「さて、どう接触するべきか」
現在俺は夜天の主一行の真上に来ている。勿論あちらからは見えないようになっている。
夜天の主一行は迫り来る刀足軽の軍勢を苦もなく叩き潰している。
「流石は夜天の主と守護騎士ヴォルケンリッターっと言ったところか」
やがて夜天の主一行の前方から刀足軽の増援が見えた。恐らくギルデンスタンが送ったのだろう。造魔は基本ギルデンスタンの管轄だからな。
夜天の主一行も増援を確認したようで夜天の主が杖をつき出すとそこから四つの白い光が現れ刀足軽を襲った。瞬間刀足軽は増援事一瞬で凍りつき氷解していった。
…にしても初めて夜天の主を見たがこんな可笑しなレベルの技を放っていたんだな。こりゃ世界を滅ぼせるわ(世界を滅ぼしているのは闇の書だけど)。
さてと俺も降りるとするか。俺は一瞬で急降下して夜天の主一行が見えるくらいの高さまで下がった。
「よし、ならもう少し先に「行かせるわけにはいかないな」!?」
俺は夜天の主の言葉を遮り言った。夜天の主一行は行きなり現れた俺に警戒の色を見せている。
「はじめまして、と言うべきか。俺はこの大陸の支配者。ハクア・ベルテルミーニだ」
俺は夜天の主一行に挨拶するがあちらは反応がない。まぁ、行きなり現れても警戒するだけだな。
「先ずは俺の部下が諸君らを襲ったことについて謝罪しよう」
俺はそう言って頭を下げる。最も、相手の上にいるのは変わらないが。
「…いくつか質問したい」
「構わん、と言いたいところだがこんなところで話すのもなんだ。居城に案内しよう」
「…わざわざ敵の本拠地に行くとでも?」
代表してなのか警戒しながらシグナムが言った言葉に俺はそれもそうだなと思った。夜天の主一行にとってここは何が起きるか分からない世界。いくら俺が誠意を見せても警戒するに越したことはない。
そこで俺は夜天の主の方を見て答える。
「俺としてはこんな氷付けの所より腰を落ち着けることができるところの方がいいと思うがそちらはどうだ?」
「…分かった。そちらの提案を飲もう」
夜天の主はしばらく考えたようだが俺の提案を受け入れると言った。
「主!?」
「シグナム、あちらの言う通りするのだ。もし、あいつがその気なら今ごろ俺たちはこうして話していることはできない」
随分と警戒されているな。
「それに、ベルカではよく言うだろう?"和平の使者は武器を持たない"って」
確かに今の俺は丸腰だしな。これは単純に武器攻撃をあまりしないからだが…、いちいち言ってやる必要はないか。それにそのお陰でスムーズに事が運べるならそれでいい。
「…話はまとまったか?」
「ああ」
「なら、付いてこい」
俺は地面に降りて歩き出す。夜天の主一行も俺に続いて歩く。
暫く歩くと目的地が見えてきた。
「ここだ」
「…?何もないところだが?」
シグナムが俺に聞いてくる。確かに目に見える範囲でここには何もない。精々石が転がっている程度だろう。
「何、直ぐに現れるさ」
俺がそういった直後地面が浮き上がり地下研究所への入り口が現れた。
「ここが入り口だ。入ってくれ」
夜天の主一行は地面から現れた入り口に呆然としていたが直ぐに気をとり治して俺に続いて地下研究所に入った。
全員が入り終えると入り口は再び地面へと沈みそこは何事もなかったような静寂があるのみだった。
地下研究所の規模は既に大陸の半分近くにまで及んでいる。そのため至るところに入り口が秘匿されており出入りが可能だった。
「…ここはお前が作ったのか?」
地下研究所の廊下を歩いていると夜天の主が聞いてきた。
「ああ、詳しくはあとで話すがここは俺が一から作った地下研究所だ」
「…そうか」
夜天の主はそれだけ言うと黙り混み居城に着くまで一言も喋らなかった。