カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

18 / 31
お久しぶりです、紅葉餅です。栃木県は自然が多くて良かったです。暇な時間を使って、散歩したのですが、都会の人混みで磨耗した心が癒されていく気がしました。

今回から戦闘に入ります。遠征隊がサーヴァントにやられていくので、死亡シーンなどが苦手な人は申し訳有りませんが別の小説をオススメします。


対サーヴァント戦

「どこまでいっても焼け野原...住人の痕跡もないし、いったい何があったのかしら...」

「高濃度の魔力が空中に飛散していますから、大規模な魔力爆弾ではないですか?」

 

オルガマリーの横で、機械を背負って数値を測定していた隊員が、オルガマリーの疑問に返答した。横にいた別の隊員が眉を顰めながら、返答した隊員を小突いた。

 

「街一つを火の海にするものあるわけ?守護者だったんだから何か知ってるでしょ。」

 

オルガマリーに質問に隊員は困り、マックスの方に顔を向けた。他の隊員達も苦い顔になり、マックスは硬い表情で頷き隊員に説明させた。

 

「一発あります。広範囲を崩壊させる魔力爆弾が。」

 

オルガマリーはやっぱりという顔になった。

 

「じゃあそれが原因かしら?」

「それはありません。初めに疑いましたが、魔力の質が異なります。」

 

オルガマリーはこの話になって、遠征隊の様子が変わったのが気になったが、守護者の秘密に関わることだと思い話を変えた。

 

「そう、じゃあ別のもの...そもそもカルデアスを灰色にする異変て何よ...」

「聖杯の残滓を加工して、爆弾にしたとかはどうでしょう。」

「そうね、一番近いかも。でも、残滓がこの規模の爆破に魔力を使ったら、今の空中にある魔力の濃さにはならないでしょう。」

「じゃあ、聖杯の破片ですかね。」

「そんなもの使ったら、特異点は冬木では収まらないわよ。」

 

マックスとオルガマリーは、己の知識を使い原因の予測を立てていた。

 

『おや、マックスと所長の魔術雑談が始まった。こうなるとしばらくは終わらないよ。』

 

立香は二人の会話に専門用語が飛び交うようになってから、思考が停止しずっと首をかしげていた。

 

『警戒は遠征隊に任せて少し、軽食をとったらどうだい。食事の途中で陣地に行ったんだから、今のうちに少し食べたらどうだい。』

「ドクターに賛成です。先輩、レーション食べますか?」

 

マシュは近くに居た隊員から受け取ったMREと書いてあるレーションを立香に差し出した。

 

「あの...これ...食べれます?」

 

立香はパッケージのMREという文字に恐怖した。巷でも有名なクソマズな戦闘糧食であったからだ。遠征隊の隊員は何となく立香の言いたいことを理解した。

 

「心配は要りません。ちゃんと味が改善されたものです。最近のMREは美味しいですよ。気になるんだったら、チョコレートだけでも構いません。」

 

立香は安心して噛り付いたが、口一杯位に広がる強烈な甘さにアメリカンを感じた。

 

(やっぱり、甘すぎて辛い。イギリスとアメリカの料理はどうしてこうなんだろう。)

 

立香は日本人の舌を破壊していく甘さに耐えながら、かじっていると

 

「周囲に動体反応!...タイプCの骸骨です。マスター達はそのまま休憩を。」

 

遠征隊は休憩中の立香達を邪魔しないために、数体出てきた骸骨をすぐさま蜂の巣にした。隊員達は骸骨の頭を踏み潰し、しっかりと確認した後、立香の方に振り向いた。

 

「敵掃討完了しました。進ガッ...」

 

立香の話に話しかけた隊員の顔に突然ナイフが生えた。ナイフから黒い靄が出ているのを見た遠征隊は、顔面にナイフの刺さった隊員を蹴り飛ばした後、立香の周りを囲んだ。ナイフの刺さった隊員は顔面から血を吹き出しながら倒れた。

 

「爆発はしないか...レーダー反応は⁉︎」

「今、やってます!...出ました!これは⁉︎...タイプA!サーヴァントです!」

 

遠征隊はレーダーの反応の方を向くと、ビルの上に黒い靄を纏ったサーヴァントがいた。

 

「サーヴァントだ!撤退しろ!」

「足止めを!」

 

マックス達はサーヴァントに乱射しながら、全速力で逃げ出した。数人の隊員は小型の対人地雷を箱から撒きながら逃げた。

 

「おい、ロマン!サーヴァントだ!聖杯か⁉︎」

『でも、サーヴァントが顕現するにはマスターが必要だ。反応はあったかい⁉︎』

「ない!とりあえず、直接サーヴァントの相手するしかない!一度引いて戦線を築く!」

 

銃弾を避けていたサーヴァントは大きく跳躍すると遠征隊の前に着地した。

 

「ニゲレルト、オモッタカ。」

「緊急防陣展開!」

 

遠征隊は盾を4枚ピッタリと横に並べ、更にその盾の上に同じように4枚並べた。8枚を壁のようにすると、盾に魔力を通した。すると盾に大きな魔法陣が浮かび上がった。

 

「「「「我らの主よ、我らはあなたを恐れる。我らを虐げる民の国をあなたが進まれる。あなたの道に初子は残らない。あなたの民は、子羊を屠り、その血を鴨居と柱に塗った。種無しパンと苦菜で腹は満たされている。さあ、最後の災いを退けよう。

 

Passover(過越)」」」」

 

詠唱の後、魔法陣に黄金の十字架が現れ、立香達を囲んだ。

 

「コザイクヲ、コンナモノ。」

 

サーヴァントは魔法陣にナイフを投げつけ始めた。サーヴァントの強烈な攻撃に早速、結界が軋み始めた。

 

「マスター殿もう戦うしかありません。覚悟を決めて下さい。」

 

遠征隊は結界の裏にM18クレイモアや爆薬を仕掛けることで、面による攻撃をしようとしていた。

 

『しかし、立香くん達にはサーヴァント戦はまだ早すぎる!』

「ロマン、逃げられないのだよ。車両がない今、逃げ切ることができない。いつかは追いつかれる。ならば、体力がある内に迎え撃った方が、勝率が上がる。」

『しかし...』

 

立香は結界の向こうに目を向け、ナイフを投げつけてきているサーヴァントを見つめた。初めて見るサーヴァントの姿に立香の足は震えた。

 

「先輩、私が何とかします。」

 

マシュは立香の前に立ち、盾を構えた。マックスは厳重にロックされていた箱から古い拳銃を取り出し構えた。

だんだん結界の軋む音が強くなっていき、端の方が綻んできた。

 

「崩壊まで、5秒!」

 

カウントダウンが始まり、立香の握る拳が汗ばみ、遠征隊も銃のグリップを持つ力も強くなっていった。

 

「崩壊!」

 

崩壊と同時に遠征隊はトラップを起爆した。何百もの金属片が周囲に飛び散り、土煙が舞った。

 

 

 

「何もない...?」

 

先ほどまでの絶え間なく飛んできたナイフが、飛んでこなくなり、周囲は隊員の荒い呼吸音と炎の音しかしなかった。しかし、遠征隊の一人が息を吐いた途端、土煙の上が歪んだ。

 

「上だ!」

 

叫んだ時にはすでに遅く、サーヴァントが盾を飛び越え、盾を構えていた隊員の首を蹴り飛ばした。隊員の首は弾け、後ろの隊員の盾を真っ赤に染めた。

 

「うおおおぉぉおぉお!」

 

陣形の中に一瞬の内に潜り込まれた遠征隊は、同士討ちも気にせずにサーヴァントに向けて乱射した。

 

「オソイゾ、ニンゲン。」

 

サーヴァントはムカデのように、遠征隊の足元を這い回り、銃弾を避けながら遠征隊の足を切り飛ばし始めた。

 

「なめるなぁ!」

 

胸を刺された隊員がサーヴァントを腕を掴み、そのまま胸につけていた手榴弾の栓を抜いた。サーヴァントは鼻で笑うと

 

「ヌルイ。」

 

と言いながら隊員を持ち上げ、投げ飛ばした。サーヴァントの腕力に隊員は腕は軽く振り払われ、隊員はサーヴァントを巻き込むことなく、瓦礫の中で自爆した。

 

「ムダナコトヲ。」

「いや、十分だ。」

 

隊員の手榴弾に意識が向いた隙を突いて、マックスはサーヴァントの背後に回り込んだ。マックスはサーヴァントに拳銃を打ち込んだが、マックスの銃弾は当たることなく、一発が腕に掠っただけだった。サーヴァントはマックスを蹴り飛ばすと、後ろに跳躍した。

 

「ムダダト、イッテイルダロ...ナニッ⁉︎」

 

サーヴァントが腕に違和感を感じ、見てみると掠ったところから、腕が急激に壊死し始めていた。サーヴァントは急いで腕を切り飛ばした。たかが人間に傷付けられたサーヴァントは、怒り狂いマックスに向かって殴りかかった。マックスは肋骨を粉砕されて血を吐いていたが、再び向かってくるサーヴァント照準を定める。

サーヴァントが照準から逃れるために横に飛んだ時、サーヴァントは殴り飛ばされた。

 

「これが、集団戦ですね!」

「合格です、マシュ殿。」

 

マックスはサーヴァントを挑発し、マシュの射程に誘導していた。腕を殺され怒り狂ったサーヴァントはマックスしか見ておらず、対サーヴァント戦が初めてのマシュでも強烈な一撃を叩き込めることができた。

 

「クソガァァァァ‼︎」

 

瓦礫の中から飛び出したサーヴァントは、マシュやマックスではなく、立香に狙いを定めた。

 

「先輩に手は出させません!」

 

マシュはサーヴァントのナイフを受け止めるとフラいているサーヴァントの腹に盾をネジ込んだ。サーヴァントは先ほどより吹き飛ばされ、道路を転がっていった。

 

「セイハイハ、ワガモノ...ジャマスルナ!」

 

サーヴァントは立ち上がるために地面に手をついたが、その手の横に小さな円盤が落ちていた

 

「ビンゴだ。」

 

隊員がその円盤を撃ち抜くと、周りにあった円盤がを巻き込み大爆発した。

 

「マシュ殿、お見事です。サーヴァントは地雷原のど真ん中でした。」

「皆さんが気を引いてくれたからです。」

 

マシュは先ほどより逃げる時に蒔いた地雷にサーヴァントを飛ばし、遠征隊に起爆させることでサーヴァントに大ダメージを与えることに成功した。

 

「まだ、レーダーに反応がある油断するな。」

 

土煙が止むと道路の真ん中に四肢がなくなり、傷だらけのサーヴァントが転がっていた。

 

「セイハイヲ、メノマエニシテ...」

 

傷だらけのサーヴァントは未だに怨嗟の声を発していた。その様子にマシュは引いてしまった。

 

「あの様な薄汚い連中には慣れています。我々がとどめを刺してきます。」

 

隊員はブロードソードを抜いたが、マシュに止められた。

 

「いつかは通る道です。私がやります。」

 

マシュがサーヴァントに近づこうとした時、槍がサーヴァントの体を貫いた。マシュは急いで離れ、槍の軌跡をたどり投げた相手を見た。

 

「そんな...もう一体。」

 

マシュの視線の先には槍を持った黒いサーヴァントが立っていた。

 

「未熟モノメ、油断スルカラダ。」

 

近づいてくるサーヴァントにマシュは、身構えた。後ろを振り返り援護を求めようとしたが、マシュの後ろには足や腕を失いながらもサーヴァントから立香達を守ろうと立ち上がろうとしている遠征隊がいた。

マシュは目をつむり、覚悟を決めてサーヴァントを睨みつけた。

 

「皆さんは休んでいてください。私が倒してきます。」

「マシュ殿、ダメです。遠征隊が代わりに死にますので、マシュ殿はマスター殿と所長を連れて逃げてください。」

 

マシュは笑顔で振り返り

 

「私も遠征隊の仲間です。仲間は見捨てません!」

 

マシュがサーヴァントに突撃しようとした時、後ろから初めて聞く声がした。

 

「小娘かと思えばそれなりの兵じゃねえか。なら放って置けねえな。」

 

 




遠征隊の詠唱は、聖書に出エジプト記の過越祭をイメージしました。神自身による命の刈り取りをやり過ごす儀式を簡略化し、サーヴァントによる攻撃も少しはやり過ごす力を持つという設定です。

マックスの拳銃や遠征隊が言いたくない魔力爆弾の設定はちゃんと作ってあります。拳銃の方は次話で、爆弾の方はもう少し後で説明します。

誤字脱字、矛盾の指摘などありましたらお教えください。また、感想は全て返す予定なので、なのにかありましたらお気軽に感想に書いてください。これからも、紅葉餅をよろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。