カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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ロマンに慈悲はない

隊員達が何かをしているのに気付がついていないロマンは、お手をさせる為にフォウに手を差し出していた。

 

「…………フウ。」

「あ、あれ。いま、すごく哀れなものを見るような目で無視されたような……。と、とにかく話は見えてきたよ。君は今日来たばかりの新人で、所長のカミナリを受けたってところだろ?ならボクと同類だ。

何を隠そう、ボクも所長に叱られて待機中だったんだ。もうすぐレイシフト実験が始まるのは知ってるね?スタッフは総出で現場にかり出されている。」

「あぁ...知ってるよドクター。察しのいい君なら、この後の話の展開も読めるよな...」

 

いつの間にか隊員達は皆、片手にテーザーガンを持っていた。

 

「ぼ...ボクそれ知ってるよ。痺れるやつでしょ...人に向けたら危ないのは医者である僕が保証するから。ちょっと考え直さない。ほら!ボクはみんなの健康管理が仕事だから!正直、やるコトがなかっけど!重要な仕事があるんだ!痺れたら困るよ!」

 

ロマンは命乞いを始めるが隊員達はテーザーガンのセーフティを外し始めた。

 

「あぁ...知ってるよドクター。霊子筐体に入った魔術師たちのバイタルチェックは機械の方が確実だという事も...」

 

遠征隊の隊員達はロマンのせいで危ない特異点に行く事になったのを知っているので、ロマンに対して容赦というものを持っていないのだ。

 

「所長に“ロマニが現場にいると空気が緩むのよ!”って追い出されて、仕方なくここで拗ねていたんだ。でも、そんな時にキミが来てくれた。地獄に仏、ぼっちにメル友とはこのコトさ。所在ない同士、ここでのんびり世間話でもして交友を深めようじゃあないか!だから!立香ちゃん助けて!」

 

ロマンはこの場にいるメンバーの中で唯一仲間になってくれる可能性がある立香にすがりついた。

 

「そうですね。でも、そもそもここわたしの部屋だったんですよね。」

 

立香としては乙女の部屋に勝手に侵入していたロマンは有罪なのだ。立香は最後の優しやとして、ロマンの指を優しく解いた。ロマンの顔は絶望に染まった。

 

『あと少しでレイシフト開始だ。万が一に備えて警備担当の部隊は、本館と基地のコフィン防衛の為に集合せよ。あと、医務室にて待機中のロマンに伝達する。Aチームの状態は万全だが、Bチーム以下、慣れていない者に若干の変調が見られる。マスター達の様子を見てやってくれ。』

 

ロマンにいよいよテーザーガンが撃ち込まれようとした時、廊下にあるスピーカーからマックスの声が聞こえた。

 

「それは気の毒だ。ちょっと麻酔をかけに行こうか。」

 

ロマンはこの場から逃れる為にすまし顔で、いそいそと逃げ出していった。隊員達は溜息を吐きながら、テーザーガンをしまった。

 

『急いでよ。いま医務室にいるんでしょう?そこからなら二分で到着できる筈でしょ?』

 

今度はオルガマリーの声が聞こえてきた。

 

「ここ、医務室じゃないですよね?……隠れてさぼってるから……」

「……あわわ……それは言わないでほしい……ここからじゃどうあっても五分はかかるぞ……」

「はははは!ロマンの性格をよくわかってるよ!所長殿は!」

 

オルガマリーはロマンの事だからは医務室にいないだろうと思いながら放送したのだ。隊員達はオルガマリーがロマンにお灸をすえる為にわざと言っていると察して、笑い出した。

 

「ま、少しぐらいの遅刻は許されるよね。Aチームは問題ないようだしね。そういえば、レフ教授には会ったかい?彼の疑似天体を観るための望遠鏡―――近未来観測レンズ・シバを作った魔術師だ。シバはカルデアスの観測だけじゃなく、この本館のほぼ全域を監視し、写し出すモニターでもある。基地の方は遠征隊が結界を張って、見えないようにしたらしいいけど。マスターのプライバシーを守る為に自室の中は見えないようになっているから安心して。」

 

このカルデアにいる職員は女性への配慮が全くないと思っていた立香は、最低でも1人はちゃんと配慮してくる人がいる事に安心した。

 

「ちなみにレイシフトの中枢を担う召喚・喚起システムを構築したのは前所長。その理論を実現させるための疑似霊子演算器……ようはスパコンだね、これを提供してくれたのがアトラス院。」

 

そう言うとロマンは周りを見渡し、両手を広げながら、

 

「そして、人理を守る最後の砦であるカルデアを守る兵士に志願してくれた。時計塔の守護者だったカルデア特異点遠征隊。」

 

笑っていた隊員達は笑うのをやめ、直立姿勢になり、兵士である事を誇るように胸を張って立っていた。

 

「このように実に多くの才能が集結して、このミッションは行われる。ボクみたいな平凡な医者が立ち会ってもしょうがないけど、お呼びとあらば行かないとね。お喋りに付き合ってくれてありがとう、 立香さん。落ち着いたら医務室を訪ねに来てくれ。今度は美味しいケーキぐらいはご馳走するよ。」

 

隊員達も装備を担ぎ、先ほど放送があったようにコフィンの防衛の為にロマンのあとを追い、歩き出した。

 

「なんだ? 明かりが消えるなんて、何か―――」

 

ロマンは天井を見上げ、隊員達は肩にかけていたMP7を素早く構えた。




数日かかると言いましたが、すぐに投稿できちゃいました。なんでかって?ヒントは今日がクリスマスって事かな。

遠征隊が使う装備は決まったんですが、遠征隊が使う乗り物が決まらないんですよ。ヘリなんて使ったらワイバーンの餌になるだけですからね。現代兵器って言った手前、架空の機体は出せないし、やっぱり小説を書くのって大変ですね。
改めて小説家はすごいんだなと実感しました。

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