THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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ETERNAL POWER RAINBOW(B)

 

「――分かりました。男と女の二人組ですね。すぐ捜索に合流します」

 

 小鳥からの電話で偽の記者たちのこと、その特徴を聞いたガイは、すぐに足を765プロ事務所の方角へ向けた。

 

「一旦事務所に戻るか……!」

 

 事務所への近道となる公園を横切って、急いでいくガイであったが、そこに、

 

「ッ!」

 

 彼に向かってどこからか光弾が飛んできた。殺気にいち早く気がついたガイは身を翻して回避する。

 

『ちッ! 勘の鋭い野郎だぜ!』

 

 光弾の飛んできた方向に身構えたガイの前に現れたのは、ザラブ星人とマグマ星人を連れたナグス。三人もの宇宙人の出現に、公園にいた人たちは一斉に悲鳴を上げて逃走していく。

 

『へッ、この間のお礼をしに来たぜぇ』

「性懲りもなくボコボコにされに来たってことか。暇な奴だな」

『ほざけッ!』

 

 売り言葉に買い言葉で返したガイに、ナグスが光線銃を突きつける。だがガイはまるで動じず、問いを投げかけた。

 

「さっきウチの事務所を調べに来たっていう二人組は、お前らの手の者か?」

『あぁん? 何の話をしてやがる』

 

 反応を見る限り、ナグスの返答に嘘はなさそうであった。

 

「違うのか。じゃあ一体誰が……」

『何をボーッとしてやがる! こいつでくたばりやがりなッ!』

 

 ナグスの発砲を合図とするように、ザラブ星人とマグマ星人もガイの左右に回り込み、光弾をかわすガイに襲いかかる。

 

『食らえッ!』

『はぁッ!』

 

 ザラブ星人は指先からエネルギー弾を発射し、マグマ星人はサーベルを装着して斬りかかってくる。三方向から攻め立てられるガイ。

 しかしそれでも焦ることなく、光弾をかいくぐりつつサーベルの切っ先を腕でそらしてマグマ星人の懐をがら空きにした。

 

『何ッ!?』

「せぇいッ!」

 

 動揺したマグマ星人の顎を素早く蹴り上げてカウンターを決めた。のけ反って吹っ飛ぶマグマ星人。

 

『ぐはぁッ!』

『おのれよくもッ!』

 

 ザラブ星人がエネルギー弾を乱射してくるも、盾にしたウルトラマンのカードがそれを反射した。

 

『ぐぎゃあッ!』

 

 自らのエネルギー弾を食らったザラブ星人も倒れ込む。そしてガイは一直線にナグスに飛び掛かっていく。

 

『ちくしょうがッ!』

 

 銃撃からパンチに切り替えるナグスだが、ガイはその手を捕らえて一本背負いを決めた!

 

「とあぁぁぁぁ――――――ッ!」

 

 放物線を描いて地面に叩きつけられるナグス。

 

『ぎゃッ! ぐッ、くそぉッ! 相変わらず腹の立つ強さだ……!』

 

 もがきながら起き上がったナグスは、ザラブ星人とマグマ星人に命令する。

 

『お前ら! どうにかしやがれッ!』

『くッ……! こうなったら、こいつらの出番だ!』

『ペシャンコになるがいいッ!』

 

 ザラブ星人とマグマ星人がそれぞれ出したのは、怪獣の人形。

 

「スパークドールズ!!」

『行けぇッ!』

 

 ザラブ星人たちが二つのスパークドールズにエネルギーを浴びせ、実体化させる。人形はたちまち本来の姿、四十メートル越えの大怪獣となって街中に現れた!

 

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ガアアァァァァァ!」

 

 透明怪獣ネロンガと戦車怪獣恐竜戦車! 二体の怪獣はガイの方へ向かってきて、その巨体で押し潰そうとする。

 流石に怪獣に生身で立ち向かう訳にもいかず、後退するガイの元へ、騒ぎを聞きつけた真とやよいが駆けつけてきた。

 

「プロデューサー! 大丈夫ですか!?」

「お助けに来ましたぁ!」

「助かった! 二人とも、頼むぞ!」

 

 ガイは即座にオーブリングを取り出し、真とやよいはそれぞれジャックとゼロのカードを手にした。

 

「ジャックさんっ!」

[ウルトラマンジャック!]『ジェアッ!』

「ゼロさんっ!」

[ウルトラマンゼロ!]『セェェェアッ!』

 

 二人がカードをリングに通し、ガイがトリガーを引いてフュージョンアップを行う。

 

「キレのいい奴、頼みますッ!」

[ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!!]

 

 変身を遂げたオーブ・ハリケーンスラッシュが宙を軽々と舞い、ネロンガと恐竜戦車に見上げられる中、ビルの屋上に着地した。

 

『俺たちはオーブ! 光を越えて、闇を斬る!!』

『「うわーん! 高いところ怖いですぅ~!」』

『「やよい、ちょっと落ち着いて!」』

 

 やよいが泣き喚くので、オーブはすぐに屋上から飛び降りて疾風の速さでネロンガに飛び蹴りを見舞った。

 

「シェアッ!」

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ガアアァァァァァ!」

 

 ネロンガを蹴り倒したオーブに背後から恐竜戦車が突進していくが、察知していたオーブの後ろ蹴りを顔面にもらって返り討ちにされた。

 

「テェヤッ!」

 

 そうしてオーブはオーブスラッガーショットを回転させて渦を作り、その中央からオーブスラッガーランスを取り出した。

 

『オーブスラッガーランス!』

 

 ネロンガが電撃を放ってきたが、オーブはランスで切り裂きながら宙を跳び、ネロンガに飛び掛かる。

 

「オォリャアッ!」

 

 着地とともにランスを振り下ろしてネロンガを切りつける。

 

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「ガアアァァァァァ!」

 

 そこに恐竜戦車が砲撃を連発してきたが、オーブはランスを回転させて砲弾を切り刻んで遮断した。

 

「ダァァッ!」

 

 そうしてオーブは一瞬で距離を詰めて刺突を繰り出し、恐竜戦車を突き飛ばした。風のような身のこなしのハリケーンスラッシュは、二体の怪獣を相手にしても互角以上の戦いを演じていた。

 

『「よぉしっ! いい調子だね!」』

『「うっうー! このまま決めちゃいましょー!」』

 

 一方でこの戦いの様子に、ナグスが苛立ちを見せていた。

 

『何だよ、負けてるじゃねぇか! こいつはどういうことだぁオイッ!?』

『そ、そんなこと我々に言われても!』

 

 責任を押しつけられるザラブ星人とマグマ星人は、ナグスの剣幕にたじろいだ。

 

 

 

 だがオーブの戦いを観察しているのは、ナグスたちだけではなかった。

 

「ほう、こっちじゃ見ることのないスパークドールズの怪獣か。誰が持ち込んだのか……」

 

 ジャグラスジャグラーだ。彼は怪獣たちに善戦するオーブを見やると、不敵に口の端を吊り上げる。

 

「そんな奴ら相手じゃあ退屈だろう、ガイ。俺がもっと面白くしてやるよ……」

 

 取り出したのはダークリング。それに赤と青の怪獣のカードを通す。

 

[バニラ!][アボラス!]

「合体怪獣、バニアボラス!!」

 

 混ざり合った暗黒のエネルギーが、オーブの背後へ飛んでいく……!

 

 

 

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

「フッ!?」

 

 暗黒のエネルギーは実体化して、双頭の怪獣の姿となる。右半分が赤い身体、左半分が青い身体を縫い合わせたような非対称の胴体。それから怪獣バニラとアボラスの首が生えている。

 本来なら相反する属性同士の怪獣を融合した、両極合体怪獣バニアボラス!

 

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

 

 完全に気がそれていたオーブは、バニアボラスが吐き出す高熱火炎と溶解泡の不意打ちをもらってしまう。

 

「ウワアァァァァッ!」

『「わぁぁぁっ!?」』

『「うあああーっ!!」』

 

 バニアボラスの攻撃は強力で、オーブは圧力に押されて吹っ飛ばされた。衝撃は真とやよいにも伝わり、二人は思わず悲鳴を発する。

 

「グッ……!」

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

 

 それでもオーブは持ちこたえて、スラッガーランスで反撃しようとしたが、バニアボラスの二股の尻尾が飛んできて、手中より弾かれてしまった。

 

『しまった!』

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

 

 素手になってしまったオーブにバニアボラスが肉薄し、肉弾で圧倒する。ハリケーンスラッシュはスピードに優れる反面パワーはそれほどではなく、オーブスラッガーランスがなければ戦力が半減してしまうのだ。

 

「ウワアアアアアアッ!」

 

 オーブのピンチだが、ナグスは余計に苛立ちを募らせていた。その理由は、

 

『おいおいおい! これじゃああのいけ好かねぇ野郎の手柄になっちまうじゃねぇか! このままじゃ済ませられねぇぜ……!』

 

 言いながら、ナグスは踵を返す。

 

『おい、行くぞッ!』

『えッ、行くってどこに……』

 

 

 

 偽記者たちの捜索をしていた春香、美希、響は、バニアボラスに苦戦しているオーブの様子をハラハラと見上げている。

 

「オーブが危ない!」

「何とかしてハニーたちを助けなきゃ!」

「で、でも、自分たちだけじゃ出来ることなんてないぞ……!」

 

 気持ちが焦るばかりで打つ手を持たない三人。しかもそれだけで済まなかった。

 

『見つけたぜぇ!』

 

 彼女たちの元に、ナグスたちが現れたのだ。向けられる銃口に仰天する春香たち。

 

「あ、あなたはあの時のっ!」

『お前らオーブの仲間のタマを取ってくりゃ、ドン・ノストラへの顔も立つぜ! 覚悟しやがれッ!』

 

 ナグスは卑怯にも、オーブの代わりに戦う力を持たない春香たちを抹殺しようというのだ。春香たちは怖気づくが、ナグスは逃げる間も与えない。

 

『くたばりやがれぇッ!』

「きゃああああっ!!」

 

 ナグスが引き金に掛けた指に力を込める――!

 だが発砲の寸前、ナグスの銃に光弾が命中し、その手の中から弾き飛ばした。春香たちは危ないところで救われる。

 

『何ぃッ!? どこのどいつの仕業だぁッ!』

「えっ!? 今のは……」

「君たち、大丈夫かい!?」

「危ないところだったね!」

 

 目を見張った春香たちの前に回り込んでかばったのは、先ほどの偽記者二人組だった! 男、大地の方は見たことのない形状の銃を握り締めている。今のは彼の弾丸だったようだ。

 

「あなたたちはっ! ど、どうして……?」

 

 敵だと思っていたのに、と疑問を抱く春香たちに、二人は答える。

 

「スパークドールズの怪獣が現れたから、急いで引き返してきたんだ。そしたら君たちが襲われてるから……」

「助けに入ったって訳! ちょうど、追ってる人たちも見つけたしね」

『げぇぇぇぇッ!? お前らはぁーッ!!』

『おいどうしたってんだ!?』

 

 ザラブ星人とマグマ星人は大地と昴の顔を見て、大仰に驚きたじろいだ。

 一方で昴は、透き通った青い水晶型のペンダントを手に叫ぶ。

 

「行くよ、マッハキャリバー!」

[Standby, ready.]

 

 驚くべきことにそのペンダントから声が発せられ、かと思うと昴の全身が光り輝いた。一瞬にして彼女の服装が全く違うものとなる。

 

[Set up.]

 

 額に真白い鉢巻を巻き、へその出た短いシャツの上に白いジャケットを羽織る。両足にはローラースケート型のブーツを履き、右手は二重の歯車状のパーツが備わった鋼鉄のガントレットで覆われた。

 これに響たちは大いに目を見張った。

 

「へ、変身したぞ!?」

「まるで魔法少女みたいなの!」

 

 服装がチェンジした昴は、大地の持っているものと似ているが金縁のない端末型の装置を、警察手帳のように宇宙人たちに見せつけた。

 

「Xio隊員、スバル・ナカジマ! 脱獄犯のザラブ星人、マグマ星人! あなたたちを拘束しますっ!」

『ジオ!? ジオって何だ?』

『俺たちの敵ですよッ!』

 

 話が呑み込めていないナグスの問いに、マグマ星人が焦りながら答えた。

 昴――スバルに対して大地――ダイチは春香たちに振り返りながら告げた。

 

「君たちはあのウルトラマンの仲間なんだってね。だったら、このこと内緒にしてね!」

 

 そうして顔を今も苦戦中のオーブに向けると、己の端末を前に突き出す。

 

「エックス、ユナイトだ!」

『よぉし、行くぞッ!』

 

 その端末も声を発すると、ダイチは上部のスイッチを押し込んだ。すると端末の金縁が開いて人型のスパークドールズが出現し、ダイチはそれを端末にリードさせる。

 

[ウルトラマンエックスと、ユナイトします]

 

 先ほどのものとは違う女性の声が告げると、ダイチは端末を高々と掲げる。

 

「エックスーっ!!」

 

 X状の閃光に覆われたダイチは、光の超人――ウルトラマンの姿となって飛び出していく!

 

「イィィィーッ! サ―――ッ!」

[エックス、ユナイテッド]

 

 これを目の当たりにした春香が唖然とつぶやいた。

 

「う……ウルトラマンだったんだ……」

「そう! ダイチと、ウルトラマンエックスだよ!」

 

 スバルが誇らしげに、ウルトラマンの名を教えた。

 

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

「セァーッ!」

 

 バニアボラスは火炎と溶解泡を吐いて、膝を突いているオーブにとどめを刺そうとしていたが、そこにウルトラマンエックスが横からタックルして突き飛ばした。オーブは彼に救われる。

 

『「えっ……!?」』

『「う、ウルトラマンさん!? 本物の……!」』

 

 真とやよいは、オーブ以外の実物のウルトラマンの姿を目の当たりにして言葉をなくした。その二人に、超空間越しにダイチが呼びかける。

 

『「詳しい話は後で! 今は力を合わせて、怪獣たちをやっつけよう!」』

「イィィィーッ! セアァッ!」

 

 かばうようにオーブの前に立ったエックスが、バニアボラス、ネロンガ、恐竜戦車の三怪獣を相手に大きく見得を切った。

 

 

 

 亜美と真美とともに行動していた律子が、エックスの姿を見上げて驚きに包まれる。

 

「り、律っちゃん! オーブが二人いるよ!?」

「どうなってるのこれ!?」

 

 亜美と真美はそう言ったが、律子はエックスのカラータイマーに目を留めて否定した。

 

「いいえ、オーブの全形態に共通してるカラータイマーの形が違う……。あれは別のウルトラマンよ!」

「えぇっ!? じゃ、二人目のウルトラマンってこと!?」

 

 ジャグラーもまた、エックスの登場に驚愕して立ち尽くしていた。

 

「何だと……!?」

 

 

 

(♪Xの戦い)

 

「ヘアァッ!」

 

 エックスは地を蹴って怪獣たちの間に切り込んでいき、速攻を仕掛けた。ネロンガの鼻先にチョップを叩き込んでひるませると恐竜戦車にキックを入れて押し返し、またネロンガを張り手で突き飛ばした。

 

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

 

 そこにバニアボラスが接近。双頭の威容を前にして、エックスの中のダイチが一枚のカードを取り出した。――機械化されたようなゼットンの絵柄が描かれている。

 ダイチはそのカードを端末に挿し込む。

 

[デバイスゼットン、スタンバイ]

 

 するとエックスの身体が瞬時に黒と黄、ピンク色の鎧に覆われた。両手は黒と青の装甲で包まれる。

 

『ピポポポポポ……』

[ゼットンケイオン、セットアップ]

 

 鎧を着込んだエックスが両手を持ち上げると、胸の前にバリアが張られ、バニアボラスの火炎と溶解泡を完全に受け止めてダメージを防いだ。

 

『ゼットンの力を使ってる!?』

 

 オーブがエックスの鎧に衝撃を受けた。

 

「シェアァー!」

 

 エックスは一回転すると、遠心力を乗せた水平チョップをバニアボラスの首に食らわせた。

 エックスの戦闘とタイミングを合わせるように、スバルも宇宙人たちを相手に戦いを始めていた。

 

『くそぅッ! ここまで来て捕まってたまるかぁッ!』

『食らえぇぇッ!』

 

 ザラブ星人とマグマ星人が完全にスバルに狙いを変えて、光線を放つ。

 

[Protection.]

 

 だがスバルの前に張られた光の防壁が光線を防御。スバルはローラースケートをうならせながら猛然と走り、ザラブ星人とマグマ星人に突っ込んでいく。

 

「はぁぁっ! リボルバーキャノン!!」

 

 相手の反応を許す間も与えず、拳とともに衝撃波をザラブ星人に打ち込んだ。

 

『ぐえぇッ!?』

 

 ザラブ星人は一撃で昏倒。マグマ星人はザラブ星人を倒したスバルにサーベルを振り下ろす。

 

『おのれぇぇぇぇぇッ!』

 

 だがスバルははっしとサーベルを左手で掴み、左腕に備わった武装を機動。

 

「ソード・ブレイクっ!」

 

 スバルの左手がサーベルを握り潰してへし折った!

 

『なぁぁぁぁッ!? 俺の剣がぁぁぁぁ!?』

「リボルバー・ブレイクっ!」

 

 続く鉄拳がマグマ星人の顔面を打ち据えた。

 

『ぐえあぁぁッ!!』

「バインド!」

 

 マグマ星人もまた倒れ、スバルは光の帯でザラブ星人ともども縛り上げた。残るはナグスのみとなる。

 

「あなたは手配されてないけど、明らかに暴漢だね! 拘束しますっ!」

『どこの馬の骨とも知らねぇ奴が、図に乗るなよ! 俺は宇宙最強のナグス様だぁッ!』

 

 スバルへ飛び込んだナグスが連続パンチを繰り出すも、スバルはそれら全てを拳で難なく弾いた。

 

『何ぃぃぃッ!? ど、どうして俺の動きが読めるんだ!?』

「ナックル星の格闘術は、もう見切ってるよ!」

 

 反対にスバルの拳がナグスを襲い、追いつめていく。

 

『ぐげッ! うぎゃあッ!!』

 

 背景ではエックスがバニアボラスに火炎弾を発射した。

 

『「ブラスト火球弾!!」』

「ミィ――――――――イ!」

 

 爆風で吹き飛ばされたバニアボラスと入れ替わるように、ネロンガがエックスに突貫する。

 

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「テアッ!」

 

 だがエックスはネロンガの頭を押さえて止め、チョップの振り下ろしを脳天に叩き込んだ。

 

「やぁぁっ!」

 

 ネロンガを押し込むエックスと、ナグスを打ちのめすスバルの姿が重なっているようだった。

 

「す、すごい……」

 

 人間とは思えないような奮闘ぶりのスバルに、春香たちはすっかり呆気にとられている。

 

『俺たちも負けてられないぜ! 真、やよいッ!』

『「「はいっ!!」」』

 

 オーブは真にオーブリングとタロウのカード、やよいにメビウスのカードを握らせ、再変身を行う。

 

『「タロウさんっ!」』

[ウルトラマンタロウ!]『トァーッ!』

『「メビウスさんっ!」』

[ウルトラマンメビウス!]『セァッ!』

『熱い奴、頼みますッ!』

[ウルトラマンオーブ! バーンマイト!!]

 

 バーンマイトとなったオーブが、炎の拳でバニアボラスに殴りかかっていく。

 

「テェェアァッ!」

 

 灼熱のフックがバニアボラスに入って、まともなダメージを与えた。

 

『このアマがぁぁぁぁぁぁぁぁッ! 食らいやがれぇぇぇッ!!』

 

 スバルを前に一方的な劣勢に激情を爆発させたナグスが己の光線銃を拾い上げて、スバルに向けた。

 

「ウィングロードっ!」

 

 光弾の爆撃が、スバルの姿を呑み込む!

 

「あぁっ!?」

 

 どよめく春香たち。ナグスはスバルの姿が硝煙の中に見えなくなったので一転、気を良くする。

 

『ハッハッハッ! 思い知ったかッ!』

 

 高笑いしたナグスだが――そこで己の周囲にいつの間にか、光のロードが張り巡らされていることに気がついた。

 

『あぁッ!? な、何だぁこりゃあ!?』

 

 そして爆発に消えたかと思われたスバルは、その上を駆けていた!

 

「一撃必倒! ディバインバスターっ!!」

 

 スバルの光の砲撃がナグスに直撃し、ナグスは大きく宙を舞った。

 

『うぎゃあああ――――――ッ!!』

 

 地面に叩きつけられたナグスはもがき苦しみ、立ち上がれなくなる。

 

「今だっ! バインド――」

 

 スバルはザラブ星人たちと同じようにナグスを縛りつけようとしたが――そこにタルデが空間跳躍で割り込んできた。

 

『ナグス、ここは退け! むんッ!』

 

 タルデは右腕に巻きつけたランチャーを回転させ、弾幕をスバルに浴びせた。

 スバルは光の防壁で弾幕を防いだものの、視界が閉ざされた一瞬の間に、タルデとナグスの双方の姿が目の前から消えていた。

 

「逃げられちゃったか……」

 

 つぶやいたスバルだが、三体の怪獣と戦っている二人のウルトラマンの方へ振り向くと、うなずいて先ほどの端末と、青い機械で出来上がったような怪獣の絵柄のカードを取り出し、カードを端末に挿し込む。

 

[デバイスゴモラ、スタンバイ]

 

 すると同じ怪獣のスパークドールズが出現し、スバルはそれを握り締める。

 

「ゴモラ、行こうっ!」

 

 呼びかけたスパークドールズをスバルは、端末に押しつける。

 

[リアライズ!]

 

 するとウルトラマンたちの戦いの場に粒子が降り注ぎ、デバイスゴモラなる怪獣が実体化を果たした! その姿にはスバルと同じような歯車とローラースケートが備わっている。

 

『ギャオオオオオオオオ!』

「こっちも怪獣を召喚した!」

「もう何が何だかなの……」

 

 美希たちはスバルのはちゃめちゃぶりについていくことが出来なかった。

 

「行っけー!」

『ギャオオオオオオオオ!』

「ガアアァァァァァ!」

 

 デバイスゴモラはスバルの動きと連動して恐竜戦車に肉薄し、がっぷりと組み合った。恐竜戦車はキャタピラを全力で回すが、ゴモラのローラーも回転し、恐竜戦車を押し返していく。

 

「ゲエエゴオオオオオオウ!」

「シュアッ!」

 

 エックスはネロンガに貫手を突き出して弱らせると、鎧を解除して上半身を後ろへねじっていく。そして戻す勢いで両腕をX字に交差した。

 

「『ザナディウム光線!!」』

 

 エックスの腕から膨大な光線が照射される!

 

「超振動拳っ!!」

『ギャオオオオオオオオ!』

 

 ゴモラの方もスバルの命令で、光のロードの上を走って恐竜戦車に鼻先の角とクローをぶつけて振動波を流し込んだ。

 

「ゲエエゴオオオオオオウ!!」

「ガアアァァァァァ!!」

 

 二体の怪獣は必殺技に耐えられずに爆発を起こすと、肉体が急激に圧縮され、元のスパークドールズの状態に戻った。

 エックスとゴモラの攻撃が決まった直後、オーブもまた全身を燃え上がらせてバニアボラスにまっすぐ突進していく。

 

「「『ストビュームダイナマイトぉー!!!」」』

 

 全身を使ってバニアボラスに激突し、張り手をアボラス側の顔面に打ち込んだ。

 

『「ハイ! ターッチ!!」』

「ミィ――――――――イ! ゲエエゴオオオオオオウ!」

 

 灼熱の全力攻撃を食らったバニアボラスが爆発四散し、跡形も残さず消滅したのだった。

 怪獣を倒したオーブはエックスへ振り向き、視線を合わせる。言葉もなく何かを通じ合ったようにうなずき合うと、両者同じタイミングで空に腕を伸ばして飛び上がった。

 

「シュワッチ!!」

 

 二人のウルトラマンが地上から離れると、デバイスゴモラも粒子となって消えていった。

 

 

 

 ――召喚した怪獣が二人のウルトラマンに倒された後、ジャグラーはノストラの召集を受けて円盤へと移動していた。

 

「ドン・ノストラ、この私をわざわざ呼び出されるとは、何の御用でしょうか」

『フフフ、来たなジャグラスジャグラー……』

 

 ノストラはテーブルの上に、金色のスパークドールズを置く。

 

「これは……!」

『ちょっとしたツテで手に入れたものでね……。ただ、このままでは使い物にならん。そこで』

 

 ノストラは含みを持たせた視線をジャグラーに送る。

 

『これを君に授けよう』

「……何故私に?」

『フフ……君ならこいつを『動かせる』んじゃないか、とまぁ、直感で思ってね……』

 

 ジャグラーとノストラの、腹を探り合うような視線がかち合う。

 

「……私は、他者から与えられる力には興味がありませんね」

『おや、いいのかね? あのオーブ以外のウルトラマン、見なかった訳ではないだろう』

 

 エックスのことに触れられ、ジャグラーの身体がピクリと反応した。

 

『仮にあれが今後も居座るとなったら、君にとっても大きな邪魔となるだろう。障害の芽は、早めに摘んでしまう方がいい。そうは思わないかね?』

 

 エックスを引き合いに、ジャグラーに誘いを掛けるノストラ。

 ジャグラーからの回答は――。

 


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