リリカルな世界の転生者   作:鈴木颯手

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これで第二章完結です。…うん、短いね。次は長くできるようにします。


第十話 友

「…凄まじいな」

 

俺はシャークハイドラ達を送り出した後海岸線で座って簡易モニターを見ていた。これには船団の様子が映し出されており、先程まで蹂躙と呼べる戦いがあった。

 

…いや、戦いでも蹂躙でもないな。シャークハイドラはただ進んでいただけだからな。その進路にたまたま船団がいただけだ。

 

「しかし、あいつ味方ごと沈めたよな?」

 

船団の中央にあり且つ豪華な船に取りついていたミゴーとヤリスキッドを巻き込んで沈めていた。今のでヤリスキッドはともかくミゴーはほぼやられたな。

 

それでも船団は既に半数以上が沈んでおりここからの巻き返しは不可能であった。

 

「お?逃げるか」

 

簡易モニターの先ではシャークハイドラから離れるように四方八方に広がって逃げる船団の姿があった。

 

勿論それをシャークハイドラは逃さない。首を左右に向けて水を勢いよく吹き出したのだ。当たった船は一瞬で木っ端微塵となっていきやがて原型をとどめている船は存在せず船の残骸が海上に漂っているのみだった。

 

これで侵略者は撃退できたな。いっそのことシャークハイドラを幻魔化させて大陸の回りを守らせるか?それならエルバみたいな強いやつでも来ない限り今回の船団程度なら勝手に殲滅してくれるだろう。

 

「何はともあれまずは戻るとするか」

 

シャークハイドラとミゴー、ヤリスキッドを回収して王城への帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お前らはどうするのだ?」

 

王城に戻った俺はエルバにこれからの事を聞いた。

 

既にエルバがいた国では死亡していることとなっている。もし、エルバが戻っても居場所はないだろう。最悪の場合エルバの名を騙るものとして殺されるかもしれない。

 

かといって何時までもここに置いておくわけにはいかない。ミーナが戻ってきてから落ち着いては来たが未だに人間は信用できない。

 

「それについては考えている」

 

エルバが言うには他にも大陸があるからそっちへいくらしい。しかし、この大陸に来たときに乗っていた船は既に刀足軽が逃亡防止のために破壊しているしこの大陸には船は一隻もない。…いや、現在作っている戦艦ならあるがあれは完成までまだまだ時間がかかるからな。

 

「残念だが船は無いぞ」

 

「問題ない。あっちの大陸には行ったことがあるから転移できる。ただ、魔力の回復までにもう少しかかりそうだが」

 

「そうか」

 

俺としてはさっさと出ていってほしいがそれを口には出さない。

 

「俺としてもあまりうろちょろしなければ暫くはいてもいいが…」

 

「分かった。それより、聞きたいことがある」

 

「…なんだ?」

 

「あの化け物たちのことや召喚獣についてだ」

 

あ~、やっぱり聞いてくるよな。しっかしどうスッかな?馬鹿正直に言っても信じられないだろうし何よりそこまで信用してはいない。

 

どうごまかすか考えていると、

 

「教えてくれ!俺は今までたくさんの生き物を見てきたがどれも見たことがない生物ばかりだ!是非とも隅から隅まで調べたい!」

 

…あ~、こいつあれだ。ただの魔法オタクだ。もしくはネジの外れた変人。

 

「あれを調べないことには転移もできん!頼む!この通りだ!」

 

やめてくれ!後ろに控えている守護騎士、特にシグナムとヴィータから物凄い殺気が溢れてるんですけど!?こいつは俺を殺すきか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局俺が「知りたいなら自分で調べろ!」と言ったお陰でエルバは落ち着いたがしばらくの間召喚獣を召喚してエルバが調べるという流れができてしまった。エルバは一度考え込むと延々と考え込むため魔力が貯まっても中々大陸に転移しようとはしなかった。

 

そのためシグナムやヴィータ、ザフィーラ達守護騎士と模擬戦を行ったりエルバがギルデンスタンと議論を交わしたりと気づけば一月以上も一緒に過ごしていた。

 

そしてある程度落ち着き漸く転移することになった。

 

「世話になったな」

 

転移陣の上に立ってエルバは言う。

 

「全くだ。一体何時まで居座るのかハラハラしたぞ」

 

転移陣の外に立って見送る俺はエルバに返答する。

 

「だが、中々楽しい日々であった」

 

その言葉通り俺はエルバとの日々を楽しんでいた。幻魔となって人間を滅ぼすと決めていたにも関わらずその人間と過ごし楽しんでいた。

 

「そう言ってもらえると居座ったかいがあった」

 

エルバは軽く笑う。この大陸から出れば恐らく戻ってくることはできない。既にこの大陸は世界から切り離している。幻魔やゾンビならまだしも生きた弱い人間が行き来することはできなくなるだろう。俺の方から会いに行くことはないと思うのでこれでお別れだ。

 

やがて転移陣が光だしエルバ達を包み込む。

 

「…じゃあな」

 

「楽しい日々であったぞ」

 

「テメエあたしらのこと忘れんなよ!」

 

「お世話になりました」

 

「…」

 

「よき人生を」

 

「…去らばだ!夜天の一行よ!お前らとの日々は恐らく忘れないであろう!」

 

エルバに続いて守護騎士に管制人格等が言葉を投げ掛けてくる。俺は笑いながら返事をする。

 

言い終わると同時に転移陣は一層光る。光が収まる頃にはエルバも守護騎士達もいなかった。

 

「…さて、俺は俺でやることをやるか」

 

俺は自分に言い聞かせながらその場を後にした。

 




補足
夜天一行が大陸に来たのは大陸の異変を調べるためです。

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