カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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紅葉餅は、遠征隊にスターシップ・トゥルーパーズ1のような活躍をさせようとしています。つまり、敵にバラバラにされたりする役目ですね。
遠征隊にはサーヴァントの強さを目立たせるための、案山子になってもらい、特異点で散ってもらう予定です。


初めての特異点

 

立香side

 

レイシフトが始まると立香は光の渦に吸い込まれるような気がし、紐の巻かれた腕は何かを引張ているようにひどく重かった。

立香の視界は再び暗くなりレイシフトは終わった。

 

立香がレイシフトの影響で、意識を失っていると

 

「キュウ...キュウ。フォウ......フー、フォーウ......」

(この鳴き声は...)

 

立香は、鳴き声と周囲の熱によりぼんやりと意識が戻ってきた。

 

「先輩。起きてください、先輩。」

 

遠くでさっきまで聞いていたような声が、聞こえたが意識がはっきりしない立香は誰なのか分からなかった。

 

「......起きません。ここは正式な敬称で呼びかけるべきでしょうか---マスター。マスター、起きてください。起きないと殺しますよ。」

 

立香は殺すという言葉で、自分が火の中にいてレイシフトをしたということを思い出し、飛び起きた。目の前には、先ほどとは違い鎧を着たマシュがいた。

 

「よかった。目が覚めましたね先輩。無事で何よりです。」

「マシュ!そっちこそ大丈夫なの!さっき、お腹が!」

 

立香は慌てて近づき鎧の隙間から出るマシュのお腹を触ったが、縫ったような跡も無くスベスベした感触がした。この時、立香はあまりのスベスベさに、乙女として若干嫉妬した。

 

「先輩。くすぐったいです......怪我については後ほど説明します。その前に今は周りをご覧ください。」

 

マシュのお腹を触るのを止め、周りを見るとボロ布を纏った骸骨が何体もいた。

 

「GI----GAAAAAAAAAA!」

「ひっ!」

 

骸骨は既にその肉体を失っているのにも関わらず、叫び声を上げた。

 

「----言語による意思の疎通は不可能。----敵性生物と判断します。」

 

マシュは盾を構えると骸骨に向かっていった。

盾を水平に振り骸骨を上下に真っ二つに砕くと、姿勢を低くし盾を振った勢いを利用し回転しながら、別の骸骨の懐に滑るように入った。さらに、立ち上がる勢いを使い、盾の角で骸骨の頭を叩き切る。

立香はその流れるような動きに、周りが燃えているのも、骸骨が迫ってきていることも、マシュに指示することも見惚れてしまった。

 

マシュが周囲を見渡し、全ての骸骨を砕い他ことを確認すると立香の方に向かってきた。

 

「----ふう。不安でしたが、何とかなりました。お怪我はありませんか先輩。お腹が痛かったり腹部が重かったりしませんか?」

 

マシュが惚けている立香に近づくと、立香の服についたススを払いながら心配そうに聞いてきた。

 

「マシュ、あんなに強かったの⁉︎」

「...いえ、戦闘訓練はいつも遠征隊の方達が手加減してくれていたのにも関わらず、いつも居残りでした。逆上がりも簡単な護身術もできない研究員。それがわたしです。」

 

過去を思い出したのか少し悲しそうな目をしていたマシュだが、盾の方に目をやるとその目には力がこもり、盾を握りしめた。

 

「わたしが今、あの様に戦えたのは----」

「ああ、やっと繋がった!もしもしこちらカルデア管制室だ、聞こえるかい⁉︎」

 

何を言い出そうとしていたマシュだが、いきなりロマンの通信が入ると目を伏せ何かを心の中に飲み込んんだようで、カルデアにいた時の様に凛とした見た目に戻りロマンの通信に応答した。

 

「こちらAチームメンバー、マシュ・キリエライトです。現在、特異点Fにシフト完了しました。同伴者は藤丸立香一名。随伴するはだった遠征隊の隊員も見当たりませんが、マスターの腕を見るに特異点Fにはいる様です。マスターは心身ともに問題ありません。」

 

マシュに言われ、立香は腕を見ると紐が繋がっていた。紐の端は切れている様に見えたが、よく見ると幽霊の足の様に薄くなっているだけで切れてはいなかった。

 

「レイシフト適応、マスター適応、ともに良好。藤丸立香を正式な調査員として登録してください。」

「...やはり、マックス達がいなかったからそうかとは思っていたが、立香君も巻き込まれていたのか...コフィンなしでよく意味消失に耐えてくれた。それは素直に嬉しい。」

 

どんどん話が進んでいつが、当の本人の立香は話についいて行けずポカンとしていた。

 

「それと...マシュ、君が無事なのも嬉しんだけど、その格好はどういうことなんだい⁉︎ハレンチすぎる!ボクはそんな子に育てた覚えはないぞ!」

 

マシュは過去に軟弱な自分を変えようと遠征隊の基地に押しかけ、鍛えてもらおうとした時、「ムキムキになろうなんて、どういうことなんだい⁉︎勿体なさすぎる!」と遠征隊に全力で止められたのを思い出して、ため息が出た。

 

「はぁ...これは、変身したのです。カルデアの制服では、先輩を守れなかったので。」

「変身...?変身って、何を言っているんだ、マシュ?頭でも打ったのか?それともやっぱりさっきので....」

「----Dr.ロマン。ちょっと、黙って。わたしの状態をチェックしてください。それで状況は理解していただけると思います。」

 

立香はマシュが、ロマンの空気を読まないゆるふわさに若干イライラしていることが分かった。

 

「君の身体状況を?お...おお、おおおぉぃおおお⁉︎身体能力、魔術回路、全てが向上している。これじゃ人間というというより...」

 

マシュは立香の方をちらりと見ると、覚悟を決め言った

 

「はい、サーヴァントそのものです。」

 

遠征隊と触れ合ったマシュは、人間を理解し、その優しさ強さ美しさに宝石の様な輝きを見出していた。そして、マシュもその輝きに近づこうと一生懸命だった。マシュは人の心に機敏な立香に、サーヴァントになったことで、消えてしまったかもしれない自身の輝きを見られることが不安だったのだ。

 

「経緯は覚えていませんが、わたしはサーヴァントと融合した事で一命を取り留めた様です。今回、特異点Fの調査・解決のため、カルデアでは事前にサーヴァントと、遠征隊の出動できる隊員全員である240名が用意されていました。そのサーヴァントも先ほどの爆発でマスターを失い、消滅する運命にあった。」

 

立香は、遠征隊の240名という規模に驚いた。立香の自室の事件の際に20名ほどの隊員が来ていたので、最大でも100人程だろうと思っていたのだ。

 

「ですがその直前、彼はわたしに契約を持ちかけてきました。英霊としての能力と宝具を譲り渡す代わりに、この特異点の原因を排除してほしい、と。」

 

ロマンは感動した様に声を震わせ

 

「英霊と人間の融合...デミ・サーヴァント。カルデア7つ目の実験だ。そうか。ようやく成功したのか。では、キミの中に英霊の意識があるのか?」

 

マシュは心の中を覗く様に目を閉じると、首を振った。

 

「...いえ、彼はわたしに戦闘能力を託して消滅しました。」最後まで真名を告げず、ですので、わたしがどの英霊なのか、自分が手にしたこの武器がどの様な宝具なのか、現時点ではまるでわかりません。」

 

マシュは盾を眺めながら答えた。




遠征隊はマスター1人につき4人随伴する戦闘員192人。戦闘員を一隊32人の分隊に分け、その分隊を指揮する分隊長6名、全体を指揮するマックスとマックス専属の連絡員の2名と、特異点で車両の運転や物資輸送に従事する40名の計240名が特異点に行く予定でした。
遠征隊は基地に残る後方部隊の60人を加え、全部で300人います。
まあ、特異点1つ当たり20〜30人は戦死させる予定です。

今回は長くなったので、第1節の途中で終わりです。遠征隊の設定は第2節のオルガマリー登場のところで詳しく説明するのでお待ちください。ちゃんと、紐やレイシフトの設定はなるべく矛盾点がない様にしましたが、あったらごめんなさい。

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