THE ULTRAM@STER ORB   作:焼き鮭

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逃げないMind(B)

 

「こっちだ! 早く!」

 

 ガイが春香、真、伊織を連れて工場から脱出した直後、建物を突き破ってハイパーゼットンデスサイスが地上へとその巨体を現した。

 

「ゼットォーン……」

『待てコラァッ!』

 

 同時にマドックもガイたちを追いかけてきて、ガイに向かって言い放った。

 

『紅ガイ、いやウルトラマンオーブ! お前にハイパーゼットンデスサイスを倒すことは出来んぞぉ! お前の能力は全て調査済みだッ!』

 

 ハイパーゼットンは工場を破砕しながら、ガイたちを恫喝するように身を乗り出した。春香たち三人は強烈な威圧感に思わず後ずさる。

 自信満々なマドックに対して、ガイは――不敵な笑みを返した。

 

「そいつはどうかな?」

『何!?』

「この業界は変化が早いんだ! 以前までの俺たちを調べてきたんなら、あんたの知らない俺たちを見せてやるよ!」

 

 堂々と宣言したガイが、真と伊織をそれぞれ一瞥した。

 

「真、伊織! お前たちの力、貸してくれ!」

「分かったわ!」

 

 伊織が一番にうなずき、真に振り返る。

 

「真はどうかしら? あのどでか黒カマキリに怖気づいちゃってるんじゃないの?」

「まさか!」

 

 伊織の軽口に、真は力強く返した。

 

「ボクはもう、どんな障害からも逃げない! プロデューサー、お願いします!」

「よしッ!」

 

 真の返事を受けたガイは最後に、春香に言いつける。

 

「春香は安全なところまで下がってな」

「私たちの華麗な活躍、しかと見届けてなさいよ!」

 

 伊織も春香に唱えてから、ガイがオーブリングを取り出す。真と伊織はそれにウルトラフュージョンカードを通していく。

 

「ジャックさんっ!」

 

 真が通したのは、ジャックのカード。

 

[ウルトラマンジャック!]『ジェアッ!』

 

 リングが緑色に光り、真の隣にウルトラマンジャックのビジョンが出現。

 

「ゼロっ!」

 

 次いで伊織はゼロのカードを通した。

 

[ウルトラマンゼロ!]『セェェェアッ!』

 

 リングが水色に輝き、伊織の横にはウルトラマンゼロのビジョンが現れる。

 

「キレのいい奴、頼みますッ!」

[フュージョンアップ!]

 

 ガイがリングを掲げてトリガーを引くと、緑、水色、青色にリングが発光し、ジャックとゼロは真、伊織を巻き込んでガイと融合。

 

『ヘッ!』『テヤッ!』

[ウルトラマンオーブ! ハリケーンスラッシュ!!]

 

 オレンジ色の光の渦と白い光の軌道の中から、新たな姿のオーブが巨大化しながら飛び出していく!

 ビルの屋上に着地し、ハイパーゼットンを見下ろすオーブは、青と黒を基調としたボディであり、頭頂部には刃状の二つのトサカが光を反射していた。

 ウルトラマンジャックとゼロの技のキレを受け継いだ、まさしくハリケーンのような速さを持った戦士、ハリケーンスラッシュである!

 

『俺たちはオーブ! 光を越えて、闇を斬る!!』

 

 ハイパーゼットンをビシッと指差したオーブがビルの屋上から飛び降りる。かと思えば既にハイパーゼットンに肉薄していた!

 

「シュワッ!」

 

 オーブの回し蹴りがハイパーゼットンの横面を打った。速いキックは残像すら残す。

 

「ゼットォーン……」

 

 ハイパーゼットンがカマを振り下ろして反撃してくるが、オーブは俊敏な身のこなしで難なく回避。

 

「オオオッ! シェアァッ!」

 

 そして回し蹴りを連発してハイパーゼットンを追撃していく。

 オーブに力を与えている真は、ハリケーンスラッシュの疾風のような動きに感激を覚えていた。

 

『「すごい! こんなに身体が軽く感じるのは初めてだ!」』

 

 そして自分とともにオーブと一体化している伊織に目を向ける。

 

『「伊織、とんでもなく速いステップだけどついてこれるかい?」』

 

 それに対して伊織はニッと笑みを返した。

 

『「私を誰だと思ってるのよ。スーパーアイドル伊織ちゃんよ!」』

『「そうだったね! それじゃあどんどん行くよっ!」』

『「望むところだわっ!」』

 

 オーブの側転キックがハイパーゼットンに入った。カマの反撃を受け流し、背中合わせで硬直し合う。

 

「ピポポポポポ……」

 

 先に動いたのはハイパーゼットンだが、オーブは身をかがめて横薙ぎのカマをかわし、ストレートキックのカウンターでハイパーゼットンを蹴り飛ばした。

 

『「はぁっ!」』

 

 右腕で円を描き、ビシッと見得を切るオーブ。その動作には真の空手の実力も反映されて、よりオーブに力を与えている。

 

『「流石やるじゃない、真!」』

『「伊織も全く遅れがないのはすごいよ!」』

 

 真と伊織は互いに称賛し合う。そうして呼吸をもっと合わせ、ハイパーゼットンに立ち向かうのだ。

 オーブはハイパーゼットンのカマの腕を捉え、一本背負いを決めようとする。

 

「オオオオオッ!」

 

 だが地面に叩きつける直前、ハイパーゼットンの肉体が一瞬でかき消えた。

 

『「消えた!?」』

「ゼットォーン……」

 

 真が驚愕していると、ハイパーゼットンは背後から現れて宙を滑空しながらドロップキックを入れてきた。振り返ったオーブは回避できずにそれを受け止める。

 

「オオオオオ―――――ッ!」

 

 そのまま身体にひねりをつけて回転し、ハイパーゼットンを遠くまで投げ飛ばそうとするも、ハイパーゼットンは投げられた瞬間にテレポートし、地上に着地した状態で出現した。

 

『「向こうも速いっ!」』

『「負けてらんないわね! 真、もっともっと行くわよ!」』

『「オッケー!」』

 

 オーブはハイパーゼットンへ頭部からふた振りの光刃、オーブスラッガーショットを放った。だがこれもテレポートでかわされ、ハイパーゼットンはオーブの背後を取ると同時に火球を繰り出してくる。

 

「ウワアァァッ!」

 

 流石に吹っ飛ばされるオーブ。しかし転がりながらすぐに起き上がり、オーブスラッガーショットをトサカに収めた。

 

「プロデューサーさーん! 真っ! 伊織ー! ファイトー!」

 

 オーブの奮闘を、声を張って応援する春香の元に、この事態を聞きつけた律子、亜美、真美が駆けつけてきた。

 

「おーい、はるるーん!」

「わぁっ! 兄ちゃんがまた新しい姿になってるよ! 衣装たくさんあるね!」

「アイドルのプロデューサーらしいわね!」

 

 冗談交じりに律子たちが撮影を開始する一方で、テレポートを繰り返すハイパーゼットンの行方を探っていたオーブが宙の一点を見上げ、光に包まれて消える。――いや、消えたかのようなスピードで移動しているのだ。

 そしてオーブとハイパーゼットンは空中で衝突し合いながら落下してきた。――そこは春香たちのちょうど真上だ!

 

「きゃああああっ!?」

「うわー! すっごい大迫力!」

「なんて言ってる場合じゃないわよ! 潰されるぅぅぅぅっ!!」

 

 戦いながら降ってくるオーブとハイパーゼットンを見上げ、律子たちは恐怖に駆られて思わずうずくまった。しかし両者は完全に着地する寸前に再度高速移動し律子たちの頭上から離れた。

 

「ほっ……」

「もー! 気をつけてよー!」

 

 改めて着地したオーブとハイパーゼットン。ハイパーゼットンは胸の前に火球を作り出していく。

 

「ゼットォーン……」

 

 対するオーブはスラッガーショットを自らの前で激しく回転させ、飛んできた火球をその回転により防いだ。

 

『オーブスラッガーランス!』

 

 それだけに留まらない。スラッガーショットの作る渦の中心に腕を突っ込むと、その中からさすまた状の槍を握り締めて引っ張り出す!

 これはジャックのウルトラブレスレットとゼロのゼロスラッガーの二つの力が合わさることで誕生するハリケーンスラッシュ専用武器、オーブスラッガーランスだ!

 

『「うわぁ! カッコいい!」』

『「小道具まで専用でついてくるなんて、贅沢な衣装ね!」』

 

 オーブスラッガーランスに感激する真と伊織。

 

「ピポポポポポポポポポ……!」

 

 ハイパーゼットンはエネルギーをチャージして、火球を連続して発射してくる。

 

『行くぞ真、伊織! オーブスラッガーランスの力を見せてやるぞ!』

『「はい!」』

『「任せて!」』

 

 オーブは怒濤の攻撃にもひるまず、スラッガーランスの柄に備わっているレバーを一回引き、スイッチを叩く。レバーが引かれるとランスの穂のつけ根にある球体が回転してエネルギーが集中していく。

 

「「『オーブランサーシュート!!!」」』

 

 突き出したランスからすさまじい勢いの光線が発射された! 光線はハイパーゼットンの火球を相殺し、巻き起こす旋風で路上の自動車も吹き飛ばす。

 それでもハイパーゼットンは火球の発射を止めないが、そこでオーブはスラッガーランスのレバーを今度は二回引いた。

 

「「『ビッグバンスラスト!!!」」』

 

 前に飛び出しながらの刺突が火球を貫き、ハイパーゼットン自体にも槍が突き刺さった! 穂のスラッガーから流し込まれる力を焼きつける。

 

「ピポポ……ポポ……」

『次で決めるぞッ!』

『「「はいっ!!」」』

 

 そしてオーブはとどめに、レバーを三回引いてスイッチを叩いた!

 

「「『トライデントスラッシュ!!!」」』

 

 オーブスラッガーランスによる乱撃がハイパーゼットンに叩き込まれ、黒い肉体を細切れにしていく!

 さしものハイパーゼットンデスサイスもこれには耐えられず、膨大な爆炎を発して消滅した。ハイパーゼットンが消え去ると、ランスもまたスラッガーショットに戻ってオーブの頭頂部に収まる。

 

「シュワッ!」

 

 大空へ向かって飛び去っていくオーブ。その後に、通報を受けた渋川が現場付近に到着した。

 

「本部本部! こちら渋川! 765プロ……あッ、いや、市民の情報によると、怪獣の他にも、宇宙人がいるらしく!」

 

 春香たちの元には、オーブから戻った真と伊織が帰ってきた。

 

「まこちん! いおりん! お帰りー!」

「大活躍だったねー! ばっちり見てたよー!」

 

 亜美に称賛されると、二人は得意げに微笑んだ。

 

「いやぁ、それほどでもないよぉ」

「ふふん、この伊織ちゃんいてこその大勝利よ」

 

 真と伊織は一瞬互いを横目でにらみ合ったが、すぐに口元を緩めた。

 

「伊織、ナイスファイトだったよ」

「真こそ、お見事だったわ」

 

 そして二人はコツン、と手と手の甲をぶつけ合った。

 和やかな空気が流れるが、真たちに春香がこう問いかける。

 

「それで、プロデューサーさんは?」

「あれ? そういえばいない……」

 

 六人はキョロキョロと辺りを見回すが、ガイの姿がどこにも見えなかった。

 

 

 

「はぁッ!」

 

 当のガイは彼女たちから離れた場所で、マドックと激しい格闘戦を繰り広げている最中であった。

 

「ふッ! はッ! ほぁッ!」

『うぐッ!』

 

 肉弾戦ではガイが優勢であった。マドックの打撃を防ぎ、反撃で徐々に追いつめていく。

 そして隙を見て大きく背負い投げを決めるが、マドックは側の建物の屋上に着地。ガイはその数メートルはある高さをひとっ跳びしてマドックを追いかけて、格闘戦を続行した。

 

『ぐぅッ……!』

 

 ガイの拳が数発顔面に入り、マドックがよろめいたところで、渾身の後ろ回し蹴りが炸裂! 吹っ飛んだマドックは屋上から地面に落とされた。

 

『ぐあぁぁッ!』

 

 それを追って地面に飛び降りたガイに、マドックは光線銃を出して引き金を引く!

 

『食らえッ!』

 

 しかしガイが光弾の射線上に右手を差し出す。その手中のウルトラマンのカードが、光弾を反射してマドックに送り返した。

 

『ぐああぁぁ――――ッ!』

 

 己の光弾をまともに食らって倒れるマドック。これが致命傷となり、マドックはもう立ち上がることが出来なくなった。

 ガイは無力化したマドックの側まで近寄ると、しゃがんで問いかける。

 

「ハイパーゼットンを育てて、何するつもりだった?」

 

 マドックはもがき苦しみながらも答えた。

 

『お前を倒せば……俺の名が上がる……!』

「俺を倒すためだけに……?」

『そのために、お前が最も苦手とするだろうゼットンをわざわざ連れてきて育てていた……。だが何故だ……! どうして勝つことが出来た……。ゼットンが恐ろしくなかったのか……!?』

 

 理解できないとばかりに問い返すマドックに、ガイはきっぱりと告げた。

 

「ウチには、将来への不安で色々と弱気になってる奴がいるんでな。あいつらのために、プロデュースしてる俺が怖気づく姿なんか見せられるかよ」

 

 ガイが立ち上がった時に、春香たちが彼を発見して駆けつけてくる。

 

「あっ、いた! プロデューサーさーん!」

「さっきの宇宙人もいるわ!」

 

 亜美と真美はマドックの姿を視認して驚きを見せる。

 

「うあうあー! 宇宙人だぁーっ! 姿が亜美たちと全然違う!」

「すごーい! ホントにそーいう宇宙人いるんだ!」

「気をつけて! あの宇宙人は悪い奴なんだ!」

 

 不用意に近づこうとする亜美真美を真が押しとどめた。律子はマドックに問う。

 

「あなたは侵略目的の宇宙人!?」

『ふふふふッ……!』

 

 すると何故か、マドックは哄笑を発した。

 

『お前たちはまだ、この腐りかけた星に侵略する価値があると思っているのか? 笑わせるぜッ……!』

「えっ……!?」

 

 マドックの言動に、アイドルたちは一瞬言葉を失った。

 

『俺以外の奴らも、いつか……この星の外へ逃げ出すだろう……』

 

 その言葉を最期に、マドックの頭頂部の突起から白い液体が噴出され、同時に全身がドロドロに溶けて消えていった。跡には白い泡だけが人型の形で残った。

 亜美と真美はマドックの今際の言葉に絶句している。

 

「腐りかけって……」

「どーいうこと……? 地球はダメな星になってるってこと……?」

「そんなのただの負け惜しみよ! 往生際が悪いわね!」

 

 伊織は憤慨して断ずるが、律子はそう捉えなかった。

 

「そうかしら……。今の地球は環境問題や、社会問題が山積みだわ。もしかしたら、地球は私たち人間が思ってるほどいい星じゃないのかも……」

 

 マドックの言葉に影響されて、暗い雰囲気に包まれるアイドルたち。しかしそれを打ち払うように、ガイが皆に語った。

 

「いいや、星も生きてる。生きてるものは腐ったりなんかしないぜ」

「プロデューサーさん……?」

「星を良くするのも悪くするのも、その星の生きてる人間の手によるもの。未来ってのはどんな時も、今を生きる人間が作っていくもんだ。これまでの経験から、俺はそう確信してる」

 

 ガイの言葉に励まされて、アイドルたちは少し表情に明るさを取り戻した。

 

「……そうですね! うじうじしててもしょうがないです! 地球の未来を守るのにも、トップアイドルになるのにも、行動しないことには始まりませんよね!」

「春香の言う通り! みんな、気分を切り換えてこれからもがんばりましょう! トップアイドルになれることを信じて!」

「おぉー!」

「次こそはオーディション合格してやるわよ!」

 

 元気を回復させてから、事務所に帰っていこうとする一行。そこに渋川が走り寄ってきた。

 

「おい! おい! 宇宙人はどこだ! 宇宙人はどこだ!?」

「後ろだよ、渋川のおっちゃん!」

 

 すかさず亜美がからかう。

 

「後ろ!? いない! 誰もいやしねぇ! 誰もいやしねぇよオイ!」

 

 思わず噴き出したガイたちは、和気藹々としながら立ち去っていく。

 

「おいみんな、どこ行くんだ!? あれ? この泡は何だ?」

 

 まるで事態を呑み込めていない渋川を尻目に、春香はふとガイに質問をした。

 

「ところでプロデューサーさん……一つ、聞きたいことがあるんですけど」

「何だ?」

「宇宙人は……あの怪獣が、プロデューサーさんのトラウマだなんてこと言ってましたが、それは本当のことなんですか?」

 

 ガイの表情が一瞬、ピクリと固まった。

 

「……いや、何か勘違いしてたんだろ。別に何もないぜ」

「そうでしたか……?」

 

 春香は少々腑に落ちない様子であったが、それ以上突っ込んだことは聞かなかった。

 

 

 

 後日の765プロ事務所で、春香たちが着替えた真の姿をまじまじと見つめて感嘆の息を漏らしていた。

 

「おおー……!」

「すごいなー、普段の真のイメージからガラリと変わったぞ!」

「そ、そうかな……?」

 

 響にため息を吐かれて、真は恥ずかしそうにはにかんだ。

 今の彼女は、純白のワンピースと麦わら帽子を身に纏っており、いつものボーイッシュな雰囲気とは打って変わって非常に清楚な印象を放っている。

 この服装をコーディネートしたのは伊織だ。

 

「にひひっ、どうかしら? なかなかのものでしょ」

「すっごいねいおりーん! まこちんが大変身しちゃったよ!」

「今なら誰にも男に間違われたりはしないわね。真にこんな格好も似合うなんて、私にも見抜けなかったわ」

 

 真美と律子が伊織の手腕をべた褒めした。

 

「いつも思ってたのよ、真は着飾り過ぎだってね。素材の良さを最も引き出すには、衣装は主張し過ぎないようにすること。お洒落の基本よ」

「ボクがこんなにも女の子らしくなるなんて……。ありがとう伊織!」

 

 姿見で己の状態を確認した真が伊織に礼を告げた。

 

「これくらい朝ご飯前だわ。ふふっ」

「いいわぁ~真ちゃん! とっても素敵よっ! ここ最近で一番グッと来たわ!」

 

 得意がる伊織の一方で、小鳥がテンションを上げて真をパシャパシャ写真に撮っていた。そんなことをしていると、ガイが事務所に帰ってきて一番に報告した。

 

「喜べお前たち! 全員でのライブの仕事が決まったぞ!」

「ええ!? ホントですか!?」

 

 バッと振り返る春香たち。アイドル総出でステージに上がる経験は初めてのことなのだ。

 

「もちろんだ。降郷村ってとこの夏祭りのステージに、お前たちを出してもらえることになってな。小さな田舎の村だが、なかなか雰囲気の良さそうなところだぞ」

「なーんだ、ちっちゃい村のお祭りの舞台か~」

「でも一歩進展には違いないよ! この調子でどんどん有名になっていこう!」

 

 響はやや肩透かしを受けたが、春香は全員参加のステージという部分に興奮を覚えていた。

 アイドル各人が大なり小なり期待を寄せていると、ガイが真の服装に気がついた。

 

「おッ、真、今日は随分とおめかししてるじゃないか。いい感じだな」

「プロデューサーもそう思いますか? その……ボクがかわいいと……」

 

 真がおずおずと尋ねると、ガイはフッと笑ってうなずいた。

 

「もちろんだ。俺はいつだって思ってるぞ、変に肩肘張らなくたって、お前はかわいい女の子だってな」

 

 と言われて、真は一瞬呆気にとられた後、ボッと赤くなった。

 

「そ、そんな! 見え透いたお世辞なんか言わなくていいですよぉ!」

「お世辞なんかじゃないさ、心外だな。思ったことをそのまま言っただけさ」

「またそんな調子のいいこと言っちゃって……。えへへ……」

 

 今一つ素直にガイの言葉を受け止められない真だったが、それでも機嫌を良くして笑みをこぼす。

 

「でも、ボクももう腐ったりしません。どんな辛いことが待ち受けてたとしても、前を見て自分の夢に向けて進んでいきます!」

「よしッ、その調子だぞ。やっぱりお前には、そういう明るくて元気な顔が一番似合うぜ」

 

 ガイに約束した真は、最後に彼と笑顔で見つめ合ったのだった。

 

 

 

『765プロのウルトラヒーロー大研究!』

 

真「菊地真です! 今回紹介するのは、帰ってきたウルトラマンことウルトラマンジャックさんです!」

真「ジャックさんは1971年放送の『帰ってきたウルトラマン』の主人公です! こんなタイトルだけど、ジャックさんが地球を訪れたのは初めてだったんですよ。これは企画初期の、初代ウルトラマンさんその人が再び主役になる設定の名残なんです」

真「『帰マン』は前二作との違いとして、初期はレギュラーキャラによる人間ドラマの比重が強めでした。当時の流行りも取り入れて、ジャックさんこと郷秀樹さんの特訓というスポ魂要素も描かれました。ボクもそういう努力する人は大好きですよ!」

真「中盤からはシリーズ初のウルトラ戦士の追加武装、ウルトラブレスレットの登場を皮切りに、バリエーションに富んだ怪獣やドラマが描かれて、シリーズを一層彩りました!」

ガイ「そして今回のアイマス曲は『迷走Mind』だ!」

ガイ「CD『MASTER ARTIST 04』初出の真のソロ曲で、クールなイメージに溢れた如何にも格好いい歌だ。真の男性的な要素をフィーチャーしてると言ってもいいかもな」

ガイ「真はどっちかと言うと、クールなイメージの曲を担当する割合が多いよな。やっぱりそういうキャラで見られてるってことなんだろう」

真「うぅ、ボクはかわいくなりたいんだけどな……」

真「次回もよろしくお願いしますっ!」

 




 四条貴音です。夏祭り出演の直前、765プロは入らずの森の調査を行うこととなりました。しかしその森には面妖な気配が……! 悪しき影がわたくしの仲間たちに忍び寄ります! 雪歩、今こそあなたが勇気を出す時です!
 次回、ふぁあすとふぁいと……もとい『First Fight!!』。どうぞよしなに。

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