THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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私だってウルトラマン

 

「この秋月律子の頭脳を信じなさい!」

「すごすぎるわ! 大発見よぉぉっ!」

「とても信じられない……。でも、全部本当のことだったわ」

「スーパー・アブソーベント・ポリマーガン、略してSAPガンです!」

「ちゃんと私が作戦を考えておいたわ」

「これからもがんばりましょう! トップアイドルになれることを信じて!」

「やっぱりこの森には古墳が眠ってたのよ!」

「最近、自分が出来ることにちょっと思い悩んでるのよ」

「やらなきゃいけないのなら、私だってひと肌脱ぎますとも!」

 

 

 

『私だってウルトラマン』

 

 

 

 東京都内の大きな博物館――の跡地。

 建物が崩壊して山となった瓦礫の中から、倒れた柱を押しのけて出てきたのはガイであった。

 

「よっ……と! ふぅ、何とか助かったか……。大丈夫か、お前たち?」

 

 ひと息吐いたガイは、自分の下にいた律子と亜美に手を伸ばして引き上げる。

 

「あ、ありがとうございます……」

「うえ~ん……怖かったよぉ~」

「よしよし、もう大丈夫だからな……と言いたいところだが……」

 

 泣く亜美をあやすガイだが、周囲を見回して苦い顔となった。

 

「とんでもないことになっちまったなぁ……」

「あぁぁっ! 真美ぃっ!」

 

 亜美が駆け寄ったのは、瓦礫の間に立っている真美――の石像としか言いようのないものだった。

 しかし、この石像はほんの数分前までは――紛れもなく本物の真美だったのだ。

 

「か、完全に石になっちゃってる……。ひどい、ひどいよ……」

「春香! 千早っ! みんなっ!!」

 

 石になっているのは真美だけではない。律子は周りの、仲間たちの石像を瓦礫から掘り起こして絶叫を上げた。

 生身の身体でいるのは、ガイと律子と真美の三人だけ。他のアイドルたち、のみならず周りに見える人の全てが――物言わぬ石像に変わり果てていた。

 ガイが苦悶の表情で舌打ちする。

 

「こいつはやべぇぜ……。早く、『奴』を何とかしなきゃ……」

 

 ガイが送った視線の先の遠景。そこでは、こちらに背を向けた巨大な怪物が街に進撃し、口から光線をまき散らして必死に逃げる人間たちを次々に石に変えていた。

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 口の中に単眼を持つ、蛇と竜と悪魔を融合させたような『魔獣』、ガーゴルゴンが大気を震動させた。

 

 

 

 事の発端は、昨日にまでさかのぼる。

 

「ねーねー兄ちゃん! これ見てー!」

「面白そうじゃなーい?」

 

 事務所で亜美と真美が、ガイに一枚のチラシを見せつけた。ガイはチラシを受け取って、内容を読み上げる。

 

「何なに……ギリシャで発掘された伝説の『ゴルゴンの像』来日。城南博物館に期間限定で展示……ねぇ」

「どお? 面白そうでしょ!」

「最近怪獣とか宇宙人を追っかけてばっかだしさー、たまにはこーいう平和的なものを『アンQ』で取り上げてみよーよぉ」

 

 ガイと亜美たちの会話を聞きつけて、他のアイドルたちもチラシに注目した。雪歩が発言する。

 

「ゴルゴンの像って、確かニュースで取り上げられてた奴だよね。歴史的新発見だって」

「そうそれ! ねーねー、兄ちゃんどーかな?」

「よさげじゃない?」

「ふむ……」

 

 ガイはしばし顎に手を当てて考えてから、結論を出した。

 

「そうだな、たまには怪獣と関係ないことを調べてみるのもいいな」

「やったー! それじゃ決まりだねっ!」

 

 亜美と真美が喜んでいると、美希が話に入ってくる。

 

「亜美と真美だけハニーと博物館デートなんてずるいの! ミキも行きたいの~!」

「おいおい、別にデートなんてもんじゃないぞ」

「でも、ボクもたまには一日ゆっくりしたいなぁ」

「私も。最近宇宙人も追いかけててクタクタよ」

 

 真と伊織の意見に他の面々も同調した。すると亜美が提案する。

 

「それじゃいっそのことみんなで行こうよ! 765プロで遠足だー!」

 

 それにやよいやあずさたちが関心を寄せる。

 

「わぁ~! それいいねー! 楽しそう!」

「あらあら。遠足だなんて久しぶりだわ」

「ほらほら、千早ちゃんも一緒に行こうよっ!」

「えっ、私は別に……」

 

 盛り上がる他のアイドルたちだが、それを律子がたしなめる。

 

「ちょっとみんな、全員で遊んでるなんて駄目よ! 私たちまだまだ無名なのに、そんなことしてる暇なんて……」

 

 だが美希と響には肩をすくめられるだけであった。

 

「も~。律子…さんはお固すぎなの。たまには休むことだって大切って思うな」

「一日くらいなんくるないさー!」

「でも……」

「よいではありませんか。皆、学業にあいどる業に加え、うるとらまんの戦いに備える多忙の身です。休息を取ることも悪くはありません」

「貴音までそんなこと言って……」

 

 渋る律子をよそに、アイドルたちはすっかりその気であった。ため息を吐く律子にガイが呼びかける。

 

「まぁいいじゃないか、律子。ずっと気を張り詰めてるって方が、むしろ効率が悪いもんだからな」

 

 と説得しても、律子は不安げな表情のままだった。

 

「そうかしら……。普段いっぱいがんばってるのに全然名前が売れないでいて、この調子でトップアイドルになれるのかしら……」

 

 一方で、雪歩がこんなことを言った。

 

「そういえば、前にも珍しい像が日本に来たことがあったよね。その時は怪獣が出てきて大変なことになったけど」

「ああ、あのサザエカタツムリのことだね」

 

 うなずく真美。先日、『ゴーガの像』という古美術品が日本に密輸された事件が発生したのだが、その像の中から貝獣ゴーガが出現してパニックが起きたのだった。「ゴーガは火の海と共に没す」という記述を古代アランカ帝国の歴史書から発見した765プロの連絡により、ビートル隊の火攻めでゴーガは倒されたのだった。

 確かにその時の状況と似ているが、

 

「まっさか~。像の中から怪獣が出てくるなんてこと、そうそうある訳ないじゃん」

「そうだよねぇ」

 

 亜美の言葉に一同はおかしそうに笑ったのだった。

 

 

 

 亜美が言う。

 

「今から思えばあれ、フラグだったね……」

 

 

 

 そして今朝、765プロ一行が訪れた城南博物館。

 

「そろそろ展示開始の時間だ。準備してくれ」

「分かりましたー」

 

 博物館のスタッフが、ゴルゴンの像を展示場所へ運んでいくために、台ごとガラスケースを被せようとした。

 が、像の頭の部分から何やらカードが半分はみ出ていることに気づいて手を止める。

 

「え……? カード? こんなものあったか?」

 

 思わずそれに手を掛けると、カードが像から引き抜けた。青と銀色の超人が描かれたカードであった。

 

「あッ、抜けた……」

 

 直後、像が急激にひび割れてボロボロと崩壊していく!

 

「えッ!? た、大変だ――!」

 

 驚愕するスタッフだったが、このことを誰かに伝えることは出来なかった。何故なら――像の『内側』から発せられた光線を浴び、一瞬にして石像に変わってしまったからだ。

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 

 

「へ~。こんなものもあるんだな」

 

 博物館に入館して、他の展示物を見回りながらゴルゴンの像展示を待っていた765プロ一行だが、急にガイと貴音が弾かれたように顔を上げた。

 

「!!」

「? どうしたんですか?」

 

 春香が聞くが早いや、貴音が仲間たちに警告する。

 

「皆、早く逃げるのです――」

 

 だがすぐに博物館の壁が砕けたかと思うと、射し込んできた光線によって貴音はたちまち石に変えられてしまった!

 

「きゃああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「た、貴音ぇ!?」

 

 一瞬で騒然となる博物館。しかしすぐに他の人々も、床をなぞるように走る光線を浴びせられて石に変えられていった。それは765プロアイドルも例外ではなかった。春香、千早、美希らが声も出す暇もなく石像にされる。

 

「なッ!! 律子ッ!」

「きゃっ!?」

 

 急激な事態の発生に、たまたま律子とともに離れたところにいたガイは、律子をかばって助けるだけで精一杯だった。二人から外れた光線は、亜美の方へと急速に迫っていく。

 

「あっ――!」

「亜美ぃ―――――――っ!」

 

 咄嗟に真美が亜美を突き飛ばしたことで亜美は光線から逃れたが――代わりに、真美に当たって彼女は石に変えられてしまった。

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 ゴルゴンの像の封印から脱し、ガイたち三人以外の館内の人間を石に変えた魔獣ガーゴルゴンは、博物館を内側から破壊して巨体を白日の下に晒し、復活を果たしたのだった。

 

 

 

 そして今に至る。

 

「うぅぅ、真美ぃ……真美ぃ……」

 

 いつも明るくポジティブな亜美も、石像の真美を抱き締めて涙していた。しかしすぐ袖で涙をぬぐって、ガイに振り向く。

 

「兄ちゃん、真美たちは元に戻せる!?」

「……方法は一つだけだ」

 

 ガイは遠景のガーゴルゴンを鋭くにらみつける。

 

「単純な話、あいつをぶっ倒す! そうすれば石化の魔力は解けて、みんな元に戻るはずだ」

「そっか! じゃあすぐやろう!」

「おう! 律子、お前も力を貸してくれ」

 

 亜美に応じ、律子に振り返るガイだが……律子は我が物顔で暴れるガーゴルゴンの背面を見つめて、小刻みに震えていた。

 

「律っちゃん……?」

 

 律子が返事をしないので、亜美は怪訝な顔となる。ガイは神妙な面持ちで、律子に語りかける。

 

「ガーゴルゴンが生物を石に変えるのは、生命エネルギーを吸収するためだ。奴は復活したばかりでエネルギーが不完全のはずだが、このままだとどんどんエネルギーを蓄えてって、時間が経つ毎に手がつけられなくなる。今の内に倒さないといけないんだ。それが出来るのは、ここにいる俺たちしかいない」

「分かってます……」

 

 律子は身体と同じように、震えた声で返答した。

 

「765プロに在籍する道を選んだからには、私もいつか『こうなる』時が来るってことは、覚悟してたつもりでした。……けど、実際に直面してみたら……震えが止まりません……。私が、あんな怪物に立ち向かうだなんてこと……!」

「律っちゃん……」

「私、頭の良さは日々自慢してますけど、戦いなんて一度も経験したことがありません……。アイドルとしての実力だって他のみんなと比べたら見劣りしますし……スタイルだって寸胴ですし……」

 

 弱々しい声の律子に、ガイはやれやれと首を振った。

 

「律子、お前の普段の強引さは、自分への自信のなさの裏返しだったな。時々、不安や弱気が表情に表れてたからな」

「……」

「気が強いように見えるお前が、春香を超えて一番普通の女の子なのかもな。けどな……」

 

 ガイが律子にすっと差し出したのは、ウルトラマンエックスのカード。

 

「エックスさん……!」

 

 受け取った律子の手の中で、エックスのカードが温かく光る。

 

「エックスさんたちが言ってただろう。未来ってのは、みんなの力で掴むもんだってな。――お前は一人じゃない。今この場には、俺と亜美がいるぜ」

「そうだよ律っちゃん! 自信持ちなよ。律っちゃんは亜美から見たら、努力家ですごい人だよー! おっぱいだってばいんばいんだしさ」

 

 亜美は律子の隣に立って、その手をぎゅっと握り締めた。

 

「亜美……」

「俺たちの力を合わせれば、あんな奴は敵じゃない! 俺たちを信じろ、律子!」

 

 ガイの強い呼びかけで、律子の顔つきは一転、力に溢れたものとなった。

 

「はいっ! 不肖秋月律子、みんなを救うために精一杯力を出します!」

「よぉしッ! それじゃあ行くぞッ!」

 

 颯爽とオーブリングを構えたガイ。それに続いて亜美がウルトラマンギンガのカードを掲げる。

 

「ギンガ兄ちゃんっ!」

 

 カードをリングに通すと、亜美の横にギンガのビジョンが出現した。

 

[ウルトラマンギンガ!]『ショオラッ!』

 

 次いで律子がエックスのカードを掲げる。

 

「エックスさんっ!」

 

 同じようにリングにカードを通すと、律子の隣にエックスのビジョンが立つ。

 

[ウルトラマンエックス!]『イィィィーッ! サ―――ッ!』

 

 そしてガイがリングのトリガーを思い切り引いた。

 

「痺れる奴、頼みますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 ガイたちとギンガ、エックスが融合を果たす!

 

『シュワッ!』『トワァッ!』

[ウルトラマンオーブ! ライトニングアタッカー!!]

 

 交差した銀河を背景に稲妻とX字の閃光が瞬き、オーブが飛び出していく!

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 勢いのままに暴れ回るガーゴルゴンの頭上を越え、その眼前に回転しながら垂直に着地した。突然己の前に降り立ったオーブにガーゴルゴンは思わず足を止める。

 オーブの身体には頭部、両肩、腕、脚の七箇所に青いクリスタルが埋め込まれている。そして銀と赤と黒の肉体はサイバーメカニックな様相であり、鎧を思わせるように隆起していた。

 ギンガとエックスの力を宿した、電光のパワーを持つライトニングアタッカーだ!

 

(♪Xの戦い)

 

『俺たちはオーブ! 電光雷轟、闇を討つ!!』

 

 堂々と名乗り口上を発したオーブが、まっすぐガーゴルゴンに向かって駆け出していく!

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 即座にオーブを敵と判断したガーゴルゴンは、接近してくるオーブに対して肩から生えている蛇の首から怪光線を発射してきた。

 

「シュッ!」

 

 だがオーブはひるまず、左右にステップを踏みながら足元に撃ち込まれてくる怪光線をかわしつつ前進、ガーゴルゴンとの距離を縮めていく。

 しかしその足に伸びてきた反対側の蛇の首が噛みつき、ひっくり返されてしまった。

 

「ウオアッ!」

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 倒したオーブに怪光線がここぞとばかりに飛んでくるが、危ないところでオーブは後転して回避した。その流れで立ち上がると、頭部のクリスタルからスパークを起こす。

 

「「『ギンガエックススラッシュ!!!」」』

 

 放たれた三叉型の光弾がガーゴルゴンの中心に命中する。

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

『今だッ! 行くぞ!』

『「うんっ!」「はいっ!」』

 

 ガーゴルゴンの動きが鈍った隙にオーブは一気に間合いを詰め、相手の首筋に電光を纏ったチョップを連打する。

 

「オリャアアッ!」

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 オーブの猛攻により麻痺し苦しむガーゴルゴン。しかし、鉤爪の振り上げを食らって弾き飛ばされてしまった。

 

「ウワァッ!」

『「あうっ!」「くぅっ!」』

 

 傷を受けた胸を押さえながら踏みとどまるオーブだが、ダメージは想定以上に深く、一瞬身体がよろめいた。カラータイマーもピンチを知らせる。

 

『「あいつ、チョー強いよ……! なかなか隙がない……!」』

 

 うめく亜美。ガーゴルゴンはまだエネルギーが不完全な状態のはずだが、それでもオーブと互角以上の戦闘力を有していた。実戦はこれが初となる亜美と律子には苦しい相手かもしれない。

 と亜美が焦燥していると、律子が力強く呼びかけた。

 

『「亜美、ひるんでちゃ駄目よ!」』

『「律っちゃん?」』

 

 律子の瞳には、勇気と闘志が燃えたぎっていた!

 

『「怖気づいてちゃ苦しくなるだけだわ! 攻めて! 攻めて! 攻めていって! 奪われたみんなの命を勝ち取るのよっ!」』

 

 律子の熱い想いに亜美も同調し、目つきに力がこもる。

 

『「うんっ! 亜美も負っけないよー!」』

『その意気だ、二人とも! 勝負はここからだッ!』

 

(♪ウルトラマンギンガのテーマ)

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 ガーゴルゴンが両肩の蛇の首を伸ばしてオーブに食らいついてこようとする。それにオーブは下手に逃げようとはせず、腰を据えて堂々と待ち構えた。

 

「シェアッ! オォリャッ!」

 

 そしてうねる首の軌道を見切り、チョップと蹴り上げを仕掛けて返り討ちにした。己の身体の一部を激しく打ち据えられたガーゴルゴンが苦しげに悶える。

 今のカウンター攻撃は、相手の動きを計算する律子の分析力の賜物だ。

 

『いいぞ律子! やれば出来るじゃないか!』

『「ありがとうございますっ!」』

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 ガーゴルゴンは首を戻して怪光線攻撃に切り替えようとする。だがオーブが機先を制する。

 

「セアァァッ!」

 

 突き出した拳から電撃を繰り出し、ガーゴルゴンを鋭く撃ち抜いた。これが会心の一撃となり、ガーゴルゴンはガクガク震えて痺れた様子を見せる。

 

「キュウッ! アァオ――――――――ッ!」

 

 しかしここでガーゴルゴンの動きに大きな変化が起こった。二又の尻尾を持ち上げたかと思うと先端をガラガラヘビさながらに振るわせて、バックリと口を開く。その中に隠された単眼がギョロリと蠢き、オーブに向けられた。

 

『石化光線を放とうとしてるぞッ! 食らったらお陀仏だ!』

 

 ガーゴルゴン最大の攻撃を前にして身構えるオーブ。そこで律子が叫んだ。

 

『「プロデューサー、私に任せて下さい!」』

『考えがあるんだな!』

『「はいっ!」』

『よしッ! お前を信じるぜ、律子!』

 

 エネルギーをチャージしたガーゴルゴンが、オーブへとすさまじい勢いの石化光線を繰り出す!

 その瞬間を見計らい、オーブは自身の正面に渦巻く光のバリアを展開した!

 

「「『ハイパーバリアウォール!!!」」』

 

 バリアは回転する力によって、当たった石化光線をガーゴルゴンへはね返した!

 

「アァオ――――――――ッ!?」

 

 己の光線を浴びたガーゴルゴンがみるみる石化していく。律子が叫ぶ。

 

『「見たものを石に変える怪物は、鏡に映った己の姿で退治されるものと相場が決まってるのよ!」』

『「やったね! 律っちゃんナイスー!」』

『よぉしッ! とどめと行くぜ!』

 

 オーブは地を蹴って空中に浮遊すると、石像と化したガーゴルゴンに照準を合わせて己の手足をX状にピンと伸ばした。すると身体のクリスタルに電撃が宿る。

 

「「『アタッカーギンガエックス!!!」」』

 

 オーブの全身から稲妻が発せられ、ガーゴルゴンを貫いた! X字の爆炎がガーゴルゴンを呑み込む!

 雷撃の衝撃により、ガーゴルゴンの全身が一瞬にして粉砕。風とともに崩壊して消え失せていった。

 

 

 

 ガーゴルゴン消滅と同時に、石にされた人々も皆元の姿に戻っていった。

 

「うーん……あれ?」

 

 春香たちも、博物館跡地で目を覚まして身体を起こした。

 

「こ、ここは……何がどうなったんだっけ?」

 

 石化の前後の記憶が曖昧な彼女たちは、瓦礫の山を前にしてしばらくの間呆然としていたのだった。

 

 

 

 ガーゴルゴンを倒し、変身を解除したガイは、博物館跡地で瓦礫の中から一枚のカードを探り当てた。ゴルゴンの像の中に挟まっていた、青いウルトラマンのカードだ。

 

「ガーゴルゴンを封印してたのは、ウルトラマンコスモスさんの力でしたか! お疲れさんです」

 

 ペコリと会釈したガイは、コスモスのカードもホルダーに加えたのだった。

 

 

 

 それから亜美と律子とともに瓦礫の山を踏み越えながら、仲間たちの元に戻っていくところであった。ガイが亜美と律子に対して告げる。

 

「これでみんな元通りになってるだろう。どうにか被害を最小限に抑えることが出来たな」

「とんでもない遠足になっちゃったけどさ、結果オーライだよね! これでひと安心だよー」

 

 皆を救えたことで亜美がにこにこ笑う。一方で律子は、ガイの顔を見上げた。

 

「プロデューサー……」

「ん、何だ?」

「確かに私は、自分への自信が欠けてました。それでプロデューサーにも何度か迷惑を掛けたこともあったかもしれません……」

 

 しかし今の律子の表情には、確かな自信が根づいていた。

 

「でも今回のことで、私にも出来ることがちゃんとあるんだって思えるようになりました! アイドル活動にだって足踏みしません。私だって765プロの一員……ウルトラマンオーブなんですから!」

 

 律子の元気に溢れた言葉に、ガイが大きくうなずき返す。

 

「ああ! これからもよろしく頼むぜ!」

 

 律子とガイのやり取りに明るく笑う亜美。

 

「よかったね律っちゃん! 雨降って力こぶって奴だねー」

「それを言うなら雨降って地固まる、でしょ」

 

 亜美の言い間違いに三人は大いに笑い声を発した。と、そこに、

 

「おーい! プロデューサーさーん! 律子さん、亜美ー!」

「あっ、はるるんたちだ! おーいっ!」

 

 春香たちが手を振りながら駆けてきたので、ガイたちはこちらからも彼女たちの元へと走っていったのだった。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

律子「どうも皆さん! 秋月律子です。今回ご紹介するのは、つながる力のサイバーヒーロー、ウルトラマンエックスさんです!」

律子「エックスさんは2015年の『新ウルトラマン列伝』内で放送された連続ドラマ『ウルトラマンX』の主役ウルトラマンです! 過去のウルトラマンも多くの方が人間と一体化してたものですが、エックスさんは大空大地さんとコミュニケーションを取ることの多い、いわゆるバディものの作風でした」

律子「また、前作『ギンガ』までは呪いと扱われてたスパークドールズを怪獣保護と捉え直して、人と人のつながりのみならず、『コスモス』以来の怪獣との共存をメインテーマに置いた作品となってました」

律子「更には防衛チームの描写もリアリティが重視され、SFとしても従来のシリーズよりも手堅い作りになってます! このように、様々な要素が合わさって一つの形となった作品だったんですね」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『私だって女の子』だ!」

ガイ「PS3ソフト『アイドルマスターワンフォーオール』のダウンロードコンテンツが初出の律子ソロ曲で、本編後の追加シナリオにも深く関係してる。固いキャリアウーマンのようでいて内面は誰よりも女の子な律子そのものを歌い上げてるような一曲だぞ」

ガイ「律子って案外こういう曲の担当が多いんだよな。『ワンフォーオール』では律子のかわいさだって再確認できるぞ!」

律子「か、かわいいなんて……! もう、からかわないで下さいよっ!」

律子「それでは次回もよろしくお願いします!」

 




 はいさーい! 我那覇響だぞ。100%的中する予知夢を見る人がいるそうなんだけど、その人がオーブの敗北を予言したんだって! うぎゃー! プロデューサーやられちゃうの!? やよい、あずささん、プロデューサーを助けてあげて!
 次回『霧の中のTOMORROW』。予知夢なんてなんくるないさー!

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