カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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あけましておめでとうございます。今年も紅葉餅をお願いします。

やっとここまで来た。これから、ガンガン戦闘させられるので、ワクワクしてます。特異点Fでは、あまり隊員は死なない予定です。特異点に来てる隊員が少ないので、殺り過ぎると全滅してしまいますからね。


オルガマリー指揮官殿

遠征隊は次々と送られてくる金属コンテナを開け、その中にあった装備を体の各所に装着していった。コンテナの中には、8枚一組に纏められた盾やM1014、HK416といった現役の銃などが綺麗に収められていた。

 

遠征隊の装備は全体的に近代的だか、装備に刻まれた紋章と背負われた盾、腰に差してあるブロードソードが彼らが魔術師の一員であることを物語っていた。

 

「いろいろ入っているんですね...」

 

立香は銃に嫌悪感を抱いたが、これで守ってもらえるのかと思うと自分が、海外のVIPになったような気がした。

 

「やっぱり、魔術師の武器って不思議なものが多いんですね。この盾とか真ん中に穴があいてますし。」

 

立香が箱から出し取り出した盾の真ん中には、穴が空いていて盾としては重大な欠陥があった。マックスは防弾チョッキの具合を確かめていたが、その手を止めて箱からM240を取り出した。

 

「遠征隊では、魔術は補助としてしか使われてない。この穴もM240を通して即席の銃座にするだ。魔術的な意味はない。」

 

マックスは立香から盾を受け取りと穴にM240を差し込んだ。立香は正面から見ると盾から銃身だけが突き出ていて、確かに身を守りながら撃てそうだった。

 

「おぉ〜確かに強そう。やっぱり魔術で軽くしているんですか?」

 

マックスが盾と銃の複合体という明らかに重そうなものを片手で持っていることに不思議に思った立香は、盾に刻まれた紋章を指でなぞりながら聞いた。

 

「確かに軽くはしているが、どちらかというと肉体がホムンクルスのおかげだな。魔術は弾丸をコーティングして、魔獣にも効果のある弾丸にすることに利用されている。その他にもいろいろ仕込んでいるが、弾丸強化が主な使用法だな。」

 

銃は毎分何百発も撃ち出すのだ。弾丸を魔力製の物にしたらすぐに魔力が枯渇してしまう。そこで、遠征隊は金属の弾丸に魔力をかぶせることで、大幅に魔力の消費を抑えたのだ。代わりに威力は下がったがそこは、数で補う。

そもそも彼らの役割は、マスターとサーヴァントの露払いである。弾丸が効かない相手とは戦うことを避ける予定なのだ。強い敵はサーヴァント、弱い敵は遠征隊と役割分担して、特異点修正の効率化を目指していた。

 

「さて、装備の準備も終わったから、再びカルデアに連絡するか...」

 

マックスは周囲を見渡し、遠征隊のほとんどが準備が終わり照準の微調整などをしているのを見て、連絡の続きをすることにした。

 

「ブリーフィングを再開します。集合してください。」

 

マックスは座って軽食を取っていたオルガマリーに声をかけた。召喚サークルには、オルガマリー、立香、マシュ、マックスの4人が集まりカルデアとの回線を開いた。

 

『シーキュー、シーキュー。もしもーし!よし、通信が戻った。』

「遠征隊はすべての準備が完了した。現在のカルデアの様子を教えてくれ。」

 

するとマックス達の前にカルデアの全体の地図が現れた。

 

『見て分かる通り、カルデア本館の8割が被害を受けた。基地の方は普段からカルデア職員も立ち入り禁止にしていたおかげか、連絡通路以外の破損はないらしい。遠征隊の初期消火と救助が早かったから、60人ぐらいのカルデア職員が生き残れた。今は最低の人員を残して、基地の方に避難してるよ。』

 

カルデアには普段から遠征隊が巡回していた。犯人に多くの爆弾を設置する機会を与えなかったことがカルデア職員の生存者を増やすことに繋がっていた。

 

『カルデア本館の幹部級の職員で、生き残ったのがボクだけだから、作戦指揮を任されています。遠征隊の幹部はレイシフトしたマックスと第四分隊の分隊長以外はいるけど、消火と救助、レイシフトしたマックス達の支援の準備で忙しくて、ほとんどが管制室にいません。』

 

カルデアの警備隊を兼ねる遠征隊は緊急時において、カルデアの保護を最優先しなければならないので、全員がカルデア中に散らばっていて管制室には、ほとんどいないのだ。

 

『レフ教授は現場監督で管制室でレイシフトの指揮を取っていた。あの爆発の中心にいた以上、生存は絶望的だ。』

「そんな----レフが----」

 

落ち着きを取り戻していたオルガマリーは再び取り乱したが

 

「いや、爆発に時にレフは席を外していた。何処かに閉じ込められている可能性がある。その内に部下が見つけるだろう。」

 

マックスは爆発直前の会話を思い出し、レフが管制室にはいなかったことをオルガマリーに伝えると、オルガマリーは胸を撫で下ろした。

 

『レフ教授が管制室にいなかったのなら、生きている可能性は高いね。後で、トイレの個室にいないか見ておくよ。』

「変な冗談はやめて。」

 

気品を感じさせる紳士服を着ているレフがトイレに閉じ込められて慌てている様子を想像してしまったオルガマリーはロマンを睨んだ。

 

『あと、先ほど伝えられなかったのですが、遠征隊の副隊長さんが現状では救命不可能と判断して、マスター達を凍結保存してしまいました。』

 

カルデアでは、危篤患者が47人も同時に出ることを想定していなかったので、大規模な集中治療室はない。遠征隊の様な悪霊化する方法もあったが、悪霊化するにはマックス達の任務に対する想いの様な強い未練が必要なのだ。マスター達、特に魔術師選抜のマスター達には、悪霊化できるほどの想いがないと判断し、副隊長は現場最高責任者という立場を使い許可なく、凍結保存したのだ。

 

「私も同じ様な判断をしたわ。所長の判断ではないことが、問題になりそうだけど時計塔守護者に文句を言える奴は少ないから大丈夫でしょう。」

「...驚きました。冷凍保存を本人の承諾なく行うことは犯罪です。なのに批判せず、それを認めるとは、所長としての監督不足の責任を負うことよりも、人命を優先したのですね。」

 

マシュは所長のチキンぶりを見たので、重大な責任を気にしている様子がないことに驚いた。その様子を察したのか、オルガマリーは少しイラつき

 

「バカ言わないで!死んでいなければいくらでも弁明できるからに決まってるでしょ⁉︎最悪、全部マックスのせいにすることもできるし!」

「おい、バカ。やめろ。」

 

マックスはおもわずツッコンでしまい、バカと言われたことに怒ったオルガマリーに脛を蹴られていた。もちろん脛は分厚いコンバットブーツに覆われているので、マックスには全くダメージは入っていない。マックスにビンタしてようやくダメージを入れられたオルガマリーは疲れた様でぶっきらぼうに

 

「だいたい、さらに47人分の命なんて、私に背負えるハズないじゃない。」

 

オルガマリーに叩かれた頬をさすりながらマックスは偉そうに

 

「ああ、オルガマリー所長の背中は遠征隊300人が予約済みだからな。」

「だから、背負いきれないって言ってるの!少しは生きる努力しなさい!なんで全滅前提なのよ!」

 

マックスはすでに死んでしまった隊員と職員のことをオルガマリーに考えさせないためにからかい続けていた。オルガマリーは繊細なのだ、彼女に絶望されると施術ができないとマックスは思いなるべく希望をもたせたいのだ。

騒ぎ始めたマックスとオルガマリーに立香は、特異点にいることを忘れて故郷の友達との楽しかった会話を思い出した。

 

『あの...話の続きを...』

 

ロマンは空気になっていた。立香ぐらいはロマンには優しくして欲しいが、そうもいかないだろう。

 

『とりあえず、こちらはカルデアが鎮火次第、全職員はレイシフトの修理、カルデアスとシバの現状維持に、遠征隊はカルデア全体の調査と爆弾処理に取り掛かる予定です。外部との通信が回復次第、補給を要請してカルデア本館全体の立て直し...というところですね。』

「結構よ。私がそちらにいても同じ方針をとったでしょう。」

「本官も異論はない。部下達も自由に使っていいぞ。副隊長にも、こちらの支援よりもカルデア復旧に人員を集中させる様に伝えといてくれ。」

 

カルデア幹部の今後の方針のすり合わせが終わり、それぞれがカルデアのために動き始めた。

 

「...はぁ、ロマ二・アーキマン、納得はいかないけど、私が戻るまで現場監督を任せます。臨時最高責任者の遠征隊副隊長の指示のもと動きなさい。レイシフトの修理を最優先で行いなさい。」

『火災も9割は消えました。全部が鎮火し安全が確保され次第、可及的速やかに取り掛かります。』

「私たちはこちらでこの街...特異点Fの調査を続けます。」

『うぇ⁉︎ 所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか⁉︎ チキンのくせに⁉︎』

 

直接言わない様に注意していた、職員と遠征隊の努力をよそに直球で言ったロマンに、マックスは呆れ、マシュは尊敬した。

 

「...ほんっとう、一言多いわね貴方は。鎮火とレイシフトの修理にまだまだ時間がかかるんでしょ。この街にいるのは、武器を整えた遠征隊なら十分対処できる低級の怪物とわかったし、デミ・サーヴァント化したマシュがいれば安心よ。」

「しかし、遠征隊本隊がいない以上、広範囲の捜索は不可能です。輸送車などでオルガマリー所長やマスター殿の護衛ができないので、護衛に人員を割かなくてはなりませんので。」

 

マックスは重機関銃などの大型火器ない現状で、護衛対象が多くの敵に囲まれる事態を避けたいのだ。オルガマリーも司令官として、マスターを支援する予定だったので、遠征隊の人員不足は重々承知していた

 

「そんなこと分かってるわ。現場のスタッフが未熟なのと遠征隊本隊がいないので、この異常事態の原因、その発見に止めます。」

「発見だけでいいんですか?」

「なによ。未熟な貴方達では無理でしょ。それとも、遠征隊を原因に突っ込ませたいの?」

「そんなことは...」

 

人員不足の遠征隊でも、遠征隊隊長のマックスとと遠征隊の上位しか務められない分隊長の一人がいるのだ。決死の覚悟で、原因に突撃すれば、運が良ければもしかすると原因の停止に成功するかもしれない。

 

「マスターと所長には、我々を死地に送る権限があります。いつでも、ご命令下さい。」

 

マスターは希少なのだ、遠征隊を何十人も犠牲にしても守るだけの価値があるのだ。任務に狂信的な遠征隊は喜んで突撃するだろう。

 

『ご健闘を祈ります、所長、遠征隊。短時間ですが、通信可能です。緊急事態になったら遠慮なく連絡を。』

「......ふん。SOSを送ったて、まともには解決してくれないくせに。」

 

通信が終わりオルガマリー達が召喚サークルから出ると、遠征隊38名が並んでいた。マックスがその列の先頭に並ぶと剣を抜き顔の前に構えた

 

「遠征隊第四分隊及び後方部隊、総勢38名。これより、オルガマリー所長の指揮下に入ります。総員! 指揮官殿に敬礼!」

 

マックスが右手の剣を右斜め下に振るうと、隊員達も銃を顔の前に構え、捧げ銃の姿勢をとった。

オルガマリーは初めてちゃんと見た、全てを排除する覚悟を持った遠征隊に気圧された。立香とマシュも先ほどまで、楽しくじゃれ合いをしていたマックスの戦士としての姿に鳥肌がたった。

 

オルガマリーはしばらく眺めた後、ふかく深呼吸し右手を胸に当てて誓った

 

「指揮官の任、確かに拝命しました。貴方達に消えることのない命、ここで人理のために燃やし尽くしてもらいます。私が一緒に立ち続けるために、私を支えなさい。」

「「「Yes! Ma'am!」」」

 

オルガマリーが誓った瞬間、遠征隊から黒い靄が漏れ出したように見えた。自分たちを指揮する指揮官が現れたことで、抑えていた守護者としての、遠征隊としての、命の終わりがない悪霊としての、本来の力が出せるのだ。オルガマリーを頭脳として、時計塔の誇る遠征隊が特異点を蠢き回ることになる。

 

「分隊長は数人の隊員とこの陣地の防衛! 支援砲撃の要請にいつでも答えられるようにしておけ。 残りはついてこい! マスター達の露払いをするぞ!」

 

マックスの号令でM240付きの盾を構えた隊員を先頭に隊列を組んだ。

 

「陣地の扉開きます。」

 

扉を開けると骸骨がいたが、M240によりすぐに解体されてしまった。

 

「周囲確認!...クリア!」

 

マックスはオルガマリーの方に向き直ると

 

「周囲の安全を確保しました。いつでも出発できます。」

「わかりました。マシュもサーヴァントなんだから前に立ちなさい。藤丸は私と共に遠征隊の後ろ。...では、調査を開始します。」

 

遠征隊は盾を先頭に道の両端を進み、出てくる骸骨を砕きながら橋へと進んでいた。マシュはマックスに集団での戦い方を教えてもらっていた。遠征隊もマシュの盾に殴られたらタダでは済まないので、戦術を細かく教えていた。

 

「マックスさん、だいたい分かりました。私はマスターの近くに、遠征隊は更にその外側を守る。遠征隊を抜けてくるのは、サーヴァントしか対処できない敵だから気を抜かない。要約するとこうですか?」

「ああ、それであっていますマシュ殿。もし、我々ごと敵を倒すなら首より下を狙ってください。ドッグタグを壊さないようにしてください。」

「味方ごと攻撃なんてしません。」

 

「いいな〜」

楽しそうに話すマックスとマシュを後ろから眺めていた立香は羨ましそうに呟いた。

 

「マックスのどこがいいのよ。私の演説を遅刻しかけるような、約束を忘れる男なのよ...貴方は完璧に遅刻してたけど。」

 

オルガマリーはマックスが遅刻しかけたことも、始末書を書かせることもしっかりと覚えていた。

 

「隊長さんじゃなくて...少し心細いので私もお喋りしたいな〜なんて」

「そんなにお喋りしたいなら、素人な貴方にカルデアのことをみっちり教えてあげます。」

「勉強は嫌だ〜!」

 

橋に着くまでオルガマリーのスパルタ授業が始まった。立香に懇切丁寧で根気よく対応しているオルガマリーをチラリと見たマックスは、負けずとマシュに色々なことを教え始めた。

 

 

燃える町の中に小さな学校が二つあり、周囲の父兄(遠征隊)は微笑んでいた。

 




遠征隊の武器は基本的にアメリカ軍基準です。あの国の武器なら大量生産されていますから、大量消費できるってことで選びました。特異点で戦闘するなら、銃なんてすぐに壊れそうなので。ロシア軍もいいですけど、AKシリーズはいい武器なのですが、私の中で粗悪品のイメージが強いのでロシア軍装備は見送りました。時計塔つながりで迷銃のL85を第四特異点で出そうかとは計画してます。
盾付きM240は紅葉餅の創作です。銃夢という漫画に出てきたバージャックという武装集団が使っていた武器を参考にしました。漫画の方は、M240ではなくMG42を盾に付けていましたが。


2016年はかなりのハイペースで書いていたのですが、今年は忙しくなりそうなので、今回みたいに1週間に一度くらいのペースにする予定です。

誤字、矛盾の指摘お願いします。今年も紅葉餅の間違いを指摘して、紅葉餅を育ててください。

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