カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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今回から、遠征隊の犠牲者が出始めます。人が死んでいくのを読むのが苦手な方は、申し訳ありません。紅葉餅のスキルでは、そこまでグロくなることはないと思います。

次話で遠征隊の説明回になります。もう少し、お待ちください。


血河の始点

 

ロマンはマシュが落ち込んでいるのを察して

 

「...そうなのか。だかまあ、不幸中の幸いだな。召喚したサーヴァントが協力的とは限らないからねけどマシュがサーヴァントになったのなら話が早い。なにしろ全面的に信頼できる。」

 

とマシュを元気付けた。ロマンは話を変え

 

「立香君。そちらに無事シフトできたのは君だけのようだ。紐がある事から遠征隊は、特異点に来てはいるが立香君の近くにいないところを見るに特異点のどっかに落ちてしまったようだ。炎の中に落ちていないことを祈るばかりだよ。」

 

時計塔から来た精鋭部隊である遠征隊が、肝心な時にいないことにロマンは不満を抱いたが、遠征隊も事故に巻き込まれているので文句は言えなかった。

 

「そして、すまない。何も事情を説明しないままこんな事になってしまった。わからないことだらけだと思うが、どうか安心してほしい。遠征隊はいなくてもキミにはすでに強力な武器がある。マシュという、人類最強の武器がね。」

「......最強というのがどうかと。たぶん言い過ぎです。あとで責められるのはわたしです。」

 

立香にはマシュの顔が赤く見えたが、指摘すると炎のせいですと一蹴された。シールダーであるマシュには、人が焼死する程度の火など、どうという事はないのだが。

 

「まあまあ、サーヴァントはそういうものなんだって。立香君に理解してもらえればいいんだ。ただし、サーヴァントは頼もしい味方であると同時に弱点もある。それは魔力の供給源となる人間......マスターがいなければ消えてしまうという点だ。たしか、遠征隊も紐が繋がっているマスターが死んでしまうと彼らも死が確定するらしい。詳しい事は知らないけど、立香君についている紐は大事に扱ってあげて。」

 

ミサンガみたいなものだろうと思っていた立香は、慌てて腕を抱きしめ、紐が燃えないように周囲を警戒した。

 

「現在データを解析中だが、これによるとマシュはキミのサーヴァントとして成立している。つまり、キミがマシュのマスターなんだ。キミが初めての契約した英霊が彼女、ということだね。」

 

サブカルチャーが発達した日本にいた立香は大まかには理解できたが、マスターやサーヴァントなどの専門用語が入ってしまったので詳しいことはわからなかった。

 

「......あの、難しい言葉ばっかりで話についていけないんですけど。」

「うん、当惑するのも無理はない。キミにはマスターとサーヴァントの説明すらしてなかったし。いい機会だ、詳しく説明しよう。今回のミッションには3つの新しい試みがあって...」

 

ロマンが説明しようとしているのか、髪をめくる音がしたが、だんだん音声に雑音が入り、声も遠くなってきた。

 

「ドクター、通信が乱れています。通信途絶まであと10秒。」

「むっ、予備電源に切り替えたばかりでシバの出力が安定していないのか。遠征隊の基地から電源をもらいたいけど、基地に繋がる通路も電線も通信も、全てが破壊されていたし。仕方ない、説明は後ほど。二人とも、そこから2キロほど移動した先に霊脈の強いポイントがある。なんとかそこまでたどり着いてくれ、そうすれば通信も----」

 

ロマンがいいを終わる前に雑音は強くなり、ついには途絶えてしまった。

 

「......」

「...消えちゃったね、通信。」

 

マシュは目を閉じ、周囲の魔力に集中し、ロマンと再び通路できないか試したがカルデアの魔力は一切感じられず諦めた。

 

「まあ、ドクターのする事ですから。いつもここぞというところで頼りになりません。今回は遠征隊の方達も頼りになりませんし。」

 

マシュは頼れる仲間の少なさに不安を覚えた。

 

「キュ、フー、フォーウ。」

 

フォウは存在をアピールするように何度もマシュの前で飛び跳ねた。

 

「そうでした。フォウさんもいてくれたんですね。応援、ありがとうございます。どうやらフォウさんは先輩と一緒にこちらにレイシフトしてしまったようです。」

 

マシュは飛び跳ねていたフォウを抱きかかえると、いつものように肩に乗せた。

 

「あ...でも、ドクターには報告し忘れてしまいました。」

 

立香とマシュは顔を見合わせて、若干気まずい雰囲気になった。

 

「キュ、フォウ、キャーウ!」

「ほら!大丈夫だよ!フォウも、ドクターなんて気にするなって言ってるし!」

「そうですね。フォウさんのことはまたあとで、タイミングを見て報告します。」

 

立香はまるでロマンはタイミングが読めていない、というような口ぶりに、カルデアにおけるロマンの扱いの雑さに哀れみを覚えた。後に立香主導のロマンのイメージアップキャンペーンにより、改善されるまで、ロマンはカルデアでのネタキャラ扱いをされ続けた。

 

「まずはドクターの言っていたポイントを目指しましょう。そこまで行けばベースキャンプも作れますし、特異点にいる遠征隊への目印にもなります。」

 

マシュは座っていた立香の手を取り歩き出した。

立香とマシュはポイントに向かって歩いていたが、周囲は完全に火の海で、あちこちが崩れていた。

 

「先輩、もうじきドクターに指定されたポイントに到着します。しかし...見渡す限の炎です。資料にあるフユキとは全く違います。資料では、平均的な地方都市であり、2004年にこんな災害が起こったことはないはずですが...」

 

マシュが惨状を見ていると、パパパッと弾けるような音と女性の悲鳴が聞こえてきた。

 

「女性の悲鳴と銃声です。この災害の生き残りと遠征隊だと思われます。急ぎましょう!先輩!」

 

マシュ達が走って銃声のもとに駆けつけると、瓦礫や家具を円形に置き壁を作ってその中から外にいる骸骨達に銃弾を浴びせている遠征隊がいた。

 

「骸骨共を近づけるな!」

「一発で倒せないのは、MP7を持っているやつに任せろ!」

「くそっ!腕さえあれば!」

 

陣地の外には、骸骨の残骸と骸骨に引きずり出されたのか壁に引っかかりぶら下がったままの遠征隊の死体があった。陣地の中からも四肢を失った隊員の苦悶の声が聞こえてきた。

 

「うっ...」

「これは...」

 

あまりにも残酷な様子に立香は吐かないように口を押さえ、マシュも立ち止まってしまった。

 

「新たな、魔力反応!サーヴァント級です!」

「こんな時に!」

「何なの、何なのこいつら⁉︎何で私ばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの⁉︎早く倒してよ!」

 

オルガマリーは中でうずくまっているのか、立香達には姿は見えなかったが、その悲鳴だけが聞こえてきた

 

「あんたも手伝ってくれよ!こっちだって遊んでるんじゃないんだよ!」

 

遠征隊は骸骨を対処しながら、オルガマリーに近くに置いてあった拳銃を放り投げた。

 

「これ使えっての!?知らないわよ!こんな物の使い方!もうイヤ、来て、助けてよレフ!」

「オルガマリー所長?」

 

マシュは矢が刺さりながらも、一歩も引かない遠征隊を助けるために陣地を囲っている骸骨を弾き飛ばした。

 

「サーヴァント級、視認しました!あれは...マシュ!マシュ・キリエライトです!それに、藤丸立香です!」

「援軍か、よかった...マスター殿を保護せよ!我らで、マスターの盾になるぞ!」

 

遠征隊は増援に活気づき、立香を守るために壁を乗り越えていった。

 

「あ、あなた達どこ行くの⁉︎ああもう、何がどうなっているのよ⁉︎」

 

オルガマリーは知っている名前が聞こえて、壁から顔を半分ほど出すと、盾を振り回すマシュと、遠征隊の隊員に周囲を囲まれながら向かって来る立香が見え、オルガマリーの処理範囲を超え、頭から煙を出し始めた。

 

その後、若干の犠牲者を出しつつも陣地の外にいた骸骨を一掃し、陣地の中で休憩ができるようになった。




マシュ、ロマン、遠征隊が互いにあまり評価していないのは、自身のことを隠していて本当のことを教え合っていないからです。信用はしていても、信頼はしていない状態です。
戦闘を重ねるにつれて、お互いに信頼しマシュと遠征隊は背中を負わせて戦っていきます。同然ながら、遠征隊は死にまくるのでマシュの背中は血まみれになりますが。

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