ミーナが戻ってきてから一週間がたった。その間俺はミーナに俺のことをすべて話した。勿論嫌われる覚悟で。もし、ミーナが俺を嫌ったら別の世界に送り何不自由なく暮らさせるつもりだった。
だが、ミーナは俺を受け入れてくれた。俺のそばにずっといたいからと自ら進んで幻魔化すると言い出したときは止めたが結局言うことを聞いてはくれなかった。
だから俺はなるべく姿が変わらないように必死で行った。俺が幻魔化したとき以上に技術をつぎ込んだ。
結果は成功。幻魔となってもミーナは変わらず俺についてきてくれた。俺は何よりもそれが嬉しかった。
そして、今は…。
「お兄様、朝ですよ」
ミーナの声が聞こえ俺は目を開けた。目の前にはミーナが俺の顔を覗きこんでいた。
俺が起きたのを見てミーナは笑っていった。
「おはようございます。お兄様」
「ああ、おはようミーナ」
ミーナが戻ってきてくれてから俺の生活は変わった。いや、元に戻ったと言うべきかもしれない。
変わったことと言えばミーナが幻魔化してから俺とミーナは一緒のベットで寝ている。本来幻魔化したから寝る必要はないのだがミーナの希望でなるべく睡眠をとるように言われた。だが、一緒のベットで寝ているのは俺の提案だ。
俺が寝ている間にミーナがまた消えてしまうかも知れないと思ってしまうからな。そのせいか、最初はミーナを思いっきり抱き締めて寝ていた。流石に今はそんなことはしないが。
「お兄様、食事を作ったので一緒に食べましょう」
食事の方も幻魔は必要ないので食べていなかったがミーナが俺に作りたいと言うからそれ以来ずっと食べている。
「お兄様、お味の方はどうですか?」
「美味しいよ、ミーナが作ってくれたものと言うだけでどんな料理よりも勝っているけどな」
「ふふ、ありがとうございます」
実際ミーナが作ってくれたものはどんなものでもうまい。例えげてものだろうとうまい。そう断言できる。
「お兄様、このあとはいつものように?」
「ああ、いつも悪いな。ミーナを外に出せればいいんだが…」
「いえ、そんなことはないですよ。ミーナはお兄様とこうして一緒にいられるだけで幸せです」
そのようにミーナは言うが目は少し下がっている。ミーナが外に出られない理由は単純に幻魔の力を制御しきれていないからだ。
俺とミーナの居住空間である地下研究所は特殊な装置で暴走を食い止めている。そのため幻魔の力は使えないが日常生活に支障は出ていない。
しかし、外は装置の範囲外のためいつ暴走を起こしても可笑しくない状態になってしまう。そのため現在ミーナは幻魔の力を制御する訓練をしている。だが、直ぐに出来るわけではないためまだまだ時間がかかるだろう。
「…大丈夫だ。直ぐに終わらせて帰ってくるさ」
「…はい、ミーナはお兄様の無事な帰還を祈っています」
ミーナはそう言って笑ってくれた。
…やはりミーナはいつ見てもかわいいな。俺はこの笑顔を守るため頑張らなくてはな。
「それじゃあ、行ってくるよ」
そう言って俺は居住スペースを出ていった。
俺が今行っているのは人間勢力の残党狩りだ。アルテミラ皇国やその他の小国の残党勢力が未だに抵抗を続けていた。
俺は根気よくその勢力を潰していっている。それでもまだまだたくさん存在しているがようやく半分潰したところだったかな。
いい忘れていたがあの日から既に五六年は経っている。国はなくなり大陸が世界となる。今は残党狩りと並行して別大陸の様子を偵察している。その中には魔法が発達しているのもあった。そう言えばベルカがあるとすればベルカの後にクラナガンが出来るんだったよな?なら、この大陸を別次元に移すか?それは可能な領域にあるしな。
取り合えず今は残党狩りに精を出すか。
「…ここがそうか?」
「はい、今まではあったはずの大陸が黒い禍々しい霧に覆われ入ることが出来なくなったと聞いています」
「そんな面白そうなことは是非この手で解決したいものだ」
「何言ってんだ?そのために来たんだろーが」
「そうだな。何があるかはわからないが気を引き閉めていくぞ」
「「「「はっ!(おう!)」」」」