「何?侵入者?」
旧ベルテルミーニ王国王城の地下に存在する地下研究所でいつもと同じくミーナと遊んでいたとき大陸沿岸部を警備している幻魔から報告があった。
いくら大陸に近づけないようにしているとはいえ、何が起きるかわからないため沿岸部に多数の幻魔を配置していた。因みに全て刀足軽と弓足軽だ。
「取り合えずその周辺の映像を見てみるか」
俺は大陸全土に放っているカメラ型の幻魔から送られてくる映像を確認した。
そして、丁度カメラ型の幻魔が侵入者を捉えていた。
「こいつは…」
まさかこいつらとはな。侵入者の数は六人。
「…夜天の書」
そう、映像には迫り来る幻魔を凪ぎ払っていく夜天の主と思われる男と守護騎士、管制人格がいた。
「…まさか一番最初にこいつらと会うとはな」
原作に登場するものの中で一番古いとはいえこんなに早く会うとは予想していなかった。
まだ幻魔界と呼べる状況ではない。もし、反抗している奴等と抵抗すればかなりめんどいことになりそうだ。そんなこと、俺は望んでいない。
「ベルカ時代にはもうなっているのか?」
ベルカ時代だと流石に詳しくはしらない。俺はvividをたいして読んでいなかったからな。知っているのは聖王の…名前は忘れたがヴィヴィオのオリジナルと覇王イングヴァルト…だったか?が一緒の時代にいたくらいだからな。…っと、こうしているわけにはいかないな。
「幻魔を向かわせるか?それともゾンビに襲わせるか?…いや、夜天の主と守護騎士なら相手にすらならないな。くそっ、こんなことなら高等幻魔を作っておくべきだった」
どちらにしろこのままでは良くないと言うことくらいか。ならばここは高町流でいくか?…よし、早速準備しよう。いざというときにはスピリットがいるしな。…召喚するまでに切られる姿しか思い浮かばないが。
「主、この化け物達は一体…」
迫り来る刀足軽の軍団を切り裂きながら夜天の書の守護騎士、ヴォルケンリッターの烈火の将シグナムは聞いた。
「さあな、俺もここに来たのは初めてだけどこの生物は見たことがないよ」
シグナムの言葉に初代夜天の主である彼は返事をする。
夜天の主と守護騎士、管制人格はこの大陸と貿易をしていた商人からこの大陸の異変を聞き調べにきたのだ。
調べに来たといっても彼らは国に属しているわけではない。夜天の書は現主が別の大陸に存在している魔法と言う技術を使い作り出した魔導書である。
各地の魔法を記録できるように作られたこの魔導書はこの魔導書を守るための守護騎士とこの魔導書を扱う管制人格で構成されている。
「こいつら同じ外見の癖に人間よりも強ぇぞ」
シグナムの隣で得物であるハンマーを振り回して刀足軽を吹き飛ばしてヴォルケンリッターの鉄槌の騎士、ヴィータが言う。
「…!前方に更に敵の増援確認!このままでは…!」
ヴォルケンリッターの湖の騎士シャマルが新たな敵の接近を告げる。
「…全員下がってろ!」
その時夜天の主の声が聞こえた。夜天の主の持つ杖からは大きな魔力が溜まっていた。
主の言葉に前方にいたシグナムとヴィータは直ぐに夜天の主の後ろにさがる。前方に敵のみとなったのを確認した夜天の主は自身の得意魔法である広域制圧魔法を放つ。
「…仄白き雪の王、銀の翼以て眼下の大地を白銀に染めよ。来よ、氷結の息吹。アーテム・デス・アイセス!」
詠唱完了と共に発動された魔法は四つの光となって大地に降り注ぎ増援に来た幻魔もろとも氷結させてしまった。
やがて氷結した幻魔は心地よい音をたてて崩れ去り氷の粒となっていった。
「しっかし、いつ見ても主の魔法はえげつないな」
「そんなことはないよ。回りに守ってくれる人がいて初めて使える魔法だし」
ヴィータの呆れと共に吐き出された言葉に主は優しく答えた。
「シャマル、付近に生命反応は?」
「ありません。先程の化け物の反応もゼロです」
「よし、ならもう少し先に「行かせるわけにはいかないな」!?」
夜天の主の言葉を遮るように聞こえてきた声。そして瞬間放たれる異常な覇気。
そして、それは現れた。
「はじめまして、と言うべきか。俺はこの大陸の支配者。ハクア・ベルテルミーニだ」
人の形をしたその化け物は今夜天の主の前に降り立った。