許してください‼︎
スランプに陥っていました。FGO主人公が一般人から逸般人になる過程を書きたかったのですが上手くいかず、旧設定の遠征隊が混ざるし、2週間苦しんでました。
あと、FGO第1章をようやくクリアしました。
side 立香
帰還から数時間後、立香は意識を取り戻した。目覚めたばかりで思考が纏まらず、ぼんやりとしていると声が聞こえてきた。
「よーし、キミはずいぶん良い子でちゅねー。何か食べる? 木の実? それとも魚?」
立香は声を聞いて、ただの美しいと感じた。立香がカルデアに来る前はよくテレビでアイドルなどを見ていたが、声にこれ程の"美"を感じたのは初めてだった。声の主が知りたくて、顔を横に向けると"美"がいた。
「んー、ネコなのかリスなのかイマイチ不明だね。でも、いっか可愛いから!」
「フォーウ...ンキュ、フォウぅ...」
立香が女性をぼんやりと見ていると、見た女性は美しさは"計算しつくされた美しさ"であると感じた。理由は分からなかったがただそう感じた。
「ん? おっと、本命の目が覚めたね。よしよし、それでこそ主人公というヤツだ。おはよう、こんにちは、藤丸立香。意識はしっかりしているかい?」
立香は女性に手伝って貰いながら、ベットに座った。まだ少しボヤけた意識で周りを見渡したが、最後の洞窟での記憶と差があり過ぎて、混乱した。
「ここは...」
「んー、まだ思考能力は戻っていないのか。こうして直接話すのは初めてだね。」
「もしかして、天国...あなたは女神様?...帰れなかったの?」
「確かに女神と言われることもけどね。分かるよ、目が覚めたら絶世の美女がいて驚いてしまうのは。でも慣れて。私はダ・ヴィンチちゃん。カルデアの協力者だ。というか、召喚英霊第3号、みたいな?」
立香はまだ理解できずポカンとする。ダ・ヴィンチは混乱する立香を立たせ、ドアまで導いた。
「とにかく話は後。キミを待っている人は大勢いるんだから、まずは外に出よう。」
「待っている人...ロマンですか?」
「あんなのはどうでもいいでしょ。キミを助け、助けられた人はキミを心配し続けているから早く行きなさい。」
立香は首を傾げながら部屋を出て行った。
side ダ・ヴィンチ
ダ・ヴィンチは立香の背中を見ながら呟く。
「ここからはキミが中心の物語だ。キミの判断が我々を救うだろう。人類を救いながら歴史に残らなかった。数多無数の勇者達と同じように。英雄ではなくただの人として星の行く末を定める。戦いが、キミに与えられた役割だ。」
ダ・ヴィンチは振り向き、カルデアの紋章の横に描かれている遠征隊の紋章を苦々しい表情で見た。
「ただ忘れるなかれ、彼らは己の目的の為だけに来た不死者の軍団。彼らを心ある人と思うと、キミはいつか絶望することになるよ。生前の私は彼らを信用しすぎたよ。」
side 立香
立香が部屋から出ると、扉の両脇に立ち警備していた遠征隊隊員が捧げ銃の敬礼する。遠征隊は仲間を助けてくれた立香に対して、最大限の敬意を表していた。
立香はどこに行こうか迷っていると
「マスター、管制室で皆様がお待ちです。」
と警備が教えてくれた。立香は隊員の言う通り、管制室に向かう。途中すれ違う遠征隊隊員は皆、作業を中断し立香が通り過ぎるまで捧げ銃、又は45度の敬礼をする。
遠征隊の敬礼。立香は敬礼をする隊員を見るたびに苦しくなった。自分の不甲斐なさが、彼らの仲間を殺したのだ。特異点で見た隊員の悲惨な死に様を思い出してしまう。まだ若く、死を直視した事のない立香には、彼らの死は重すぎた。
「......」
立香は耳の奥に響く遠征隊の悲鳴を唇を噛んで耐えるが、涙が溢れ出てくる。ついには蹲ってしまい、膝を抱えて泣き出す。
「...ごめん...なさい......私が、あの時...」
「何、泣いてるの?」
立香が顔を上げるとオルガマリーが立っていた。オルガマリーの斜め右後ろにいたマックスは、ハンカチをオルガマリーに差し出す。オルガマリーは立香の涙を拭うと、立ち上がらせた。
立香は嗚咽を交えながら、マックスに謝る始めた。
「私が、指揮するって、言ったのに。何も、出来な、かった。皆、死んじゃった。」
オルガマリーは立香が、
「あなたが背負う必要はありません。彼らは予約通り私が背負います。今回の特異点で、11人の隊員が死にました。全て私の責任です。」
「そん、なに、いっぱい...」
立香は11人という現実的な数字を聞き、また涙が出てくる。オルガマリーは立香の肩をさすりながら言い聞かせる。
「予想では、今回の特異点で遠征隊は30人死ぬと出ていました。」
「えっ...」
「私は彼らが死ぬと知っていながら、特異点に送ったのです。しかし、実際は11人。あなたのおかげで19人も生き残った。」
オルガマリーの言葉を聞いていると立香は少し気分が軽くなっていった。救った人もいる、免罪符とも言える言葉は立香の心を罪から遠ざける。
「遠征隊を見たでしょう。彼らは感謝しているのです。自分の命を危機に晒しながらも、19人も仲間を救ったあなたを。」
「...でも。」
「あなたは前だけ見て進みなさい。あなたの築く骸は私が全て背負います。」
「...分かりました。」
「それでいいわ。さあ、早く管制室に行きなさい。皆、あなたを待っているわ。」
「...はい。行ってきます!」
立香は涙を拭い、オルガマリー目を見つめた後、元気よく返事し、廊下を走って行った。立香の背中を憂いを帯びた目で眺めるオルガマリーに、今まで静かに見守っていたマックスが話しかける。
「いいのですか。」
「なにが?」
「あれでは罪から目を背けさせただけです。マスター殿は、いつかは直視することになるでしょう。」
「...いいのよ。罪を感じない人形は、あなた達だけで十分。罪を感じ、反省し、改善しようとする人間が、このオーダーには必要なのよ。」
「...確かに、人間であり続ける事が出来なかった本官には、人間を想い、人間を探し、人間を救けることなど不可能でしょう。」
「私たちも行くわよ。指示がなくて、ロマンが困っていると思うわ。」
「了解しました。」
立香が管制室に着くと、管制室には説明会と同じ様に254人の隊員が並んでいて、立香を敬礼で出迎えた。隊員の間を立香が進んでいくとカルデアスの下にマシュとロマンがいた。
「おはようございます先輩。無事で何よりです。」
立香は元気そうなマシュを見て、さっきまで憂鬱な気分は吹き飛んで、足取りが軽くなった。
「おはよう、マシュ! 助かったんだね!」
「はい。先輩が手を握ってくれたおかげです。二度ある事は三度あるという格言を信じたい気持ちです。」
立香はマシュの手を取り飛び跳ねて喜び、マシュも戸惑いながらも喜んでいる様だった。二人が喜んでいると、管制室にオルガマリーとマックスが入ってきた。隊員達が敬礼したままだったので、マックスが右手を軽く上げ、休めの指示を出す。
「よし、揃ったね。コホン。再会を喜ぶのは結構だけど、今はこっちに注目してくれないかな。」
立香達はロマンの方を向く。遠征隊も一糸乱れぬ動作で、回れ右をしてロマンに方を向く。
「では、オルガマリー所長。」
「ご苦労。」
オルガマリーはカルデアスの下に立ち、見渡す。
「まずは、生還を祝うわ藤丸立香。そして、ミッション達成、お疲れ様。」
オルガマリーの言葉に立香はようやく、肩の荷が下りた気がした。
「なし崩し的に全てを押し付けてしまったけど、あなたは勇敢にも事態に挑み、乗り越えてくれた。その事に心からの尊敬と感謝を送るわ。あなたのおかげで、私とマシュ、遠征隊、カルデアは救われたわ。」
立香はオルガマリーに褒められて、くすぐったくなったが、素直に嬉しいと感じた。オルガマリーはロマンにマイクを渡し
「ロマン、特異点の報告を。」
ロマンはマイクを受け取り、紙をめくりながら説明を始める。
「特異点の事はマシュとアワン副隊長から報告を受けたよ。聖杯と呼ばれた水晶体とレフの言動。カルデアスの状況から見るに、レフの話は真実だ。外部との連絡も取れない。カルデアから外に出たスタッフも戻ってこない。」
「遠征隊から補足。基地防衛用対空装備のVLS SM-6ミサイルを24本発射したところ、7秒後に反応が消滅しました。カルデアから一定の距離を超えると消失する様です。基地の外にあった集積所まで、届いていないので集積所は消失したと思われます。よって、遠征隊は武装の50%を損失しました。」
オルガマリーは苦い顔になった。遠征隊が武装の大半を失ったことは、特異点に立香が置いて十分な支援攻撃を受けれなくなったことを指す。
ロマンはミサイルのデータを受け取ると顔を歪め、しばらく考えていた。そして、歪めていた口を開く。
「...おそらく、既に人類は滅びている。このカルデアだけが通常の時間軸に無い状態だ。崩壊直前の歴史に踏みとどまっている...というのかな。宇宙空間に浮かんだコロニーと思えばいい。外の世界は死の世界だ。この状況を打破するまではね。」
「...打破できるんですか?」
今まで以上に壮大になってきた作戦に、立香は不安になってきた。冬木の特異点ですら遠征隊がいとも容易く殺されていったのだ。冬木以上よりも深刻とあれば、立香にはどれほど犠牲者が出るのか想像もできなかった
「もちろん。まずはこれを見て欲しい。復興させたシバで地球の状態をスキャンしてみた。未来じゃなくて過去の地球のね。冬木の特異点はキミ達のおかげで消滅した。なのに未来が変わらないということは、他にも原因があるとボクらは仮定したんだ。その結果が...」
カルデアスはオーロラのような物に包まれていて、青く輝いていた。立香はカルデアスを見て、"熱い"と感じた。
「この狂った世界地図。新たに発見された、冬木と比べものにならない時空の乱れだ。よく過去を変えれば未来が変わるというけど、ちょっとやそっとの改変では無理だ。歴史の修復力によって、決定的な結果は変わらない様になっている。でも、これらの特異点は違う。」
ロマンはスクリーンに様々な写真を映し出した。遺跡、戦争、航海、開発、条約、事件、災害など、立香が教科書でも見たことあるような歴史的な出来事の映像だった。
「人類のターニングポイント。
"この戦争が終わらなかったら"
"この航海が成功しなかったら"
"この開発が間違っていたら"
"この国が独立できなかったら"
そういった、現在の人類を決定づけた究極の選択点だ。それが崩されることは、人類史の土台が崩される事に等しい。この七つの特異点がまさにそれだ。この特異点ができた時点で人類の未来は決定してしまった。レフの言う通り、人類に2017年はやってこない。」
ロマンは真っ直ぐに立香の目を見て、言い聞かせるように言う。
「...けど、ボクらだけは違う。カルデアはまだその未来に到達していないからね。分かるかい? ボクらだけがこの間違いを修復できる。今こうして崩れかけている特異点を元に戻す
ロマンを押し退け、立香の目の前にオルガマリーが立つ。
「結論を言うわ。この七つの特異点にレイシフトし、歴史を正しいカタチに戻す。それが人類を救う唯一の手段よ。けれど、私達にはあまり力が無い。」
理解しているからこその苦しみ。オルガマリーはカルデアの限界を理解していた。だから、カルデアの唯一の希望の立香に決意を求める。
「マスター適性者はあなたを除いて凍結。遠征隊は集積所に置いてあった装備を全てを喪失。サーヴァントはマシュだけ、召喚しようにも保管していた聖晶石は盗まれていた。この状況でアナタに話すのは強制に近いと理解しているわ。それでも私は言う。マスター適性者48番、藤丸立香。人類を、2016年から先の未来を取り返すためには、あなたはサーヴァントと遠征隊を率いて、この七つの人類史と戦わなくてはならない。」
オルガマリーは立香に手を差し出し、立香の意志を聞く。
「その覚悟はありますか? あなたにカルデアの人類の未来を背負う力はありますか?」
管制室の全ての視線が立香に注がれる。期待、同情、憐憫、疑惑、比較、希望あらゆる感情が向けられる。立香は逃げ出したい自分、逃げ出せない現実に挟まれ俯いて黙ってしまう。立香はしばらく考え、決めた。オルガマリーの手を握る。
「...私に出来ることなら。」
「ありがとう。その言葉で私たちの運命は決定したわ。これより予定通り、人理継続の尊命を全うする。」
遠征隊は休めから気をつけの姿勢になり、新たな
「目的は人類史の保護、および奪還。捜索対象は各年代と、原因と思われる聖遺物・聖杯。」
「オーダーを承認。遠征隊は現時刻を持って、守護者任務を一時放棄、カルデア任務を最優先任務と指定。持てる限りの物資、人員、時間をかけて任務を遂行する。」
遠征隊は敬礼を持って、任務の承認をした。遠征隊の全てを消費する戦い。全滅することは既に覚悟済みなのだ。あとは、死んでこいと命じられるだった。
「我々が戦うべき相手は歴史そのもの。藤丸立香、あなたの前に立ちはだかるのは多くの英霊、伝説になる。それは挑戦であると同時に、過去に弓引く冒涜になるわ。けれど生き残るにはそれしか無いわ。未来を取り戻すにはこれしか無い...どんな結末になろうと止まることは許されない。」
オルガマリーは管制室を見渡し、一人一人の顔を見る。遠征隊隊員、カルデア職員、藤丸立香、人類史最後の人間たちは覚悟を決めていた。
「以上の決意を持って、作戦をファースト・オーダーから変更するわ。これはカルデア最後にして原始の使命、人理保護指定
「作戦をするにあたって、今後の予定を確認しましょう。ロマン。」
「はい。カルデアは機能の3割を取り戻しました。特異点の正確な観測が出来るようになったので、これから直ぐに取り掛かります。」
真っ赤だったカルデアの一部がグリーンに戻っていて、機能を取り返したことを示していた。しかし、まだまだ崩壊したところは多く、カルデアにはレフの爪痕が深く残っていた。
「遠征隊の助けがあるので、修復は2ヶ月程あれば終わるでしょう。しかし、特異点遠征があるので、実際の所は分かりません。サーヴァント召喚場の修復は終わっていますが、電力と聖晶石が足りないので行えません。」
「...そうですか。」
オルガマリーはどうにかして、サーヴァント召喚を行えないか考える。
「次は、遠征隊。」
「まずは、遠征隊から報告。遠征隊損害は隊員11人と装備。装備と隊員の損耗は予想を大きく下回る量で、これより遠征隊は今作戦を大成功とする。」
立香にはマックスの言葉が信じられなかった。"隊員の損耗"まるで隊員を損耗品のように扱う言葉。現代の平和な国で、人を人と見ることが当たり前の国で育った立香には理解できない言葉だった。
「特異点遠征は成功しましたが、カルデア防衛には失敗しております。カルデアの9割が火に包まれたので、機器の損傷が激しいです。しかし、遠征隊基地から電力を送れば、カルデアの修理を待たずにサーヴァントを召喚できるでしょう。」
オルガマリーの顔は一瞬明るくなったが、再び暗くなってマックスに質問する。
「聖晶石は一つもないわよ。」
「特異点で聖晶石を3つ、聖晶片が51個確保しました。」
マックスの指示で隊員が立香の前に、聖晶石と聖晶片が乗ったトレーを持ってくる。
「これが聖晶石と聖晶片です。」
立香は受け取った石を光にかざして見てみた。聖晶片を光にかざした時に文字が見えた。
「文字?...オルガマリー所長、何か文字が書いてあります。」
「そんな訳ないでしょう。ただの魔力の結晶よ。」
オルガマリーは立香から聖晶片を受け取り、同じように光にかざすと文字が見えた。
「R...O...W...L...A......ローランド? マックス、これって...」
「はい、戦死した隊員にドッグタグです。我々のドッグタグは聖晶石製です。戦死して壊れたドッグタグは聖晶片となるので、ある程度集めれば召喚に使えるでしょう。」
「聖晶片も成分は聖晶石と同じだから当然ね。」
「いいんですか? 確か、召喚に使ったらなくなちゃうんじゃ...」
立香は隊員の遺品のドッグタグを召喚に使っていいのか悩んだ。遺品を大切にしたいが、人理のためにはサーヴァントが必要とわかっているので、感情と理性に挟まれていた。
「前々から決めていたことですので気になさらずに。」
「そうなんですか...でも...」
立香は大丈夫と言われたが、遺品といこともあり、本当に使っていいのか迷う。マックスは大丈夫と言ったのに、立香が聖晶片を見て悩んだ表情をするので、少なくて困っているのではと勘違いした。
「少なかったでしょうか? 必要とあらば、遠征隊全員が自決しますが。」
「大丈夫です! これだけあれば、3人は召喚できます!」
マックスがドッグタグを差し出そうとするので、立香は押し返し聖晶石が入った袋を受け取る。
「では、今後の遠征隊の予定を、アワン副隊長。」
マックスに言われイザイラが説明を始める。
「電力系の修復が明日9:00に終わるので、それ以降はサーヴァントの召喚をカルデアで行えます。なので、明日4:00までに重火器をカルデアに運びます。運搬は後方部隊第二班が担当します。第一班は戦死により欠員が出ているので、人数調整終了までカルデアの修復にあたります。」
イザイラの言葉にロマンが手を挙げる。
「カルデアに武器を運ぶのはどうしてかい?」
「召喚事故に備えるためです。藤丸立香氏はカルデア唯一にマスターです。不慮の事故で失いたくありません。」
「その通りだね。でも、カルデア内で事故起こさないでよ。」
「当たり前のことです。」
その後も細々とした予定を連絡し、ひと段落ついた。
「質問がある者は挙手を.........挙手無し。それでは会議を終わる。」
隊員と職員は部屋から出て行く。オルガマリー、マックス、イザイラ、ダヴィンチ、ロマンは詳しい打ち合わせがあるらしく部屋中央のコンソールに集まっていた。
立香も出て行こうとしたが、手の中の砕けたドッグタグを見て、振り返りマックスに話しかける。
「隊長さん...亡くなった隊員の名前を教えて欲しいのですが...」
自分のために死んでいった隊員の名前を立香は心に刻み、忘れないためにマックスに尋ねた。
「名前ですか?...分かりました。後で、名簿を渡します。」
立香は名前にことを言った時に、マックスの目に怯えが混じる。しかし、マックスは直ぐに普段の固い表情に戻ったので、立香は勘違いかと考えた。
あまり、満足していないので、後ほど文章の表現が変わるかもしれません。
召喚するサーヴァントは三体でもう決めてあります。