THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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時をこえた約束(B)

 

 一旦事務所から出たガイと千早は、二人きりになれる場所で何者かから送られてきた写真と脅迫状について話をしていた。

 

「ぷ、プロデューサー……これはどういうことでしょうか……? 誰がこの写真を撮って、私の母を……」

 

 普段はクールな少女の千早も、母親を誘拐されたと寝耳に水を食らっては声音に動揺の色が見られていた。ガイもまた険しい表情である。

 

「恐らく、俺たちをつけてやがった奴がいたんだろう。だが俺が気づかなかったとなると、そんじょそこらの奴なんかじゃないな……。俺を名指しして呼び出してることからも、ゼットン星人のように俺の首を取ろうとする輩の仕業か……」

 

 つぶやきながら、ガイは踵を返そうとする。

 

「ともかく、すぐに行かなくちゃお前のお母さんがどうなるか分かったもんじゃない。千早、お前はみんなに適当な言い訳をしといてくれ」

「待って下さい!」

 

 すぐ出発しようとするガイを、千早が反射的に呼び止めた。

 

「危険です! 私の母をさらったのは、プロデューサーをおびき寄せるためだけだとは思えません。きっと人質にするつもりですよ!」

「だが、救い出すには他に方法はない」

「……いえ、プロデューサーが私の母を気に掛けることなんてないですよ……」

 

 千早は暗く重い表情で、うつむき気味に語り出した。

 

「……ウルトラマンオーブであるプロデューサーと、ただの一般人の母との価値の差なんて、比べるまでもありません。私だって、今更あんな人がどうなろうが何とも思いませんし……」

「千早」

 

 千早の言葉を、ガイが極めて険しい顔つきでさえぎった。

 

「間違っても、そんなことを言うもんじゃない」

「プロデューサー……?」

「たとえどんな経緯があったとしても、お前の母親だろうが……。失ってからああしとけばよかったとか考えたところで、何もかも遅いんだからな。そう、失っちゃいけないんだ……」

 

 そう語るガイの表情にはどこか悲嘆の色があり、口調には相当な重みがあった。それを怪訝に感じる千早。

 

「プロデューサー、それは一体……」

「……いや、今は時間が惜しい。とにかく俺は行く! 罠だったとしてもだ!」

 

 強引に話を打ち切るように宣言し、ガイは千早に背を向けて駆け出していった。

 

「……!」

 

 千早は何かを考え込んでいる顔で、彼の背中をじっと見つめていた。

 

 

 

 脅迫状に指定されていた場所は、以前マガジャッパが最後に狙っていた奈良沢ダムであった。ガイがダム湖のほとりに到着すると、見計らっていたかのように怪しい女が一人、姿を現した。

 

「指示通り、一人で来たみたいね。流石は正義の味方のウルトラマンオーブといったところかしら」

「――宇宙人だな」

 

 ガイをオーブと呼ぶ女に、ガイが指摘する。

 

「当然。ピット星人ミューよ。早速本題に入ろうじゃない」

 

 ピット星人ミューが腕を前に伸ばすと、昨日墓地で出会った千早の母親が電送されてきた。――が、縛られた状態で気を失っており、ミューに掴まれることでその場に立たされている。

 

「……!」

「この通り、あなたのところの娘の母親は今私が握ってるわ。返してほしいからここまで来たのよね?」

「ああそうだ。その人は俺たちの事情には何の関係もないんだ。解放してもらおうじゃないか」

 

 と要求するガイだが、ミューは不敵に笑うばかりであった。

 

「ふふふ……無事に返してほしいのなら、あるものと交換してもらうわ」

「交換だと……?」

 

 ミューの千早の母親を掴んでいない方の手の指が、ガイの腰に提げられているカードホルダーを指した。

 

「その中のウルトラマンのカード一式……ホルダーごとと交換よ」

「何……!」

 

 ガイは一瞬戸惑った目を己の腰に向けたが、するとミューが急かすように言い放った。

 

「迷ってる暇なんてないわよ。私が握ってるのはこの女の身体だけじゃない、命もなのだから」

「くッ……」

 

 時間稼ぎも出来なさそうな様子。ガイは仕方なく、カードホルダーを手に取った。

 

「光の先輩方……お許し下さい」

 

 ひと言謝罪してから、ミューに目を向け直す。

 

「交換は同時だ! その人には一切の危害を加えないと誓ってもらうぞ!」

「宇宙人同士の約束ね。いいわ、一、二の……三!」

 

 ミューの合図と同時に、ガイがカードホルダーを投げ飛ばし、ミューはガイに向かって千早の母親を突き飛ばした。反射的に彼女の身柄を受け止めるガイ。

 

「如月さん! 如月さん! しっかりして下さい!」

「うっ……ここは……? あなたは、確か、千早の……」

 

 ガイが手早く束縛を解いて強く呼びかけると、千早の母親はうっすらと意識を取り戻した。一方でミューは地面に落下したカードホルダーを奪い取り、高笑いを発する。

 

「あははははははは! 面白いくらい上手く行ったわ! これでオーブは出てこられない。さぁ、やってしまいなさいエレキング!』

 

 蟻のような真の顔を晒したミューの叫びに呼応して、ダム湖の水面が急激に波しぶきを立ち上がらせ、水中から巨大怪獣が飛び出してきた!

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 眼球の代わりに三日月状の角が生えている、ウミウシのような怪獣、エレキング。それも四肢が退化した代わりに発電能力に磨きが掛かったEXエレキングだ!

 EXエレキングはガイに狙いをつける。千早の母親をその腕の中に抱えているガイはミューに怒鳴りつけた。

 

「話が違うぞ! この人に危害を加えないんじゃなかったのか!?」

『ふふふ、それはそっちに返すまでの話。無事に返した後のことは知らないわねぇ!』

 

 悪びれもせずにうそぶくミュー。彼女に使役されるエレキングはガイに向かって三日月型の電撃光線を発射してくる!

 

「くっそぉッ!」

 

 ガイは咄嗟に千早の母親を抱え上げて走り出し、電撃光線から逃れた。しかしエレキングは細長い首を伸ばしながらしつこく追撃をしてくる。

 

『無駄よ! エレキングから逃げられはしないわ!』

 

 ミューの声を背にしながら、ガイはダム湖を囲む林の中に身を投じた。しかしすぐに見つかってしまうことだろう。

 

「まずいな、どうしたもんか……」

「こ、これはどういうこと……!?」

「すいませんが今は口を閉じて! 舌を噛みますよ!」

 

 悩むガイの元に、急に細身の人影が飛び込んできた。

 

「プロデューサーっ!」

 

 誰であろう、千早であった。

 

「千早!? 来てたのか……!」

「すみません。でも……」

 

 千早は複雑な表情を己の母親に向けた。

 

「千早……」

 

 母親の方も、娘に何と声を掛けたらいいか分からないような、微妙な空気であったが、うかうかしてはいられなかった。

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 エレキングの鳴き声が近づいてきて、ハッと我に返ったガイは千早の母親を下ろし、千早に押しつけた。

 

「悪いな千早! この人を連れて逃げろ! 俺はそれまでの囮になってくる!」

「そ、そんなプロデューサー!」

「頼んだぜッ!」

 

 有無を言わさず、ガイは千早たちの元から一気に離れていった。エレキングは彼を追いかけていくので、自ずと千早たち二人から離れていった。

 

「……一人で走れる? とにかく逃げましょう!」

 

 千早はとにかくガイの言う通りにしようとしたが、それを母親が制止した。

 

「ちょっと待って。あなたに渡すものが二つあるの!」

「何よ、こんな時に! そんなのは後にして……」

 

 母親の謎の言動に苛立つ千早だったが、差し出されたものを目に入れて言葉が途切れた。

 

「まずはこれ。さっきの人の、大事なものなんでしょう? あなたから返してあげてちょうだい」

 

 一つ目は、墓地で落としたまま回収されなかったウルトラマンゼロのカードだ。そしてもう一つは……大き目のお守りだった。

 

「そしてこれよ。このお守りは昔、あなたと優に欠かさず持たせてたわね。でもあの日は……たまたま持たせてなかった。そしたら優が……」

 

 千早は思い出す。優の死去後、母親が自分たちにお守りを持たせなかったことを来る日も来る日も悔いていたことを。だがその態度が家庭崩壊につながったので、千早は怒りを感じているのだった。

 

「何よ、こんなもの! こんなものより、もっと大事なことがあったでしょう!?」

「ええ……千早の言う通りよ。でもあの時の私はそのことに気づけなかった。私がこれにすがるような弱い女じゃなかったら、あなたを少しでも救えたかもしれなかったのに……」

 

 過去の自分を悔やむ千早の母親だったが、話はそれで終わりではなかった。

 

「でもこのお守りについて今話すべきことは、それじゃないわ」

「え?」

「こんな時だけど、初めから話すわね。あれは私が大学生だった頃……当時の私は登山部だったわ」

 

 母親が唐突に昔話を始めるので千早は面食らったが、母親は構わずどんどんと続ける。

 

「だけど友達と二人で登山に行った日、とある山で不意な崖崩れに遭い、私は崖に宙吊りになってしまった」

「えっ!」

「私を支えてたのは友人との間につないでる命綱だけ。その友人も、私の重量のせいで崖に張りついてるので精一杯だった。このままでは二人とも助からない……そう判断した私は、自ら命綱を断ち切って友人だけでも助けることを選んだ。そして私は崖下まで真っ逆さまに転落した……!」

 

 母親の語る内容に仰天する千早。しかし、この話が本当だというのなら、今ここにいる彼女は何なのだ。そして、自分は――。

 

「……そのはずだったんだけど、私は気がついたら崖の底で傷一つなく横たわってたわ。側には風来坊と名乗る男性が一人。どうやら彼が助けてくれたみたいだったけど、一体どうやったのかは未だに分からないわ。そして男の人は、自らの命も省みずに友達を助けようという私の勇気に感動したと言って、このお守りの中身を私にくれたの」

「中身……?」

 

 母親からお守りを受け取って、まじまじと見つめる千早。

 

「あの人は、それが私や私の家族を守ってくれる。だけど、いつかこれを本当に必要としてる人に私が出会うかもしれない。それはこれと同じようなものを持ってる人で、もし出会ったらこれをその人に渡してあげてほしい。そうあの人と約束したの。そして……さっきの彼が、その条件に当てはまってたの!」

 

 千早はお守りの口を開き、中身を取り出していた。

 それは、紅蓮の戦士の絵柄のカード――ウルトラフュージョンカードの一枚であった!

 

「――こんなところにあったなんて……!」

「あの人は、これを必要としてる人にこそ本当の力になると言ってたわ。――今があの時の約束を果たす時なんだと思う」

 

 千早の母親は改めて千早と面と向かい合った。

 

「千早、今更遅すぎるとは思うけれど、ずっとあなたをないがしろにしてごめんなさい。お詫びのしようもないけれど、ずっと謝りたかったの……。もしよければ、私と一緒にこの二枚をさっきの人に届けてほしいの。情けないけど、まだ足に力が入らないから……」

 

 しばし呆然と母親の顔を見つめ返した千早は、何かを決心した顔つきになって返答した。

 

「それは出来ないわ」

「……そうよね。やっぱり……」

「私が一人で行ってくるから! 悪いけど、頑張って一人で逃げてちょうだい」

 

 今度は母親の方が千早を見つめ返した。

 

「そんな!? 危ないわ!」

「足下のおぼつかない人を連れてく方が危ないわよ。大丈夫。私は、必ず生きて戻ってくるから……!」

 

 確固とした意志を持って、千早は告げた。

 

「だからあなたも必ず生き延びて。話すべきことは山ほどあるんだからね……お母さん」

「――千早……!」

 

 その言葉を最後に、千早は脱兎の如く駆け出した。母親は驚きの顔で、その場に立ち尽くして千早の背中を見送った。

 

 

 

「キイイイイイイイイ!!」

「くッ……!」

 

 しつこく追撃してくるEXエレキングから必死に逃げ続けるガイ。フュージョンカードが一枚も手元にないので、オーブに変身することは出来ないのだ。

 

「こいつはいよいよやばいかもな……!」

 

 大分追いつめられながら吐き捨てたところに、千早が駆けつけてきた。

 

「プロデューサー!」

「千早! お前どうして戻って来たんだ! 危ねぇぞ!?」

 

 千早は答えず、代わりに母親から受け取った二枚のカードを差し出した。

 

「これを!」

「!! ゼロさんに……ウルトラセブンさんの力ッ!」

 

 驚愕したガイは次いで千早の今の顔に目をやり、おもむろにうなずいた。

 

「よし……千早、力を貸してくれ!」

「分かりました!」

 

 ガイが取り出したオーブリングに、千早が一枚目のカードを通す。

 

「セブンさんっ!」

[ウルトラセブン!]『デュワッ!』

 

 千早の隣に、紅蓮の戦士、ウルトラセブンのビジョンが出現。

 

「ゼロさんッ!」

[ウルトラマンゼロ!]『セェェェアッ!』

 

 そしてガイがセブンの息子、ウルトラマンゼロのカードを通して、トリガーを引く。

 

「親子の力、お借りしますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 千早がセブン、ゼロとともにガイと融合を果たす!

 

『ジュワッ!』『テヤッ!』

[ウルトラマンオーブ! エメリウムスラッガー!!]

 

 新しい姿のオーブが、翠の閃光と激しく回る光、真っ赤な溶岩と白い光の軌道の中から飛び出してきた!

 ハリケーンスラッシュよりも一枚多い、三つの刃を頭部に持った、青と赤と黒のたくましい戦士、それがウルトラ親子の絆の力を借り受けたエメリウムスラッガーだ!

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 ちょうど突進してきたEXエレキングを、オーブが変身の勢いではね飛ばした。

 

(♪ウルトラセブン登場)

 

『俺たちはオーブ! 智勇双全、光となりて!!』

 

 ミューはオーブの姿を見上げて度肝を抜かれる。

 

『ウルトラマンオーブ!? 馬鹿な、カードは奪ったのにどうして!?』

 

 しかしすぐに我に返ると、エレキングに向かって命じた。

 

『エレキング! オーブを倒すのよ! 必ず倒すのよ!』

「キイイイイイイイイ!!」

 

 命令に応じてエレキングが細長い身体をくねらせながらオーブに突進を仕掛ける。体躯の利点を活用した速く読みづらい軌道だ。

 

「オリャアッ!」

 

 だがオーブはその動きを見切り、鋭い回し蹴りでエレキングの頭を蹴りつけて返り討ちにした。

 

『行けるぞ千早! 全身に力がみなぎってくるかのようだ!』

『「はいっ!」』

 

 千早はオーブと心を重ね、ともに大怪獣に立ち向かう!

 

 

 

 千早からの連絡を受けて、遅れる形で奈良沢ダムに到着していた765プロアイドルの仲間は、オーブ対EXエレキングの様子をしっかりとカメラに捉えていた。

 

「ウルトラマンオーブ! また新しい姿です!」

「またすっごいキレのある感じだね!」

 

 律子が実況し、亜美が感想を述べている傍ら、春香はオーブの姿をひと目見てつぶやいた。

 

「千早ちゃん……!」

 

 春香は力強い表情で、オーブと千早の奮闘を見守っていた。

 

 

 

「デヤッ! ドリャアッ!」

 

 オーブは一方的にエレキングに打撃を食らわせていき、どんどんと押し込んでいく。エメリウムスラッガーの鮮やかな格闘技に、エレキングは元からないが手も足も出ないありさまだ。

 

「デェェェェアァッ!」

 

 相手の尻尾を掴んで大きくジャイアントスウィング、地面に叩きつけた!

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 しかしエレキングもこのままやられっぱなしではなかった。長い身体をくねらせてオーブに肉薄し、目にも止まらぬ速さで全身に巻きついた。

 

『何ッ!』

 

 その状態で高圧電流を発し始める!

 

「グワアァァッ!」

『「うあぁっ!」』

 

 EXエレキングの最も強力な能力は電撃だ。それを全身に浴びせられては、さしものオーブも苦しむ。今度はこちらが手足を出せない。

 

(♪ウルトラマンゼロのテーマ)

 

 だがエメリウムスラッガーにはそれでも使用できる武器があった!

 

「『トリプルスラッガー!!」』

 

 頭部の三振りのスラッガーが念力によって飛び、自在に動き回ってエレキングの身体を切り刻んだ!

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 たまらずオーブから引き剥がされるエレキング。形勢を逆転したオーブは額のクリスタルに両手の人差し指と中指を交差し、次に左腕を胸の前に水平にして脇を引き締めて右腕を腰にやり、そして拳を前に突き出す!

 

「『トリプルエメリウム光線!!」』

 

 額から放たれた螺旋のレーザーが、エレキングの角を粉砕した!

 

「キイイイイイイイイ……!!」

 

 角はエレキングの力の源。これを折られたらもう電撃は使用できないのだ!

 

『よし! とどめの一撃だッ!』

『「分かりましたっ!」』

 

 オーブがぐっと力こぶを作るように両腕を振り上げるとリング状の閃光が生じ、振りかぶって腕をL字に組んだ。

 

「『ワイドスラッガーショット!!」』

 

 右前腕から発射された必殺の光線の奔流が、エレキングを貫いた!

 

「キイイイイイイイイ!!」

 

 EXエレキングはたちまち爆散! その爆発はミューにも襲いかかる。

 

『きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

 ミューの姿が爆炎の中に消え、奪われたカードホルダーが放り飛ばされて地面に落ちた。

 ――それを、千早を連れているガイが拾い上げた。

 

「先輩方、すいませんでした。次からはこんなことにならないよう気をつけます」

 

 ホルダーを腰に戻して踵を返すと、そこに千早の母親が駆けつけてきた。

 

「千早! 良かった、無事で……」

 

 千早の姿を認めて心の底から安堵した母親に、千早はガイを見やりながら告げた。

 

「……紹介するわ。この人は私の事務所のプロデューサー。とてもお世話になってるの」

 

 

 

 後日、事務所で千早は春香たちからあるものを渡されていた。

 

「千早ちゃん、これ、私たちからのプレゼント。開けてみて」

「プレゼント……? 何かしら」

 

 大き目の茶封筒。千早が開けると、中から出てきたのは、

 

「楽譜……? 『約束』……」

「千早ちゃんを元気づける贈り物をするなら、やっぱこれだなって思って。でも私一人じゃどうにも作れなかったから、みんなに助けてもらって書き上げたんだよ」

「千早さんが前を向いて歌っていけるように、って思いを精一杯込めたの! 受け取ってほしいな!」

 

 春香と美希、仲間たちが笑いながら手作りの歌を千早に贈った。

 彼女たちの顔を驚きで目を真ん丸とさせながら見返した千早だが、やがて微笑みを浮かべた。

 

「みんな、こんな私のために、ありがとう……! こんなに嬉しいことは初めてだわ……」

「大事な千早ちゃんのためだもの! 当然だよっ!」

 

 千早が喜んでくれたことにわっと沸き上がるアイドルたち。その後で、ガイが千早にそっと問いかける。

 

「どうだ千早。お母さんのこととか、過去のこととか、整理がつきそうか?」

「……流石に、いきなりは無理です。でも……」

 

 千早は腕の中の楽譜を、温かく見つめる。

 

「努力はしていきます。そして近い内に、お母さんとも完全に仲直りします。……大事なみんなと、約束を交わしましたから」

 

 千早は口元に、安心の微笑みをやんわりと浮かべていた。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

千早「如月千早です。今回ご紹介するのは、誰よりも地球を愛した宇宙人、ウルトラセブンです」

千早「セブンさんは1967年放送の『ウルトラセブン』の主人公。放送時は『ウルトラマン』とは独立した作品だったので、シリーズの中でも際立って独自色の強い性格をしてます。『ウルトラマン』がバラエティ豊かな作風だったのに対して、こちらは主にハードSFの趣です」

千早「子供向けとは一線を画するエピソードも多く、人気と指示も抜群に高いです。客演の回数はトップクラスで、後年でも『セブン』単独の派生作品がいくつも作られ、未だ根強い人気を誇ってます」

千早「近年ではウルトラマンゼロという息子も誕生しました。ゼロさんもまた高い人気を集めていて、色んな時と場所にひっばりだこです」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『約束』だ!」

ガイ「アニメの第二十話『約束』で使用された楽曲で、本話の核をなす歌だ。あることが原因でどん底に陥ってしまった千早に対する仲間たちの行動、そして千早の復活は劇中随一の感動で、是非自分の目で見てもらいたい」

千早「ところでプロデューサー……私がウルトラ「セブン」の担当なのは、何やら悪意を感じるのですが……」

ガイ「……」

 




 ミキなの。とある漁村に半魚人が出たって情報をキャッチして、ミキたちは取材に行ったんだよ。でもみんなバカンス気分だけどね! あはっ♪ だけどほんとに半魚人はいるし、海からでっかい怪獣が出てきて大変! 半魚人はどうなるんだろ?
 次回、『しあわせの半魚人』。よろしくなのー♪

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