「…何だと?」
呆然としながらも覇王は俺に聞いてくる。兵士を殺されいきなり現在戦っている敵の総大将が現れれば無理もないか。
「…お前が…」
覇王は手から血が出るほど握り、
「お前がぁぁ!!」
覇王は一瞬で俺の目の前に移動して拳を出してくるが見え見えだ。
俺は覇王の拳を受け流し回し蹴りを覇王の頭に当たるように打ち出す。
覇王はそれを頭を後方に移動させて避けると足をつかみ体制を崩そうとする。
俺は覇王のつかむ足を軸にしてもう片方の足で覇王の頭を蹴り出す。
「っ!?」
よし、崩れた!俺は覇王に全力の拳をぶつけた。
しかし、覇王の体は霧のように消えてしまい俺は前のめりに倒れてしまう。ってこれは幻術じゃねぇか!?まさか覇王も使えたのかよ!?ってその覇王は何処に!?
見つけたときには覇王は必殺の一撃をのせた拳を無防備な俺の背中に当てようとしていたときであった。
メギャァァ!
鳴ってはいけないような、何かが潰れる音を響かせて俺は近くの建物に吹き飛ぶ。っち!あばらが幾つか殺られたな。内出血も半端ない。戦闘続行は不可能そうだ。くそ、回復魔法でも覚えておけばよかった。それでも幻魔の体だから直ぐに回復するだろうけど。
俺は悲鳴をあげる体を無理矢理起こして覇王の方を見る。覇王は相対したときとは違い冷静になっているようだ。
「…ゴポッ!…流石は覇王、と言ったところか…グッ!?」
しゃべる度に口から大量の血が溢れ出す。くそ、これマジでヤバイな。
「…終わりだ。幻魔王。お前を殺してこの戦を終わらせる」
「…まだだ、まだだよ。まだ終わってねぇよ覇王!…ゴポッ!」
瞬間覇王の脇腹を抉って何かが通過した。
「!!??」
「ククッ、形勢逆転だな。…ゴポッ!グッ!?」
やばい、これ以上喋るわけにはいかないな。後は頼むぞ。
俺の思いに答えるように姿を表したのはヘラクレスのような体をした緑のスピリット。マッハ・ジー。そのなの通り最大速度はマッハに及ぶ。先程覇王の脇腹を抉ったのもマッハ・ジーだ。
マッハ・ジーは再び覇王に突撃するが覇王は脇腹を抑えながらも避けきる。マッハ・ジーは続けて突撃するが覇王は何度も避けていきダメージは与えられていない。だが、最初の脇腹を抉ったのは聞いているようだ。既に覇王の回りにはかなり多い地溜まりが出来ている。
「…グッ!?これ以上は無理か。なら!」
マッハ・ジーは再び突撃する。覇王は逃げずに構える。おいおい、マッハ・ジーを倒すつもりかよ。さすがに難しいと思うぞ?俺でも失敗するし。
しかし、覇王は突撃するマッハ・ジーを捉えその拳でマッハ・ジーを粉砕してしまったのである。
「マジか…」
思わず口に出してしまう。今回は吐血しなかった。
「…グッ!?」
しかし、覇王もかなりの大怪我を負ったようだ。マッハ・ジーを潰した腕は肉が潰れ骨が折れ、外に飛び出している。人目見てもかなりくるものがある。
とにかく覇王は倒したし本陣に戻るか。そう思い立ち上がった瞬間、
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!!!
激しい爆発音が聞こえてきた。それも本陣がある場所から。
「何が!?」
俺は怪我を押して無理矢理見える位置まで移動する。そこで見たものは、
空を多い尽くす程の巨大な船と
その船から打ち出されるエネルギー弾によってなす統べなく吹き飛ばされていく幻魔の姿であった。
俺は巨大な船に見覚えがあった。
「聖王の…ゆりかご」
何故忘れていたのだろうか?原作では闇の書並みに危険なロストロギアとされ本局の主力艦隊と渡り合える実力を持つ最悪の船。
既に本陣があった場所巨大なクレーターがあるのみで幻魔の姿は見えない。
「…くそ、これじゃあ全滅してしまう…!」
俺は混乱する幻魔を見つつ逃げるために王都を覆う壁と平行に歩いてゆりかごから離れた。恐らくここにいた幻魔は全滅するだろう。今はなんとしても他の軍団と合流しなければ。
覇王は魔法が使える設定にしました。