カルデア特異点遠征隊   作:紅葉餅

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特異点F
遠征の始まり


マックスside

 

カルデアに非常ランプが灯る数分前

 

マックスは管制室でマスター達を見守っていた。一緒に警備していた隊員がマックスに近づき

 

「隊長そろそろ時間です。隊長もコフィンに入り接続しないと置いていかれますよ。」

 

拳銃しか身につけていないマックスは、一瞬隊員の方に目を向けたがすぐにマスター達の方を向き

 

「ギリギリに入る。ちょうどコフィンに空きもあるしな。」

 

そいうと48個並ぶコフィンの左から6番目、つまり立香が入るはずだったコフィンを指差した。

 

「あ〜、例のマスターのコフィンですか。自分は警備で見れなかったのですが。かなりの勇気を持つマスターらしいですね。」

 

オルガマリーの後ろに立っていたマックスもいきなり寝出した立香にはかなり驚いた。そして、オルガマリーに引っ叩かれた立香を心配して、隊の中でも一番腕の立つ軍医に世話を命じていた。

 

「隊では、既にあだ名の投票が行われていますよ。」

 

訓練、食事、睡眠しかすることのない遠征隊の隊員達は暇つぶしの為にカルデア職員にあだ名をつけることが流行っていた。オルガマリーは、そのままマリーちゃん。チキンと呼ぶことは、上司なので自重していた。ロマンは一時かなり酷いあだ名が付いたが、マックスの命令でロマンに変更された。

 

「一番はなんだ?」

「一番はグタ子ですね。」

「なんだそりゃ?」

「隊員の1人が変な電波を受信したんですよ。」

 

隊員は以上なほどグダ子を推していた、電波を受信した隊員を思い出した。特に異常もなかったので、隊員と話していると局員の1人が首を傾げていた。不審に思ったマックスが聞くと

 

「なんかレンズ・シバの動きが遅い気がして...」

「トラブルか?」

「いや、自己診断プログラムには異常なしって出てるんですよ。」

 

マックスはレンズ・シバを見上げたが見た目に異常はなかった。

 

「プロの意見だ。無視はできない。少し見てみるか。」

 

マックスがシバを覗こうとしていると後ろから

 

「レンズ・シバの事なら任せともらえないか?私は開発者だ。すぐに解決しよう。」

 

とレフ教授が声を掛けてきた。マックスはレフにその場を譲ると、自身もレイシフトの準備を始めた。

 

「すいません。レフ教授を知りませんか?」

 

コフィンと自身を複雑に編まれた紐でつないでいると局員が話しかけてきた。マックスがレンズ・シバの方を指差そうとして見ると、工具だけが残されていた。

 

「あそこに居いたのだが。」

 

そうマックスが言おうとした途端、マックスは吹き飛ばされた。

 

 

 

立香side

 

『緊急事態発生。緊急事態発生。中央発電所、及び中央管制室で火災が発生しました。中央区画の隔壁は90秒後に閉鎖されます。職員は速やかに第二ゲートから退避してください。繰り返します。中央発電所、及び中央―――』

 

放送を聞く隊員達は担いでいた装備を構え走り出した。

 

「爆発音...カルデアが襲撃された!第4分隊は消火に行け!残りはついて来い!正面玄関に防衛線を築くぞ!」

 

隊員達は二手に分かれ、己の役目を果たしに行った。

 

「今のは爆発音か!?一体なにが起こっている……!?」

 

少し遅れて再起動したロマンは壁に備え付けてあるパネルを操作すると管制室を映し出した。

 

「モニター、管制室を映してくれ!みんなは無事なのか!?」

「……ひどい……」

 

モニターには燃える管制室とその中で必死に消火と救助をする遠征隊と職員が写っていた。

 

「これは―――立香、すぐに避難してくれ。 ボクは管制室に行く。遠征隊のほとんどはレイシフト準備中で身動きできないだろうからね。あんなに傷ついている人達がいるのなら、ボクの出番さ。」

 

先ほどまでの柔らかい雰囲気はなくなり、医師として、カルデアにある命を守る者としてここは譲らないとロマンの目は立香に訴えた。

    

「もうじき隔壁が閉鎖するからね。その前にキミだけでも外に出るんだ!」

「このまま逃げだすのは……嫌です!私もここの一員なんです!」

 

立香はカルデアにいるすべての人が共通して持つ優しい心を失いたくなかった。会って数時間しか経ってないのだが、カルデアの職員達の優しさは故郷を思い出させたのだ。そして、立香の中ではカルデアは既に第二の故郷となった。

 

「フォウ!」

「いや、なにをいっているんだキミ!?方向が逆だ、第二ゲートは向こうだよ!?まさかボクに付いてくるつもりなのか!?そりゃあ人手があった方が助かるけど……」

 

ロマンは引き下がらない立香をどうするか迷っていると

 

『カルデア全職員に告ぐ。こちら警備隊長のマックスだ。カルデアは今攻撃を受け燃えている。全職員は身の安全を第一の考えシェルターに避難せよ。また、レイシフトを待っている遠征隊の隊員は、マスターとの接続を解除しろ。そして、全隊員はカルデアに接続し、飛ばされないようにしろ。』

 

マックスの背後からは、火を消そうと奮闘する遠征隊や怪我をして苦しむ職員の声が聞こえた。

 

「ああもう、言い争ってる時間も惜しい! 隔壁が閉鎖する前に戻るんだぞ!」

 

ロマン達が管制室につくと中は火の海になっており、その火の中に消火ホースを抱えた遠征隊や瓦礫を支え怪我人を助ける職員達の姿があった。

 

「………………無傷な者は殆どいない。無傷なのはカルデアスだけだ。ここが爆発の基点だろう。これは事故じゃない。マックスの言う通り、人為的な破壊工作だ。」

 

『動力部の停止を確認。発電量が不足しています。予備電源への切り替えに異常 が あります。職員は 手動で 切り替えてください。隔壁閉鎖まで あと 40秒 中央区画に残っている職員は速やかに―――』

 

火にスピーカーを焼かれたのか、途切れ途切れの電子ボイスが聞こえてきた。立香はカルデアが火に焼かれ苦しんでいるように思えた。

 

「……ボクは地下の発電所に行く。カルデアの灯を止める訳にはいかない。キミは急いで来た道を戻るんだ。まだギリギリで間に合う。いいな、寄り道はするんじゃないぞ!外に出て、遠征隊と合流して外部からの救助を待つんだ!」

「………………。」

 

立香はロマンに言われた通り、管制室を後にしようとしたが、後ろから聞こえる遠征隊と職員の声がその足を引き止めた。

 

『ラプラスによる転移保護 成立。特異点への因子追加枠 確保。アンサモンプログラム セット。マスターは最終調整に入ってください。』

 

そのアナウンスが聞こえると遠征隊は、消火ホースを投げ出し急いで何かを探し始めた。

 

「……ギリギリまで生存者を探すべきでは……」

 

立香は遠征隊の行動を理解できなかったが、今できる最善をすることにした。大声で呼びかけながら生存者を捜していると

 

「誰かー!いますかー!……!」

「………………、あ。」

 

立香が歩いていると柱の陰に隠れるようにマシュが倒れていた。

 

「……しっかり、いま助ける……!」

 

マシュの腹部は真っ赤に染まり、血の中に大きな金属片が見えた。素人の立香にも、もう手遅れということはわかった。」

 

「…………いい、です……助かりません、から。それより、はやく、逃げないと。」

 

マシュは近づいてきた立香を押し返したが、その手には力は全く入っていなかった。

 

「!?」

「あ………」

 

立香は、火の持つ暖かい赤とは別の寒々しい赤い光に照らされた。

 

『観測スタッフに警告。

カルデアスの状態が変化しました。

シバによる近未来観測データを書き換えます。

近未来百年までの地球において

人類の痕跡は 発見 できません。

人類の生存は 確認 できません。

人類の未来は 保証 できません。』

 

寒々しい光の元は擬似地球環境モデル・カルデアスだった。

 

「カルデアスが……真っ赤に、なっちゃいました……いえ、そんな、コト、より―――」

 

マシュが力のない目でカルデアスを眺めると小さな声で呟いた。

 

『中央隔壁 封鎖します。館内洗浄開始まで あと 180秒です』

「……隔壁、閉まっちゃい、ました。……もう、外に、は。」

「……なんとかなるよ。だって...」

 

立香が振り向くと先ほどまで消火していた隊員達とマックスが立っていた。マックス達はマシュの傷を見始めた。

 

「どうだ?治せそうか?」

「治療しても無駄でしょう。傷が深すぎます。」

「施術はできそうか?」

「そちらも無理でしょう。マシュ殿はサーヴァントを宿しています。魂が大きすぎて、依代が破裂してしまいます。」

 

マックス達はマシュを見た後、マシュから離れ立香をマシュの方に導いた。

 

「……………。」

 

マシュはすべてを悟ると立香の手を案内した時と同じように優しく握った。

 

『コフィン内マスターのバイタル基準値に 達していません。レイシフト 定員に 達していません。該当マスターを検索中・・・・発見しました。適応番号48 藤丸立香 をマスターとして 再設定 します。アンサモンプログラム スタート。霊子変換を開始 します。』

 

それを聞くとマックス達は立香に駆け寄った。

 

「マスター殿、マシュ殿、邪魔してすまない。我々はこのままだとレイシフトに巻き込まれ飛ばされてしまい。2度と帰ってこれなくなる。カルデアに接続しようにも、先ほどの爆発で管制室のにあった杭が壊れていた。マスター殿との接続の許可を。」

 

立香はマックスが何を言っているかよくわからなかったが、頷くとマックス達は立香の腕に隊員達のベルトから伸びる複雑に編まれた紐を巻き始めた。

マックスたちの様子を見ていると、マシュの手に力が入りがぎゅっと握られた。

 

「あの……………せん、ぱい。手を、はなさないで、ください。いいですか?」

 

不安でいっぱいになっているマシュの目を見ると立香は、絶対に離さないというように両手でマシュの手を包み込んだ。

 

『レイシフト開始まで あと3』

「来るぞ!全員、振り落とされないように、力を込めろ。」

 

マックスがそう叫ぶと、立香は腕に結びついた紐が熱くなったのを感じた

 

『2』

『1』

『全工程 完了。ファーストオーダー 実証を 開始 します。』




ようやく、特異点fにたどり着きました。
設定などを感想の欄に書いてしまったので、設定が気になる方はそちらをどうぞ。
ネタバレになるので小説の方には、まだ設定などまとめたものをは載せていませんが、後程まとめて書くのでしばしお待ちください。

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