THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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涙よgood bye(B)

 

「う、宇宙人だぁぁぁッ!」

「みんな、危ないから下がって!」

 

 いきなり製作所の前に現れた宇宙人に対し震え上がる製作所の社員たちを、渋川とガイが下がらせる。そんな中で小舟は宇宙人に怯えずに怒鳴りつけた。

 

「やい宇宙人! ウチの金属は、テメェが盗みやがったのかッ!」

『リフレクト星人ダングです。如何にも、あなた方の所有していた金属は私が頂戴致しました』

 

 リフレクト星人ダングと名乗った宇宙人は少しも悪びれもせずに肯定した。そのふてぶてしい態度に憤慨する小舟と渋川。

 

「何て盗人猛々しい奴だ! 人の商売道具をかすめ取っておいて!」

「おいお前! 泥棒は地球でも犯罪だぞ! すぐに盗んだものを返せッ!」

 

 と叫ぶ渋川だが、ダングはプッと噴き出すだけだった。

 

『返せと言われて返すようだったら、初めから盗んだりするものですか。地球人は頭の回転が疎かですねぇ』

「何だとぅ~!?」

 

 丁寧語だが如何にもな慇懃無礼のダングに怒り心頭の渋川は、スーパーガンリボルバーを抜いて銃口を突きつける。

 

「あんまり人を見下すもんじゃあねぇぞ。これ以上罪を重ねるつもりだってんなら、俺のこの相棒が火を噴くことになるぜ?」

 

 渋川の脅しにも、ダングは余裕綽々だ。

 

『ホホホ、面白い。あなたなどには用はないのですが、その気なら相手になってあげようじゃありませんか』

 

 言いながら右手に装備している盾のスリットから細身の剣を伸ばした。この反応に渋川も本気になる。

 

「凶器を出しやがったな! もう引っ込みはつかねぇぞッ!」

 

 リボルバーを構え直して遂に引き金を引く! 発射された光弾はまっすぐにダングへと飛んでいくが……。

 

『ふッ!』

 

 ダングが盾で防ぐと、光弾は綺麗に反射されて渋川へと戻ってきた!

 

「うおいッ!?」

 

 仰天した渋川はどうにか身をよじってかわしたが、その拍子に転倒して後頭部をゴチンッ! と地面に強打してしまった。

 

「し、渋川さん!?」

「きゅう……」

 

 動揺する律子たち。渋川はそのまま目を回して気絶。

 

『ホホホホホ! 面白いと言ったのは、そんな貧弱な武器でこの私に挑む愚かしさのことですよ!』

 

 嘲笑するダング。失神した渋川は亜美、真美と製作所の従業員が担ぎ上げる。

 

「もぉ~、おっちゃんったらやっぱり肝心なとこでドジなんだからな」

「流石はるるんの叔父さんだよね」

 

 渋川に代わって前に出たのはガイ。

 

「リフレクト星人! 俺が相手になってやる。来いッ!」

『待ちなさいッ!』

 

 製作所の人たちを巻き込まないように別の場所へと走っていくガイをダングは追いかけていく。伊織と律子もそれを追って走る。

 

「プロデューサー! ほんとすぐ一人で突っ走るんだから!」

「金属は返してもらうわよっ!」

「おい律子ちゃんたち! 危ねぇぞ!?」

「小舟さん、ここはプロデューサーたちに任せて下さい! あれでもすごく強いので!」

 

 慌てて身を乗り出した小舟は真が抑えた。その間にガイたちはダングを誘導して製作所から離れていく。

 人の気配のないところまで来ると、ガイは立ち止まってダングと相対する。

 

「お前も俺の首を狙って挑戦してきた口ってところか?」

『如何にもその通り。ここで死んでもらいますよ、ウルトラマンオーブ!』

 

 言うなりダングは巨大化する。一方でガイの元には律子と伊織が駆けつけてきた。

 

「プロデューサー、無事でしたか!」

「もう、一人じゃ変身できないっていうのに勝手にどっか行かないでよね!」

「すまないな……。今回もお前たちの力を貸してくれ!」

「はい!」「ええ!」

 

 律子と伊織は素早くエックスとギンガのカードを掲げる。

 

「ギンガっ!」

[ウルトラマンギンガ!]『ショオラッ!』

「エックスさんっ!」

[ウルトラマンエックス!]『イィィィーッ! サ―――ッ!』

「痺れる奴、頼みますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 二枚のカードをオーブリングに通してフュージョンアップ!

 

『シュワッ!』『トワァッ!』

[ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!!]

 

 三人はオーブ・ライトニングアタッカーに変身してダングの前に立つ。

 

『電光雷轟、闇を討つ!!』

 

 稲光を走らせながら戦いの構えを取ったオーブに対し、ダングは言い放った。

 

『現れましたね、ウルトラマンオーブ。では私が何故わざわざ地球の金属などを盗んで回ったか、その理由をお教えしましょう!』

 

 言葉の直後に、ダングの足元の地面から鈍色の何かがにじみ出てくる。

 

『「な、何あれ!?」』

『「金属……!?」』

 

 律子の見たところ、それは液体状の金属。しかし明らかに自力で動いて、形を自在に変えている。

 

『これはガイアスペースで捕まえた生きた液体金属、金属生命体です! 盗んだ金属はこれの餌にしたのですよ。お陰で強く、硬く育ちました!』

『そういうことか……こいつとの二対一で俺に挑もうってのか』

 

 オーブの指摘を、せせら笑いながら否定するダング。

 

『そんなありがちなことではありませんよ。見せてあげましょう!』

 

 流動する金属生命体がダングの身体に纏わりつき、鎧となってその肉体をひと回り大きくさせた!

 

『何ッ!』

 

 元々金属質であったリフレクト星人ダングの全身が、よりメタリックな装甲で覆われた。

 

『これで私はメタルリフレクト星人といったところです。この力には、ウルトラマンオーブ、あなたといえども敵いはしませんよ!』

 

 姿を変えたダングを、律子に代わって撮影役をしている真がビデオカメラで収める。

 

「宇宙人の身体が鎧で包み込まれました! 金属を盗んでたのは、オーブを倒す武器にするのが目的だったに違いありません!」

「ちくしょうッ! ウチの金属を、そんなことのために使いやがって!!」

 

 小舟が激怒して吐き捨てた。

 更に武装したダングに対して、オーブは決して怖気づいたりはせずに立ち向かっていく。

 

『「鎧を装備したから何だっていうのよ! 律子、行くわよ!」』

『「ええ!」』

 

 オーブは一気に勝負をつけるために、光線の構えを取る。両手首を胸の前でクロスすると、両腕を横向きのSの字を描くように動かし、上半身をひねって腕をX字に交差した。

 

「「『ギンガエックスシュート!!!」」』

 

 発射される光線がダングの身体を撃つ!

 ……が、命中した光線は180度ねじ曲がってオーブにはね返ってきた!

 

『うおッ!?』

 

 すんでのところで身体を傾けてかわす。肝心のダングには傷一つない。

 

『ホホホホホホ! リフレクト星人の私に光線技で挑もうなど、実に無謀!』

 

 律子は今の事態を分析する。

 

『「さっきの渋川さんの銃弾もはね返されてた……。あいつの身体は鏡のようになってて、光線の攻撃は全て反射してしまうみたいね……!」』

 

 となると、光線技主体のライトニングアタッカーでは非常に不利である。しかし伊織は動じなかった。

 

『「だったら直接攻撃でとっちめてやろうじゃないの!」』

『「そうね!」』

 

 律子が手にしたのはオーブリングとジャックのカード、伊織はゼロのカードを構える。

 

『「ジャックさんっ!」』

[ウルトラマンジャック!]『ジェアッ!』

『「ゼロっ!」』

[ウルトラマンゼロ!]『セェェェアッ!』

『キレのいい奴、頼みますッ!』

[ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!!]

 

 オーブは瞬時にハリケーンスラッシュへとチェンジし、同時にオーブスラッガーランスを召喚した。

 

『オーブスラッガーランス! こいつで決めてやるぜ!』

『ふッ、それはどうでしょうか!?』

 

 オーブの振り回すランスと、ダングの剣が交差して火花を散らす。

 

「シェアァッ!」

『キェェッ!』

 

 ダングの身のこなしは真ん丸な体形とは裏腹に機敏であり、素早い動きを得意とするハリケーンスラッシュと互角に切り結ぶ。しかしオーブの方だって負けてはいない。

 

『「もっとスピード上げるわよ! 律子、ついてこれる!?」』

『「甘く見ないでよね! まだまだ行けるわよぉーっ!」』

 

 オーブの動作は少しずつ速くなっていき、ダングは徐々についてこられなくなって押され始めた。

 

『ぬぅッ!?』

 

 そしてオーブは勝負に出る。ランスのレバーを三回引いてスイッチを叩く。

 

「「『トライデントスラッシュ!!!」」』

 

 縦横無尽な乱撃がダングに叩き込まれる!

 

『ぐわあぁぁッ!』

 

 ダングを仕留めるまでには至らなかったが、その鎧はズタズタの傷だらけとなった。最早使い物にはなるまい。

 

『「やったわね……!」』

『「ええ。あとひと押しを加えれば……!」』

 

 オーブは一旦距離を取って、とどめの一撃を仕掛けようとしたが……。

 

『……フフフフ! なんてねッ!』

 

 それより早く、ダングの鎧の傷が全て塞がって元通りになった!

 

『「えぇっ!?」』

『「嘘でしょ!?」』

『ホーホホホホホ! 言ったでしょう、金属生命体と! この鎧は生きているのですよ!? この程度は造作もないことです!』

 

 ハリケーンスラッシュ最大の必殺技でもたちどころに再生してしまうメタルリフレクト星人に、流石のオーブも動揺する。

 

『「ど、どうするの律子!? 光線は反射される、物理攻撃でも破れないんじゃ、どうやって倒せばいいの!」』

『「可能性があるとすれば、バーンマイトの火力をぶつければあるいは……!」』

 

 と分析する律子だが、今はバーンマイトに変身することは出来ない。それにはやよいかあずさがいなければならないのだ!

 

『「もしくは、相手の鎧が再生するより早く、それこそ同時に攻撃を重ねれば貫通できるんじゃないかしら……!」』

『「でもハリケーンスラッシュで無理なら、そんなこと不可能よ!」』

 

 オーブが手をこまねいている間にダングからの攻撃が飛んでくる。

 

『今度はこちらの番ですよぉ! そぉれッ!』

 

 ダングの鎧の各所が盛り上がって突起が生じ、それらが分離してブーメラン状の武器となる。それらが不規則に宙を飛んでオーブに襲いかかってくる!

 

「ヘアッ!?」

 

 懸命に回避行動を取るオーブだが、四方八方から襲い来るブーメランを全てかわすのはハリケーンスラッシュでも至難の業であった。遂に一発食らって大きくはね飛ばされる。

 

「ウワァッ!」

『「あうぅっ!」』

 

 勝ち筋が見当たらず、追いつめられるオーブ。倒れた彼を傲然と見下すダング。

 

『ホッホホホホホホ! 絶望しなさい! 泣き叫びなさいッ! あなたたちはこの私に勝つことなど出来ないのですよ!』

 

 高慢に言い切るダングに対して、律子は……。

 

『「馬鹿言わないで……!」』

『何?』

 

 律子の気力に押されるように、オーブはゆっくりと起き上がっていく。

 

『「この世界に出来ないことなんてないのよ……! たとえどんなに無理に思えることだって、あきらめたりはしない! どんな壁だって乗り越えてやるわ!」』

『「律子……!」』

 

 伊織は小舟から聞かされた話――彼女のロボットコンテストの受賞までの経緯を思い返した。

 

『「泣いたりなんか絶対するもんですか! 悔しさの涙とは、もう昔に決別してるのよっ!!」』

 

 律子が宣言したその時、二人の前にヒカリとアグルのカードがほのかに光りながら浮かび上がってきた。

 

『「!?」』

『「これは……!」』

『律子、伊織! そのお二人が、お前らに自分たちの力を使えと言ってるぜ!』

 

 オーブからの言葉により、二人は意を決してカードを手にした。

 

『「アグルっ!」』

[ウルトラマンアグル!]『デアッ!』

 

 伊織の隣にアグルのビジョンが現れる。

 

『「ヒカリさんっ!」』

[ウルトラマンヒカリ!]『メッ!』

 

 律子の隣にはヒカリのビジョンが立つ。

 

『鋭い奴、頼みますッ!』

[フュージョンアップ!]

 

 そしてオーブの掛け声とともに、フュージョンアップが行われる!

 

『ジェアッ!』『テェアッ!』

[ウルトラマンオーブ! ナイトリキデイター!!]

 

 律子と伊織がアグルとヒカリのビジョンとともに融合して、オーブがハリケーンスラッシュから新たな形態へと変身! 青い光と結晶の渦とともに飛び出していく!

 

(♪Radiance ~ウルトラマンヒカリのテーマ~(インストゥルメンタル))

 

『俺たちはオーブ! 光の刃で、影を払う!!』

 

 青と水色と黒の体色、そして胸のプロテクターの上にスターマークが並ぶ。アグルとヒカリの青いウルトラマンの力を融合させて誕生した剣士の姿、ナイトリキデイターだ!

 

『ふッ、どんな姿になろうとも無意味ですよ! キェェェェイッ!』

 

 ダングは姿の変わったオーブに、剣を振り上げて斬りかかっていく。それに対してオーブは、両腕から光の剣を生やす。

 

「「『ナイトアグルブレード!!!」」』

 

 左の刃でダングの剣をさばくと、右の刃を勢いよく相手の身体に振り下ろした。音速の一撃がダングの鎧に深々とした傷を入れる。

 

『ですが、どんなに傷を入れようとも無駄ですッ!』

 

 ダングの鎧は金属生命体。いくら傷を受けようともたちどころに再生する。

 ――が、まだ右の刃が突き立てられているところに、左の刃も叩き込まれた!

 

『何ぃぃぃぃッ!?』

『「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!!」」』

「オリャアァァァァッ!」

 

 オーブが二刀を振り抜くことで、鎧が遂に砕かれて斬撃がダング本体にまで届いた!

 

『ぐぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁッ!? そ、そんな馬鹿なぁッ!』

 

 深手を負ってヨタヨタと後ずさるダング。しかしすぐに反撃に移る。

 

『食らいなさいッ!』

 

 残った鎧を変形させて複数のブーメランを作り、再びオーブの全方位から押し寄せさせる。

 

「セェェェェアァッ!」

 

 だがオーブは横回転しながら二刀を振るうことで、ブーメランを全て弾き返したのであった。

 

『な、何と!? そんなことがぁッ!!』

 

 ナイトリキデイターは冷静さと判断力に長けた二人のウルトラマンの能力を受け継いだ形態。一ミリ単位での狂いもない正確無比な剣の軌道は、どれほどの数の攻撃も的確に切り裂くことが出来るのだ。

 

『よし、こいつで決めるぜ!』

 

 光の二刀を引っ込めたオーブが両腕を額の前で重ね合わせると、折れ曲がった直線の光が生じて青い光のエネルギーが集中する。光線を放つ態勢だ。

 

『馬鹿め! 私の身体に光線は効かないと言っただろうッ!』

 

 罵倒して光線を受ける構えを取ったダング。――しかしその胸部は先ほどの斬撃によって深くえぐられている。

 

『はッ!? しまったぁッ!!』

 

 気がついた時にはもう遅い。エネルギーの充填が完了し、オーブが身を乗り出す。

 

「「『クラッシャーナイトリキデイター!!!」」』

 

 額から放たれた光の刃の連射が、ダングの傷口に命中する!

 

『ギャアアアアァァァァァァァァァ――――――――――――――ッ!!』

 

 クラッシャーナイトリキデイターはダングの肉体を貫き、風穴が開いたダングは爆散。その衝撃で金属生命体に同化されていた金属が破片となって辺りに散らばった。

 

「シュワッ!」

 

 見事逆転勝利を収めたオーブは空高く飛び上がり、この場を去っていく。それを見送った真と亜美真美が小舟に笑顔を向ける。

 

「これで金属も無事に戻ってきますね!」

「工場の営業も再開できるねー!」

「よかったねー小舟のおっちゃん!」

「おう! オーブのお陰で助かったよ。オーブさまさまだな!」

 

 気持ちよく笑う小舟に真たちは安心して微笑み合うが、その時に亜美たちの腹がぐぅ~と音を立てた。

 

「あっ……安心したらお腹空いちゃった」

「そういえばもうお昼だもんね」

 

 それを聞いた小舟がニヤッと笑う。

 

「そうかそうか。じゃあ平和が戻った記念に、いっちょアレやるか! なぁお前たち!」

「おぉーッ!?」

 

 小舟の言葉を受けた社員たちが急に盛り上がり出す。

 

「アレ?」

 

 何のことか分からず真たちが首を傾げたところに、ガイと律子、伊織が戻ってきた。

 

「小舟さーん!」

「おおー無事だったのか! 全く心配したんだぞぉコラ!?」

「すみません。でもオーブが宇宙人を倒してくれましたよ!」

「ああ! ところでこれからいつものアレやるんだがよ、律子ちゃんの仲間みんなを呼んでも構わねぇぞ」

「えっ、いいんですか!?」

「どうせやるなら大勢が楽しいもんなぁオイ!!」

 

 相変わらず何を言っているのか分からず、ガイたちは思わず互いに顔を見合わせた。

 

 

 

 春香たち他のアイドルも呼ばれると、小舟製作所の搬入口の前に鉄板が置かれ、小舟がそれで豪快に焼きそばを調理する。

 

「さぁー食え食えー!」

 

 小舟お手製の焼きそばが振る舞われ、皆がそれを頬張っていく。

 

「うわぁ~! 美味しいですぅ~!」

「ほんとだねぇ~。すっごい濃厚なお味!」

「高槻さんかわいい……」

 

 焼きそばの味にやよいや春香など、アイドルたちはそろって大満足であった。

 目を覚ました渋川も舌鼓を打つ。

 

「いやぁ~、ひと仕事した後にこの味はサイッコーだね!」

「渋川さん、ずっと目を回してたじゃないの」

「あら! こりゃあ手厳しいなぁ参ったね!」

 

 伊織のツッコミに頭をかいた渋川に、周りがおかしそうに笑った。

 そんな中で貴音が手を挙げる。

 

「おかわりを所望します」

「うわっ! 貴音食べるの早いなー!」

「おぉー嬢ちゃん、いい食いっぷりだなぁ!」

「地球の焼きそばで一番の美味です」

「もぉ~、貴音ったら大袈裟なの」

 

 美希たちも貴音の言動に笑わされる。

 ガイは小舟に頼み込む。

 

「小舟さん、ウチでも作りたいから是非作り方を教えてくれ!」

「よく言った兄ちゃん! その意気買ったぜ!」

 

 ガイの申し出を気に入った小舟が望み通りに調理法を教え始めた。

 

「このコテをうまーく使って、こうやって麺を丁寧に返す! そして秘伝のタレだぁー!! やってみろ!」

「はいッ!」

 

 小舟からコテを受け取ったガイが、力を入れてコテを構えた。

 

「熱い奴、頼みますッ!」

 

 そしてものすごい勢いで麺と具材を炒め、調理していく。その手際に小舟はギョッと目を見開いた。

 

「に、兄ちゃん……恐れ入ったぜ」

「ありがとうございます!」

「プロデューサー、早くおかわりを」

 

 貴音にせがまれてガイが焼きそばを仕上げていく一方で、小舟はふと律子たちに呼びかけた。

 

「そうだ律子ちゃんたち、いいものをあげよう」

「え? いいもの?」

「ちょっと待ってろ。取ってくる」

 

 一旦社長室に向かった小舟は、戻ってくると律子たちに告げた。

 

「昔、子供の俺を鍛えてくれた人が去り際にくれたものだ。つらい時はこれを見て、教えたことを思い出せってな」

「えぇ? そんな大事なもの、受け取れませんよ」

「いいんだいいんだ! 俺はもうすっかりと大きくなった。こうして自分の会社を持つほどにな! それにあの人は、大きな試練に立ち向かう人へと受け継いでいくようにと言ってた。律子ちゃんと、その仲間も、俺は応援してる! だからアイドル業なんて荒波に臨んでいく君たちに、このお守りを授けよう!」

 

 そう語って小舟が差し出したものは――紛れもないウルトラフュージョンカードの一枚だった!

 

「こ、これは!!」

「おッ、こいつの価値が分かるのかい? 俺にはこれが何のカードなのかは分かんなかったんだけどな」

 

 真紅の獅子のような威容のウルトラ戦士のカードに、真たちは仰天。律子はガバッと小舟に頭を下げた。

 

「ありがとうございます、小舟さん! 大事にしますね!」

「そうかそうか! 喜んでもらえたなら何よりだ! みんな、これから頑張れよッ!」

「はいっ!」

 

 真と伊織はカードを手に小躍りする。

 

「また一枚見つかったね! すぐプロデューサーに知らせよう!」

「ええ! ……だけど」

 

 伊織がチラリと目を向けると、ガイは貴音を相手に焼きそばを作るのに夢中のありさまだった。

 

「……今忙しそうだし、後にしましょうか」

「……そうだね」

 

 真たちは肩をすくめ合うと、おかしさで大きな声で笑い合うのであった。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

律子「秋月律子です! 今回ご紹介するのは、光の国の青い科学者、ウルトラマンヒカリです!」

律子「ヒカリさんは『ウルトラマンメビウス』で初登場した青いウルトラ戦士。青いウルトラマン自体は既に前例がありましたが、M78星雲のウルトラマンで映像作品に登場したのはヒカリさんが初めてだったんですよ」

律子「当初は鎧を纏った「ハンターナイトツルギ」という名前で、守っていた惑星アーヴを滅ぼされた復讐だけが目的のダークなキャラでした。けれど仇のボガールを倒してからは、本来の姿を取り戻してメビウスさんを助けるキャラとなったんです」

律子「戦闘力もありますが本来の役職は科学者でして、『ウルトラマン』最終話でも語られた命を固形化する技術の開発でスターマークを授けられたという設定です。スターマーク持ちのウルトラマンはゾフィーさんに続いて二人目ですよ」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『Liar’s good bye』だ!」

ガイ「『LIVE THE@TER HARMONY』に収録の律子のソロ曲だ。アイマスによくある恋愛がテーマの歌だが、同時に嘘をテーマにしてるほんのり苦い歌詞だぞ。人と人の恋にはそういうこともあるもんだ」

律子「私は苦さなんてない甘い恋がいいですが……な、何でもないですっ!」

律子「それでは次回もまた見て下さい!」

 




 高槻やよいでーすっ! 765プロに春香さんの後輩っていう子たちが遊びに来たんですが、その時オーブの偽者が出てきたんですぅ! だけどその偽者さんは何だか様子が変で……はわっ! 本物だと誤解されたままですよぉ!? どうなっちゃうんでしょー! 次回『ニセモノ夜を往く』。よろしくお願いしまーすっ!

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