カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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この小説では、最初はカルデアの人間関係はそこまでよくありません。秘密の持たない人間はいません。そして、緊急時に人の本性は出ます。なので、特異点で本当の事を語り合い、カルデアのメンバーは本当に信頼できる仲間になっていく、そんな風に書けたらなと思っています。

今回も説明回で長いです。前回の矛盾点を解決するための説明回です。矛盾点は墓の下の前所長に全て背負ってもらいます。


前所長の思い出

マシュについて行ったオルガマリーは、司令官らしく指揮する事にした。

 

「まずは、ベースキャンプの作成ね。いい?こういう時は、霊脈のターミナル、魔力の収束する場所を探すのよ。探しに行くのに、遠征隊10人ぐらい連れて行っても大丈夫でしょう。それで、この街の場合は...」

 

オルガマリーはサーヴァントを指揮する事が、誇らしいのかドヤ顔で語っていると

 

「このポイントです、所長。レイポイントは所長の足元です。遠征隊はこのポイントを守るように陣地を作ったみたいですね。」

 

遠征隊は今後の作戦活動を円滑に行うために、骸骨に囲まれても陣地を放棄しなかったのだ。陣地を確保する為に9人の隊員が、肉体を失いドッグタグだけになってしまったが、召喚サークルさえ確保できれば特異点用の装備を送ってもらえるのだ。

 

「うぇ⁉︎あ......そうね、そうみたい。わかってる、わかってたわよ。」

 

オルガマリーは、ここがそうなら教えなさいよマックスと小声で文句を言いながら横にずれた

 

「マシュ。貴方に盾を地面に置きなさい。宝具を触媒にして召喚サークルを設置するから。」

 

気持ちが落ち着きようやく立つ事ができた立香の方をマシュは向くと

 

「...だ、そうです。遠征隊の方達も陣地を防衛しているので、構いませんか、先輩?」

 

遠征隊は基本装備のグロック18cと少数のMP7しか、持っておらず陣地を防衛をし続ける事は困難なのだ。マシュは遠征隊に不安を持っているので、マスターである立香にどうするかを委ねた。

 

「武器を手放すのは怖いけど、しょうがないよね。」

「...了解しました。それでは始めます。」

 

マシュがポイントの上に盾を置くと、盾から金の光が舞い始め、周囲に広がると召喚サークルを作った。

 

「これは...カルデアにあった召喚実験場と同じ...」

 

マシュが見渡していると

 

「やっと繋がった!もう心配で、心配で...」

 

半泣きのロマンの映像が現れた。ロマンは、立香達が話している間、ずっと通信機の前で待っていて、立香達の無事を祈っていたのだ。あまりに通信が繋がらないので、危険な状況に陥ったのではないかと思い始めた所に通信が繋がったので安心して半泣きになってしまった。その様子に呆れた様にオルガマリーは

 

「なに、泣いてんのよ...」

「泣いてないです...」

 

ロマンは袖で涙を脱ぐうと、気持ちを切り替えいつもの柔らかい笑みを浮かべた。

 

「二人ともご苦労さま、空間固定に成功した。これで通信もできるようになったし、物資輸送だって」

 

ロマンが手元の通信機をいじり、通信を調節していると、

 

「なんで、貴方が仕切ってるのロマニ⁉︎緊急時に指揮取るのは、レフか遠征隊の副隊長でしょ!レフを出しなさい!」

 

緊急時には、現場監督のレフ教授か遠征隊の後方部隊を指揮している副隊長と決められているので、カルデアについて詳しい話をしようとしたのに空気を読まず、ロマンが出てきた事にオルガマリーはムカつき怒鳴りつけた。

 

「うひぁあぁあぁ⁉︎所長生き----」

「副隊長はいるか?」

 

ロマンが何か言おうとすると召喚サークルに入ってきたマックスが遮った。

 

「副隊長さんですか?今、そちらに送る装備の準備をしていますが変わります?」

「変わってくれ。」

 

ロマンは呼びに行ったのか、画面から消えて聞きすぐに女性の隊員が映った。

 

「お元気そうで何よりですマックス隊長、オルガマリー所長。実験成功おめでとうございます、マシュ・キリエライトさん。それに、マスター就任を遠征隊は歓迎します、藤丸立香様。」

 

女性隊員は事務作業のように、淡々と話した。

 

「基地の方はどの位の被害を受けた?」

 

オルガマリーが副隊長の口調に何か皮肉を言いだしそうだったので、マックスは副隊長に話を振った。

 

「基地とカルデア本館を繋ぐ通路、電気及び魔力の回線の全てが爆破されていました。なので、基地にあった召喚サークルは使えずカルデア本館の召喚サークルを使い装備を送ります。また、7つのドッグタグの残骸を回収しました。7名の隊員を戦死と認定しました。」

 

本来の計画では、基地にある召喚サークルを使い装備を送るはずだった。基地にある召喚サークルは言わば固定電話の子機のようなもので、本体のあるカルデアとの回線が切れると基地からの物資輸送が不可能になる。

 

「送るはずだった装備はバラされ固定されているので、すぐには送れません。なので、倉庫にあった予備の装備を送ります。照準などの調整はそちらでしてください。また、装甲車などの大型装備は、現在カルデア本館に搬入が不可能なため送れません。」

 

マックスは隊員が戦死と認定された事に奥歯を噛み締めたが、銃を確保できるれば、今いる隊員は守れると自分に言い聞かせたが

 

「それと、隊長。」

「なんだ?」

「カルデア本館への通路作るために戦闘工兵車を使いました。」

「組み立てるのは、大変だっただろう。ご苦労。」

「ありがとうございます。しかし、そういうことではなく。」

「工兵車が壊れたか?」

 

少し目が泳いでいる副隊長にマックスは心配になった。立香は、これがいわゆる残念美人か、と感心していた。

 

「瓦礫をどかすのに、工兵車を使ったのですが。勢いが余って、カルデア本館の壁を壊してしまいました。」

 

マックスは部下の残念さに目を覆い、オルガマリーはマックスをにらみ

 

「後で、始末書を出しなさい。」

 

と、どすの利いた声で言った。マックスはオルガマリーは数十枚始末書を提出しないと満足しないのを知っているで、どうやってオルガマリーの機嫌をとるかを考えた。

 

「副隊長状況は分かった。一度、ロマンを出してくれ。」

「分かりました。後ろで、そわそわしながら待っているDr.ロマニに変わります。」

 

副隊長は軽く敬礼すると画面から消えていった。

 

「みんなボクだけに厳しいよね。」

 

ロマンが文句を言いながら現れるとマックスの雰囲気が変わった。

 

「ロマニ。ロマニ・アーキマン。」

「どうしたんだい?改まって。」

 

ロマンはフルネームでいきなり呼ばれたのに首を傾げた。

 

「我々は貴様に秘術を話す。だから、貴様も秘密を話せ。」

「何のことだい?」

 

ロマンは柔らかい笑みのまま答えた。

 

「我々に送った聖杯戦争と前所長の死因だ。」

「それは...」

「人は突然、目と脳が焼けて死ぬのか?」

 

誤魔化そうとしたロマンが口を閉ざした。オルガマリーは心臓発作と聞いていたが、父が謎の死に方をしていた事実に目を剥き、ロマンに問いただした。

 

「どういうこと...答えなさい。ロマニ。」

「しかし...」

 

とオルガマリーが強い口調で言ったが、まだ、口をモゴモゴさせているロマンにオルガマリーは

 

「教えなさい、ロマニ。前所長のマリスビリーは私の父なのよ。」

 

ロマンは降参した様に手を挙げると話し始めた。

 

「前所長のマリスビリーの死因を隠したのはボクだ。遺体を発見したマックス達にお願いして、隠してもらったんだ。ボクは恩師の惨状に直視できなかったから、その様子はマックスに聞いて。」

 

オルガマリーはマックスの方を聞くと、深呼吸し自分の父の最後を聞く覚悟を決めた。

 

「3年前、マリスビリーの自室の火災報知機が鳴った。遠征隊が急いでいくと、脳と全身の神経、目を焼かれたマリスビリーが横たわっていた。火はどこにも燃え移っておらず、マリスビリーだけを焼いていた。」

 

オルガマリーは父親の死因が、自身が予想していたものよりもずっと悲惨で、思わず口を塞いでしまった。マシュも動揺した様で立香の手を握っていた。

 

「遺体からは、高濃度の魔力の残滓が残っていたが、マリスビリーの自室は外部からの魔術を受けない様になっているから自殺ではないかとされた。当時、マリスビリーの言動は怪しく、薬の乱用も疑われたが遺体からは、薬は何も出なかった。マリスビリーの助手であるロマニからの要請で調査はここで終了した。」

 

オルガマリーは蹲ってしまった。

 

「ロマニに聞きたいのはもう1つの方だ。なぜ、マリスビリーが送ってきた聖杯戦争の資料には、開催されていない聖杯戦争のことが事細やかに書かれていたかだ。」

 

遠征隊がカルデアに行く事を決めた資料には、10回以上の聖杯戦争の記録が書かれていた。その中にはムーンセルなど封印指定をされている物の説明が含まれており、信憑性が高かったため遠征隊は資料が嘘は書かれていないと判断していた。しかし、遠征隊がカルデアのアーカイブを確認すると、実際には一度しか行われていなかったのだ。

遠征隊がその事実を知ったのは、肉体を失った後であり、アトラス院からホムンクルスの技術を交渉してもらった恩のあるマリスビリーに聞く事ができなかった。

 

ロマンは覚悟を決めた様で、話し始めた。

 

「ボクと前所長は、2004年に初めて開催された聖杯戦争に参加した。天才と言われていた前所長の力のおかげで、ボク達は聖杯戦争に勝利して、聖杯を手に入れた。」

 

オルガマリーも涙を拭いながら立ち上がり、話を聞き始めた。

 

「当時、ボク達は守護英霊召喚システム・フェイトの開発に詰まっていて、聖杯戦争の召喚を調べる必要があったんだ。でも、ボク達は原理が理解できても、システムに応用はできなかったんだ。」

 

ギルガメッシュも聖杯戦争の事を「考案したものは神域の天才だろう」と評価しているのだ。たかが天才がちょっと調査しただけで、全てを理解し応用しようとする事は無理な話である。

 

「悩んだマリスビリー所長は願ったんだ。聖杯に。サーヴァント召喚に関わる全ての知識を...」

 

ロマンは手を握りしめ、悔しそうに話した。

 

「サーヴァント召喚は、過去の英霊を引き寄せる神のごとき御技。知識自体が高濃度の魔力を含んでいる。少し考えればわかったんだ...こんな簡単な事は...神秘の薄れた現代に暮らすボク達には、全ての知識は受け止めきれないって...」

 

握りしめすぎたのか、ロマンの傷一つない綺麗な手から血が流れていた。

 

「マリスビリー所長は、頭の中から知識が一つもこぼれない様に封をして、急いで守護英霊召喚システムを作り上げた。最後の方は、聖杯の知識と自分の記憶が混ざって、変人と呼ばれる様になっていた。」

 

元から変人と呼ばれていたけどね、とロマンは暗い表情のまま、冗談を言った。彼自身思い出し、誤魔化さずにはいられないのだろう。

しかし、そこまで出来たマリスビリーの意志の強さには、賞賛を送るしかないだろう。ただの魔術師では、すぐに頭がはじけて死んでしまうほどの知識の量なのだから。

 

「マックス達に送った資料も、聖杯から受け取った記録だと思う。知識に関しては、ボクには何も言ってくれなかったからね。おそらく、別の世界線の聖杯戦争の記録じゃないかな。だから、実際には起きていない聖杯戦争の記録があったんだろうね。3年前、マリスビリー所長の脳が焼けたのは、知識を抑えきれずに封が破れて、全身に大量の魔力が一気に流れたからだろうね。」

 

オルガマリーは、父親の意地を尊敬しながらもこう思った

 

「そこまでして...お父様はそんなにカルデアが...」

 

オルガマリーの言葉に、ロマンはすぐさま否定した。

 

「いや、マリスビリー所長は何よりも家族を愛していたよ。彼が話す聖杯戦争の話には、必ずオルガマリーという名前が混じっていた。知識と記憶が混ざり、自分が誰なのかわからなくなっても、家族の事だけはしっかりと覚えていたんだよ。ボクが保証する。マリスビリー所長は何よりも家族を愛していたと。」

 

あんたじゃ保証できないでしょう、と小さく笑うとオルガマリーは召喚サークルから出て行ってしまった。

 

「マリスビリーに言われたからって、所長には言うべきだったかな。ボクは今すぐ首をつりたいほど、罪悪感と後悔でいっぱいだよ。」

「いや、恩師から願いだったのだろう。ロマンは気にする事はないいつもの様に笑っていろ。ロマンの笑顔は周囲に余裕を持たせる。こんな時だからこそ、貴様は笑わねばならん。俺は堂々と立つことで、周りに安心を持たせる。貴様は笑う事で、余裕を持たせる。カルデアのトップに立つものとして、周りを勇気付けるには義務であるからな。」

 

マックスは胸を張り、トップに立つものが何たるかを語った。

 

「そうだね...ボクはロマンだ。浪漫は人に希望を持たせる。」

 

ロマンは頬を叩くといつもの様に柔らかい笑みを浮かべた。マックスはその様子を見て、ロマンの同僚である事が少し誇らしくなった。

 

「装備を受け取ったら、また連絡する。...後で、手を治療して、頬を洗っておけ。」

 

先ほど手を強く握って血が出た手で、頬を叩いたのだ。現在、ロマンの顔には、血が大量についていてホラー映画にも出れる姿になっている。

 

「うわっ...気づかなかった。医者は手が命っていうのに。マックスまた後でね。ありがとう。」

 

そう言うとロマンとの映像は切れた。

 




前所長やFGOでの聖杯戦争の記録がないので、この小説ではこの様に設定しました。前所長をこの小説の矛盾点解決のために使わせてもらいました。生きているキャラクターに設定付けると後が大変ですからね。
前所長の死因は、インディジョーンズの4作目のクリスタルスカルの王国に出てきた女軍人の最後をイメージして設定しました。こちらも、宇宙人から知識を受け取ったせいで、目から火をあげて死んでしまいましたし。


遠征隊の女性隊員は、イギリス軍の女性隊員の割合が約7.4%位らしいので、それに合わせて22人にしています。現在、男女共同参画に合わせて女性軍人の戦闘参加も認められてきていますが、この小説では女性の隊員は前線に行きません。紅葉餅が書きたくないので書きません。誰もワイバーンに女性が食べられるのは、望んでいないと思いますし。

そういえば、ヒロイン決めてなかったと思い出したので副隊長は、急遽女性隊員に性転換してもらいました。ちなみに、立香はヒロインにはなりません。マックスは娘と思っていますし、そもそも幽霊と人ではね。


追記
矛盾をなくそうとして、矛盾を作り出した紅葉餅です。紅葉餅はまだ原作を全クリしてないので、ガバガバです。なので、遠征隊の設定に関してはここで一度放置します。下手にやろうとすると今回の様にまた矛盾を作りそうなので。
とりあえず特異点Fの話を進めようと思います。違和感を持った方は申し訳ありませんが、今後とも宜しくお願いします。

年末年始は神社の氏子としての役割があるため、しばらくはお休みします。皆様良いお年を。

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