「…さて、何から聞きたい?」
地下研究所を通り居城である旧ベルテルミーニ王国の元王城の生活スペースにある広間で俺は口を開いた。因みに地下研究所を通った理由はもしもの時のために夜天の主一行に土地を把握させないためだ。
今でこそ落ち着いてはいるがそれでも人間が反抗しておりそれを見せるわけにはいかなかった。
「…先ずはこの大陸についてだ」
俺と向かい合うようにして座った夜天の主が聞いてきた。守護騎士と管制人格も同じく座っている。最初は立っていようとしたが夜天の主が座るように促したため警戒しつつも座っていた。
「っと、その前に自己紹介からいいか?俺は一応名乗ったがそちらはまだであろう?」
「そうだったな。俺はエルバ・アイン・シュテュルツィアだ」
「夜天の書ヴォルケンリッターが将シグナムだ」
「…鉄槌の騎士ヴィータ」
「湖の騎士シャマルです」
「盾の守護獣、ザフィーラ」
なるほど、やはり夜天の書か。と言うか夜天の主の名前言いにくいな。
「自己紹介もしたし質問に答えよう」
「この大陸には幻魔と呼ばれる異形の存在とゾンビと呼ばれる動く死者が存在している」
「…と言うことはあんたも幻魔なのか?」
「そうだ。だが、幻魔と言っても俺は幻魔の上位種の高等幻魔だがな」
「俺はこの大陸に来たのが初めてだけど数年前まではそんな者はいなかったはずだ」
やはりそこに行き着くか。そこで俺は考えていた捏造話を始める。
「それもそうだろう。幻魔は元々地下でひっそりと生きていた。地上に出るのも人間と触れあうのも禁忌としてね。だが、この大陸の西側にあった人間の国が世にも恐ろしい実験をしていた」
「実験?」
「ゾンビさ。奴等はゾンビを使い最強の軍隊を作ろうとしていたのだ」
「なっ!?」
夜天の主…エルバは驚きで目を見開いている。
因みにそんな事をしようとしていた国など存在しない。死者を甦らして作るゾンビはそれほど難しいものだ。だが、この大陸に国などもう存在しない。"死人に口無し"とはまさにこの事だな。
「しかし、その実験は失敗し、ゾンビは外に出て人間を襲いゾンビと化していきやがてこの大陸の国は滅亡していったのだ」
「…だけど、上陸地点が東側と言うのもあるけどゾンビなんて遭遇していないぞ?」
「理由は簡単だ。禁忌とされていた地上に出ることを罰則覚悟で俺を筆頭に幻魔が地上に出て人間の保護と既に大陸のゾンビはあらかた始末した。生き残った人間は完全に駆逐した大陸の南西部に集めて保護している。今はゾンビを逐次駆除している状況だ」
「…大陸に入れなくしたのもこのためか」
「そうだ。この大陸に入りウイルスを外に持ち出させるわけにはいかないのでな」
「それだと俺たちもそうなるのか?」
「安心しろ。運よく空気感染を防げるようになったときにお前らは来た。よってゾンビに噛まれなければ今すぐにでも出ることはできるぞ」
「そうか…。分かった。この大陸には近づかない方がいいな。嘘をつくような奴の言葉は信用できない。そうだろ?ベルテルミーニ王国の国王さん?」
やっぱり俺のことはしっているか。残念なことに別大陸のことはあまり知らないからな。流石に何年もたっているから分からないだろうと思っていたが…。
「…よく知っていたな」
「ハクア・ベルテルミーニの名はそれなりに知名度はある。この大陸で最も勢いのある王国を率いているとね」
「なるほど。それで?お前らはどうするんだ?」
「…既に俺たちはあんたの懐に入り込んでいる。あんたがその気なら既に俺たちは死んでいるだろう。だが、その上で提案がある」
「手合わせを望む」
エルバ・アイン・シュテュルツィア
夜天の主。守護騎士ヴォルケンリッター及び夜天の書の開発者。ベルカの貴族の家に生まれ幼少の時から天才と言われていた。五年前に家を出て各地を旅するようになった。その過程で夜天の書に守護騎士プログラムを作成。その後は各地の魔法を研究していく。基本的に穏やかな性格だが知的好奇心がとても高くその場合何事よりも優先して動く癖がある。相手の強さを曖昧に、魔力を具体的に計測できるレアスキルを持つ。魔力SSS。
夜天の主の設定はこんな感じです。