リリカルな世界の転生者   作:鈴木颯手

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第九話 殲滅

~とある王国の国王サイド~

現在我は化け物の大陸を領土にすべく大船団を率いている。

 

我が国に滞在していた大賢者であるエルバ・アイン・シュテュルツィアがたった六人で化け物の大陸へ向かわれたと情報が入ってきた。

 

化け物の大陸とは少し前にあの大陸に存在したアルテミラ皇国の貴族が逃げてきたときに化け物に襲われたと聞いたからだ。最初は言っている意味がわからなかったがその後もアルテミラ皇国の貴族が逃げてきては同じことを言い最後に来た貴族からアルテミラ皇国どころか大陸全土に化け物が現れていると聞かされた。それからは化け物の大陸として出入りを禁止した。

 

その大陸へ大賢者が向かわれたのだ。そのとき俺は好機と思った。いくらエルバと言えど大陸全土に広がっている化け物をすべて倒すなど不可能であろう。そこを狙い大陸を支配すれば言い。エルバが生きていれば極秘利に殺し死んでいるならそれでよし。何とも簡単な内容だな。

 

「陛下、大陸まであと半日ほどです」

 

そのとき部下が報告してきた。あと半日もあるのか。長いな。だが、そのあとに待っている大陸の支配を考えると待ち遠しくはあるも苦には感じない。

 

「そうですか。下がって…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―ギィアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如として聞こえてきた雄叫びと何かが思いっきりぶつかったような音が辺りを支配した。

 

「な、何が!」

 

我は慌てて外へと飛び出す。そこで目にしたのは、

 

「な!?」

 

前方から現れた巨大な化け物とそこにいたはずの船が遥か上空に吹き飛ばされている姿であった。

 

吹き飛ばされた船は遠く離れた海に逆さまに衝突して海の藻屑となっていた。

 

「っ!?全軍、目の前の化け物を殺せ!」

 

我は慌てて指示を出して部屋に戻ろうとする。しかし、

 

「ヒィ!な、なんだこいつら!?」

 

「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!!!」

 

「い、いてぇよぉ!た、たすけて…!」

 

海より現れたイカの化け物とかにの化け物が後方に逃がさないとばかりに後方の兵士を襲っていた。襲われた兵士はのたうち回りその光景を見た無事な兵士達が恐怖で混乱していく。隊列など最早存在しない。

 

「ヒィ!」

 

我は部屋に戻るのを諦めて船の前に向かう。巨大な化け物は首や足を振り回しながら船団を一直線に進んでくる。その進路にはこの船がある。

 

「誰か!この船を捨てて逃げるぞ!」

 

「陛下!無理です!このしたにも化け物が…グキャッ!?」

 

我の言葉に反論してきた兵士は海より新たに現れたカニの化け物に頭を潰されて絶命してしまった。

 

「ヒィィィィィィィィ!!!!!」

 

我はいきなりのことに腰を抜かしてしまい逃げられなくなってしまった。そんな我に狙いを定めたのかカニの化け物はこちらにハサミを向けてくる。

 

「へ、陛下をお守りしろ!」

 

しかし、丁度そこへ数名の兵士が助けに来てくれた。二人が我を支えて下がり残りがカニの化け物に立ち向かっていく。

 

「陛下、取り合えず中へ…」

 

我を支えている兵士が途中で言葉を止めてしまった。見ると先程まで明るかった船の上が太陽を隠したように暗くなっていた。

 

「…まさか!」

 

そう思い後ろを向くと巨大な化け物が足を降り下ろしてくる姿がスローモーションで見えた。

 

それが目の前まで来たとき我の意識は暗闇へと消えていった。

 


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