THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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※今回は拙作『光輝巨人リリカルなのはX』を読まれていないと話が理解できない部分が多くあります。どうぞご了承下さい。



ETERNAL POWER RAINBOW(A)

 

「マガバッサーを封印してたのは、ウルトラマンメビウスさんの力でしたか」

「やはり封印してたのはウルトラマンタロウさんの力でしたか!」

「こいつはウルトラマンジャックさんの力でしたか」

「マガパンドンを封印してたのは、ウルトラマンゼロさんの力でしたか」

「ウルトラマンさん!」

「私は、あなたが欲しい!!」

「二人の英雄って、ウルトラマンのことだったんだ……!」

「七人以外の巨人がその力を用いて、世界のバランスを安定させたとあるの」

「ウルトラマンのカードって、他にもあるのかな?」

 

 

 

『ETERNAL POWER RAINBOW』

 

 

 

 ――第6無人世界の宇宙空間を、一隻の円盤が最高速度を出してジグザグに飛び回っている。それを追いかけているのは、ワタルとウェンディが駆るスペースマスケッティ。

 

「待て待てぇッ! 待ちやがれぇーッ!」

「逃げたところで罪が重くなるだけっスよーっ!」

 

 マスケッティから発射されるレーザーを、円盤がスレスレでかわし続ける。そのコックピット内の異星人二人が冷や汗まみれになっていた。

 

『このままでは追いつかれるぞ!』

『こんなところで捕まったら、脱獄の苦労が水の泡だ!』

 

 ザラブ星人とマグマ星人。彼らは以前Xioに敗れて逮捕され、キリーク軌道拘置所に収監されていた。だがある『目的』のために、脱獄を果たしたのだ。しかし円盤での逃亡中にXioに発見され、今のように逃亡劇を繰り広げている。

 精神的に追いつめられているザラブ星人とマグマ星人に、もう一人の脱獄者、スラン星人が申し出た。

 

『私が奴らを足止めしてきましょう』

 

 思わず振り向くマグマ星人。

 

『本気か!? だが、宇宙の歪みが開くのはほんの一瞬だ。確実に置いていくことになるぞ!』

『構いません。私自身の目的は、Xioと『あの者たち』への復讐! それが出来ればいいのです』

 

 スラン星人の申し出に、ザラブ星人とマグマ星人は頭を下げて感謝の意を表した。

 

『ありがたい……! せめて、健闘を祈る!』

『そちらこそ、『アレ』が完成することを祈ってますよ』

 

 スラン星人はそう言い残して円盤の外に飛び出し、巨大化してマスケッティに襲いかかった!

 

「グウオオオオオ!」

「うわぁッ!?」

 

 慌ててハンドルを切ったワタルだが、スラン星人の腕の刃がマスケッティの機体をかすめて損傷をもらってしまった。

 

「エマージェンシー! エンジントラブル!」

「ど、どうにか持ちこたえてっス!」

 

 機体のバランスが崩れるが、ウェンディの射撃するレーザーによりスラン星人を牽制してマスケッティから遠ざけた。

 ワタルたちがスラン星人に止められている間に、円盤は宇宙空間の特定の座標にたどり着いた。

 

『ここだ! 歪みを開くぞ!』

 

 マグマ星人の操作によって、円盤から怪電波が発射された。それに刺激されて、宇宙空間の一部が歪んでワームホールが開く。

 

『今だッ!』

 

 円盤はすかさずワームホールに飛び込み、第6無人世界から逃亡した。円盤を呑み込んだ空間の歪みはすぐに閉じて消滅する。

 

「しまった! 円盤に逃げられちまったぜ!」

「そ、それよりこっちがピンチっスよー!」

 

 エンジントラブルの起きたマスケッティでは、スラン星人のスピードに対応することは出来ない。レーザーの牽制も限界があり、スラン星人の放とうとしている光球に狙いをつけられる。

 

「ま、まずいッ!」

「うわあぁぁぁぁ―――――――!」

 

 よけ切れない。絶体絶命のマスケッティ!

 だがその時、スラン星人に誰かが飛びついたことで光弾がそれていった。

 

「セェアッ!」

 

 スペースマスケッティを救ったのは、ウルトラマンエックス!

 

「エックスッ!」

「ダイチー! 助かったっスー!」

 

 エックスはスラン星人を捕らえたまま、第6無人世界の衛星の地表に飛び込んでいき、もつれ合いながら落下した。

 

「フゥゥッ! ヘアッ!」

 

 衛星の地面の上を転がったエックスが起き上がる。エックスから逃れたスラン星人も同時に立ち上がった。

 

『現れましたね、ウルトラマンエックス! あの時の恨みを晴らしてくれましょう!』

 

 エックスに憎悪の念をぶつけるスラン星人だが、エックスはひるまずに己の内のダイチに呼びかけた。

 

『行くぞダイチ!』

『「ああ!」』

 

 ダイチが手を前に伸ばすと、その中にエクシードXのスパークドールズが出現。大地はそれをエクスデバイザーに押し当て、エクスディッシュに変化させた。

 

[ウルトラマンエックス、パワーアップ!]

 

 エクスディッシュのスライドパネルを一回スライドしてトリガーを引き、X字に振るった。

 

「『エクシード、エーックスッ!!」』

 

 虹色の光の軌道に包まれたエックスの身体が、エクシードXのものに変化! 更に頭部のエクスディッシュを右手に移し、パネルを一回なぞってスイッチを叩くことでアサルトフォームに変形させた。

 

「『エクスディッシュ・アサルト!」』

 

(♪新しい目覚め)

 

「ヘアァッ!」

「グウオオオオオ!」

 

 互いに走り寄るエックスとスラン星人。スラン星人が両腕の刃を突き出してくるが、エックスはエクスディッシュでそれらをはたき落とす。

 

「テェヤッ!」

 

 そしてがら空きになったスラン星人を蹴り上げ、のけ反ったところにエクスディッシュの横殴りを入れた。スラン星人は大きく倒れ込む。

 

『ぐッ、おのれぇぇッ!』

 

 スラン星人がますます怒り狂って光弾を連射してきたが、エックスはその全てを切り払いながら前進し、スラン星人本体に滅多切りを食らわせた。

 

『ぐはあぁぁぁッ!』

「セェアッ!」

 

 スラン星人はエクシードXのパワーと技にまるで追いつけず、一方的に押されていた。だがここでスラン星人の得意技が発動。

 

「グウオオオオオ!」

 

 高速宇宙人の異名の由来たる、目にも留まらぬほどの超スピードでエックスの周囲を旋回し幻惑を図る。常人の目からだと、スラン星人が分身したようにしか見えないほどだ。

 だが、それでもエックスたちは動揺しない。ダイチがパネルを三回スライドしてトリガーを引くことで、エクスディッシュの刃に虹色のエネルギーが集中した。

 

「『エクシードセイバー!!」』

 

 エクスディッシュの周囲に発生した三日月型の光刃が飛ばされ、走り回るスラン星人の残影を切り裂く!

 

『うぐわぁぁッ!?』

 

 エクシードセイバーはスラン星人本体も捉え、ダメージを食らったスラン星人が停止した。

 ダイチはすかさずそこを狙って、パネルを三回スライド後に今度はスイッチを叩いて刃を伸ばし、石突で地面を突いた。

 

「『エクシード! エクスラッシュッ!!」』

 

 エクスディッシュから溢れ出た虹色の光のロードがスラン星人を覆い込み、エックスがロードの中を飛ぶ!

 

「セェアッ!」

 

 すれ違いざまに一撃、引き返して二撃目を叩き込むことで、スラン星人のパワーを切り裂いた!

 

『ぐうわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――――――――――ッ!!』

 

 スラン星人はみるみる内に力を失って縮小していき、等身大のサイズでばったりと倒れた。

 スラン星人を見事討ち取ったエックスは、元の姿に戻って真上に飛び上がった。

 

「シュワッチ!」

 

 

 

 スラン星人は再逮捕したが、他の二人には逃げ切られてしまった。マスケッティはミッドチルダのオペレーションベースXに帰投し、逃亡先の世界の追跡が行われた。

 その結果を、特捜班に対してカミキが告げる。

 

「脱獄犯のザラブ星人とマグマ星人は、次元世界外のレベル3バースへ逃亡したことが判明した」

「別の宇宙にですか!?」

 

 驚きの声を上げるディエチ。それにクロノが首肯を返した。

 

「脱獄犯たちの宇宙船が突入したワームホールはグア軍団が使用していた、マルチバースを貫く宇宙の歪みだ。エックスたちが閉ざしたものだが、わずかに残っていた綻びを一時的に広げたんだ」

「マグマ星人の方は確か、元グア軍団でしたね。その時の知識によるものか……」

 

 チンクが顎に指を掛けて推測した。それから、シャーリーとマリエルが皆に報告する。

 

「その脱獄犯ですが、円盤の解析の結果、スパークドールズの反応が三つもあることが分かりました!」

「しかもその内の一つは正体不明、ひと際強い反応です。生命体としては妙な反応だったのも気に掛かりますが……」

 

 マリエルの言葉の後を継いで、グルマンが述べる。

 

「グア軍団は、昔はその名を知らぬ者はいないと言われたほどの闇の軍勢だ。壊滅したと言っても、その影響は今回の宇宙の歪みのようにどんな形で現れるか分かったもんじゃない。長いこと脱獄犯を放置するのは得策ではないぞ」

「ですが、別の宇宙となると大分厄介ですね……」

 

 ハヤトのひと言にクロノがうなずいた。

 

「ああ。次元世界内ならともかく、別の宇宙で管理局が大々的に行動するのはまずい。次元航行船を乗りつけるだけでも大きな問題となるだろう。それ以前に、次元船では到着まで何十年掛かるか分かったものではないがな」

 

 そのため、カミキはダイチへ――正確には彼の持つエクスデバイザーへ顔を向けた。

 

「そこで、この件はウルトラマンエックス、あなたにお願いしたい。どうか我々にご協力を頼みます」

『是非もありません、カミキ隊長』

 

 エックスはそのように即答した。

 

『別の宇宙の平和、私が守ってみせましょう!』

「ありがたい。ではダイチ、スバル!」

 

 続けてカミキはダイチとスバルに指令を下した。

 

「お前たちはエックスとともに別宇宙に赴き、助力して逃亡した脱獄犯を確保せよ! あまり時間の猶予はない、すぐに取りかかれ!」

「了解!」

 

 敬礼で応じたダイチとスバルが、早速出発の支度に取りかかった。

 

「よーし、行ってこい!」

「あたしたちがいなくても、頑張るっスよー!」

「別の宇宙の人たちに失礼のないようにな」

「気をつけて」

「キュッ! キュウッ!」

 

 グルマンやウェンディ、クロノ、ファビア、ピグモンらXioの仲間たちに見送られて、ダイチとスバルはXioベースの外に出た。

 

「それじゃあ行こう、スバル! 準備はいい?」

「もちろん! お願いね、ダイチ!」

「ああ! エックス!」

『よぉし、行くぞッ!』

 

 ダイチはエクスデバイザーを使用してエックスに変身し、ウルトラマンゼロのデバイスカードを挿し込んだ。

 

[イージスジャケット、セットアップ]

「イィィィーッ! トワァッ!」

 

 ウルティメイトゼロジャケットを纏ったエックスがスバルを手の平の上に乗せて、時空の壁を超越。ミッドチルダ、次元世界から離れ、別の宇宙へと旅立った――。

 

 

 

 ――東京都大田区、毎度おなじみの765プロ事務所。

 今日の765プロアイドルたちは、険しい表情で一枚の写真を見下ろしていた。響がポツリとつぶやく。

 

「うわー……また雪歩の写真にUFOが写り込んだんだ」

「あうぅ……何で私ばっかり」

 

 写真の中の雪歩の後方の空に、空飛ぶ円盤がはっきりと写っていた。それを観察した亜美が指摘する。

 

「この円盤、この前見たブラジャーみたいな奴とは違う奴だね」

「ブラジャーて……もっと他に言いようがあるでしょ」

 

 肩をすくめる伊織。それはともかく、円盤の形が違うことについて、貴音が推理する。

 

「ということは、この飛行物体は先日の宇宙人とは別の者たち……。穏やかならぬことですが」

「あの、惑星侵略連合だっけ? それと関係があるのかな」

 

 美希が不安げにつぶやくと、律子が皆にも聞こえるように答えた。

 

「現時点では情報が少なすぎて、何とも言えないわね。だからプロデューサーが先行して調査を行ってるわ」

 

 そこまで語ると、話題を別のものに変える。

 

「けど、このUFOにばかり構ってはいられないわ。今日は我らが765プロ事務所に取材が来るのよ! みんな、忘れてないでしょうね」

「もちろんですよ!」

 

 春香が代表して答えた。取材という言葉に、皆大なり小なり期待して浮き足立っている。

 

「確かウチの特集を組んでくれるってことでしたよね。みっともないところを見せないように、気をつけないとですよね!」

「特集だって、千早さん! ミキたちもちょっとは売れてきたってことかな」

「そうね。この調子でどんどん有名になりたいわね」

 

 いつもはクールな千早でさえ、初めての特集の取材にワクワクしていた。

 

「だからプロデューサーには早く戻ってきてほしいんだけど……今どの辺にいるかしら」

「あたし、連絡入れますね」

 

 小鳥がガイに電話を掛け、通話をつないだ。

 

「プロデューサーさん、そろそろ取材の方が来られると時間になりますが、まだ調査は終えられないんですか?」

『すいません。ちょっと間に合いそうにないんで、取材はそっちだけで受けて下さい』

 

 ガイがそう言うので、律子は受話器を小鳥からひったくった。

 

「ちょっとプロデューサー。それどういうことですか? UFOのこともそりゃ大事でしょうけど、事務所のことももっと考えてくれてもいいんじゃないですか?」

『悪い。だが俺の勘が、今度の円盤に対しては胸騒ぎを起こしてるんだ。こういう時は、経験的に出来る限り早いところ解決しないといけない。そういうことだから、じゃあな』

「あっ、ちょっと!」

 

 ガイが一方的に通話を切ってしまったので、律子はため息を吐いて受話器を戻した。

 

「しょうがないわね……。まぁプロデューサーは絶対必要って訳じゃないし、私と小鳥さんで代わりをしましょう」

「は、はい」

 

 ガイの代理を二人が務めることになり、アイドルたちはそれぞれ取材の準備を行う。……が、その中で律子がやや沈んだ表情になっているのに春香が気がついた。

 

「律子さん? 妙に元気ないですけど、どうかしましたか?」

「春香……! いや、ちょっとね」

 

 律子は手を振りながら答える。

 

「個人的なことなんだけどね……最近、自分が出来ることにちょっと思い悩んでるのよ」

「自分が出来ることに……?」

 

 それがどういうことか、詳しく語る律子。

 

「……私、怪獣に対抗するために色々な道具を作ってきたじゃない」

「はい。竜巻を追うアンテナとか吸水ポリマーの銃とかありましたね。それが?」

「でも……私にとっては自信作だったけれど、いざ怪獣を前にすると、ろくに役に立ったことがないじゃない。それが、私の能力の限界なのかなぁって思うようになって……。私に出来ることって、所詮そんなものなのかってね……」

 

 要するに律子は、自信を失いかけているようだ。春香はそんな律子を気の毒に思い、励ましの言葉を掛ける。

 

「そんなことないですよ! マガパンドンの時は、律子さんの作戦が勝利を導いたじゃないですか。律子さんは十分私たちを助けてくれてますよ!」

「そうかしら……? その時も、肝心なところはあずささんの発案だったじゃない」

「そ、それはそうですけど……」

「……ごめんなさい。こんな個人的な感情を仕事に持ち込むなんて、以ての外よね。みんなの規範になるように、気を入れ替えなくっちゃね!」

 

 両頬を叩いて気合いを入れ直したように見えた律子だったが、背負う哀愁はそのままだった。春香は心配そうに、律子の背中を見つめた……。

 

 

 

 ――惑星侵略連合の円盤に、二名の来客があった。ザラブ星人と、マグマ星人。二人の宇宙人は膝を突いて、ドン・ノストラとタルデ、ナグスに謁見する。

 

『偉大なるドン・ノストラ……我々は解散した暗黒星団の元構成員です』

『あなたのことはホストから聞いておりました。いとこが惑星侵略連合の首領をやってると』

『そうか、あいつのところの……』

 

 関心深そうにうなずいたノストラは、ザラブ星人たちに問いかける。

 

『それで、わざわざ宇宙を越えてまで、この私に何の用かな?』

『は、はい! 実は、こいつのことなんですが』

 

 マグマ星人が取り出して見せたのは、金色の怪獣の人形。それを見てタルデが口を開く。

 

『スパークドールズか。こっちでは珍しいな。……だが普通のものではなさそうだ』

『流石ドン・ノストラの側近! お目が高い』

 

 マグマ星人はこの人形、スパークドールズの説明を行う。

 

『おっしゃる通り、こいつは普通のものとは違います。忌々しいウルトラ戦士によって永久的に封じられたグア三兄弟様の怨念……それが結晶となったものです。我々はこいつで、恨み重なるウルトラ戦士に復讐しようと思ってまして』

『暗黒の帝王たちの怨念の怪獣か……! そいつはかなりの上玉ではないか』

 

 愉快そうに述べるノストラだが、マグマ星人は首を振る。

 

『ですが、今のこいつには魂が入ってません。だからこのまんまじゃ実体化しても、一歩たりとも動かないんです』

 

 それにナグスが呆れ返った。

 

『何だぁそりゃ! どんな大怪獣も動かねぇんじゃ、置物と一緒じゃねぇか!』

『は、はい……。ですから、どうかドン・ノストラのお力添えをいただきたく……』

 

 ザラブ星人たちの懇願に、ノストラは少しの間考え込んでから、ニヤリとほくそ笑んだ。

 

『言いたいことはよく分かった。そういうことなら、どうにかしてやろうではないか。私の力があれば、容易いことだ』

『本当ですか!? ありがとうございますッ!』

『これで、俺たちをどん底に追いやったあの世界を滅茶苦茶にしてやれる……!』

 

 喜色を浮かべるザラブ星人とマグマ星人だが、それを制するようにノストラが告げる。

 

『ただし、条件がある』

『条件?』

『ちょうどこちらでも、我々の侵略を邪魔するウルトラ戦士がいてな。そいつを始末することが条件だ』

 

 ノストラの提示した内容に、ザラブ星人たちは絶句した。

 

『そんな!? 必死の思いでようやくここまでたどり着いたのに……こっちでもウルトラ戦士の相手をしなくちゃならないなんて!』

『嫌ならいいのだぞ。他を当たれ。アテがあるのならな』

 

 ザラブ星人たちはにっちもさっちも行かなくなり、やむなく条件を呑み込んだ。

 

『わ、分かりました……。我々にお任せ下さい……』

『そうか、やってくれるか! なぁに、こちらからもこのナグスをつけよう。安心するといい』

 

 上機嫌となったノストラは、マグマ星人に手を差し出す。

 

『では、そのスパークドールズは私が預かろう。任せておくといい……フフフ……』

 

 

 

 765プロ事務所に、特集を組んでくれるという男女二人の記者がやってきた。

 

「はじめまして。ミッドチルダプレスのダイ……大空大地です」

「中島昴です。765プロのみんな、今日はよろしくね!」

「よろしくお願いしまーす!」

 

 大空大地と中島昴という記者相手に、アイドルたちは深々とお辞儀して挨拶。つつがなく取材は開始される。

 その取材の中で、大地はプロデューサー代理の律子に、こんな質問をした。

 

「ところで、君たち765プロは色んな怪奇現象や、最近だと怪獣を追うネット番組を撮ってるみたいだけれど」

「『アンバランスQ』のことですね! もしや、ご興味がおありでしょうか?」

「うん。まぁ、個人的にね」

「本当ですか!?」

 

 律子たちアイドルは、意外そうに大地を見返した。『アンバランスQ』は今も、ゲテモノとして大半の人から軽んじられている番組なのに。しかし何は何でも、評価されることは嬉しいことだ。

 一方で大地は、スッと目を細めて尋ねる。

 

「最新の投稿だと、UFOのことが取り上げられてたけど……他にもUFOに関する情報ってない? ちょっとでいいから、教えてもらえないかな」

「オッケー! ちょうど新しいネタがあるんだよー!」

「特別に記者の兄ちゃんたちに教えてあげちゃうよ~♪ 特別だかんね!」

 

 気を良くした亜美と真美が、先ほど話し合っていた円盤の写真を大地と昴に見せる。

 

「ちょっと二人とも! それはまだ非公開の情報よ!」

「いいじゃん律っちゃーん。固いこと言わないでさ~」

 

 亜美と真美の勝手な行動に焦る律子だが、二人はまるで気にせずに円盤の情報を大地たちに話した。と言っても、ほとんど何も分かっていないということだが。

 

「そうか……。まだ有力な情報はないんだね」

「うん。でも何か分かったらすぐネットにアップするからねー!」

「ちゃんとチェックしててねー。お願い♪」

 

 かわいらしくお願いする真美だが、大地は昴と真剣な顔で小さく相談した。

 

「有力な情報はないかぁ。残念……」

「ここなら何か知ってるかもと思ったけど……。この地球の防衛組織は何も話してくれなかったし……」

 

 昴へ目を向けている大地の腰から、金縁の携帯通信機器のようなものが覗いていることに亜美たちは目を留め、好奇心に駆られてそれをひったくった。

 

「何これ? これが記者の兄ちゃんのケータイ?」

「何だかゴツゴツしてるね。まるで玩具みたい」

「あッ!」

 

 それを律子が叱りつけた。

 

「こらっ! いい加減にしなさい! 流石に失礼よ!」

「うぎゃっ! ご、ごめんなさーいっ!」

 

 通信機器を取り上げた律子が、それを大地に返そうとする。

 

「申し訳ありません。この子たちにはよく言い聞かせておきますので」

「い、いや、大丈夫だよ。元気があって結構だね」

 

 しかし今度は律子が手を止めた。

 

「あら? このケータイの材質、何でしょうか? 見たこともないような……私に分からない材料があるなんて」

 

 大地は律子の言動にドキリとして、慌てながら返した。

 

「い、いやぁ、そういうのはよく分からないんだ。ただ、えーと、珍しいものらしいよ、うん」

「そうですか……?」

 

 春香は、突然妙に動揺した様子の大地を、少々訝しく思った。

 

「……?」

 

 

 

 何はともあれ、取材は無事に終了。記者たちが帰った後、アイドルたちが雑談し合う。

 

「特集の記事はいつ頃発売されるんでしょうかぁ? 今から楽しみですぅ~!」

「ちゃんとボクたちの魅力を伝えられたかな? ドキドキするなぁ」

 

 やよいや真は無邪気に楽しみにしているが、一方であずさが、律子が険しい顔で調べものをしているのに気づいた。

 

「律子さん? そんな顔して、どうしたんですか?」

「……!」

 

 律子は答えず、代わりに勢いよく席を立つと大声で言った。

 

「みんな、大変よ!!」

「ど、どうしたんですか、突然?」

 

 雪歩を始め、目を丸くするアイドルたちに、律子は告げた。

 

「さっきの記者さんの反応が気に掛かって、調べたんだけど……ミッドチルダプレスなんて出版社、存在しないの!! 名刺の住所、電話番号もデタラメよ!」

「えええぇぇぇぇぇ!?」

 

 その知らせに、全員が仰天した。響が頭を抱える。

 

「じゃあ、さっきの記者は偽者? 自分、張り切って取材受けたのに~! 全部無駄なんてひどいぞ~!」

「偽者ならば、あの二名は何者なのでしょうか……?」

「きっと企業スパイか何かよっ! まんまとしてやられたわ! きぃ~悔しい~!」

 

 歯噛みする伊織だが、律子は他の可能性を考える。

 

「それだけならまだマシだわ。もしかしたら、プロデューサーのことを探りに来た宇宙人が化けてたんじゃないかしら……! 何か得体の知れない道具を持ってたもの!」

「ちゃんと事前に調べておけばよかったですね……」

 

 後悔する小鳥。

 

「まだ遠くには行ってないかもしれないわ。捜しましょう! プロデューサーにも連絡して、何が目的か捕まえて聞き出さないとっ!」

「わ、私は叔父さんに通報しますね!」

 

 春香が渋川へ連絡を入れる。

 

「ボクたちは手分けしてさっきの人たちの行方を追いかけよう! やよい、行こう!」

「はぁいっ!」

「ミキも!」

「待ってぇ! 自分も行くぞ!」

 

 真ややよい、美希と響らが二人一組になって、捜索を開始。

 

「私も!」

「あずささんはここで待ってて下さい!」

 

 あずさは千早に止められた。

 偽記者たちの正体は何か、目的は何なのか。765プロは慌ただしく彼らの行方を追跡し始めた。

 


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