」
高木に諭されて、ガイは己の思いを吐露する。
「俺は……このままみんなと一緒にいていいのか、と思ってまして……」
「ほう……穏やかじゃない話だね」
「みんなを危険に巻き込んでしまってることは、前々から自覚してました。それでも上手くやってるからあまり意識はしてませんでしたが……この前の戦いで、遂にやよいと真にはっきりした危害が及んでしまいました。それどころか、春香があんなことに……」
深刻な表情で一旦口を閉ざすガイ。
「……俺が不甲斐ないから、春香にもあんな影響が出てしまったんです。霧島ハルカから予言を受けてたのに……俺はそれを変えることが出来なかった……。もしもまた、みんなの身に被害が及んでしまうのだったら、いっそのこと……」
と悩むガイに、高木は説いた。
「――生きるということは、明るいことばかりじゃないさ」
「社長……」
「それは彼女たちが、オーブにならなくても同じことだ。この世のみんなが何らかの形で悩み、苦しみ、傷つく。何も特別なことじゃあない。そこからどう立ち上がって歩いていくかが重要だよ。――それを私に教えてくれたのは、ガイ君、君じゃないか」
高木の言葉に、ガイは思わず苦笑した。
「そうでしたね……。すっかり立場が入れ替わりましたね」
「ははは、君に比べて私は歳を取るのがずっと早い。――結論を出すには早いよ。何だかんだで、みんな無事に来てるじゃないか。君とのフュージョンアップも、誰かがやらなくてはいけないことだ。だから、まだみんなといて答えを探すといい。これからどうなっていくかは、みんなが、そして他でもない君自身が作り上げていくものだ」
「はい!」
「まぁともかく、今はみんなの晴れ舞台を見守ろうじゃないか。今日は君と私で育てた事務所の記念日となるんだからね」
高木と相談して、気持ちが軽くなったガイの元へ春香を先頭にしたアイドルたちが小走りでやってきた。
「プロデューサーさん! ドームですよ、ドーム! って、うわぁぁぁっ!?」
しかし掃除されたばかりでツルツルの床に足を滑らした春香がバランスを崩して、どんがらがっしゃーん! と行った。
「あったたたぁ……」
春香のいつも通りのドジさに皆が噴き出す。
「もう、気をつけてよね春香。これから大事な本番なのに」
「全く、お前はしょうがない奴だな。ほら」
「す、すいません……」
千早とガイに手を差し伸べられて、春香は起き上がった。
その際に、春香とガイの手と手がきゅっと握られた。
それから数時間後に、ライブのスタートが目前に迫った。
「いよいよだね……!」
「今日はサイコーに盛り上げるぞー! なんくるないさー!」
「皆の力を合わせて、悔いの残らぬすてぇじに致しましょう」
雪歩、響、貴音がテンションを上げる。アイドル全員、ここまでのリハーサルで既に身体はほどよく温まっている。
そしてステージに上がるまでの最後に、アイドルたち十三人で円陣を組んだ。
「それじゃあみんな! 力を出し切っていこうっ!」
春香の音頭で、手を前に伸ばして集めたアイドルたちが声をそろえた。
「「「「「「765プロ、ファイトーっ!!!」」」」」」
彼女たちの張り切る姿を、温かく見守るガイが送り出す。
「よし、頑張ってこいッ!」
全員そろってのライブ開幕の挨拶と全員の歌唱後、最初のソロは千早。彼女の美声で観客のハートをがっちりと掴み、上々な出だしとなった。
それからアイドルたちが立ち代わるソロ曲、デュエット、トリオなどのバリエーション豊かなステージの数々でアリーナ全体をどんどんと盛り上げていく。初めの重い雰囲気とは打って変わっての問題ない経過に、ガイたち裏方もすっかりと安心させられていた。
「……ふぅ~! 思いっきり歌ったぁ」
ライブも半ばに差し掛かり、ソロ曲を歌い切った春香が一旦楽屋に戻ってきて腰を下ろし、タオルで汗をぬぐう。そんな彼女に次の出番を待つ真美が呼びかける。
「でもでもはるるん、ライブはまだまだこれからだよ。こんなんでやり切った顔してちゃあダメだよ~?」
「分かってるって。もちろん最後までやり切って、最高の一日にするんだから!」
まだまだ春香が意欲に燃えているところに、楽屋の扉が外からノックされる。
「あら、誰かしら? どうぞ~」
あずさが返答すると、入ってきたのは渋川だった。
「よッ! みんな調子よさそうだな。何より何より!」
「叔父さん? どうしたの? まさか、ここで何か事件が?」
一瞬案じた春香だが、渋川は苦笑しながら手を振った。
「いや今日は非番だよ。実は義姉さんから、仕事で来られない自分に代わって春香ちゃんのステージを撮ってくるよう命じられててさ。ちょいと様子見に来ただけ」
片手でビデオカメラを持ち上げる渋川。
「義姉さん色々言ってたけどさ、ほんとは春香ちゃんのアイドル活動を応援してるんだぜ。765プロのホームページの更新も欠かさずチェックしてるみたいだしさ」
「そうだったんだ! ママが……!」
渋川から知らされたことに、春香は嬉しさが顔に表れる。
「これほんとは秘密にするよう言われてるから、内緒にしといてくれよ」
「うんっ! ありがとう、叔父さん」
「そんじゃあこの後も引き続き頑張ってくれよ! あばよ!」
「あばよ~!」
渋川の決め台詞に亜美がノリノリで返し、渋川は春香たちに手を振られながら楽屋から退室していった。
感謝祭ライブは好調に進行していたのだが……その裏で、ある宇宙人が良からぬ目論見を持って会場に忍び込んでいたことは、誰も知らなかった。
『クックックッ……紅ガイ、ウルトラマンオーブめ……。今日という一日を楽しんでいるようだが、それがこれから地獄に塗り替わるのだ! このクワーメの手によってなッ!』
トイレの個室でほくそ笑んでいるのは、クワーメという名のグロテス星人。彼もまたオーブの命を狙う宇宙人なのであった。
『これまでの連中はどいつも回りくどい手を使うから失敗したのだ。俺はそんなヘマはやらないッ! もっとスマートに、速攻で奴を葬ってくれる!』
クワーメは両手に、それぞれ怪しい緑色の液体が詰まったカプセルと武士のような形の厳めしい木彫りの人形を握った。
『会場内で新型グロテスセルをこの人形に入れ、魔神怪獣コダイゴンにしてやる! 会場は内側から木端微塵、たちまち地獄に変わってそのまま紅ガイも踏み潰す! それで何もかも終いという訳だッ! うははははははッ!』
悪だくみを巡らすクワーメは人間の姿に擬態してトイレから出て、確実にガイを抹殺できるように765プロの楽屋に接近していく。
「ククク、奴が手塩に掛けてるアイドルの一人や二人でも潰してしまえば、奴も再起できまい。完璧な計画だぁ……ふははは……」
自画自賛しながら笑い声を押し殺していると――。
「すみません。ここは関係者以外立ち入り禁止ですので、お引き返し願います」
「えッ!?」
後ろからアリーナの警備員に呼び止められた。
「聞こえませんでしたか? ここは一般客の方は立ち入り禁止となってまして、すぐに観客席の方へお戻りいただきたいのですが」
「立て看板が目に入りませんでしたか?」
「えッ、あッ、いやぁそれは……」
不意を突かれたクワーメは返答に窮し、その態度に警備員たちは不審な目を向ける。片方は応援を呼ぼうとトランシーバーに手を掛ける始末。
クワーメは慌てて言った。
「あッ、ちょっと待って! 私は渋川一徹です! 天海春香の叔父の!」
「えッ?」
ガイを抹殺する計画の立案の際に、765プロの人間の個人情報、家族関係も調べていた。その中から渋川の名を持ち出してごまかしに掛かった。
「いやぁ、ちょっと春香の様子を見に来まして。勝手に入ったのはすいませんでした。それじゃあこれで……」
「渋川一徹は俺だけど?」
「えぇぇーッ!?」
だが背後から、楽屋から戻る途中だった渋川が忍び寄って、すかさずクワーメを締め上げて壁に押しつけた。
「怪しい奴めッ! 何で俺のこと知ってる!? 大人しくしろッ!」
「うぎゃあッ! や、やめ……!」
「危ないもん持ってんじゃないだろうな! んッ、こいつは何だ!?」
慣れた手つきでボディチェックをする渋川がグロテスセルのカプセルを取り上げようとしたので、クワーメは仕方なく正体を現して彼を振り払った。
『ぬぅんッ!』
「うわッ!」
『おのれぇッ!』
拘束をほどいたクワーメはカプセルと人形を持ったまま逃走していく。
「宇宙人めぇッ! 待て、待ちやがれーッ!」
警備員たちが仰天する中、起き上がった渋川はすぐにクワーメを追いかけて走り出した。
出番を終えたばかりの伊織と律子と段取りを話し合っていたガイは、急に顔色を変えて踵を返していた。それに慌ててついていく伊織たち。
「ち、ちょっとどうしたんですかプロデューサー?」
「怪しい気配がこの建物の中を動いてるのを感じた……! すぐ見つけ出さないと!」
「えぇっ!?」
そう言って捜索していたガイの視線の先を、渋川に追われるクワーメが横切っていった。
「こらー! 待てーッ!」
「渋川さん!? それに……!」
「宇宙人もっ!」
ガイは即座にクワーメを追って駆け出し、伊織と律子も慌てながらその後に続いた。
ガイにまで追いかけられるようになったクワーメは、雪歩と真のステージ中だった会場内に飛び込み、観客たちは異形の姿に一気に狂乱となった。
「きゃああぁーっ!? 宇宙人よぉー!」
「み、皆さん! 慌てないで避難して下さいっ!」
真たちは思わず歌を中断して観客たちに喚起した。一方でクワーメは、追いついてきた渋川とガイたちに振り返ってカプセルと人形を掲げる。
『えぇーいッ! こうなったらここでコダイゴンを出してやるッ!』
「何するつもりだ! そうはさせないぜッ!」
渋川が腰に手を伸ばしたが、スーパーガンリボルバーを抜こうとした手の平が空を切った。
「あッそうだった! 非番だからないんだった!」
「悪いな! 借りるぜ!」
うっかり屋な渋川に代わって、ガイが手近な客からサイリウムを二本ひったくってクワーメに投げつけた。
『あ痛ッ!』
的確なコントロールでサイリウムがクワーメの両手を打ち、カプセルと人形を弾いた。その隙に渋川がクワーメにタックルして床に抑えつける。
「こいつめぇー! 大人しくしろってんだ!」
『ち、ちくしょーッ!』
渋川と、協力した男性客たちに完全に取り押さえられたクワーメだったが、カプセルの蓋は既に開かれていたのだった!
しかし人形は別の方向に転がっていったため、溢れ出て気化したグロテスセルは――近くの女の子が抱えていた緑色のぬいぐるみの中に入り込んでいった。
「あっ!? あたしのお人形がっ!」
ぬいぐるみがボコボコと膨らんでいく。ガイはサッと顔色を青くして、女の子からぬいぐるみを取り上げる。
「君、ごめんなッ!」
そのままアリーナの外へと全速力で走っていき、ぬいぐるみを力の限り遠くへ投げ捨てた。
その先で、グロテスセルによって誕生した怪獣が立ち上がる!
「――ぴにゃあああああああっ!」
ぬいぐるみがそのまま巨大化した怪獣――ぬいぐるみ怪獣コダイゴンぴにゃこら太が緩い咆哮を上げた。
「わああぁぁぁぁぁッ!? 人形が怪獣になったぞぉ!?」
「こ、こっちに来るわ!」
「ふ、踏み潰されるーッ!!」
「おっきいぴにゃこら太ー!」
見た目は力が抜けそうだが、グロテスセルによって生み出された怪獣は凶暴凶悪。ズシンズシンと地響きを立ててアリーナに接近してくる。集まった大勢の人が避難する暇など、とてもではないがありはしない。
そこでガイは、駆けつけた伊織と律子へうなずく。
「やるぞ!」
「ええ!」「分かりました!」
伊織がウルトラマンギンガ、律子がウルトラマンエックスのカードを握る。
「ギンガっ!」
[ウルトラマンギンガ!]『ショオラッ!』
「エックスさんっ!」
[ウルトラマンエックス!]『イィィィーッ! サ―――ッ!』
「痺れる奴、頼みますッ!」
[ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!!]
三人でフュージョンアップしてオーブ・ライトニングアタッカーに変身し、アリーナの盾となってぴにゃこら太の前に立ちはだかった。
『電光雷轟、闇を討つ!!』
「ぴにゃっ! ぴ~にゃ~!」
ぴにゃこら太はすぐにオーブを敵と見定め、腕を伸ばして威嚇の構えを取った。――腕が短すぎるので大してポーズが変わっていないが。
「デアァッ!」
オーブは腕に電光を纏いながら、ぴにゃこら太の腹部へ先制のパンチを仕掛ける!
――が、拳はボヨ~ンと腹に弾かれて体勢を崩しそうになった。
『「えぇーっ!? そんなのあり!?」』
ガビン、とショックを受ける伊織。オーブは何度も素早い打撃をぴにゃこら太に入れるも、全てボヨンボヨンと弾かれて効果がなかった。
「ぴにゃあっ!」
「ウワァッ!」
反対にぴにゃこら太のパンチ――は腕が短すぎるので出来ないのでほぼ体当たり――を食らって転倒する。見た目は力が抜けそうだが、新型グロテスセルのエネルギーは従来のものの三倍。ぴにゃこら太のパワーもあなどれないものがあるのだ。
『「打撃が効かないなら、これでっ!」』
律子の判断で、バッと起き上がったオーブが頭部から三叉型の光弾を飛ばす。
「「『ギンガエックススラッシュ!!!」」』
光弾がぴにゃこら太に綺麗に炸裂!
――が、身体に当たるとボヨヨ~ンと弾かれてあらぬ方向に飛んでいった。
『「嘘でしょ!?」』
『「光線もはね返すなんて……! 見た目からは想像もつかない強敵よ!」』
おののく律子。オーブ、まさかのピンチ!
「にゃーぴにゃぴー!」
ぴにゃこら太は羽もないのに滑空してオーブにタックルを決める。
「ウワァァァッ!」
ぴにゃこら太のパワーに押されるオーブが地面に倒れ込んだ。
「ぴーにゃぴにゃぴにゃぴにゃ!」
ぴにゃこら太は倒れたオーブに嘲笑を浴びせた。伊織が拳を震わせる。
『「くっ……! あの不細工顔で笑われると余計腹立つわね……!」』
――この戦いの様子はアリーナのスタッフのカメラによって、会場内のモニターに映し出されていた。
「オーブ……!」
「ウルトラマンオーブだ……!」
観客たちがざわざわとどよめいている。つい先日までは正義の味方とされていたオーブだが、サンダーブレスターの暴れぶりは、彼らの心に不安を植えつけてしまったのであった。
仲間とともにステージに上がってきた春香は、彼らの表情に一瞬後悔の色を浮かべたが、すぐに決意を固めた顔となってマイク越しに叫んだ。
「皆さーん! ウルトラマンオーブは、私たちのために戦ってくれてますっ! どうか私たちと一緒に、オーブを応援して下さいっ!」
そのひと声に観客たちの注目が春香たちアイドルに集まり、そして春香たちは歌い出す。
「行きますっ! オーブに送る応援歌! 『オーブの祈り』ですっ!」
(♪オーブの祈り)
(みんなで歌おう!)
仲間たちと、それに釣られる観客たちの歌は、建物の壁を越えてオーブの超聴力がしっかりと聞きつけた。
『みんなが呼んでいる……! ここでへばってちゃいられないぜ!』
『「ええ!」「はいっ!」』
歌声に気力を分けてもらったオーブが再び立ち上がり、ぴにゃこら太を止めるための作戦を立てる。
『奴は内部に充満した気体が本体といえる。そいつをどうにかして抜いてしまえば、元のぬいぐるみに戻るはずだ』
『「だったら、あの形態が最適ですよ!」』
『「そうね! あれ以外ないわね!」』
『ああ! それじゃあ行くぜ!』
律子と伊織の手元に、オーブリングと二枚のカードが現れる。二人はすぐにフュージョンアップ。
『「ジャックさんっ!」』
[ウルトラマンジャック!]『ジェアッ!』
『「ゼロっ!」』
[ウルトラマンゼロ!]『セェェェェアッ!』
『キレのいい奴、頼みますッ!』
[ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!!]
オーブの姿が閃光とともに、ハリケーンスラッシュへと変化した。
『光を越えて、闇を斬る!!』
そしてオーブスラッガーを回転させて、オーブスラッガーランスを召喚。ぴにゃこら太が動き出すよりも早く駆け出し、レバーを二回引いた。
「「『ビッグバンスラスト!!!」」』
「ぴっ!?」
まっすぐに突き出されたオーブスラッガーランスが、ぴにゃこら太にぐさぁーっ!
「ぴ、ぴにゃこら太ー!?」
「ぴにゃ……?」
ぴにゃこら太は腹のど真ん中に刺さったランスを見下ろす。穂先は表面を突き抜けて穴を開け、そこからグロテスセルがシュウウと漏れていく。
「……ぴにゃ!」
最後にぴにゃこら太は腕を天高く振り上げ――てもほとんど変化はなかったが――みるみる内に小さくなって元のぬいぐるみに戻ったのだった。
コダイゴンぴにゃこら太を見事倒したオーブに、春香たちは喜びの声を上げた。
「皆さん、やりました! オーブの勝利です! オーブが私たちを守ってくれましたーっ!!」
「わあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――――――――!!」
歌を通して春香たちと一体になっていた観客たちは、その声に応じて一斉に歓声を発した。
『シュワッチ!』
モニターの中で、オーブが大空に飛び上がってはるか彼方へと去っていった――。
この感謝祭ライブはその後、客の口コミを元に、オーブの姿から取られた「ハリケーンライブ」の通称で呼ばれる伝説のライブとしてファンの間で語り継がれることになったのであった。
『765プロのウルトラヒーロー大研究!』
亜美「兄ちゃんたちー! 亜美だよ~。今回紹介するのはー、新世代ウルトラヒーローの一人目! ウルトラマンギンガだぁ~!!」
亜美「ギンガ兄ちゃんは『新ウルトラマン列伝』の中で放送された『ウルトラマンギンガ』と続編の『ギンガS』の主人公! 礼堂ヒカル兄ちゃんがギンガスパークとスパークドールズを使って変身するのだっ!」
亜美「スパークドールズっていうのは人形にされちゃった怪獣やウルトラマンのことで、ダークルギエルの陰謀で人形にされちゃったみんなを解放するために戦うっていうのが『ギンガ』シリーズの大まかな内容だよ。ヒカル兄ちゃんはウルトライブでギンガ兄ちゃんだけじゃなくて怪獣や他のウルトラマンにも変身したんだよー」
亜美「タロウ兄ちゃんも重要な役割で登場してて、その協力で強化形態のギンガストリウムになったり、ビクトリー兄ちゃんと合体してウルトラマンギンガビクトリーになったりもしたんだ。かっくい~♪
ガイ「そして今回のアイマス曲は『自分REST@RT』だ!」
ガイ「アニメの第十三話『そして、彼女たちはきらめくステージへ』でライブシーンとともに披露され、前半部の一番の盛り上がりを作り上げた曲だ! ここからアニメは物語的にも転機を迎えた、特に重要な意味を持ってる一曲だぞ!」
亜美「訳あって亜美たち竜宮小町組はこれ歌ってないんだけど、その理由は兄ちゃんたちで観て確かめてね~。よろよろ~♪」
亜美「それじゃあ次回もよろしくなのだー!」
伊織ちゃんよ! 感謝祭ライブを終えて、遂に私たちも一躍人気者! だけどそんな中現れたのは謎のロボット。正義のロボットなんて言われてるけど、ほんとかしら? とか言ってたら大変なことになっちゃったわ!
次回『オーバージャスティス』。プロデューサー、真の正義を見せちゃって!